首都高速道路大黒パーキングエリアに開設されたe-Mobility Powerの電気自動車用新型急速充電器。最大90kWで、EV・PHEV6台が同時充電可能です。メルセデス・ベンツEQA、テスラモデル3、Honda eの3台で、実際の使い勝手などを検証しました。
一般への運用開始を待って充電開始
電気自動車本格普及時代の到来を目前に控え、高速道路SAPA急速充電器の「高出力器複数台設置」を実現するチャデモ規格の新型器が日本で、というか世界で初めて設置されました。
12月16日の14時からメディア発表会が行われ、一般ユーザーが使えるようになったのは15時過ぎから。EVsmartブログでは発表会への参加とともに、実際の複数台充電を検証すべく、3台のEVで取材に駆けつけました。車種は、私がメルセデス・ベンツからお借りした『EQA』。アユダンテ社員でEVsmartブログスタッフの石井さんのマイカーであるテスラ『モデル3』。フリーライターの篠原さんが衝動買いした『Honda e』の3台です。
発表会では6台のデモ用EV&PHEVで充電器の駐車マスは埋まっていて、一般ユーザーはまだ使用不可。一般運用開始予定の15時となり、デモカーがいなくなったのを見計らい、取材スタッフにGOサイン。我々の3台が、日本の電気自動車普及史を飾る記念すべき新型急速充電器の、一般利用者第一号となったのでした。
いろいろと「お知らせすべき事実」があったのですが、まずは高出力充電結果の報告です。
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首都高大黒PAでEV6台が同時充電可能な新型急速充電器が運用開始(2021年12月17日)
ブーストモードの制限は「許せるレベル」
メルセデス・ベンツEQAは、バッテリー容量66.5kWh。チャデモ規格で出力最大100kWの急速充電に対応しています。その実力は、今年の夏、東京-兵庫往復の長距離ドライブレポートで紹介しています。
このEQAはメーカーが取材用に貸し出してくれる「広報車」です。普通はもちろん満充電で貸してくれるのですが、今回は広報部のご担当者に「電池減った状態のまま貸してください」と妙なお願いを聞き入れていただいて、残量(SOC)53%で品川区内からスタート。少しでも電池を減らして急速充電を試すため、エアコンの暖房を最強にして運転席の窓を全開。時間に少し余裕があったので、一度大黒PAを通り過ぎて新山下ICでUターン、再びベイブリッジを渡って大黒PAに戻るという無駄を重ね、残量42%からの充電開始となりました。
ひとつ、充電性能と関係ないですが、EQAの暖房、よく効きます。それに、品川-横浜の30kmほど(首都高湾岸線ルート)を暖房全開で走ったのに10%ほどしか電池が減らない感覚は、私のマイカーであるZE0リーフ(30kWh)とは段違いの安心感であることが実感できました。
30分の充電結果は、車側の表示で42%→85%とSOCにして43%回復。スペックの66.5kWhで計算すると、28.6kWh充電できた計算になりました。
夏の長距離検証ドライブで使った新電元の90kW器と同様に、今回の新型器も最高出力スペックは「450V×200A=90kW」です。新電元器は液晶表示で電圧と電流が表示されますが、新型器に充電中の出力表示はありません。車側のパネル表示で確認すると、充電開始直後の出力は74kWほど。その後、SOC62%で79kW(推定395V×200A)まで出力が上昇したことが確認できました。
さらに、80数kWまで出力が上がった(写真を撮っていませんでした)ところで15分が経過。この新型器は50kWを超える高出力を15分までに制限する「ブーストモード」を搭載しています。なので、ここからの15分間は出力50kWでの充電になりました。
このブーストモード。「途中で出力が落ちるのはかなりストレスではないか」と想像していたのですが。30分のQCで43%、約29kWhくらい回復するのであれば、まずまずの使い勝手と言えるでしょう。夏の検証時、新電元90kW器の30分間での充電量はおおむね38kWh程度だったので、ブーストモードによる充電量の低下は気温差を勘案すると5〜10kWhほど、走行距離にしておおむね30~60km分程度という感じです。
高速道路の主要SAPAにはこの新型急速充電器がズラリと並んでいて当然、という状況になれば、長距離ドライブ中の休憩感覚(&間隔)としてはむしろ「ちょうどいい」感じでしょう。まずは、EQAの充電性能、そしてeMP新型器の素晴らしさを実感できました。
ちなみに、現在日本国内で市販されているEVで最大90kWの恩恵を享受できるのは以下の車種です。
●メルセデス・ベンツ EQA
●ポルシェ タイカン
●アウディ e-tron GT ※e-tronは最大50kW
●日産リーフe+(容量62kWhモデルのみ)※最大70kW程度
モデル3とHonda eで不具合を確認
先走ってEVの取材をしていると、不思議な巡り合わせに遭遇する(ジャガーI-PACEでうれしい偶然に遭遇したエピソードはこちら)ことがよくあるのですが、今回も出くわしてしまいました。
まず、篠原さんのHonda eでは、充電を始めようとしてもすぐに「充電が終了しました」と表示され、充電することができませんでした。
さらに、石井さんのモデル3では、最初は8kW、しばらくしても16kWしか出力が出ないことがわかったのです。
発表会直後だったので、まだ現場に残っていたeMPの技術担当の方に伺うと、Honda eが充電できないのは「新型器はチャデモ規格の2.0というバージョンだが、別メーカのver2.0充電器でも同様事象が発生しており、Honda eのプログラムが2.0に対応していないのでは」とのこと。モデル3は「充電器側から出力を調整する機能(ダイナミックコントロール)にテスラ車が対応していない可能性があり、確認します」ということでした。
この状況は、17日に公開した新型器運用開始の速報記事でも少し先出しで紹介したこともあり、その日のうちにeMPから『【お詫び】 首都高速・大黒パーキングエリア新型充電器における充電不具合について』というリリースが発信されています。
リリースではテスラ車としてモデル3のことしか記載されていませんが、モデルSやモデルXでもダイナミックコントロール非対応車であれば同じなので、同様の状況になると思われます。
e-Mobility Powerへの質問と回答
せっかくの新型器でちゃんと充電できない車種があるのは憂うべきことと考えて、実は、17日の速報記事を書きつつ、eMPにいくつかの質問をメールしました。すると、その日のうちに充電設備のご担当者から回答をいただきました。
●最大90kWならチャデモ1.2規格でも大丈夫だったと思いますが、2.0にした理由は?
CHAdeMO標準仕様書ver2.0は大きな変更点としては、高電圧対応がオプション機能で追加されたことになりますが、要求仕様の緩和や回路構成も一部明確化しております。これを反映すべくver2.0にしております。
●新型器の仕様は?
<電源装置>
入力電源:三相3線式AC400V
入力電圧範囲:AC340V~460V
入力周波数:50/60Hz±5%
<ディスペンサ>
連続定格出力:50kW
短時間定格出力:90kW
定格電圧:DC450V
出力電圧範囲:150V~450V
連続定格出力電流:0~125A
短時間定格出力電流:0~200A
●1系統108セルのジャガーI-PACEなど、最大電圧が高い車種でも大丈夫ですか?
ジャガーI-PACEはCHAdeMO対応車両です。車両電池の最大電圧は高いかもしれませんが、車両からの電池電圧情報はCHAdeMO標準仕様書記載の450Vを遵守して頂いており、450V以下で充電が行われます。
●i-MiEVへの対応
個別車両によって情報伝達不良が発生する場合があり、ソフト変更により個別車両についても充電可能か検討中です。
●Honda eへの対応
個別車両によって情報認識が出来ない場合があり、車両メーカーと対応を検討中です。
●モデル3(テスラ車)について
大黒PA設置のマルチアウトレット充電器は経路用充電器です。充電渋滞解消を一番の目的としており、最大6台の車両を充電できます。
EV車両の充電特性は時間経過に対し充電電流が絞られますので、新型器では後続の充電車両を優先しております。後続の充電車両が来てシステム全体の出力である200kWに達する場合、先行充電車両の充電出力を下げてシェアします。
CHAdeMO標準仕様書ver0.9では、ダイナミックコントロールはなく、最初の充電開始時に電流上限値を充電器と車両で決めて、充電中は変更できませんでした。
充電途中に充電器側からの出力を変更できないダイナミックコントロール非対応車に対して、最初に90kWの高出力を約束すると、その後に来た車両に出力を回せなくなるので、電源ユニット1台分(20kW)での充電になっています。
また、ダイナミックコントロール非搭載車が後行充電の場合、先行車両充電終了などによる余力を受け入れることもできません。
現在、テスラ車がこのダイナミックコントロール非対応車により低出力充電になっているのか、別の原因があるかを確認しております。
●最新型の急速充電器で、市販車種とこうした齟齬が起きる原因や今後の対応策について、お考えがあればご教示ください。
原因としては、最新型の充電器には、CHAdeMOのver変更、OCPP認証、複数充電口によるパワーシェアリング、ハイカレント機能などの追加が図られますが、車両側では最新充電器の開発動向を把握しているわけではなく、最新型充電器による互換性確認が行われなかったものと思われます。
レガシーカーはバージョン変更の実施状況が異なり、個別車両による充電可否が発生する可能性があったとしても、複数台の試験車両入手や手配も難しく、一定の試験で使用した車両が可の場合はスルーされてしまいます。
対策としては
●事前の互換性確認試験を多種複数で確認。
(レガシーカーもあり、限度はありますが)
●CHAdeMO協議会を通じて不具合事象の共有。
●OCPP導入による不具合時の充電器状態の早期把握。
により、不具合発生の防止、発生後の早期対応を図ってまいります。
※Q&Aここまで。
ダイナミックコントロール非対応が原因の場合は、テスラ車の課題解決はかなり難問のような気もします。ともあれ、こうした質問に即日で回答くださったのは、eMPが誠実に課題解決に取り組んでいる証左ではないかと思います。一日でも早く、みんながハッピーに利用できる新型器になることを願います。
旧型リーフは、大丈夫でした!
ご担当者から質問への回答メールをいただいたのは17日の21時過ぎ。はたして、旧型リーフはチャデモ2.0なんていうありがたい最新バージョンに対応してるのか? というのも気になったので、18日土曜日の朝、マイカーのZE0リーフ(30kWh)でもう一度大黒PAに行ってみました。
結果は、何も問題なし。30分で21%から94%まで、15.5kWhを充電できました。16日の取材時にはうっかり写真を撮り忘れていた充電器の充電結果表示画面も紹介しておきます。充電中の出力は表示されないですが、最終的な充電量はこの画面で知ることができます。
新型器設置場所はPA駐車場から本線へ出る最奥部。『フォンターナ・ダイコク』と名付けられたスペースで、コンビニやトイレなどがすぐそばにあって便利です。だからこそ、でもあるのでしょうが。土曜日の朝8時頃、6区画の充電器駐車スペースには、コンビニなどを利用するエンジン車が続々と駐車してました。この場所はもともとコンビニ用駐車場みたいになっていたようだし、まあ、そうなるだろうなぁ、って感じではあります。一番奥のワゴン車は、私が到着する前から充電が終了して立ち去るまで、ずっと停まったままでした。きっと、このドライバーさんにとっては以前からルーティンの朝食スポットだったりするのでしょう。
おまけに、駐車区画の地面にはタバコの吸い殻を入れた飲みかけエナジードリンクの空き缶が放置してあったりもして。この空き缶放置は充電した人の仕業ではないと思いますが、EVユーザーのみなさん、マナーはちゃんと守って利用しましょう、ね。新型器をはじめとする充電インフラとEV普及で、世の中の当たり前が変わっていくといいな、と思っています。
(取材・文/寄本 好則)










