毎年恒例のお盆休みの帰省ドライブ。今年はKia「PV5 パッセンジャー プラス ロングレンジ」を試乗してきました。日本市場ではまだ数少ないミニバンタイプの電気自動車。台風接近という悪条件も重なるなか、東京の自宅から兵庫県北部の実家までの帰省ルートを実際に走ってみると、経路充電はわずか1回だけで到着できるなど、航続距離や急速充電性能は「期待以上に使えるEV」という印象でした。往復およそ4日間、じっくり試乗した実力をリポートします。
Kia「PV5」という新しい選択肢
PV5は、Kiaが日本進出第一弾として投入したEV専用プラットフォーム「PBV(Platform Beyond Vehicle)」を採用するモデルです。荷室のレイアウトを柔軟に組み替えられる商用の「PV5カーゴ」と、乗用ミニバンの「PV5パッセンジャー」の2ラインを展開していて、日本でもこの2タイプが導入されています。
2025年に韓国と欧州で発売開始され、すでに欧州では26カ国の商用車専門ジャーナリストの投票により、韓国メーカーとしては史上初めて「インターナショナル・バン・オブ・ザ・イヤー2026」を満場一致で受賞するなど、高い評価を得ています。
世界で評価されているPV5を携えて、ヒョンデグループのKiaが日本市場に本格進出。2026年5月には、日本第一号店となる「Kia PBV東京西」をオープンしました。
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その後、倉敷(岡山県)や東名横浜(神奈川県)の店舗がオープン。8月29日には、厚木(神奈川県)と福岡東がオープンすることに伴って、9月6日まで「デビューフェア」が開催されます(公式サイト)。
東京→兵庫は1回の経路充電でラクラク走破
今回試乗したのは、PV5パッセンジャーでも最上級となる「プラス ロングレンジ」。日本仕様のPV5パッセンジャーは、51.5kWhバッテリーを積む「ベーシック スタンダード」(税込679万円)、同じく51.5kWhながら快適装備を追加した「プラス スタンダード」(同709万円)、そして71.2kWhの大容量バッテリーを搭載する「プラス ロングレンジ」(同769万円)のグレード構成。最高出力はスタンダード系が89kW、ロングレンジが120kWで、最大トルクは全グレード共通の250Nmです。WLTCモードの一充電走行距離はスタンダードが377km、ロングレンジは521kmとなっています。
8月11日、夜には台風が関東襲来の予報だったので、台風が来る数時間前を狙って走ろうと18時ごろに自宅を出発。自宅ガレージのEV用コンセントで充電して、100%からのスタートでした。
往路の経路充電は、新名神・土山SA(下り線)の150kW器で30分間の1回だけ。自宅から土山SAまでの約390kmを余裕で走り切れたのは、さすがに70kWh超のバッテリーを搭載している実力と評価していいでしょう。
SOC(バッテリー残量)10%でピットインして、12分ほど経過した45%の時点で129.3kWの最高出力を確認。15分経過してブーストモードが終わった後は85kW程度に出力が低下しましたが、30分間でSOCは77%まで回復しました。メーター表示の航続可能距離は41kmから「353km」に伸び、およそ310km走行分を充電できたことになります。カタログなどで「最大150kW」とアナウンスされている急速充電性能の高さも確認することができました。
土山SAからさらに約220km。兵庫県北部、但馬地方の実家には午前2時ごろ、SOC20%、航続可能距離79kmの表示で到着しました。翌日は持参したノートPCで軽く仕事を片付けながら実家でのんびりするだけだったので、2021年に設置した出力3kWのEV用コンセント(関連記事)で約18時間たっぷり充電し、郷里での行動に備えました。
車載の充電ケーブルはまだ新品でした。見たところ、私のマイカーでもあるヒョンデのEVに付属しているのと同じケーブルです。注意したいのが、コントロールボックスのボタンで出力電流値を調整できるようになっていること。初期設定は「6A=1.2kW」(うろ覚えです)になっていて、朝まで充電しても「全然入ってないじゃん!」をやらかしたことがあります。今回はしっかりボタンを操作して「16A」にセット。食材を買い出しに出た夕方には満充電になっていました。
郷里のハチ高原へ駆け上って走りの気持ちよさを実感
13日は郷里で試乗。大学生時代にロッジでアルバイトしていたハチ高原へ、久しぶりに行ってみました。途中、別宮(べっく)の棚田などで撮影しつつ、標高差500mほどを駆け上るドライブでは、EVならではの気持ちよさを体感することができました。
PV5パッセンジャーは全グレード共通で最大トルク250Nmのモーターを搭載し、ロングレンジ グレードは最高出力120kW。箱型のミニバンらしい大柄な車体ながら、アクセルを踏んだ瞬間からスムーズに立ち上がるトルクのおかげで、上り坂でもストレスなく、かつ静かに速度を乗せていけます。路面が荒れた場所では「もう少し滑らかにショックをいなしてくれるといいな」という印象があったものの、急勾配のワインディングでも快適なドライブを楽しめました。このあたりはEVならではのメリットですね。
さらに、翌日の14日は高校剣道部のOB会ゴルフとBBQパーティ。BBQは山を挟んで隣町にある「あゆ公園」という施設のコテージに泊まりで楽しみました。このコテージの駐車区画にEV用コンセントがあるのを発見したのですが、残念ながら「電気を止めているので充電不可」とのこと。せっかく設置した充電設備が使えないのはなんとも残念です。日本のEV普及はこれからが本番なので「ぜひ改善してほしい」とお願いしておきました。
数日間の長距離試乗で感じたPV5の魅力や可能性
8月11日~15日まで、およそ4日間、東京=兵庫往復でじっくり試乗したPV5。実際の走りのなかで感じた魅力や可能性を紹介します。
ADAS使用時のステアリング保持がタッチセンサーで快適
肘掛けとの位置関係がよくて、軽くステアリングに手を添えているだけでOK。ほぼハンズフリー感覚で高速道路を巡航できました。
ちょっとした小物収納のスペースがいっぱい
ラゲッジ容量は通常時で最大1,330L、2列目シートを折り畳めば最大3,615Lまで拡大するなど、箱型ボディならではの積載力が魅力。車内には、アクセサリーを取り付けるための専用溝(Kia AddGearシステム)が用意されていて、今後、いろんなアクセサリーが登場する予定になっているとのことです。
インテリアの印象としては、必要十分な性能を備えたベースの箱を作って、とりあえず後席に3人掛けのシートを取り付けてみましたっていう感じ。フロアマットもなく、全体的に余白が多い印象がある室内空間。実際、もしこのPV5をマイカーにしたら、いろんなカスタマイズをやりたくなるだろうなと感じました。
気になったのは純正オーディオのサウンドがプアなこと
ここは改善したほうがいいかもと気になった点をいくつか挙げておくと、まず、純正オーディオのサウンドがプアなこと。私はそれほど音にこだわるタイプではないですが、車両本体価格で700万円超えのミニバンを購入するオーナーさんにとっては物足りないだろうと感じます。
あと、回生ブレーキを「オート」にしておくとワンペダルドライブの「i-Pedal」のような感じで楽ちんなドライブができるのですが、パドルスイッチで回生オートにしていても、車両を起動する度にリセットされてしまうのがちょっと面倒でした。また、同じヒョンデグループのKONAに乗っている私としては、回生オート時にパドルシフトで強度が調整できない(KONAはできます)ことに少し違和感がありました。
キャンピングカーのベースや商用のミニバンEVとして飛躍を期待
15日に走った復路では、大学時代の親友が数日前に入院しちゃった大阪(岸和田あたり)へお見舞いのため回り道。SOC80%くらいで郷里をスタートして、52%で大阪市街のパワーエックス充電スポットに到着。一緒にお見舞いに行くことになった友人との待ち合わせまでの時間調整を兼ねながら15分ほど、83%まで充電しました。
その後は、新東名の手前で渋滞している情報があったこともあり、伊勢湾岸道の湾岸長島PA(150kW器)でトイレ休憩しつつ、ブーストモード活用の15分だけ注ぎ足し充電。湾岸長島PAは150kW器が設置してあるのはありがたいのですが、大好物の「赤福」を売ってないのが玉にきずです。さらに、新東名・駿河湾沼津SA(150kW)で、お気に入りのうどん屋さんの「沼津盛り」を夕食にいただく間だけ充電し、50%以上の余力を残して自宅に帰着したのでした。
今回試乗したPV5くらいの航続距離性能と急速充電性能があれば、通常の休憩ついでに充電すれば長距離ドライブでもまったく問題はないことを改めて確認できました。一点だけスムーズな運用のコツとしては、最大出力150kWの急速充電器が設置されている場所を頭に入れておくと、臨機応変にドライブプランを組み立てやすくなります。
全体を通じて、電費はメーター表示で「5.7km/kWh」程度でした。マイカーKONAで同じ区間を走ると8km/kWh近くは出ると思うので、「やっぱりミニバンEVは電費が厳しめだなあ」という印象ではあったものの、バッテリー容量71.2kWhの「ロングレンジ」なら、きちんと充電計画をハンドリングしてさえいれば、家族でのお出かけでも航続距離で不安を感じることはないでしょう。
PV5への国のCEV補助金は26万円と厳しめですが、そもそも現時点で日本国内で購入できるミニバンタイプのEVはフォルクスワーゲン「ID.Buzz」くらいしかなく、キャンピングカーのベース車両などとしてのポテンシャルは抜群です。事業用に登録する場合は、環境優良車普及機構(LEVO)による商用車の電動化促進事業の補助金を活用できる場合があり、カーゴモデルの場合で最大196万円の補助が受けられるとのことなので、タクシーやラストワンマイルの配送用車両としての活躍も期待できます。
ハイレベルな「安心感」を求めたい「家族で楽しむレクリエーションビークル」といった使い方でなければ、バッテリー容量が小さい「スタンダード」でも実用性は十分だと思います。
個性的、かつ日本市場では希少なミニバンEVとして、EV普及を盛り上げてくれることを応援しています。ミニバン必須だけどEVならではの快適さを手に入れたいと望むファミリーや事業者の方は、なにはともあれまず一度、PV5に試乗してみることをオススメします。
PV5パッセンジャー主要スペック
| プラス スタンダード | プラス ロングレンジ | |
|---|---|---|
| 価格(税込) | 709万円 | 769万円 |
| バッテリー容量 | 51.5kWh | 71.2kWh |
| WLTC航続距離 | 377km | 521km |
| モーター最高出力 | 89kW | 120kW |
| 最大トルク | 250N・m | 250N・m |
| 急速充電最大出力 | 150kW | 150kW |
取材・文/寄本好則

















