新年早々ラスベガスで開催されたCES2023で、ソニー・ホンダモビリティのコンセプトEV『AFEELA』が発表されました。実際に車内に乗り込んで感じた可能性を、Honda e オーナーのスマホジャーナリスト、石川温氏がレポートします。
デザインは思ったよりもシンプル
ソニー・ホンダモビリティは2025年に発売を予定しているEVに「AFEELA」というブランド名をつけると発表した。同時にアメリカ・ラスベガスで開催されたテクノロジー展示会「CES」会場で、プロトタイプを公開。一部のメディアには車内の様子が公開された。
実際、筆者もAFEELAに乗ることができた。
AFEELAが公開された直後、ネット上では様々な声が上がっていた。特にデザインに関しては賛否両論あったようだ。2020年にソニーが発表した「VISION-S」はすぐにでも製品化されそうな完成されたデザインであったが、AFEELAは実にシンプルで、まさに「プロトタイプ」的なデザインとなっている。
ソニー・ホンダモビリティの川西泉社長兼COOによれば「デザインは相当、迷った。しかし、いまのクルマはかつてのケータイのようにテンキーや背面などデザインが過剰すぎる。我々としてはスマートフォンのように外観がシンプルな世界観を狙っていきたい」と語る。
VISION-Sの延長線上のデザインではホンダと組んだ目新しさに欠ける。
ソニーとホンダが手がけるだけに、既存の自動車メーカーと同じデザインコンセプトでは意味がない。全く新しい座組だからこそ、外観のデザイン、ハードを派手にするのではなく、内部、つまりソフトウェアで差異化していくという狙いがあるようだ。
全体的にシンプルな印象のAFEELAだが、フロントとリアには「メディアバー」という長細いディスプレイが埋まっている。ここではお気に入りのプロスポーツチームの試合結果や天気、駐車場で事前にいくら支払い済みなのかといったさまざまな情報を表示できる。
万が一のことがドライバーに起こった場合、車内に設置されたカメラが状況を把握し、助けを求めるメッセージをメディアバーに表示するということも想定されている。
もちろん、クルマを運転しているとき、ドライバーからは一切、見えない情報なのだが、AFEELAとしては周りの人とコミュニケーションするためのディスプレイという位置づけになっている。
これまでの数多くのメーカーが車外向けのディスプレイをコンセプトカーで実装してきたが製品化までに至ったところは皆無に等しい。法規制による壁が大きいのだが、川西社長は「ぜひチャレンジしてみたい」と意気込んでいる。
実際にAFEELAに乗ってみた
まず、ドア部分には取っ手がない。カメラによる顔認証でドアを開けることができる。また、スマホアプリを使っての開閉も可能だ。
ドライバーシートに座ると、起動音がして、目の前のディスプレイにウェルカムメッセージが表示される。AFEELAには45個のカメラやセンサーが搭載されているのだが、乗客それぞれの前にカメラが設置されており、顔認証で誰が乗ってきたかを把握することが可能なようだ。
ダッシュボード部分は端から端までディスプレイだ。ドアミラーも鏡ではなく、カメラの映像を車内に映し出すようになっている。
ちょっと見た限りであったが、ドアミラーとしての映像は、同じコンセプトとなっているHonda eに比べても、高解像度で綺麗な映像となっていた。
ソニー・ホンダとしては、将来的に自動運転時代が到来することで「車内をどのように過ごすか」が参入のきっかけになっている。ドライバーが運転に集中しなくてもいいような時代が来れば「映画を見ながら高速道路を走行する」ということも不可能ではない。その時に、大きな画面で大迫力の音響で映像を楽しめる空間を提供したいというわけだ。
AFEELAでは、ソニーがすでに提供している立体音響技術「360 Reality Audio」で没入感のある音楽を楽しめるようになっていた。
もちろん、音楽を再生する際には「プレイリストを再生して」と声で話しかければいい。今回はデモできなかったが、乗客の前にカメラが設置されているので、人差し指を口の前に置き「シーッ」というポーズをするだけで、音楽がミュートされるという機能も備わっている。
AFEELAでは、スマートフォンの待ち受け画面をカスタイマイズするように、自分の好きなテーマを自由に選ぶことができる。例えば、映画「スパイダーマン」が好きなのであれば、スパイダーマンがディスプレイに表示されるようにもなる。もちろん、ボンネット部分にある「メディアバー」にもスパイダーマンが表示されるという仕組みだ。
まさにスマートフォン的なカスタマイズができるという世界観なのだ。
また、AFEELAでは、プレイステーションのコントローラーを使って、ゲームなども楽しめるようになっている。バッテリーの充電中などでも暇を潰せるようになっているのだ。
川西社長は「音楽を聴いたり、動画を見たりするというのはお約束として必須の機能であり、ソニーが持っている技術を入れていくのは当然のこと。ただ、最終的に目指すのはモビリティのなかでのエンターテインメントでの可能性を考えていきたい。運転しなくてもいい世界が来たときにどうやって時間を使うのか。これが今回、自分たちに課せられたテーマなんだと思う」と語る。
ソニー・ホンダとしては、スマートフォン「Xperia」で培ったノウハウを武器に、車内もスマホのように楽しめるエンターテインメント空間を作っていきたいようだ。
取材・文/石川 温





