上質にして快適な「正しく進化したEV」〜フォルクスワーゲン『ID.4』試乗レポート Part.2

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電気自動車専用アーキテクチャー「MEB」を採用したフォルクスワーゲンの世界戦略電気自動車『ID.4』の日本デビューに先駆けてメディア向け試乗会に参加。端的な印象と、EVsmartブログとして気になるポイントを紹介します。

走りやインテリアの質感などに感じる「さすがVW」

すでに2021年から欧州などでは発売されて、電気自動車としてベストセラーモデルとなっているフォルクスワーゲン『ID.4』。2022年11月22日、正式に日本導入が発表されました。

ID.4は電気自動車専用に開発された「MEB=Modular electric drive matrix」を採用しています。今まで、日本のフォルクスワーゲンでは『e-Golf』という完全電気自動車を発売していましたが、MEBを採用し、最初から電気自動車として開発されたモデルとしては、初めて日本に導入される「VWの電気自動車」となります。

11月初旬、EVsmartブログ編集部は自動車評論家の御堀直嗣さんと一緒にメディア向け試乗会に参加しました。1時間半ほどの短時間試乗で、御堀さんに長く運転していただいたので細かなインプレッションは語れませんが、第一印象としては「すごくいい!」でした。

足回りや加速感など、走りの印象は上質にして必要十分。インテリアなど、車体の手に触れる部分の質感がすべからく上質で、とても居心地のいい室内空間に仕上がっています。加速性能については、モーター出力の特性などはコントローラーのセッティングでかなり幅広く調整可能なはずですが、ID.4ではあえて「EVならではの強烈な加速」をアピールするのではなく、一般道の走行に過不足のない、まろやかにして、電動ならではの力強さは感じることができる走り心地を選んできた、と感じます。

「正しく進化したEV」と感じるインターフェース

いわゆる「ICE(エンジン車)から乗り替えても違和感がない」という、既存メーカーが新型EVを発表する際のアピールポイントとすることが多い印象、ということにはなります。ただし、ID.4は「ICEから違和感がない」といったレベルの完成度を目指したのではなく、「EVとしての上質さとは何か」をきちんと考え抜いて仕上げられたEVであることを感じました。

象徴的なのが、ディスプレイや操作ボタンなどインターフェースの使いやすさです。運転席の正面には、ドライブモードセレクターと一体的にデザインされたメーターディスプレイが配置されています。このメーターディスプレイの表示内容はステアリングのボタンで簡単に切り替えできるようになっていて、バッテリー残量の詳細なSOCや電費情報などを、わかりやすく表示できました。

今まで、既存メーカーがエンジン車をベースに開発したEVの場合、メーターでSOC(バッテリー残量の%表示)が表示できないなど「EVとしては使いにくい」例が少なくありませんでした。ID.4は、フォルクスワーゲンが積み上げてきたEV開発のノウハウを活かしつつ「巨大自動車メーカーが本気で作るEVとして正しい進化を遂げた一台」と評することができそうです。

チャデモ規格での急速充電性能などはまだ試していないので、まだ評することはできないですが。来月には関西方面への長距離試乗を行う計画があるので、実際の電費(冬場の)性能や、もう少し深く使い込んでみたインターフェースの印象などと併せてレポートしたいと思います。

高出力急速充電の独自ネットワークに加盟

ID.4の日本導入と同じ日に発表されたのが、フォルクスワーゲンブランドが「PCA=PREMIUM CHARGING ALLIANCE」に加盟するというニュースです。

PCAは、ポルシェとアウディが2022年4月に発表、各社のディーラーを中心に最大150kW級の超急速充電器を設置して、各社ブランドのEVオーナーだけが利用できる急速充電ネットワークのサービスです。

10月に正式にサービスが開始され、現在鋭意充電拠点と充電器数を拡大中。PCAの発表によると、2022年12月末までに「ポルシェジャパンが展開するポルシェターボチャージャー67基、アウディウルトラチャージャー52基と、フォルクスワーゲンの急速充電器99基の合計218基の急速充電器」が使えるようになるとしています。

独自急速充電ネットワークで独走しているテスラスーパーチャージャーが、2022年10月現在で53拠点で240基余りの規模ですから、フォルクスワーゲンの加盟によってPCAはいきなりスーパーチャージャーに匹敵する数の急速充電器ネットワークを構築することになります。高速道路SAPAにはないのが惜しいところではありますが、PCAは3社のEVオーナー専用なので、充電待ちのリスクは当面ほとんどないでしょうし、ID.4にとって強力なアドバンテージになるでしょう。

ナビとエアコンの実力はまだ未検証

先に公開した御堀さんの試乗レポートでもお伝えしたように、このID.4、すごくいい新型EVだけに、少し残念なポイントがあります。それは、省電力のために最近のEVでは必須といえるヒートポンプ式エアコンを搭載していないことです。ID.4用のエアコンには、新開発の冷媒を使ったヒートポンプ式と、ヒートポンプ式ではないシステムの2種類が用意されたものの、日本導入に当たってはアフターサービスなどのインフラ面で新冷媒への対応は難しい面があり、ヒートポンプは非搭載になった、とのこと。ことに冬場の寒い時期、エアコン(ヒーター)使用時の航続距離低下は避けられないのではないかと思います。

また、ID.4の「Launch Edition」には、純正のカーナビゲーションシステムがありません。スマホ接続の機能があるので、カーナビはスマホで、という割り切りです。

ヒーター使用時の電費はどうなのか。スマホでナビはどうなのか、といったあたりも、来月の長距離試乗における確認テーマにしたいと思います。

ID.4のライバルとなるEVは?

最後に、購入検討時の比較検討車種となるであろうEVと、価格、バッテリー容量、航続距離などを一覧できる表にしてみました。

車名価格

(税込)

電池容量

駆動方式

一充電走行距離

(WLTC)

一充電走行距離

(EPA)

(※)は換算推計値

全長

全幅

全高

(mm)

VW

ID.4

Pro Launch Edition

636万5000円77kWh

RWD

561km約443km4585

1850

1640

VW

ID.4

Lite Launch Edition

499万9000円52kWh

RWD

388km約336km4585

1850

1640

HYUNDAI

IONIQ 5

479万円58kWh

RWD

498km約398km

(※)

4635

1890

1645

HYUNDAI

IONIQ 5

Lounge

549万円72.6kWh

RWD

618km約494km

(※)

4635

1890

1645

HYUNDAI

IONIQ 5

Lounge AWD

589万円72.6kWh

AWD

577km約461km

(※)

4635

1890

1645

VOLVO

XC40 Recharge

Plus

579万円69kWh

FWD

502km約402km

(※)

4440

1875

1650

VOLVO

XC40 Recharge

Ultimate

679万円78kWh

AWD

484km約387km

(※)

4440

1875

1650

VOLVO

C40 Recharge

Plus

599万円 69kWh

FWD

502km約402km

(※)

4440

1875

1650

VOLVO

C40 Recharge

Ultimate

699万円78kWh

AWD

484km約402km

(※)

4440

1875

1650

日産

アリア

B6

539万円66kWh

FWD

470km約348km4595

1850

1655

Audi

Q4 e-tron

advanced 40

662万円82kWh

RWD

576km約461km

(※)

4590

1865

1630

スバル

ソルテラ

ET-SS FWD

594万円71.4kWh

FWD

567km約454km

(※)

4690

1860

1650

スバル

ソルテラ

ET-SS AWD

638万円71.4kWh

AWD

542km約434km

(※)

4690

1860

1650

プジョー

e-2008

GT

551万4000円50kWh

FWD

380km約304km

(※)

4305

1770

1550

TESLA

MODEL Y

RWD

643万8000円57.5kWh

RWD

507km

約393km4751

1978

1624

選択肢の車種が多くなってきたので、縦軸を車種名にしてみました。こうして表にしてみると、価格が500〜600万円前後、バッテリー容量で60〜70kWh前後といった「ちょっと高級車」ゾーンが、新型EVの超激戦区となっていることを改めて実感します。サブスクのみのトヨタbZ4Xや、価格帯が少し上になるアリアのB9、メルセデスベンツのEQAやEQB、BMWのiXやiX3は入れてません。あと、来年早々にはBYDのATTO3が、おそらくはより魅力的な価格で参戦しますね。

コストパフォーマンスではヒョンデIONIQ 5が抜きん出ていますが、全国にディーラー網を展開しないので、ことに地方在住の方は購入に不安を感じる方が多いかも知れません。既存大手メーカーの車種では、バッテリー容量などに差があったりして、究極は今までのエンジン車同様に「好みの問題」となりそうですが。EVとしての完成度の高さという点で、ID.4はテスラモデルY、IONIQ 5に次ぐ魅力を備えて登場したモデルであると、個人的には感じています。

ヒートポンプ非搭載というのが気になるところではありますが。そもそも航続距離が十分かどうかというのは、他車と比較した相対的な感覚ともいえます。一般の方がマイカーとして所有すれば、他の車種に乗る機会はそんなにあるわけではないでしょうから、ヒーター入れたら短くなる航続距離を受け入れて、その距離に見合った使い方、充電に気をつければいいだけのこと。

ちなみに、今回発売されたのは「Launch Edition」と名付けられた、いわば日本導入記念モデルです。来年以降、通常モデル導入やマイナーチェンジなどでヒートポンプやナビが加わる可能性はどうなのか、っていうあたりは「まだ未定」とのことでした。

そろそろ、魅力的なEVに買い替えようかなと検討しているのであれば。ID.4の「Launch Edition」、エアコンとナビという「ちょっと気になるポイント」を理解して許容した上であれば、EVの魅力を存分に堪能させてくれる新型車であるという印象を今回のレポートの結論にしたいと思います。長距離試乗が楽しみです。

(取材・文/寄本 好則)