2021年に入って立て続けに新型PHEVモデルを国内投入したPSAジャパン(プジョー・シトロエン・DSの3ブランド)。最新5モデルを一気に試乗していきます。第1弾は、2021年1月27日から日本国内販売開始となったプジョー『3008 GT HYBRID4』です。試乗の目的地には、中部横断道と富士吉田市内のラフロードを選びました。
世界最古の量産自動車メーカー、プジョーがつくる「3008」とは?
本記事では「プジョー 3008ってどんなクルマ?」が知りたい方に向けたモデル概要やその魅力から、「PHEVってどうよ?」と思われている方への筆者の考察までをまとめてお伝えします。
プジョーはフランスの自動車メーカーで、1889年に世界初の「量産自動車」を生産したとされる古い歴史があります。エンブレムはライオン。自動車を生産する前は、織物や染物工場、搾油機などの工業製品を生産、1810年には製鋼所をつくりスプリングやコーヒーメーカーなどを生産、その製品にライオンマークを刻みました。プジョーのエンブレムのライオンは、そこから始まった歴史のあるものです。
日本国内ではフランス車のシェアが低いこともあり、プジョーは高級車ブランドと思われている節がありますが、実際はそうではありません。本国フランスをはじめとしたヨーロッパでは、プジョーは日本でいうトヨタのような存在。高級モデルも販売されていますが、主力モデルはいわゆる大衆車で、欧州では一般的でなじみのあるブランドです。
「3008」は、2016年にデビューしたCセグメントのSUV。国産車では日産『エクストレイル』などと同じクラスになります。欧州をはじめグローバルで好調なセールスを記録、デビュー以降80万台以上が生産され、2017年にはヨーロッパ・カー・オブ・ザー・イヤーを受賞しています。そして2020年にモデルチェンジを実施。フロントフェイスはがらりと変わり、プジョー初のPHEVで4WDの『3008 GT HYBRID4(ハイブリッド・フォー)』をラインナップに追加しました。なお、プラットフォームなど基本構造は変わっていないマイナーチェンジとなっています。
「3008」の特徴は個性的なエクステリアとインテリアのデザイン。特にインパネのデザインは個性的。「i-Cockpit」は、特徴的な楕円形のステアリングホイールの上部にメーター類を視認する(通常はステアリングホイールの内側からメーター類を視認)構造で、視線移動が少なくなっています。また、通常よりこぶし1個分程度、ステアリングを持つ部分が下がります。このため、腕の位置が下がり楽な姿勢で座ることができます。さらに、座り心地の良いシートや、しつけの良いADAS(先進運転支援システム)などと相まって、長距離運転は非常に楽で疲れ知らずです。
「3008 GTハイブリッド4」の特徴や試乗インプレッションは下の動画でまとめています。さらに詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
プジョー初のPHEVで4WDのシステム構造に驚いた
プジョーが満を持して登場させた(プジョーの4WDが日本に正規導入されるのは初めて)PHEV・4WDシステムは、1.6Lガソリン直噴ターボエンジン(3008のガソリン車に搭載されているエンジンと同じだが、最高出力は200PSに高められている)に電気モーターを組み込んだ8速ATを組み合わせて前輪を駆動、後輪をモーターで駆動する方式です。なお、8速ATはPHEVモデル専用のもので、トルクコンバーター(純内燃機関モデルに採用)にかわり湿式多板クラッチを採用しています。
システム総合最高出力は300PSでプジョー史上最強ともいわれるスペックに。また、0-100km/h加速は5.9秒という俊足です。
凝ったパワートレインとスペックに驚きましたが、実際の走りも驚きました。いたってスムーズで速い。エンジンとモーターの切り替わりは非常に自然、普通に乗っていたら気が付かないレベルで、シフトチェンジショックも感じません。上質な走りです。
EVとしての実力は?
「3008 ハイブリッド4」に搭載されるバッテリー容量は、13.2kWh。量産PHEVの先駆車、三菱 アウトランダーPHEVは13.8kWhですから、PHEVとしては標準的なバッテリー容量といえるでしょう。
等価EVレンジでの航続距離は64km(WLTC)で、WLTC市街地モードでの交流電力量消費率は183Wh/km(約5.2km/kWh)というカタログスペック。今回の試乗では、満充電でお借りしてからEVモードで市街地のみを走行したところ、おおむね36kmの航続距離という結果でした。気温30℃超えの暑い日でエアコンがほぼフル回転だったこともありますが、かなり厳しめの数値になった印象です。
(欧州仕様のWLTP値は34〜40マイル=約55〜64km、EPA換算推計値=約49〜57km)
EVモードでの走行は、基本的に後輪のモーターを駆動させて走ります。リアモーターの最高出力は82kW[112PS]、最大トルクと166N・mのスペックで、市街地走行では不足のない走りでした。
ちなみに、実燃費は平均で約15km/L、高速道路で約18km/Lという結果でした。カタログスペックでは、市街地11.5km/L、郊外16.7km/L、高速道路16.7km/L(ドライブモード「ハイブリッド」でのWLTC)となっています。なお、プジョーをはじめとしたPSAグループのクルマは、おおむねカタログスペックに近い実燃費となります(筆者の経験上)。
普通充電のみ対応。その理由とPHEVについて思うこと
三菱 アウトランダーPHEV、トヨタ プリウスPHVなどの国産PHEVモデルは急速充電(CHAdeMO規格)に対応していますが、「3008」は普通充電のみとなっています。なお「3008」に限らず、PSAグループの傘下ブランド、シトロエン、DSのPHEV(3008とパワートレインが同じ兄弟車となる)も普通充電のみを装備しています。
その理由についてPSAジャパンの広報に尋ねると「コストをかけて搭載しても急速充電は見合わない機能となる」旨の回答でした。また「そもそも本国ではPHEVに乗って外出した先で急速充電をするという概念すらないのでは」という会話もありました。
たしかに、PHEVで急速充電の必要性は低いですね。バッテリーがなくなってもエンジンで走りますし、急速充電器の利用料よりガソリン代のほうが安くなるケースも多いでしょう。個人的には、PHEVは普通充電対応だけでよし、と思った次第。しかし、逆になぜ国産PHEVに急速充電を搭載しているのかが謎になりました。公共の充電スタンドでPHEVが充電することについては、次回のフレンチPHEVのドライブでさらに考えてみることにします。
ドライブコースは中部横断道や富士吉田市内のラフロード
今回のドライブコースは、甲州街道と東八道路を通って八王子ICから中央道へ、中部横断道を経由して新東名は新清水ICまで高速道路を走行。その後は一般道で富士山麓へ。富士吉田市内のラフロードを走ってから、中央道河口湖ICから高速道路に乗り帰京しました。総走行距離は約480kmでした。
当初、目的地はファッショナブルなフレンチSUVに似合う洒落た場所にしようかと思いましたが、プジョーがフランスの実用車ブランドであることを意識して、あえて地味な長距離ドライブコースを選択。山梨と静岡県内全線開通が近い中部横断道の未開通部分の一般道を含めた山梨〜静岡区間を走破しました(今、そこがどうなっているのかの確認もしたかったこともありました。この点は動画でご覧ください)。
高速道路をひとしきり走ったあとは、のんびりと富士山を半周するように山麓をドライブ。富士吉田市内のラフロードを走行し、4WDの性能とリアサスの出来を確認。
3008のガソリン車、ディーゼル車のリアサスは半独立式のトーションビーム式ですが、PHEVモデルは四輪駆動独立懸架のマルチリンク式を採用しています。
構造が簡単でコストが安いトーションビーム式ですが、乗り心地は良い部類には入らない方式です。しかし、長らくトーションビーム式でFF車をつくり続けたプジョーにとっては、もはや枯れた技術、3008のFFモデルでも十分に良い乗り心地と操縦安定性を確保しています。そんな、3008がマルチリンク式を採用したとなれば、期待が自然に高まります。
「3008 GTハイブリッド4」は重厚な乗り心地、まるで高級車のようです(車両価格は565万円と高級車と呼べる部類の価格ですが。ガソリン車なら397万円からあります)。1,850kgという重たい車重が功を奏した感がありました。オフロードでも実に快適、ゆったりとした乗り心地で路面のうねりが気持ちがいいと感じるほど。巧みな4WD制御で、操縦安定性も十分でした。
さて、次の試乗車は『DS7 クロスバック E-TENSE』を予定しています。プラットフォームとパワートレインは「3008」と同じですが、こちらは高級車でございます。ややマイナーな「DS」ではありますが、個人的には好きなブランドのひとつ。DSとはどんなブランドなのか、その魅力に迫りつつ「PHEVについて思うこと Vol.2」もお伝えします。
ドライブの目的地は、DSの独特な世界観に合わせて軽井沢を選択。お楽しみに。
(取材・文/宇野 智)







