ヒョンデ「インスター」に乗り換えて半年以上が過ぎた。インスターの前は日産サクラを3年ほど乗っていた。現在と同様に日常の足と仕事の両方で使っていたので、乗り換えの経緯は過去記事でレポートしているが、あらためて乗り換えのポイントや注意点、乗り換え後の状況を報告したい。インスターへの乗り換え組、または現在EV購入を検討中の読者の参考になれば幸いである。
インスターとサクラの諸元を比較
まず、インスターとサクラの基本的な諸元からみてみよう。
| 主要諸元 | インスター Voyage | サクラ G |
|---|---|---|
| サイズ | 3830×1610×1615 | 3395×1475×1655 |
| 車両重量 | 1360kg | 1090kg |
| 乗車定員 | 4人 | 4人 |
| 最高出力 | 85kW(115ps) | 47kW(64ps) |
| 最大トルク | 147Nm | 195Nm |
| バッテリー容量 | 49 kWh | 20kWh |
| 航続距離(WLTC) | 458km | 180km |
| 駆動方式 | FF | FF |
| タイヤ | 185/65R15 | 165/55R15 |
| 最小回転半径 | 5.3m | 4.8m |
| 荷室容量 | 280L | 107L |
| 価格 | 3,355,000円 | 2,940,300円 |
※筆者所有車両のデータ
本来、コンパクトとはいえ5ナンバーの登録車と軽自動車を同列に比較することにあまり意味はないが、乗り換え前後の車両比較ということであえて表にした。なお、表のデータは、ともに筆者が購入したモデルの数字である。また、サクラの価格は、筆者が購入した2022年の初代モデルのもので、2026年にマイナーチェンジしたサクラはもう少し高くなっている。
両者のスペック上の違いで目に付くのは、サクラの195Nmという大トルク、インスターの450km超えの航続距離だろう。航続距離は、バッテリーの容量差からくるものなので当然といえる。インスターはサクラの2.45倍ものバッテリーを搭載しており、航続距離の差はほぼその差(180×2.45=441)と一致する。サクラの195Nmというトルクは軽自動車の業界自主規制により出力が47kWに抑えられたことで、EVの特性を引き出すための設計とみなせる。
インスターは韓国製のためベース車は左ハンドルだが、日本など左側通行の国のために右ハンドル仕様が用意されている。とはいえ、輸入車にありがちなウインカーレバー、ワイパーレバーが逆配置ということはない。日本向けの車両では、IONIQ5などと同様に右側がウィンカーやライトスイッチであり、左側がワイパースイッチとなっている。
インスターのオートワイパーはかなり優秀で、常時AUTO設定のままで雨の誤検知はほとんどない。車速や降雨量に応じてワイパースピードも自動で制御されるので、運転中にワイパーを操作する必要がなくなった。
ドライブセレクター(D・N・R・P)は、IONIQ5と同じタイプで、ステアリングコラム右側にひねる形のスイッチレバーが設置されている。サクラは左側のセンターコンソールに設置されていたので、乗り換え当初は若干戸惑ったがすぐに慣れた。が、個人的には左手側のスイッチやレバーの方が好みだ。
ADASは制御のクセを掴むことが肝要
ADAS機能は、どちらもACC(アダプティブクルーズコントロール)、ステアリングアシスト、LKA(レーンキープ支援機能)、自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)、誤発進防止などが備わっている。ADAS機能、ADAS+アルファの機能は、すでに車種、モデルを問わずどのメーカーもほぼ横並びになっている印象だ。
平均的な国産車のADAS機能と比較しても、インスターの制御に目立ったクセは感じられない。比較ポイントはもっぱらドライバーの好みの制御やアシストをしてくれるかどうかだ。なお、サクラのACC関連のダイヤルやボタンはハンドル右手に集中している。インスターは逆なので、指が自然に動くまでに少し慣れが必要だった。
ACCによる前車追従は、通常一定時間(数秒ほど)経過するとリセットされ、発進にはアクセル操作かRESUMEボタン操作が必要になる。インスターは、高速道路上であれば、ACCによる停車時間が長くても前が動き出せば自動発進してくれる。サクラは一般道、高速道路ともに停止後しばらくすると自動発進モードがリセットされてしまう。この点はインスターにアドバンテージがあると感じている。
交差点の右左折時、コーナリング中、サクラは前車を見失った時点でACCが解除されるが、インスターは前方注意のワーニングを出しながら、ACCの制御は維持される。サクラでは右左折終了時にACCのRESUME操作が必要となる。インスターはRESUME操作の必要はないが、設定速度によっては右左折中でも加速しようとするので注意が必要だ。もちろん、どちらもブレーキを軽く踏むだけでACCは強制解除される。
自動ブレーキはどちらも同じように機能してくれる。本当の事故回避のような状況を詳しく確認できたわけではないが、ちょっとした踏み遅れ、急な割り込みなどでのワーニングや介入は、セーフティ機能として安心感がある。ただし、前方かなり前の信号停止や渋滞が確認できても、ミリ波レーダーが停止物体を検知するまで減速動作に入らない傾向がある。サクラにこの傾向が強い。インスターも同様だが、ACC作動中に気を抜けないポイントではある。
路車間通信で信号機から情報をもらわなくても(もらえればより安全だが)、カメラ画像で信号機や渋滞を認識させれば、前方が空いていてもその先に信号や停止車両がある場合の減速制御や速度調整はいかようにもできるはずだ。
BluelinkとNissanConnect/コネクテッドサービス比較
コネクテッドサービスは、インスターがヒョンデの「Bluelink」、サクラは「NissanConnect」というサービスが利用できる。
インスターの「Bluelink」では、スマホアプリからの開錠・施錠、窓の開閉、車両位置確認、エアコンやシートヒーターの制御・設定、充電予約や充電制御、ナビ設定などがひととおりできる。テスラほどスマホ連携、物理キーレスまでは対応していないが、ドアロックや窓の状態確認、遠隔制御、エアコンのリモート制御ができるのはかなり重宝している。
通信状況によって時間がかかることもあるが、アラウンドビューモニターの画像をアプリから遠隔で確認することも可能。テスラのセントリーモードのような監視機能はないが、自宅や出先から車の周辺をチェックできる。
ただ、アプリから自車位置を地図で確認することができ、目的地検索もできるが、アプリからルートガイドの設定やプランニングはできない。目的地のPOI(Point of Interest)情報を車両のナビに送信できるだけだ。ルートガイドの設定などは車両側で行う必要がある。
アプリからのナビ設定は、サクラの「NissanConnect」のほうが一枚上手だった。NissanConnectアプリは、アプリから目的地検索や中継地設定は、車両側のナビ本体とほぼ同じことが可能だった。ルートガイドは自動的に充電ポイントも組み込んでくれる。
充電スケジュールを含んだナビのルートガイドは、バッテリー容量の小さいサクラでは非常にありがたい機能で、むしろ必須だった。しかし、バッテリーが半分残っていれば200km以上はなにも考えず走行できるインスターでは、経路充電情報の優先度はそれほど高くないという背景もある。
費用面では、NissanConnectは初回契約の1年間は無料だが2年目から有料となるが、筆者は迷わず継続契約をした。これに対し、Bluelinkは当面の間オーナーに無料で提供される。無料はありがたいので、これくらいの機能差がでるのは納得の範囲内といえる。しかし、個人的には有償のプレミアムサービスを設定し、ナビ機能やアプリ連携の機能をもう少し強化してほしいと思っている。
インスターはV2Lアダプターと車内コンセントを標準装備
ユーティリティについて特筆したいのは、V2L機能だ。インスターは外部の充電ポートからAC100V(1500W)のアウトレットをとれるアダプターが付属する。さらに、車内には100V1500WのACアウトレットが標準装備されている。車内でパソコンなどを使用する際にとても便利だ。
サクラはV2Hに対応しており、駆動用バッテリーから電力を取り出すことは可能であるものの、残念ながらV2Lアダプターや室内アクセサリーコンセントの設定がない。車両から電気を取り出すためには、高価なポータブルV2Hユニット(パワームーバーなど)や、純正アクセサリーとしても用意されているDC/ACコンバーター(シガーソケットからの12V電源を変換)を利用する必要がある。
さすが国産〜収納ではサクラが優位
カップホルダーや収納の使い勝手はどうだろうか。インスターは前席シートの間にカップホルダーが2つある。サクラはセンターコンソールに引き出し式のカップホルダーと運転席右のベンチレーターの2か所。さらにサクラは助手席のドアポケットにペットボトルを入れられるようになっていた。
インスターのセンターコンソールには、ポケットが2段ついている。上段はスマホトレイとして設計され、ラウンジやインスタークロスなど上位モデルになるとワイヤレス充電(Qi)対応となる。ドアポケットは4つのドアすべてにある。グローブボックスは車検証や取扱説明書を入れても余裕がある。
サクラはオプションだが前席シート中央下と、助手席下にアンダートレイの設定がある。筆者は助手席のアンダートレイをつけてもらい、かなり重宝していた。シートバック背面(後席側)に大きなポケットもあり、厚みのない書類やシート類などをしまっていた。
小物収納などはサクラのほうが優秀である。軽自動車ということでサイズ的な制約はあるものの、国産車らしい配慮が行き届いた位置、個数が確保されている。いちばんうれしかったのは、車検証などを収納できる助手席ドアのポケットだ。一般的なドアポケットとは別に蓋ができるようになっており、普段使わない車検証でグローブボックスが占拠されてしまうことがない。
インスターのオプションアクセサリーでは、助手席背面のテーブルをつけてもらった。後席にカップホルダーがなかったのと、ACアウトレットを活用するため電気ポットを活用するのにテーブルがほしいと思ったからだ(IONIQ 5にはかっこいいテーブルセットがあるのだが)。なお、インスターの助手席は、前に倒すと平らになって、テーブル代わりにもできる。
さらに、インスターの後席はこのサイズでは珍しく座面がスライドする。インスターの後席は十分に広いのだが、このおかげでシートバックテーブルを広げて電気ポットなど置いても、後席でゆったりお茶が飲める。
EVメンテナンスに憂いなし
インスターは購入してからまだ半年ほどということもあり、今のところ整備工場のお世話になるような車両トラブルはない。そのため、メンテナンスについて正しい評価はできないのかもしれないが、筆者のEV使用歴、所有歴の中で、EVの信頼性が低い、壊れやすいという認識はない。
2026年に入ったところでメジャーなOTAが1回あった。純正ナビの目的地検索がGoogleマップ連動となり、検索がかなり使いやすくなった。というよりOTA以前は正直便利とは言い難いレベルで、もっぱらAndroid Autoのナビ(Googleマップ)を使っていた。OTA後は音声入力でほとんどの場所がヒットするようになり、現在は、純正ナビもよく利用している。
EVは日常的なメンテナンス項目が少ない。故障や修理となれば部品代が高くなる傾向があるが、ランニングコストとして交換や補充が必要なのは、ワイパーブレード、エアコンのフィルター、ウォッシャー液、タイヤくらいだろうか。どれも頻繁に交換するものではなく、年単位でのチェック項目だ。インスターもCXC(Hyundai Customer Experience Center)や指定提携工場で定期点検、車検を受けていれば運用に困ることはない。
以下に本稿でチェックした機能を表にまとめた。結果は、あくまで筆者の評価ポイントを反映した参考資料である。実際の運転で評価しきれていない機能やオプションも存在することに注意してほしい。
| 機能・装備 | ヒョンデ インスター | 日産 サクラ |
|---|---|---|
| バッテリー容量 / 航続距離 | 49kWh / 約450km | 20kWh / 約180km |
| 高速道路での停車後再発進 | 〇 (前車に追従して自動発進) |
△ (ボタンかアクセル操作必要) |
| 右左折時のACC維持 | 〇 (ワーニングは出るが維持) |
△ (見失うと解除、要操作) |
| アプリからのナビ遠隔設定 | × (目的地POI送信のみ) |
〇 (充電ポイント含め完結) |
| コネクテッド利用料 | 当面の間無料 | 2年目から有料 |
| V2L(外部・車内給電) | 〇 (アダプターなど標準装備) |
× (外部機器が必要) |
| 小物入れ・シート下収納 | △ (標準はシンプル) |
〇 (国産らしい配慮) |
※筆者調べ
文/中尾真二






