トヨタ初の量産EV『bZ4X』不具合でアメリカでは買い戻しも〜日本ではどうなるのか?

トヨタ初の量産電気自動車である『bZ4X』。発売早々の6月に発覚したハブボルトの不具合で販売が中止されている中、アメリカで「買い戻し」措置に対応するという報道がありました。はたして、何が起きていて、日本ではどうなるのか。トヨタ自動車広報部に質問しました。

発売早々にハブボルトの不具合が発覚

満を持してトヨタが発売したSUVの電気自動車『bZ4X』ですが、発売早々、アメリカのユーザーからの報告で「急旋回や急制動の繰返しなど」によってボルトが緩み、最悪の場合タイヤが脱落するおそれがあるという不具合が発覚しました。すでにアメリカと日本で発売されていましたが、トヨタでは販売中止とともに、車両の使用を控えるように情報発信。6月23日には日本でも国土交通省にリコールを届け出たことが発表されています。

リコールからすでに2カ月近くが経過。まだ原因や対策についての明確な情報が得られない中、アメリカの電気自動車ウェブメディアである『electrek(エレクトレック)』が、8月3日の記事で「トヨタ bZ4Xのリコール対策は難航していてユーザーに買い戻しが提案されている」ことを、北米トヨタからユーザーへのオファー文面付きで報じました。

記事によると、アメリカでbZ4Xを購入したオーナには、次のような対応策が提案されています。

**●修理が可能になるまで無料で車両を保管して代車を提供する。

●代車で使用した燃料費の払い戻し。

●購入価格に対して5000ドルの値引き。

●2024年12月31日までEVgo(北米の公共充電ネットワーク)ステーションでの無料充電を提供。

●リコールが原因で車両を運転できなかった期間に基づいて新車保証期間を延長。**

そして、こうした対応策を希望しない場合は、●トヨタがbZ4Xを「買い戻し」する ことを提案しているのです。

日本の屋台骨を支えるトヨタが、初めての量産&市販電気自動車として繰り出した bZ4X が、文字通り足下を掬われた今回のリコール問題。はたして、原因究明などの進捗はどうなのか。日本でも買い戻しなどの対応が取られるのか。いくつかの疑問点について、トヨタ自動車広報部に質問してみました。

日本では一般ユーザーへの納車前で影響は限定的

お盆休み期間だったにも関わらず、広報のご担当者から翌日にはメールと電話で回答をいただきました。

大きな結論としては、ハブボルトが緩む不具合の原因究明や対策についてはまだ「究明、調査を実施中」ということで、詳細は不明。今後、どうなるのかについてもまだ「わからない」ということになります。

以下、EVsmartブログ編集部が送った質問についての回答をご紹介します。なお、トヨタからの回答については、メール文面と電話での説明をまとめた内容です。

●不具合の原因究明や対応の状況は?

依然として原因の究明、調査を継続している段階で、まだ明確な原因が判明せず、従って対応もできない現状です。時間が長くかかり、お客様に大変ご迷惑をおかけしており、申し訳ございません。

なお、リコールの状況については下記、トヨタ公式サイトでもお知らせしています。

(編集部注/スバル ソルテラ のリコール情報も合わせてリンクを貼っておきます)

【関連情報】

bZ4Xのリコール

ソルテラのリコールについて

●日本国内の一般購入者に対して買い戻しを行う予定は?

アメリカでバイバック(買い戻し)が実施されるのは、購入したもののリコールによる修理などで一定期間車両を利用できない場合に買い戻すシステムが、州によって法律で定められていることに応じた措置となります。

日本で国土交通省に届け出た対象車の台数は112台ですが、ディーラーなどの展示、試乗用の車両であり、一般のお客様には納車前の状況でした。

サブスクのKINTOを含む商談を進めていたご契約については、個別にお客様とご相談させていただいているところです。

●bZ4Xと同じプラットフォームのレクサスRZ発売計画への影響は?

ご指摘の通り、レクサスRZはbZ4Xと共通したプラットフォームなどを採用しています。追って、正確な情報を発信いたしますので、現状での詳細な説明はご容赦ください。

トヨタの電気自動車戦略全体が一時停止か?

正直な印象として、パワートレインやバッテリーの難解な瑕疵ではなく、どちらかというとシンプルな「ハブボルト」というパーツで生じた問題だったので、もっと迅速に解決されるだろうと思っていました。でも、2カ月ほどの長期間にわたって工場のラインを止めざるを得ない、深刻なトラブルになっているのが現実です。

ハブボルトの不具合は、最悪のケースではタイヤが脱落する懸念がある重大なトラブルであり、bZ4Xはもとより、レクサスRZも明確な原因究明と対応策が決まらない限り、先には進めない事態と考えていいでしょう。bZ4Xでようやくスタートを切ったトヨタの電気自動車戦略は、思わぬ障壁によって一時停止を余儀なくされているのです。

bZシリーズの次の車種となるセダンは、中国のBYDと共同開発を進めていることが伝えられています。今のところ、仮称「bZセダン」が中国専用車種となるのか、日本にも導入されるのかはわかりません。もし日本にも導入されるとして、トヨタオリジナルの電気自動車より先に、BYDが作ったトヨタの電気自動車が日本の街を走り始める光景を見ることになるのは、ちょっと複雑な気分ではあります。

かねて「ハイブリッド車で電動化技術を磨いてきたトヨタが電気自動車を作るのは容易」といった論を見聞きすることが多かったものの、今回の事態はトヨタといえども新型電気自動車の開発は簡単なことではないという現実を突きつけられたと評することができます。パワートレインなど基幹パーツのトラブルではないといった反論を思い抱く方がいるかも知れないですが、仮にリコールの事態がなかったとしても、新型EVとしてbZ4Xが成功する魅力を備えていたか、客観的に考えてかなり難しいチャレンジだったのではないか、というのが個人的な印象です。

先日、メルセデス・ベンツEQBで長距離試乗を行って、日本導入3車種目となる「ベンツの電気自動車」の着実な進化、そして「さすがメルセデス・ベンツの電気自動車」と実感できる乗り心地や性能、パッケージングに感銘を受けました。

はたして、「さすがトヨタの電気自動車」と日本でも世界でも称賛されるのはどんなEVなのか。また、日本のEV普及に向けて、トヨタが果たすべき役割は何なのか。って、これはつまり、とくに高速道路SAPAの急速充電インフラ拡充にもっとトヨタが関与してほしいという願いを込めての「役割」ですが……。

一時停止を強いられている今回の事態をチャンスに転じるためにも、今一度、トヨタの電気自動車戦略を練り直し、世界のEVメーカーがあっと驚くような大逆転劇を見せてほしいと期待しています。

(取材・文/寄本 好則)