どうなるトヨタのEVシフト/レクサスLF-ZC開発中止からのEV専用次世代プラットフォームへの期待とは

トヨタが次世代EV「レクサスLF-ZC」の開発を中止することが報道されました。はたしてトヨタはEVシフトを減速させようとしているのか。次世代EVセダンの開発がなぜ中止されたのかを考察します。

EV専用プラットフォームの開発が急務

そもそもトヨタは現在、bZ4Xを皮切りにe-TNGAプラットフォームを活用してグローバルでEVを展開中です。ただし、e-TNGAプラットフォームは、ガソリン車で採用されるTNGAを流用して設計されていることから、EV性能の最適化、そして生産コストを低減することができないという問題点が挙げられます。

たとえば中国市場を見てみると、e-TNGAプラットフォームが採用されているのはbZ4Xのみに留まっています(※bZ3も車両の一部にe-TNGAを採用しているもののバッテリーやモーターはBYD製)。その一方でGAC(広州汽車集団)のプラットフォームを活用して開発しているbZ3Xは、bZ4Xよりも手頃な値段設定を実現しており、中国のプラットフォームをベースに、それと相性の良い中国国内のサプライチェーンを活用した方が、EVを明らかに安く製造できることがすでに判明しているのです。

それなら中国国外でもGACのプラットフォームを流用すればいいのではと思われがちですが、そもそも中国のサプライチェーンの活用が前提であり、合弁体制下だからこそ流用できるため国外転用は現実的ではありません。また中国勢は独自に欧州やグローバルサウスに進出しているため、競争力の高い中華EVと中国以外で戦うためにも、トヨタ独自のEV専用プラットフォームの開発が急務です。

そしてトヨタは次世代EVプラットフォームを開発中であることを数年前に発表済みです。「レクサスLF-ZC」はその次世代EVプラットフォームをベースに開発される初のEVになるはずでした。ギガキャストや次世代バッテリーを組み合わせることでEV性能の全面的なアップグレードを実現しつつ、ギガキャストをはじめとする生産方法への革新的なテクノロジー導入によって、生産コストの大幅低減も両立すると説明していました。

さらに独自開発車載OSであるArene OSを組み合わせることで、AI自動運転システムやスマートコックピットシステムをハード部分と深く統合。AIファーストなEV開発で先行する中国勢に追随しようとしていたという背景が存在します。

後戻りできるタイミングでの開発中止発表

ところが今回、その「レクサスLF-ZC」の開発を中止すると中嶋裕樹副社長がメディアインタビューで発表しました。当初LF-ZCはミッドサイズセダン「IS」の次世代モデルとなる想定で開発が進んでいたようですが、金型発注や主要部材の発注の前にキャンセルされた模様です。

思えばホンダが2026年3月期決算において大きな赤字を計上した主な要因が、EV専用シリーズ「0シリーズ」の開発資産の減損処理でした。すでに金型や主要部材を発注した後であり、そのサプライヤーに対する補償対応などが膨らんだ格好です。トヨタとしては後戻りできる最終段階でLF-ZCベースの次世代EVセダンの開発を中止したのです。

ただし、今回の開発中止の一件について注意するべきは、開発を中止するのはあくまでもLF-ZCをベースにしたEVセダンという一つのモデルです。これまで開発を進めていた次世代EVプラットフォームの開発を終了するわけではなく、この次世代プラットフォームをベースに別のモデルの開発は継続し、遅かれ早かれ発売されることに変更はありません。

私が聞いたところによると、もともとLF-ZCの生産モデルは2026年末から生産スタートすると言われていましたが、昨年になってその生産開始時期を2027年中旬以降に遅らせていました。よって次世代EVプラットフォームを採用するトヨタ(レクサスブランドを含む)初のEVは、早くても2027年後半以降の投入になるのではないかと推測できます。

中国での激烈な競争を闘うために

今回のLF-ZCの開発中止について、主要マーケットと見込んでいたアメリカ市場のEV減速や、世界的なセダンの需要減速など幾つかの要因が指摘されているものの、個人的に推測しているのが中国高級セダン市場の競争激化です。そもそもレクサスはアメリカと中国が二大マーケット。EV減速傾向が長引くと推測できるアメリカで狙い通りの販売を期待できないなら、中国で販売台数を取り戻すしかありません。

ところが中国市場におけるレクサスは「ES一本足打法」と呼べるほどにESの販売に依存しており、ISやLSなどのセダンは全くと言っていいほど売れていません。つまり新型ISとなると言われていたLF-ZCの市販モデルは、そもそも中国で挑戦的な戦いとなるはずだったのです。

その一方で、この中国プレミアムセダンセグメントは競争環境が極めて厳しいという点を考える必要があります。かねてより私が感じていたLF-ZCの市販モデルにおける最大の懸念点が「スポーツセダンなのか、それともエグゼクティブセダンなのか」という商品定義です。エグゼクティブセダンは新型ESやLSが担うはずなので、次期型ISとなるはずだったLF-ZCに求められるのはスポーツセダンだったはずです。

しかしながら、このスポーツセダンセグメントは競争環境が激化しています。中でもドイツ御三家のセダンのシェアを大きく削っているのがシャオミSU7の存在です。SU7はBMW5シリーズ、アウディA6L、メルセデス・ベンツEクラスという通称「56E」、あるいは「34C(BMW 3、アウディA4、ベンツC)」のシェアを大きく奪っています。

さらに、次世代EV専用プラットフォームを採用したとしても、EV性能の完成度の高さで中国勢に追いつかれ、すでに追い越されているのではないかという点も、車両性能が重要視されるスポーツセダンで致命的だったと言わざるを得ません。上の表は、LF-ZCの市販モデルの車両性能を、これまでのトヨタの発表内容から類推したものです。

スポーツセダンEVの性能競争が激化

LF-ZCはパナソニックとの合弁会社であるプライムプラネットエナジー&ソリューションズ(PPES)製の三元系パフォーマンスバッテリーを採用することで、航続距離はCLTC基準で1000kmを実現すると発表。Cd値0.2を下回るなどの空力性能の改善を始め、効率性を引き上げて航続距離4桁を目指していました。またトヨタ初となる800Vシステムを採用して、SOC10%から80%までの急速充電時間も20分以下という目標を打ち出していました。

ところが、2026年現時点ですでに発売されているスポーツセダンのベンチマークとなる「Denza Z9GT」(BYD)は、以下のような性能を実現しています。

●CLTC航続距離:1000km以上
●急速充電時間(SOC10-80%):約6分
●最小回転半径:4.62m(後輪操舵機能)
●サスペンションシステム:電子制御ダンパー付きデュアルチャンバーエアサスペンション(DiSus-A)
●最高出力/最大トルク/0-100km/h加速/最高速度:370kW/500Nm/5.8秒/時速240km
●自動運転システム:シティNOAと高度駐車機能(DiPilot 300)
●値段設定:29.98万元(約700万円)

さらに最上級パフォーマンスグレードになると、トライモーターAWDによって「最高出力/最大トルク/0-100km/h加速/最高速度:850kW/1210Nm/2.7秒/時速270km」と、EV性能と動力性能を高い次元で両立させてきています。

いずれにしても、もしレクサスがLF-ZCベースのスポーツセダンを中国に投入する場合、このBYDの高性能スポーツセダンと競合するわけで、残念ながらレクサスとしては競争が激化している高級スポーツセダンセグメントを戦う余力は残されていないと判断したのではないかと推測できるのです。

フルサイズSUVセグメントへの注力

さらに、レクサスが注力しなければならないと考えているのがフルサイズSUVセグメントであると思われます。現在高級セグメントはさらなる大型化が進んでいます。中でも大型SUVとして各社がBEVやPHEVをラインナップしています。

従来の大型SUVは燃費性能が低く、ランニングコストが割高になるため需要が低かったものの、新エネルギー車の技術革新によって燃費の良い大型SUVを開発できるようになり、車内の快適性のさらなる向上も相まって、大型SUVの需要が急増しているのです。

さらに昨年まではPHEVが主流だったものの、NIO ES8/ES9やBYD Da Tang(大唐)、Xpeng GXなどBEVのラインナップが急拡大中。どれも優れた販売台数を実現しており、PHEVの需要が残り続けると思われていた大型SUVセグメントも、今後急速にBEVシフトが進むと見られています。

実はレクサスはLF-ZLというコンセプトモデルを発表済みです。全長5300mm、全幅2020mm、全高1700mm、ホイールベース3350mmと、直近で発表されたレクサスTZよりもさらに一回り以上大きなフルサイズSUVです。レクサスは現在中国・上海にEV専用工場を建設中で、2027年中の稼働開始を予定しています。

もしかすると次世代EVプラットフォームを採用する初のEVは、この上海のEV専用工場で生産される、LF-ZLをベースにした大型SUVなのかもしれません。大型SUVはアメリカと中国の両市場で需要が高いため、まとまった販売台数にも期待できます。

実はトヨタは2024年時点で、次世代EVプラットフォームをベースとする新型EVのラインナップ展開を公開しています。ラージセダンに該当するLF-ZCの市販モデルは幻となってしまいましたが、LF-ZLベースの市販モデルとなり得るラージSUVは年産60万台と強気の販売目標からも、数年以内には必ず販売してくることでしょう。

中国勢の大型電動SUVが台頭する中において、後発となるレクサスの大型電動SUVがどれほどの完成度を実現してくるのか。2027年から2028年に投入される見込みの次世代EVの最新動向からは俄然目が離せません。

日本人としてはアルファードEVの登場にも期待

また、日本人として期待しているのがラージミニバンです。年産12万台としているので、ほぼ間違いなくLMではなくアルファードのEVバージョンであると想定できます。実はミニバンも中国市場で急速にEVシフトが進んでおり、中でもファーウェイがLuxeed V9やMaextro V800などの高級ミニバンEVを矢継ぎ早に投入して注目を集めています。これまで高級ミニバンの絶対王者だったアルファードは急速に販売台数を落としており、中国市場で販売台数を復活させるためにも、アルファードの電動化は必須です。

高級ミニバンはファミリーカーとしてだけでなくショーファーカーとしての需要も強いため、その需要の大きな日本市場でもアルファードEVは期待されるモデルになるでしょう。

日本ではEV減速報道が目に付きますが、世界では着実にEVシフトが進んでいます。はたしてトヨタの次世代EVプラットフォームを採用するEVがいつお披露目されるのか。LF-ZCの開発で培った技術力で、EV性能というハード面だけでなく、AI駆動のコックピットシステムや自動運転システムなどソフトを含めた総合力で、特にAIファーストな車づくりで先行する中国勢にどれほど迫ることができているのか。なかでも競争が激化する高級SUVやミニバンセグメントに魅力的なEVを投入することができるのか。トヨタの動きに注目していきたいと思います。

文/高橋優(EVネイティブ ※YouTubeチャンネル

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そうじゃないと思いますよ。

と言うより、そうでは有りません。

4~5年前、ホンダや日産は売り上げ全体の1/3以上を中国に依存していました。

(ドイツ勢はもっと酷い中国依存でしたがね。それがVWやメルセデスを今現実になっている窮地に追い込んだわけです)

殆どの自称ジャーナリストや専門家は報じていない(知らない。ないしは中国を悪く言えない立場?)ですが、その頃から中国経済は停滞をしだし、不動産バブル崩壊、そしてサプライチェーンにおいてのチャイナリスクが現実として現れています。

そのときのトヨタは、東南アジア全体でトヨタ全体の約18%の利益です。

当然中国はもっと少ない。

トヨタの収益体質は、中国が無くとも黒字として成立し(ホンダや日産は即赤字)、中国無しでは成立しないホンダや日産とは、全く異なるものです。

要は中国で売る物は中国で造ればいい、その利益はトヨタの基本収益に対して、ボーナスのようなもので、無くてもトヨタは成立するだけの収益基盤が有るわけです。

ならば、中国で売る物は、中国のコスト基準で、中国で売ることができれば良いわけです。

それがbZ3ですよ。

日本やグローバルで売るクルマは別なんです。

もちろんグローバル販売するクルマを中国にも出しますが(ES等)、その反対は無いわけです。

端的に中国のEVのコストでグローバルモデルを造るわけではないと言うことです。

その違いを理解できていないと、なんとなくそれらしい理屈を構築してしまいがちですが、トヨタが今回生産を中止したものと、中国で生産し中国で売るEVは、源流が全く異なるもので、ほぼ関連性は無いのです。

故に、この記事には懐疑的としか見えないのが正直なところです。

トヨタが日本円にして200万円プラスα程度のクルマを、トヨタの看板(主力車種)としてグローバルに展開するなど、あり得ると思いますか?

いや、あり得ないんですよ。

トヨタはトヨタの納得する良質で上質なクルマを、グローバルに展開するわけです。

それを見誤ると、トヨタが終わってしまいますから。

中国は中国と言う独特な市場。

故にESのエクスリアも中国だけの装備(マルチモニター)が存在し、且つ単価の安いクルマは中国で造り中国で売るわけです。

全く別の製品なのです。

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私も今のタイミングで、この判断は良かったんじゃないかなと思います。

この後の展望はどうなるのか、気になるところですが、私的には、これからの世代に向けたものになるのか、これまでの世代に向けたままのかが気になるところです。

世の中「正解になるための記事」やら「不正解になるための記事」が多いなか、個性的ではあるものの、これからも。、フラットでちょっぴり「企業」ではなく「EV普及」のための忖度があると感じる動画や記事を楽しみにしています。

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