ボルボが7月8日に日本発売した新型フラッグシップEV「EX90」。日本では貴重な3列7人乗りの大型SUV電気自動車であり、本格的なソフトウェア・デファインド・カー(SDV)に進化しました。東京都内で実施された試乗会に参加したレポートをお届けします。
走りはスムーズで静粛性抜群~さすがフラッグシップの高級感
ボルボ・カー・ジャパンが2026年7月8日に発売したフラッグシップEV「EX90」に試乗してきました。東京・南青山の「Volvo Studio Tokyo」から、撮影場所として用意されていたお台場の潮風公園へ往復する3時間ほどだけではありましたが「さすがフラッグシップ」という高級感を満喫できました。
地下駐車場を出て、青山墓地から外苑西通りへ抜ける一般道を走りながら感じた第一印象は、段差の衝撃などをゆったりといなしてくれる足回りの上質さです。試乗前の説明によると、すべてのウィンドウに遮音フィルムを挟んで複層としたアコースティックガラスを採用しているとのこと。首都高速走行時でもロードノイズはほとんど気にならないレベルです。
梅雨が明けた東京。この日も真夏の太陽が照りつける猛暑日でした。でも、広い室内はしっかりとエアコンが効き、運転席と助手席に装備されたベンチレーション(シートから涼風が吹き出てくる)機能が快適でした。ボルボならではのミニマルな北欧デザインが印象的なインテリアは上品な高級感があり、購入したオーナーは「ドライブしながら至福の時間を過ごせるんだろうな」と、ちょっと羨ましい気持ちになるほどです。
試乗した「EX90 Ultra Twin Motor Performance」は、最高出力500kW、0-100km/h 加速は4.2秒というハイパフォーマンスを誇ります。とはいえ、信号待ちからの発進でアクセルを目一杯踏み込むような品のない走りは似合いません。EVならではのパワフルな加速は、約2.7トンの大柄な7人乗りSUVを、余裕をもって操るための「強靱な体幹のパワー」として使いこなすのがオススメです。
日本で買える電気自動車として最高レベルのEV性能
搭載するバッテリーは106kWh。国内市販EVとしてはメルセデス・ベンツEQS(118kWh)や、BMW iX(111.5kWh)に次ぐ大容量で、一充電走行距離(WLTC)は全グレード共通で「650km」を実現しています。
ユーザー目線で「実質的な航続距離は?」と確かめるのがEVsmartブログの持ち味ですが、今回は短時間の都内試乗ですし、余裕で500kmレベルで走れる高級EVになってくると、試乗の評価としては「もう、いっぱい走れます!」で十分ではないかという気がしてきています。
たんなるバッテリー容量よりも特長的なのが、EX90はボルボとして初めての「800Vアーキテクチャー」を採用していることです。パワートレインのシステムが高電圧化されて効率が向上するのがひとつの利点。なによりも大きなユーザーとしてのメリットが急速充電性能がアップすることです。
今回の試乗では急速充電を試す機会はありませんでしたが、技術担当者に確認すると、急速充電時の受け入れ可能な最大電流が「250A」になっていて、最大電圧が450V基準の「150kW器」による急速充電時の最大受入出力は「120kW程度」とのこと。ただし、高出力が比較的持続する性能を有していて「150kW器を使えばSOC10%~80%まで約39分で充電可能」という説明がありました。つまり、公共用急速充電器1回の制限時間である30分で60kWh近く充電できるということで、これは国内の市販EVとして最高クラスの急速充電性能だと思います。
350kW器の恩恵を享受できる数少ない市販EVに!
さらに注目したいのが、もうすぐ東名の海老名SAに登場することになっている東光高岳製の350kW器「SERA-400」の恩恵を享受できる数少ない市販EVであるということです。SERA-400の出力電圧は最大1000V。800Vアーキテクチャーだからこそ、超高出力を引き出すことができます。ボルボの技術担当者も「まだ実機ではテストできていない」ということでしたが、カタログスペックの総電圧「718V」などから試算すると「最大280kW程度」で急速充電できるのではないかということでした。
今まで、日本国内で市販されているEVで800Vに対応しているのは、ヒョンデIONIQ 5と、ポルシェ タイカン、アウディ e-tron GT くらいでした。ただし、タイカンと e-tron GT は高電圧のチャデモ充電にはプログラム改修が必要(未対応)であるため、350kW器の恩恵を活用できるのはIONIQ 5だけという状況でした。
ここにきて、EX90、そして同じボルボのES90が800Vアーキテクチャーで高電圧急速充電に対応。さらに、7月22日に発表されたBMWの新型iX3も800Vアーキテクチャーを搭載し、高電圧のチャデモ充電に対応します。個人的には手が届かない価格帯の高級EVたちではありますが、高電圧対応の車種が増え、e-Mobility Powerが海老名SA上下線にSERA-400を初設置することの意義が高まってきたといえるでしょう。海老名に350kW器が設置されたら、EX90で試しに行くのが楽しみです。
ちなみに、ボルボで次に導入を計画しているミドルクラスの電気自動車「EX60」も、800Vアーキテクチャーを採用しています。
本格的なSDVとして進化~OTAで Google Gemini 搭載へ
また、EX90を語るうえで欠かせないのが、ボルボとしても初めての本格的なSDV(ソフトウェア・デファインド・カー)に進化していることです。
昨今の高性能自動車には100個ほどにもなる機能別のECU(電子制御ユニット)が搭載されるのが一般的です。でも、EX90は新世代の「SPA2アーキテクチャー」と独自の統合技術基盤「スーパーセット・テックスタック」を採用し、「Hugin Core(フギン・コア)」と呼ばれるコアコンピューターには254TOPSの演算性能を持つNVIDIAの「DRIVE AGX Orin」チップを搭載。安全システムから駆動制御、インフォテインメント、バッテリーマネジメントまでを一括で処理し、購入後もOTA(無線アップデート)によって機能が継続的に進化していく仕組みが用意されています。
さらに、ボルボは電動化に向けてGoogleインフォテインメントシステムの導入と進化を進めており、年内にも「Google Gemini(ジェミニ)」が日本語対応で搭載される予定になっているとのこと。実現すれば「目的地へのルート上でランチが美味しい店を探して」など、コンシェルジュと会話するようにナビの目的地設定ができるようになったりします。ジェミニへの対応はもちろんOTAでアップデート予定です。
加えて、車内の置き去り事故を防ぐ高精度な「車内レーダーシステム」を装備。ルーフに配置されたミリ波レーダーが、呼吸に伴う胸のわずかな動きまで検知。子どもやペットの存在を感知すると、車がロックされるのを防ぎ、インフォテインメント画面に警告を表示します。乗員が残された場合はエアコンが自動で連動し、車内を快適な温度に保つことで事故を未然に防ぎます。
PHEVフラッグシップと同じ土俵で勝負できる価格設定
今回試乗した最上位モデル「EX90 Ultra Twin Motor Performance」の価格は1399万円(価格はすべて税込)。ベースモデルとなる「EX90 Plus Twin Motor」が1199万円です。1000万クラスの高級車ですが、発表会の記事でもお伝えしたように、従来のフラッグシップである「XC90」のPHEVモデルと同等の価格帯になっていて、プレミアムカーの選択肢として十分に合理的な価格設定を実現しているのがポイント。「これまでXC90を選んできた顧客が、違和感なくEVへ乗り換えられる価格帯」を目指したことが説明されました。
e-Mobility Powerネットワーク充電カードの月会費に加え、急速充電で月60分相当分までの充電料金が5年間無料。自宅ガレージに設置するボルボ純正ウォールボックス(充電器)のプレゼントなどの早期購入特典「ES90 / EX90 Exclusive Package」が提供される点も見逃せません。
なんといっても、3列シートの7人乗りの電気自動車である点が、EX90の大きな特長です。現状として、日本国内で購入できる7人乗りの電気自動車は、メルセデス・ベンツのEQBと、EQS SUVくらいしかありませんでした。スイッチ一つで操作できる3列目シートは「身長170cm以下の乗員が足元にゆとりを持って快適に座れる広さを確保」したとのこと。
電気自動車の選択肢がますます拡がってきたことを、「このクルマで三世代が一緒にお出かけするのは幸せだろうな」という羨望とともにしみじみと実感する試乗体験となったのでした。
取材・文/寄本好則






