スバルの新型「ソルテラET-SS」で0泊2日の超弾丸東北周遊1000km遠征を行いました。兄弟車であるbZ4XとEV性能は同じなのか? 四輪駆動モデルの実電費はどれほどなのか? EV性能と実用性についてレポートします。
兄弟車の「bZ4X」とともに新型になってEV性能が向上
私自身、旧型ソルテラに試乗したことはありますし、兄弟車であるbZ4Xは旧型と新型で幾度となく長距離遠征を行っています。旧型モデルのEV性能は正直言ってファーストカーとして満足することは難しいと結論付けていましたが、2025年末にモデルチェンジを迎えた新型モデルではEV性能が大幅に向上。弾丸遠征においても十分すぎるEV性能が確認できていました。
今回検証を行う「ET-SS」は新型ソルテラのAWDグレードです。兄弟車であるbZ4Xとの違いや、スバルブランドの代名詞でもある四輪駆動グレードでどれだけの電費を実現できるのかなどを検証することにしました。基本的な車両情報と、弾丸遠征の走行条件などをまとめておきます。
【車両情報】
●スバルソルテラET-SS AWD
●車両価格:561万円(令和8年度CEV補助金額:128万円 ※2026年6月現在)
●バッテリー容量:74.69kWh
●日本WLTC航続距離:687km
●EVネイティブ航続距離測定結果(100km/h巡航):439km(外気温平均15.5℃)
●装着タイヤサイズ:235/60R18
●装着タイヤ銘柄:ブリヂストンALENZA001
●タイヤ空気圧(bar):2.6/2.6(実測値/推奨値)
【走行条件】
●往復約1000kmの東北周遊コース。
●追い越しを含めて制限速度の+10%程度を許容。
●暖房は22℃オートに設定。
2台同時充電のデメリットを実感
経路の急速充電を行った区間に分けてレポートします。座間市街の急速充電器で満充電近くまでチャージしてスタート。圏央道を経由して東北道を北上しました。1回目の充電スポットは福島県北部、宮城県境に近い国見SAです。
【走行結果①】神奈川・座間市街→国見SA(150kW級急速充電器)
●走行距離:343.7km
●消費電力量:96%→8%
●平均電費:173Wh/km(5.78km/kWh)
●外気温(座間→国見):15℃→15℃
国見SAには東北自動車道では貴重な最大出力150kW級の急速充電器(2台同時充電可能)が設置されています。新型ソルテラは最大150kW充電に対応しているため、なるべく150kW級急速充電器を使うことで充電時間を短縮できる算段です。
ところが、国見SAに到着して充電を開始してから1分も経たずに初代リーフが同じ充電器で充電を開始。日本国内の高速道路上に設置されているほぼ全ての150kW級急速充電器は2台同時充電が可能(2本のケーブルを備えています)である一方、2台同時に充電するとストール当たりの充電出力が大きく低下してしまいます。
ソルテラのドライバーディスプレイでは、その瞬間に許容している充電出力の数値とともに、現在ソルテラが許容可能な最大充電出力の数値が表示されます。下の写真の場合でいけば、「本当は109.6kWを許容できるけど、充電器側が79.75kWしか流していないよ」とソルテラは主張しているわけです。
実は旧型のソルテラとbZ4Xは充電性能の低さを多くのユーザーから指摘されていました。他方で、充電性能が低いとひと口に言っても、車両側に問題があるのか、それとも充電器側に問題があるのかがごちゃ混ぜで語られることが多いと感じています。よってスバルとトヨタは、充電スピードが遅いなどのクレームに対して、それをユーザー自身がドライバーディスプレイを通じてある程度判断できるようにUIを変更してきたのです。
出力低下時の優遇措置などにも期待したい
いずれにしても、ここで問題となるのは充電料金という観点です。高速道路上のほとんどの充電器を運営するe-Mobility Power社(eMP)は、ようやく従量課金制に対応する急速充電器を高速道路上に設置し始めましたが、現時点においては、その大半が時間課金制です。つまり今回の場合、充電出力が初代リーフに分配され、同じ充電時間で充電できる電力量に大きな差が生まれたとしても、全く同じ充電料金を請求されるのです。
せめて従量課金制であれば、充電出力が分配されたとしても、ソルテラの場合、SOC80%まで充電するのに充電時間が10分程度伸びるだけ。eMP社が今後既存の充電器にも従量課金制を導入することはあり得るのか(これはハードウェアの改修が必要なはずなので多分難しい気がします)。もしできないのであれば、充電出力が分配されたら時間単価が少し下がるなどの優遇措置などにも期待したいところです。
フラッシュの240kW器でほぼ150kWの充電出力を確認
【走行結果②】国見SA→仙台市街→奥州市街FLASH (240kW級急速充電器)
●走行距離:201.5km
●消費電力量:51%→2%
●平均電費:159Wh/km(6.29km/kWh)
●外気温(国見→奥州):15℃→5℃
仙台市街で牛タンを堪能してリフレッシュ。さらに北上して今回の遠征の目的地(折り返し地点)である岩手県奥州市へと向かいます。途中、奥州市街地に設置されたFLASH(フラッシュ)の240kW級急速充電器を利用しました。
繰り返しますが、新型ソルテラは非常に充電性能が高く最大150kW級の充電出力に対応可能です。ただし、先ほどの国見SAで使用した150kW級充電器(ABB製)では、150kWを発揮できないという点はEVユーザーであれば理解しておきたいポイントです。
というのも、ソルテラの定格電圧は391V(約400Vのシステム)で、国見SAなどに設置されているeMPの150kW充電器の最大電流値は350Aになっています。つまり、「350A × 約400V ≒ 140kW」程度しか発揮することができないのです。
EV充電のややこしい部分ですが、ソルテラで150kWを発揮したい場合、350A以上の電流値、具体的には400Aの電流値を流すことができる充電器が必要になります。チャデモ規格でこの条件に対応した急速充電器は現時点においてテンフィールズファクトリー社のFLASH、なかでも240kW急速充電器しか存在していません。よってFLASHの240kW急速充電器を使用して、ソルテラの真の急速充電性能を検証する必要があったのです。
はるばるやってきたのは、岩手県奥州市街に位置するFLASHの充電スポットです。ここはガソリンスタンド内に設置されており、ガソリンスタンドは夜になると営業を終了するものの、充電器は24時間開放されています。
プレコンディショニング機能を活用するのがオススメ
想定通り、カタログスペックの上限である150kWをほぼ達成することができました。実は仙台以北は急速に気温が低下し、奥州市街は5℃という冬場のような環境でした。でも、ソルテラにはバッテリープレコンディショニング機能が実装されているため、電池温度が低くて期待通りの充電出力を発揮できないなんてことはありません。
ただし一点注意するべきは、ソルテラのナビゲーションシステムからだとFLASHが充電器情報に登録されておらず、ナビリンク式のプレコンディショニング機能を起動できないという点です。よって充電器到着45分前あたりから手動でプレコンディショニング機能を起動しました。
後述しますが、ソルテラのナビリンクプレコンディショニング機能は、充電器到着1時間以上前などから起動するケースがあり、もしかしたらプレコンディショニングの時間が足りないかもと懸念していたのですが、最高出力は148.1kWを発揮。SOC10%から80%まで、カタログスペックと全く同等の28分で充電することができました。特に冬場にFLASHをはじめとして、ナビ情報の中に登録されていない充電器に向かう際は、手動でプレコンディショニング機能を起動することを忘れないようにするのがおすすめです。
想定外の寒さで予想以上に電費が悪化
【走行結果③】道の駅みずさわ→セブンイレブン亘理インター店(150kW充電器)
●走行距離:135.8km
●消費電力量: 68%→31%
●平均電費:176Wh/km(5.68km/kWh)
●外気温(奥州→宮城・亘理町):1℃→9℃
FLASHで充電を終えた後は、近隣の道の駅みずさわで仮眠をとりました。眠気もあり写真をすっかり撮り忘れていましたが、休憩と仮眠をとった約5時間で消費した電力量(7%)と電池容量を掛け算したところ、1時間あたりの空調による電力消費量は1kWh程度であると概算できました。
目覚めた時の外気温は1℃でしたので、真冬における暖房の電力消費量ということを踏まえると、効率が高い印象です。ソルテラを使った真冬の東北遠征などにも期待したくなりました。
ただし、目的地である宮城県内のセブンイレブンに設置されている150kW級急速充電器は当初立ち寄る計画ではありませんでした。ところが、この区間は高速道路を使わなかったにも関わらず、想定以上に電費が悪化。これは間違いなく外気温が真冬のような低さだったことが要因でしょう。元々は一気に福島県いわき市街の充電器まで走り抜ける予定でしたが、そのいわき市街までのルート上には150kW器がなかったため、経路沿いで150kW器が設置されている宮城県内のセブンイレブンに寄ったのです。
ところが、計画外の充電スポットへの立ち寄りだったため車載ナビの目的地セットを忘れていました。よってナビリンクプレコンディショニング機能が作動せず、150kW器で充電したのに出力は75kW程度しか発揮できませんでした。
昨今、私に限らず、車載ナビを使わずに、自身のスマホをナビ代わりに使用するユーザーが多いと思いますが、EVを所有する場合は、車載ナビとEV性能が緊密に連携しているため、車載ナビを使うように心がけたほうがいいのかもしれません。
だからこそ、自動車メーカーはインフォテインメントスクリーンをスマホのような、ヌルサク感や音声認識精度の高さ、AI機能を絡めた柔軟性を強化する必要があるわけです。
とくに疲れもなかったため、充電時間は最小限の10分強程度で切り上げました。なるべく最大150kWの充電性能を最大限発揮させるべく、次の150kW器を目指します。
郊外の一般道走行で電費性能の向上を実感
【走行結果④】セブンイレブン亘理インター店→日産いわき工場(150kW級急速充電器)
●走行距離:142.4km
●消費電力量:47%→19%
●平均電費:127Wh/km(7.87km/kWh)
●外気温(宮城・亘理町→いわき):9℃→18℃
前区間で車載ナビを使用していなかったので、今回は出発前にいわき市街の充電器をしっかりと目的地にセットして出発しました。ところが、今度は出発してすぐにナビリンクプレコンディショニング機能が起動。その時点での走行予定距離は140km、走行予定時間は約3時間でした。つまり3時間前にプレコンディショニング機能が起動したことになります。セブンイレブンでは10分程度しか充電を行っていなかったため電池温度が低いまま出発したものと推測できますが、これはいくらなんでも早すぎます。なぜなら、電池を昇温するだけでなく、その充電に最適な温度を維持するのにも電力を余分に消費するからです。
実はこれ、bZ4Xの検証の際にも気付いた部分なのですが、このナビリンクプレコンディショニング機能のアルゴリズムについては、もう少し最適化できそうな気がします。
EVとの「対話」を楽しみましょう
とはいえ、この区間は外気温が急速に上昇したことや、EVの電費にとって好条件である郊外走行だったこともあり電費が伸びています。今回のソルテラはAWDであることを踏まえると、新型になってドライブトレイン周りの効率性が向上していることは間違いないでしょう。
実は、いわき市街に到着した際の充電残量は19%。宮城県内のセブンイレブンで充電したのは16%分でしたので、結果論としては宮城県内での充電はスキップできた格好です。さすがにソルテラオーナーではないので私には難しかったですが、長距離走行を何度も行うオーナーになれば、ソルテラの電費の傾向を掴んで、必要最小限の充電で長距離を走破できるようになるでしょう。このような「EVとの対話」も、EVの長距離運用において楽しめる部分です。
EV性能とナビゲーションシステムの連携に期待
【走行結果総括】神奈川・座間市街→奥州市街→東京都内
●走行距離:1035.6km
●充電回数:4回(その内2回はそれぞれ約10分、20分の充電時間で切り上げ)
約28時間前に神奈川・座間を出発してから東北を周遊し、車両返却場所である都内に舞い戻るという弾丸遠征の総走行距離は1000kmを超えました。
まず、AWDだったとはいえ、電費が極端に悪いという印象は受けませんでした。EVはどうしても電費が悪化することからAWDグレードの購入は慎重になりがちですが、スバルといえば四駆です。その意味において、ソルテラのAWDグレードの購入を躊躇う必要はありません。
ただし、bZ4Xと同じく、これまでガソリン車オーナーだった方がソルテラに乗り換える上での最大の懸念点となり得るのが、EV性能とナビゲーションシステムの連携という観点です。
bZ4Xも同様ですが、ソルテラは目的地到着時点における充電残量の予測システムがないため、ユーザーがこれまでの経験を元に自分で充電残量を推測しなければなりません。何度か長距離走行を行ってコツをつかんでしまえば、ある程度の充電残量予測は誰でも出来るようになるでしょう。ところが今回のように、気温の低下や走行条件が変化すると当然電費も変化していくため、その予測の正確性を高めるのにはかなり時間を要するはずです。
結局EVの長距離運用に対するネガティブなイメージというのは、冬場に航続距離が悪化するという事象自体よりも、予測値との乖離が大きいことの方が問題だと感じます。つまり、実際にはSOC10%で到着出来るはずなのに、真冬で予測が難しいから、余分に充電をしすぎてSOC50%以上で到着。するとSOC40%以上分、余分に充電時間を要するわけで、これが、特にEV初心者の感じる「冬はすごく充電に時間がかかる」というイメージの根本要因なのではないでしょうか?
だからこそ、自動車メーカーは充電残量の予測精度を抜本的に向上させる必要があり、その意味において、到着時の充電残量予測機能がないというのは、EV初心者にとって長距離運用の大きなハードルとなり得るのです。
例えば今回のソルテラの競合車種ともなるであろう日産リーフには目的地到着時点における充電残量の予測システムが備わっており、以前私自身が検証して記事化した通り(関連記事)、その精度もかなり高めです。EV初心者が気軽にロングトリップを楽しむためにも、この充電残量予測機能は非常に重要であり、そのことを長年EVを発売し続けていた日産は理解して、その機能を作り込んできたと言えますし、EVのパイオニアとしての一日の長を感じる部分でしょう。
ソルテラはナビゲーションシステム周りのOTAアップデートに対応しているはずですので、スバルは是非ともトヨタと連携して、EV性能とナビゲーションシステムの連携を作り込み、新型モデルだけでなく既存モデルに対するアップデートに繋げていってほしいと感じました。
ともあれ、途中の150kW急速充電や電費性能の高さを含めて、ファーストカーとして十分なEV性能を備えていることは間違いありません。旧型モデルはあまり販売台数が伸びませんでしたが、新型モデルでは一人でも多くのスバリストがソルテラを試乗し、EVならではの滑らかでリニアな加速、低重心な走行性能を実現するソルテラの良さに気づいてくれることを願っています。
取材・文/高橋優(EVネイティブ※YouTubeチャンネル)









