EV充電へのビジョン【05】適切に「使いやすいEV用充電器」を増やしたい

「EV充電エネチェンジ」で普通充電設備拡充に取り組むENECHANGE株式会社CEOの城口洋平氏が、EV充電サービスを展開する事業者のトップ、そしてEVユーザーのひとりとして充電サービスのビジョンを語る連載企画。今回は設置された普通充電器の稼働率の大切さに関する提言です。

エネチェンジでは「可用率」の維持を徹底

「EV充電エネチェンジ」をはじめ、今、急ピッチで設置が進んでいるEV用充電サービスは、例外なく数年後のEV普及拡大を見据えたビジネスモデルを想定しています。おもに国の充電インフラ補助金を活用することで先行投資となる設置コストを抑えつつ、EVが増えて充電器の稼働率が上がることで適切な充電料金の収入を得られるようになってこそ、ビジネスとして自立して成長していくことができます。

そのためには、設置した充電器の「充電時間を増やすための取り組み」が重要であり、充電サービス事業者の責任であるというのは、この連載の前回記事でも指摘した通りです。

設置した充電器の稼働率向上(充電時間増加)のために不可欠な取り組みとして、私が社内の担当者に徹底して指示しているのが、「可用率を99%以上、できるだけ100%に維持すること」です。

「可用率」というのは、充電サービスの健全性を示すために私が好んで用いるようになった造語といっていいかも知れません。もともと「可用性」はITシステム関連の用語で、ひとつのシステムが停止することなく稼働し続ける能力(availability)を意味しています。「稼働率」は実際に充電器が利用された時間の割合であるのに対して、「可用率」が示すのは設置した充電器が利用可能な状態に保たれている時間の割合ということです。

自社でコーンを用意して設置を依頼

可用率の低下、つまり「充電器が使えない状態(先着車が充電中という場合以外に)」になる要因は、ケーブル破損などの故障やシステムの不具合、充電区画にエンジン車が駐車しているケースなどさまざまです。

エネチェンジでは設置する普通充電器をすべてEV用充電器の国際通信規格であるOCPP(Open Charge Point Protocol)に対応した充電器として、遠隔監視と制御を行い、故障があれば迅速に対応するようにして、充電器そのものの可用率は1日24時間に対して99.9%以上を維持することができています。

一方、現実問題として悩ましいのがEV用充電区画にエンジン車が駐車してしまう課題です。これは、通信による遠隔監視でも把握したり制御することはできません。「EV充電エネチェンジ」のアプリは、充電スポットのクチコミ投稿ができるので、「エンジン車が駐車していて充電できなかった」といったコメントが毎日のように寄せられています。

EV用充電区画にエンジン車(充電できない自動車)が駐車してしまうのを防ぐには、充電用の駐車区画を「EV優先車室」として、それを明確に示すコーンを設置するのが有効です。エネチェンジでは補助金を活用して充電器を設置する施設に、充電器設置区画がEV優先であることを示すカラーコーンを自社で用意して配布し、きちんと置いていただけるようお願いしています。

現実には、まだEV普及率が低い中、車室が減るのを懸念してエンジン車の駐車を容認する施設があることも否めません。でも、貴重な補助金を使って充電器を設置するのですから、EVユーザーが使いやすい充電器とするのは大切なこと。設置施設のEV充電インフラに対する理解度や協力度をスクリーニングする要素にもなるのではないかと考えています。

設置された充電器の実際の稼働状況

このグラフは、先日のメディア向けラウンドテーブルでもお示しした、事業者別の普通充電器1カ月1口あたりの充電時間を推計したものです。充電時間の計測は、任意の日数(7時〜21時台)を対象に、EV充電各社の公式アプリで満空状況を毎時チェックして、1カ月当たりの想定利用時間(参考値)を算出したものです。あくまでもランダムサンプリングによる想定値のため実数とは異なることはご承知おきください。

赤で示したのがエネチェンジの充電器。以下、左から順に、A・B・Cの3社です。A社は充電区画であることを明示しているので、まずまずの稼働率となっていますが、他の2社はほとんど充電されていないことがわかります。

エネチェンジでは、そもそも設置を検討する段階でEVユーザーが使いたいであろうスポットを優先して設置するようにしています。さらに、可用率を重視した取り組みによって、高い稼働率となっています。

ところが、ほとんど利用されていない充電器を設置している事業者は、可用率や稼働率を向上させるという「責務」を怠っているのであろうと推察するしかありません。

(最近、帰国の度に各社の充電設備を視察していますが、推察の通り、他社の充電器設置や管理が適切な状態ではないことを実感しています)

設置時の手篤い補助金がある当面は、充電器が利用されて得られる料金収入を度外視しても、数多くの充電器を設置する工事費や充電設備の売上によって、事業を回していくことは可能でしょう。でも、あまり使われない充電器を数多く抱えてしまう数年後、収益が不足して適切な維持管理が難しくなるのは自明です。

私がしばしば「(充電サービス事業者の)モラルハザード」と指摘しているのは、まさにこうした、EVと充電インフラ普及へのビジョンを持たず、補助金ビジネスで目先の利益を得ようとするやり方です。

自社で設置した充電器の稼働状況を監視したり、コーンを用意してEV優先車室とするのを促すといったことは、EVユーザーのみなさんから見れば「当然のこと」だと思います。ところが、実際にはそうした責務を果たしているとは考えづらい充電サービス事業者が存在しているのも現実です。

エネチェンジでは、令和6年度の充電インフラ補助金の運用について、「追加設置の稼働率設定=一定の稼働率が伴わない施設への追加設置における補助金利用の禁止」を提言しています。充電器が使われていない施設に、補助金を使って増設するのは明らかに無駄だからです。逆に、稼働率が高い、すなわちEVユーザーの充電ニーズが高く使いやすい場所に充電器を増やすことにも繋がるでしょう。

エネチェンジのEV充電サービスも、もちろん現状では補助金なしに成立しません。だからこそ、貴重な補助金が適切なEV充電インフラ拡充に活用されるよう、経済産業省など関係各所への提言を積極的に行っています。

補助金を浪費して「使われない」充電設備を増やすのは日本のEVユーザーにとって、また納税者全体にとって不幸なことだと思います。エネチェンジでは、EVユーザーのみなさんの声を丁寧に伺いながら、より稼働率の高い、使いやすい充電インフラの拡充を目指していきます。

連載/EV充電へのビジョン

【01】2030年の日本に必要なEV充電インフラの口数と出力は?(2023年10月30日)

【02】急速充電器は「必要な場所」を優先して設置を進めるべき(2023年11月14日)

【03】普通充電設備のリプレイスを合理的に進めるために(2023年12月7日)

【04】充電サービス事業者が果たすべき責任(2024年2月13日)

提言者/城口 洋平(ENECHANGE株式会社代表取締役CEO)