今年2月に装備がアップデートされたBYD『DOLPHIN(ドルフィン)』で、東京~岡山のロングドライブに出かけました。コンパクトEVで往復1,400km超えのロングドライブは厳しいのでは!? そんな先入観を、ドルフィンは良い意味で覆してくれました。
旅の相棒は『ドルフィン ロングレンジ』
つい数年前までは、岡山出張はほぼ新幹線か飛行機を利用していました。しかし、もともと公共交通機関よりもクルマで移動するのが好きで、長距離ドライブが苦にならない私は、気がつけば、岡山への移動も自走するのが当たり前になっていました。
今回の岡山行きでも、何の迷いもなく自走を選択。そのドライブの相棒として選んだのが、ドルフィンでした。というのも、ドルフィンは2023年9月に日本で発売になりましたが、これまでに自分で運転したのは1時間足らずで、ほとんど記憶にありません。2026年2月に仕様変更が行われたこともあり、この機会にじっくり乗っておこうと、BYDから広報車(メディア取材向けの試乗車)をお借りすることにしました。
ドルフィンは、日本におけるBYDのラインアップでもっともコンパクトなモデルです。もうすぐ軽EVの『ラッコ』が登場し、エントリーモデルの座を譲ることにはなりますが、全長4,290mm、全幅1,770mmという扱いやすいサイズに加え、日本仕様では全高を1,550mmへと抑えたドルフィンは、日常つかいにはまさにぴったりのサイズといえます。
ドルフィンには、バッテリー容量44.9kWhの『ドルフィン ベースライン』と、バッテリー容量が58.56kWhに増やされた『ドルフィン ロングレンジ』の2グレードがあり、今回は後者を選びました。このドルフィン ロングレンジ、カタログの一充電走行距離は476kmで、片道600kmを超えるロングドライブでは、途中数回の充電が必要です。そもそもコンパクトEVで長距離は厳しいのではないかという思いも少しあって、途中の充電はスムーズにいくのか、長距離移動で疲れは出ないのか……。そんな不安を胸に、東京を出発しました。
使いやすくてお値段以上
ドルフィンの運転席に座り、改めてまわりを見渡してみます。コックピットは、回転可能な大型センターディスプレイと小振りのメーターパネルで構成され、すっきりとしたデザインにまとめられています。センターディスプレイの手前には、ダイヤルを回して操作するドライブセレクターに加えて、使用頻度の高いスイッチが並んでいます。いずれもタッチ式ではなく物理スイッチ式を採用しているぶん操作がしやすく、しかも取扱説明書を読まなくても直感的に操作できるのがうれしいところです。
ドルフィン ロングレンジの場合、大型のパノラミックガラスルーフが標準で装着されています。室内を開放的な雰囲気にしてくれるのはいいのですが、日差しの強い季節には車内が暑くなるのではないかと心配になります。しかし、サンシェードを開けてみても、ほとんど暑さは感じられず、熱線カットガラスが効いているのがわかります。さらに、フロントシートにはシートベンチレーション機能が備わっています。今回の旅程はこの時期としては暑くなりましたが、快適に過ごすことができました。
細かいところでは、スマホのワイヤレス充電に冷却ファンが付き、デジタルNFCキーにも対応するのでスマホで車両のロックも可能。これだけの装備内容を考えると、374万円という価格設定には高い競争力を感じます。
室内は、そのコンパクトな見た目以上に広く、後席は頭上のスペースに加えて、足元も十分余裕があります。荷室は、通常の使用時で奥行きが60cm強ですが、深さがあるぶん荷物を詰め込むことができますし、後席を倒せばスペースを広げることも可能で、ふだんの移動はいうまでなく、2~3人でのお出かけでも、なんとか荷物は収まりそうです。
落ち着いた乗り味で長距離も快適
前置きはこのくらいにして、さっそく走り出すと、1,680kgのボディを軽々と加速させる実力に、まずは安心しました。一般道ではアクセルペダルを軽く踏むだけで、必要な加速が得られますし、高速道路や山道の登りでも、アクセルペダルを深く踏み込む必要はめったにありません。
ドルフィンはいわゆる「ワンペダルドライブ」には対応しておらず、2段階ある回生ブレーキもさほど強くはありません。それだけに、アクセル操作に対するクルマの反応は比較的穏やかで、それが運転のしやすさにつながっています。
ところで、ドルフィン ロングレンジには、前マクファーソンストラット、後マルチリンクのサスペンションが搭載され、205/55R17タイヤが装着されます。路面によっては低速域でややゴロゴロといった感触を伝えてくることもありますが、速度が上がるにつれて気にならなくなります。走行中の動きは落ち着いていて、高速道路でも安定感が高いぶん、長距離走行でも疲労感は少なく、移動そのものが快適でした。
ワインディングロードを走る場面でも、リアのマルチリンクサスペンションがうまく働くため軽快にコーナーをクリアし、想像以上に運転を楽しむことができました。
一般道の電費は9km/kWh超え
さて、気になる電費についてですが、ドルフィンの場合、直近50kmの電費を確認できる機能はありますが、一般的なクルマのトリップコンピューターのように、指定した区間や充電後の電費などは確認できません。そのため、ここで記す電費は大雑把な数字になることをお許しください。
まずは高速道路ですが、アダプティブクルーズコントロール(ACC)を100km/hにセットして走った場合が6~7km/kWh台といったところ。ちなみに、ACCの速度制御はまずまずの出来栄えでしたが、車線維持機能はややシステムの介入が多いのが気になり、私はこの機能をオフにして走りました。
一方、空いた一般道を走行する場面では9km/kWhを超え、コンパクトで比較的軽いボディと低めの全高が、優れた電費性能をもたらしていることが確認できました。
最大85kW程度の急速充電性能を確認
長距離ドライブとなると途中の充電で余計な時間がかかると思われがちです。ドルフィンの場合はどうだったでしょうか?
以下が今回の充電記録です。
●Googleスプレッドシート
今回、途中の充電はe-Mobility Power(以下eMP)の充電カードを利用しました。高速中心の移動はやはりeMPカードがあると便利です。
一般道、高速道路ともに90kWまたは150kW急速充電器を利用しました。どちらの場合も、ドルフィン ロングレンジでは最大85kW前後で充電可能で、平均でも60~70kWの高出力で充電できるのは頼もしいところです。比較的気温が高かった往路では、充電中にバッテリー温度が上がり、充電速度が少し落ちることもありましたが、それでも50kW以上をキープしていました。
ちなみに、途中の充電は休憩を兼ねていて、休憩時間が10分とすると、充電のためだけに足止めを食っている時間は、往路が21分。帰路は三木SAを出発したあと、湾岸長島PAでは待ち時間は4分。日本坂PAでは夕飯などに20分かかり、待ち時間は10分でしたので、ロスタイムは14分でした。
「高速充電なび」で充電器の空き状況を確認しながらSAPAに立ち寄ったおかげで、充電待ちはゼロでした。少なくともドルフィン ロングレンジに関していえば、「EVの長距離移動は時間がかかる」というイメージは、あてはまりませんでした。
1,400km超えのロングドライブを終えて思ったのは、私のクルマ選びでドルフィンが「盲点」だったことです。扱いやすいサイズだけでなく、想像以上に快適な乗り味とパッケージング、フットワークの良さ、そして充電性能の高さなどのおかげで、このクルマがすっかり気に入ってしまいました。コンパクトなハッチバックが好きな私にとって、ドルフィン ロングレンジは次の愛車候補に加えたい一台になったのでした。
取材・文/生方聡












