次世代モビリティソリューションを開発する「Desay SV」日本法人代表に直撃インタビュー/SDV開発における困難なハードルとは?

神奈川県横浜市で開催された「人とくるまのテクノロジー展2026」の会場で、中国の大手自動車エレクトロニクス企業Desay SVの日本法人、Desay SV Automotive Japan代表取締役の川崎高輔氏にインタビュー。電気自動車をはじめとする次世代自動車技術のポイントを探ります。

SDVを支える中国の国有企業

Desay SV(恵州市徳賽西威汽車電子股份有限公司)は、1986年に中国で設立されたモビリティテクノロジー企業です。車載インフォテインメント、スマートコクピット、先進運転支援システム(ADAS)、コネクテッドサービスなどを手がけています。近年はソフトウェアとハードウェアを統合した次世代モビリティソリューションの開発に注力しています。

同社は中国・広東省恵州市に本社を置き、世界各地に研究開発拠点や生産拠点を展開。グローバルで1万人を超える従業員を擁し、多くの自動車メーカーへ製品を供給しています。スマートコクピット、統合型運転支援、コネクテッドサービスを3本柱とし、自動車の知能化やコネクテッド化を支える技術開発を進めています。

また、近年はAIを活用した車載システムや高性能コンピューティングプラットフォームの開発を強化しており、世界初の量産可能なインテリジェントコンピューティングプラットフォーム あるいは 世界初の量産型スマート中央コンピューティングプラットフォーム「ICP Aurora」を発表するなど、自動車のソフトウェア定義車両(SDV)化に向けた取り組みも積極的に進めています。

日本法人代表の川崎氏に直撃インタビュー

日本法人、Desay SV Automotive Japan代表取締役の川崎高輔氏にお話を伺うことができました。一問一答スタイルで紹介します。

Q. 御社の主なビジネス領域について教えてください。

当社はモビリティ分野のエレクトロニクス企業で、大きく3つの領域に軸足を置いています。ひとつはインテリジェントドライビング、いわゆるADASですね。2つ目がインテリジェントコックピット、そして3つ目がコネクティビティ。この3つを柱に事業を展開しています。

Q. ADASというと、自動運転も含まれるのでしょうか?

はい、運転支援から自動運転までをカバーしています。ハード、ソフト、ミドルウェア、アプリケーションまで一通り、自社で対応できる体制です。

Q. かなり内製化されているんですね。

そうですね。ただ、お客様によっては『ソフトだけ』『ハードだけ』といったご要望もありますので、そのあたりは柔軟に対応しています。フルスタックを前提にするわけではありません。

トヨタやホンダの量産車にも先進技術部品やシステムを供給

Q. 日本メーカーとの取引状況はいかがですか?

2013年にマツダ様とのビジネスが始まりまして、その後トヨタ様向けにも量産供給(おもに中国市場において)を行っています。現在はホンダ様も含めて、複数のプロジェクトが動いていますし、今後はさらに広がっていく見込みです。

Q. 日本での開発体制はどうなっていますか。

日本にも拠点がありまして、セールス、エンジニア、プロジェクトマネジメントと、一通りの機能は揃えています。開発の中心は本社になりますが、日本側はお客様との橋渡し役として重要な役割を担っています。

Q. ADAS開発で難しい点はどこにありますか?

アルゴリズム開発が一番大変だと思われがちなんですが、実際にはデータ収集がいちばん難しいですね。とくに道路データは重要ですし、国ごとに規制も違います。

Q. どのような制約があるのでしょうか?

たとえば、日本で取得した生データをそのまま海外に持ち出すことはできません。国家安全保障の観点で規制されているためです。ですので、地域ごとにデータを集めて、それぞれで開発する必要があります。

Q. それはかなり大きな制約ですね。

ええ。グローバル展開を考えると、この点が一番のハードルになっています。

SDVの進化について

筆者も認識していなかったですが、地図データなどの生データを海外に持ち出して、そこで加工するなどの開発方法はどの国でも禁止されているとのこと。つまり、ナビはもちろん自動運転のための開発は、運用しようとする国で行わなくてはならないため、そうした開発を行う企業はいずれも現地法人が必要とのことです。

さらに、AI活用などSDV技術について質問しました。

Q. インテリジェントコックピットについて教えてください。

従来はメーターやディスプレイがそれぞれ独立していましたが、今は統合が進んでいて、大画面で一括操作する流れになっています。加えて、音声やジェスチャーによる操作といったマルチモーダル化も進んでいます。

Q. 音声操作の進化にはAIが関係しているのでしょうか?

はい。AIを使うことで、あらかじめ決められたフレーズだけでなく、自然な言い回しでも認識できるようになります。使っていくうちに学習して、ユーザーごとに最適化されていくのも特徴です。

Q. 今後はどう進化していきますか?

現在はAI 2.0の段階ですが、今後はAI 3.0へ進んでいきます。車単体ではなく、社会やインフラと連携しながら最適化していくイメージですね。渋滞や事故の削減にもつながると考えています。

Q. 音声認識にはAIが使われているものと、AIは使わないものがあるのでしょうか? もしそうなら、AIが使われているかどうかの判別方法はありますか?

はい、AIを使っているものと、使っていないものがあります。AIを使っていないタイプはあらかじめ設定された音声コマンドにのみ対応しますが、AIを使っているタイプはフワッとした質問にも反応します。

たとえば「今日はあまり気分がよくないです」と言ったような質問をしたときにアドバイス的な返事があるものはAIを使っています。AIで認識するタイプはどんどん学習していきますので、最初は理解できなかったような言い回しや設定意図でも、学習を通じて徐々に理解できるようになります。たとえば、初期状態では「行きたい」が目的地設定のことだとわかっていなくても、徐々にそうしたことを理解していくようになります。

Q. コネクティッド分野についてはいかがでしょうか?

当社のコネクティッド分野はソフトウェアの領域となります。通信モジュールの上にアプリケーションが乗っていて、音楽や映像、各種サービスを統合したエコシステムを構築しています。

Q. ADASとの連携も重要になりそうですね。

おっしゃる通りです。車両データや通信を活用して、より高度なサービスにつなげています。

Q. 今後の技術トレンドについて教えてください。

今後は「中央演算ドメインコントローラー」による統合が進みます。これまで分散していた機能を一元化していく流れですね。そのためには、ハードとソフトを一体で設計する必要があります。

Q. 御社の強みが活きる部分ですね。

そうですね。ADAS、コックピット、コネクティッドを横断して提供できる点は強みだと思います。今後はTier 0.5、つまり完成車メーカーとサプライヤーの中間のような立場で、車両全体のアーキテクチャ設計にも関わっていきます。

Q. 最後に、グローバル展開の課題について教えてください。

いまは北米とそれ以外で市場が分断されつつあります。とくに通信やソフトウェアは規制が厳しく、同じ仕様をそのまま世界展開するのが難しくなっています。

Q. 地域ごとの最適化が必要になるわけですね。

そうです。本来は共通化してコストを下げたいのですが、現実には難しく、地域ごとに仕様を分ける流れが強まっています。

(インタビュー、ここまで)

エレクトロニクス企業の存在感が拡大

ADAS、コックピット、コネクティッドという3つの領域を軸に、モビリティは急速に「ソフトウェア定義型」へとシフトしています。そこで問われるのは単純な技術力だけではなく、各国の規制にどう対応するか、そして複雑なシステムをどう統合していくかという力です。

今回のインタビューからは、次世代モビリティの競争軸が確実に変わりつつあることが見えてきました。来たるべきSDV時代において、こうしたエレクトロニクス企業の存在感は、今後さらに高まっていきそうです。

中国企業はソフトウェア開発においてリードしているとのことですが、安全保障の観点からすべて中国国内ではできず現地法人が必要というのも、一見すると当然にも思えますが、実際に話を聞くことで、その背景にある規制や開発体制の重要性がよく理解できました。

取材・文/諸星陽一

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アンケートのコメントに対する返信ですが、社内のAIの期待はインフラと連携をしたっていうところに入れましたが、渋滞などはもちろん、充電インフラ関連も欲しいですね。

例えば、ナビで設定して充電スポットに立ち寄る場合ですが、その充電スポットの満空情報だけじゃなく、他の車のナビで立ち寄る情報を充電スポット側などが認知していて、どの時間帯にどれぐらい使われそうなのかも判断して、一番有益な充電スポットを選んでほしいところですね。

当然、「食事」や「仮眠」「トイレのみ」「買い物」などのドライバーの用途、好みにも合わせるのは、もちろん、 日差しで直射日光が当たるとか雨のときなどで屋根付きを選びたいと、車室の幅や重量制限などいろんな面を考えてくれたらありがたいかも

もし、混雑してしまった場合、将来的には充電の順番なども管理できればよいかな。そのシステムを持ってない人はアプリや現地で予約する感じ。

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