私のモデルXも83,000kmを超えて、新車から3年8か月で新車保証の対象外に。「電気自動車は災害に弱い」という意見をときどき目にするので、100Vコンセントを取り付けて災害に備えよう!という企画。今回は実験編。
モデルXに外部給電機能を後付け実験
Twitterをはじめ、ネットではよく「電気自動車は災害に弱い」という意見を見ます。実は全くそんなことはなくて、様々な過去の災害の事例を確認すると、電気はガソリンインフラなどより先に復旧していますし、電気自動車は超大型の電池を持っているので、そこから電気を取り出すことができます。過去記事、電気自動車やPHEVは災害のとき発電できる?でも、災害時の給電方法について解説しています。
今回はテスラ。実はこの車、車内に100Vコンセントの装備がなく、かつV2Hのような車両からの外部給電(=車の外に電気を取り出す)の仕組みも持っていません。理由は定かではないですが、できないならやっちゃおう! というのが今回の企画です。
なお予めお伝えしておきますが、テスラのマニュアルには、「このバッテリーは固定電源として使用しないでください。固定電源として使用した場合は、保証が無効になります」との記載があります。日本の法律ではそもそもマニュアルは契約書じゃないですし、購入契約書にはその旨の記載も説明もありませんから微妙なところだと思いますが、保証期間中はやらないほうが良いと思います。
ちなみにテスラは新車保証が結構長くて、4年または80,000km(いずれか早い方)となっています。モーターとバッテリーは車両によって異なりますが、8年または、16-24万キロまで保証されていますので安心です。私の車のモーターは、何と距離無制限保証(現在はありません)。
仕組みはこうです。
テスラに限らず電気自動車には、400Vまたは800Vの大容量電池と、12Vの小さい鉛蓄電池が搭載されています。私のモデルXの場合、400Vの電池が100kWh分と、12Vの、恐らく40Ah程度の小さい電池が搭載されています。走行時とエアコン、バッテリーヒーターは400Vの電源で動作し、それ以外のライト、ファン、コンピューターを始めとする電装品は12V電源で動作します。ここから先は電気自動車によって異なるのですが、テスラの場合は、12Vバッテリーの電圧は車が電源ONのときは常時監視されており、一瞬でも電圧が下がるとすぐにDCDCコンバーターが動作して、400V側から12Vバッテリーに充電が行われます。このDCDCコンバーターは2500W定格となっていて、相当な余裕を持たせた設計になっています。
今回は、この性質を利用し、車両を電源ONにした状態で最もアクセスしやすい12Vバッテリーから直接電源を取り、1AWGのケーブルで直接、2kWのインバーターに接続します。ここから、ヒートガン、掃除機、ホットプレートと電子レンジをそれぞれ稼働させてみました。
STEP 1
まずは平常時の高電圧バッテリーの状況をチェック。バッテリー温度(Cell temp avg)は33.7℃と少し温まっている程度。
まだ何もしていない状態で、DCDCコンバーターの出力(DC-DC output)は224W、DCDCコンバーターのクーラント温度(DC-DC coolant)は34.0℃。電気を取り出すとクーラント温度が上がると思うので、それをチェックしたいと思います。バッテリー残量(SOC)は79.8%。
STEP 2
パネルとライナーを取り外します。パネルはファスナー(パチンと留めるやつ)で留まっているだけなので、落ち着いてやれば簡単に外れます。ライナーにはフランク内を照らすライトが付いているので、ライトの電源コネクターを注意深く外してから、ライナーを持ち上げます。
STEP 3
フランク自体を固定しているボルトを全部緩め、フランクを取り外します。すると大きなHEPAフィルターが見えますので、これも取り外します。フランク下部には斜めに設置されているラジエーターが見えます。ラジエーターはガソリン車のように走行後でも熱くなりません。
STEP 4
12Vバッテリーのプラス端子とマイナス端子を確認し、ケーブルに予め圧着してある丸型端子を、マイナス側からネジ留めして、インバーターを取り付けます。今回、マイナス側もプラス側も、すでに装着してあるナットはそのままにし、丸型端子を入れ、もう一つ上から別のナットで留めました。配線の順番は、バッテリーマイナス端子→インバーターマイナス端子→インバータープラス端子→バッテリープラス端子、の順です。バッテリーのプラス端子に接続するときに火花が出ますので、注意してください。後ほどご紹介する動画では、ナットが飛んでいってしまっています。最後に、クランプメーターをセットして12V系と100V系の電流を監視できるようにします。通常電流を測るには、回路を切ってそこに電流計を入れないといけないのですが、クランプメーターは回路をクランプという測定器の先っちょで挟み込み、磁束を測定することで電流や電圧を測定します。
※2021/6/14追記:本来はプラス端子から配線すべきですので、ご自身でやる場合にはご注意ください。コメントでご指摘いただきました。
では、早速テストしてみましょう!
まずはヒートガンです。負荷としては、単なる抵抗負荷で、約1kWです。12V系は85A、車両側から取り出されていました。ヒートガン以外の機器は全て誘導負荷を用意しました。
誘導負荷とは、コイル、モーター、トランスなどの負荷で、突入電流が流れるものです。
次は、弱い誘導負荷として、小型の掃除機をまずは「弱」設定で試します。定格は1kW。弱では12V側50A前後。安定して動作したので掃除機を強に切り替えると、12V側は75A-100Aくらいまで変動しました。掃除機自体もちょっと波打つような感じで動作しています。もしかするとそもそも掃除機の調子が悪いのかもしれません。弱に入れるとき、強に切り替えるとき、そしてOFFにするとき、それぞれ突入電流が発生しますが、インバーターはこれにうまく耐えているようです。
弱の時点での車両側のデータを見ると、DCDCコンバーターに入っていく電力(DC-DC input)が752W。車両側のDCDCで少し損失があり出力側(DC-DC output)は708W。クーラント温度(DC-DC coolant)は34.0℃と全く変化なし。
大きめの抵抗負荷として、定格1300Wのホットプレートを試します。ONにすると(当たり前ですが)音もなく加熱がスタートし、12Vは125Aに。100V側では1.25kW(=1250W)出ています。車両側のメーターではDCDCコンバーターに1280Wが入力されています。これでも、車両側の高電圧バッテリーの負荷(Battery power)はたった1.36kW(=1360W)。急加速時には500kW以上、普段の走行でも20kW程度の連続的な出力に耐えられる電池を搭載しているので、1.36kWなら微々たるものです。このバッテリーには現在、79.7%で67.5kWhの電気が蓄電されていますので、ホットプレートなら2日間以上もつけっ放しにすることが可能です。日本の一般の家庭が1日に消費する電力量は10kWh。67.5kWhというのは、その1週間弱分にあたります。
試験の最後として、大きめの誘導負荷である電子レンジを試します。ONにした瞬間、12V系のクランプメーターから警告音!この測定器は1000Aまで対応しているのですが、一瞬そのあたりまで行っているということですね。その後、140A程度で安定しました。100V系は14.6Aと表示されており、おおよそ1460W程度消費。車両側はこの時点でDCDCコンバーターへ(DC-DC input)1760Wが入力されています。定格は2500Wですからまだ余裕。DCDCコンバーターを冷却するクーラント(DC-DC coolant)は34.0℃で、先ほどと全く変化がありません。
電子レンジの中にはポップコーンが!コーンだけしか持ってこず、袋を持ってくるのを忘れてしまいましたので、応急的に紙皿をテープで留めて加熱。結果はご覧の通り、ポップコーンのパワーでテープが外れてしまいました(笑)
実験は成功でした。
最後に、厳寒期を想定して、先ほどの電子レンジに加え、車両側のほぼ全ての電装品を同時に使用するテストを行います。ONにしていないのはバッテリーヒーターのみ。エアコンは暖房で最強、風速も最大、フロントのデフロスター、リアのデフロスターは共にON、ヘッドライトと室内灯もすべて点灯した状態で、車両のデータを見てみましょう。
12V系(DC-DC input)は2864Wも使用しています。これは電流でいうと239Aで、定格を少し超えています。ここまでやるとDCDCコンバーターの発熱も多くなり、クーラント温度(DC-DC coolant)も40.0℃まで上昇。高電圧バッテリー側(Battery power)は14.9kWとかなり上昇していますが、DCDCコンバーター(ファン、ライト、電子レンジ等の合計)へ2.864kWいっているので、エアコン・デフロスター関係だけで12kW近く使用していることが分かります。電気自動車のエアコンやデフロスターは、ガソリン車のものより遥かに強力なのです。
撮影した動画をご紹介します。
次回は正式にこれらの機器を綺麗に取り付けます。お楽しみに。
(文/安川 洋)









