結論:簡単に「石油からガソリン作って車走らせたほうが効率が良い」とは言えません。また同一車格で二酸化炭素の排出量を比較すると、中国・四国・沖縄以外では常に、電気自動車のほうがCO2排出量が少なくなります。電気自動車はある程度エコだと言えます。
【2018年1月19日更新】このトピックもやはり数字に基づかない、感情的な議論をよく見ます。この記事を書くにあたってはできる限りデータに基づいて、かつある程度計算はシンプルにし、どなたにでも比較ができるように注意してみました。
目次
そもそもエコって何だろう?
エコというと、まずはお金を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか?自動車に関しては、購入するときの価格、維持費、そして燃料代(電気代)ですよね。この記事では、これらは対象から外します。電気自動車が得かどうかについて、ガソリン代と電気代の比較の記事がありますので、ご参考になさってください。次にエコというのは、資源を無駄にしていないか、という観点があります。例えば、車はガソリンで走りますよね。このガソリンの元は原油です。この原油を使うと発電もできます。じゃ原油で発電してその電気を家庭まで送って、自宅で充電して走らせる電気自動車は資源が無駄になっている気がしませんか?
実はそんなことはないのですが、やはり数字で見ないと納得がいかないと思います。次のセクションで説明します。
環境について興味をお持ちの方は、二酸化炭素について気にされている方もいらっしゃいますよね?実は、ガソリン車の「排出(emission)」は二酸化炭素だけではなく、一酸化炭素、窒素酸化物、硫黄酸化物、そしてPM2.5を含む粒子状物質です。最近都内でも発生した光化学スモッグはこの窒素酸化物が原因となっています。当記事では、二酸化炭素以外の排出についても対象から外します。
さてこの二酸化炭素(CO2)、増えると地球温暖化の原因になるらしいです。そして、ガソリンを燃やして走るガソリン車はもちろんCO2を排出しますが、電気自動車は、電気を充電して走行するときは何も排出がありません。電気を発電するときは、発電方法にもよりますが、やはり多くの場合CO2の排出があります。
資源の無駄の観点とCO2の排出について、もう一つ面白い事実をご紹介します。化石燃料を燃やすとCO2が発生しますよね。このCは、化石燃料に含まれているのです。例えば太陽光発電で発電しても、CO2は発生しません。もし電気自動車のほうがCO2排出が少ないとしたら、どういうことなのでしょうか?それは、同じ距離を走行する場合、電気自動車はガソリン車より「少量の」化石燃料しか使っていないという事実を示しているのです。
当記事では、資源を無駄にしていないのか、そして二酸化炭素の排出が多くないのかという二つの観点から、電気自動車がエコかどうかを見ていきたいと思います。
発電電力量構成比とは
電気を発電するといっても、様々な発電方法があります。皆様に馴染みの深いものから並べると、石油・石炭・液化天然ガス(LNG)・原子力・水力・そして太陽光や風力・地熱などの新エネルギーがあります。このうち、水力と新エネルギーを合わせて再生可能エネルギーと呼んだりもします。
そして、日本国内の各電力会社10社は、これらを組み合わせて発電を行っています。各社ごとに、石炭に依存している会社、LNGに依存している会社があります。
※発電電力量には他社融通分を含みます。また公表されていないデータなどもありますので、実際に販売した電力量ではなく、ここでは発電電力量を使用します。
さて、この電力がどのような方法で発電されたかを、発電電力量構成比といいます。データは2015年度の数値です。各電力会社名をクリックすると、元データが見られます。
| 1 | 電力会社 | 発電電力量(GWh) | 石油 | 石炭 | LNG | 原子力 | 新エネ等 | 水力 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2 | 北海道電力 | 31,684 | 26% | 51% | 0% | 0% | 7% | 16% |
| 3 | 東北電力 | 82,209 | 4% | 40% | 36% | 0% | 10% | 10% |
| 4 | 東京電力 | 265,591 | 6% | 18% | 67% | 0% | 3% | 6% |
| 5 | 中部電力 | 131,868 | 1% | 24% | 61% | 0% | 7% | 7% |
| 6 | 北陸電力 | 30,372 | 7% | 64% | 0% | 0% | 3% | 26% |
| 7 | 関西電力 | 138,054 | 15% | 25% | 44% | 1% | 3% | 12% |
| 8 | 中国電力 | 61,778 | 9% | 56% | 23% | 0% | 5% | 7% |
| 9 | 四国電力 | 28,192 | 18% | 55% | 7% | 0% | 8% | 12% |
| 10 | 九州電力 | 85,488 | 8% | 32% | 33% | 10% | 11% | 6% |
| 11 | 沖縄電力 | 8,581 | 6% | 65% | 24% | 0% | 5% | 0% |
次に、これらの電力を発電する際、CO2が発生します。でも太陽電池で電気を起こしたらCO2は出ませんよね??実は少しだけですが出るのです。太陽電池パネルを生産したり、設置したり、メンテナンスしたりするときにCO2が発生します。ここでは、新エネルギーのCO2排出量として太陽光発電の値を使います。また、LNGは大きく分けて旧型と新型のコンバインドサイクルというのがあるのですが、旧型の数値(=CO2をたくさん排出)を使います。
各発電方式別のCO2排出量は、g-CO2/kWhという単位で表します。1kWhの電力量を発電したときに排出されるCO2のグラム数です。なんか小さい数字になってきましたね!これをライフサイクルCO2排出量といいます。では見てみましょう。元データは電気事業連合会:原子力・エネルギー図面集です。
| 石油 | 石炭 | LNG | 原子力 | 新エネ等 | 水力 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ライフサイクルCO2排出量
(g-CO2/kWh) | 738 | 943 | 599 | 20 | 38 | 11 |
上記二つのデータを使って、電力会社ごとのライフサイクルCO2排出量を計算してみましょう。ついでに各社の石油による発電量も計算します。
| 1 | 電力会社 | g-CO2/kWh | 発電電力量(GWh) | 石油による発電量 | 石油依存率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2 | 北海道電力 | 677 | 31,684 | 8,238 | 26% |
| 3 | 東北電力 | 627 | 82,209 | 3,288 | 4% |
| 4 | 東京電力 | 617 | 265,591 | 15,935 | 6% |
| 5 | 中部電力 | 603 | 131,868 | 1,319 | 1% |
| 6 | 北陸電力 | 659 | 30,372 | 2,126 | 7% |
| 7 | 関西電力 | 613 | 138,054 | 20,708 | 15% |
| 8 | 中国電力 | 735 | 61,778 | 5,560 | 9% |
| 9 | 四国電力 | 698 | 28,192 | 5,075 | 18% |
| 10 | 九州電力 | 565 | 85,488 | 6,839 | 8% |
| 11 | 沖縄電力 | 803 | 8,581 | 515 | 6% |
| 12 | (合計) | 627 | 863,817 | 69,603 | 8% |
1kWhあたり最もCO2の排出量が大きいのは沖縄電力。原子力発電所も水力発電所もゼロなのが効いてきていますね。逆に排出が少ないのは東京電力・中部電力と九州電力。水力発電が少ないので排出が多そうですが、実はこの3社、石炭火力への依存度が低いのですね。石炭は安いらしいのですが、どうしてもCO2排出が増えてしまうので、悩みどころなのだと思います。
ガソリンと電気、どっちがエコ?
石油で発電してその電気を家庭まで送って、自宅で充電して電気自動車を走らせると、資源が無駄になるのでしょうか?
何かそんな気がしますね!
ちょっと待ってください。石油で発電?
石油に最も依存しているのは北海道電力の26%が最高で、北海道電力は51%を石炭に頼っています。実は石油は発電方式ではマイナーな存在だったのです。先ほどの最後の表を見てください。石油による総発電電力量は69,603GWh、日本全体の総発電電力量は863,817GWhですから、石油依存度は8%にしか過ぎません。そうなんです。原子力発電が5基しか稼働していない今、日本の発電は石炭とLNGに頼っているのです。再生可能エネルギーによる発電所が増えれば、石油依存度はさらに低下します。
電気自動車は様々なエネルギーで発電した電気で走っています。2015年8月、九州電力川内原子力発電所が再稼働しましたが、その電気も九州では使います。またご自宅に太陽光パネルを設置されていらっしゃる方は、その電気で、CO2をほとんど発生させず走行することができるのです。
そのため、一概にガソリン車と電気自動車、どちらが資源を無駄にしているか判断するのは難しいのです。
同一車格によるCO2排出量の、地域ごとの比較
ここまでで、電気自動車がエコかどうか、資源の観点から見てきました。それでは最後に、実際に販売されている4台の自動車の実際のデータを用いて、地域ごとにCO2排出量を計算してみましょう。単位はg-CO2/km、すなわち、自動車を1km走らせたときに排出されるCO2のグラム数です。これは簡単ですね!
クルマのCO2排出量は、燃費・電費(電気自動車の燃費を電費と呼びます)に依存します。ガソリン・電気をたくさん食うと、CO2がたくさん排出されるのです。そして、当然のことですが、小型の車はガソリン・電気を少ししか使いませんので、CO2は少ししか排出されません。今回は同じくらいのサイズ・同じくらいの価格・同じくらいの車格の車ということで、トヨタ新型プリウス(ZVW51)と日産リーフ、レクサスLS600h(UVF45: ハイブリッド車です)とテスラモデルSを比較してみます。燃費データは以下となります。電気自動車は平均電費データというものがあまりありませんので、筆者の経験とヒアリングによるデータを使用しました。電気自動車は夏と冬で大きく電費が変化しますので、ほぼ中間値を使用します。またガソリン車はe-nenpiサイトの実燃費データを利用しました。
| 1 | 車名 | 燃費・電費 | コメント |
|---|---|---|---|
| 2 | 日産リーフ | 7 km/kWh | 通年を想定 |
| 3 | テスラモデルS | 4.5 km/kWh | 通年を想定 |
| 4 | トヨタプリウスZVW51 | 23.43 km/l | e-nenpi実燃費データ |
| 5 | レクサスLS600h UVF45 | 7.18 km/l | e-nenpi実燃費データ |
CO2排出量ってどうやって計算するんでしょうか?
先ほど、ライフサイクルCO2排出量、というものを計算しましたよね。それを使うのです。1kWhの電力を走行に使えば、相当するCO2が発電所から排出されます。この排出量を電費で割れば、1kmあたりのCO2排出量が計算できます。例えば北陸電力は659g-CO2/kWhですから、リーフ7km/kWhを当てはめると、1km走行当たり659/7=約97gのCO2が排出されることになります。
ガソリン車は、もっと簡単です。ガソリンを1リットル消費すると、CO2は2,320g排出されます。これを燃費で割り算するだけです。この排出量は地域で変動しませんので(もちろん燃費は地域で多少違うでしょうね=今回は考慮しません)、全地域同じ値になります。
| 1 | 電力会社 | 1km走行時CO2排出(g) | |||
|---|---|---|---|---|---|
| 2 | 日産リーフ | テスラモデルS | トヨタ新型プリウスZVW51 | レクサスLS600h UVF45 | |
| 3 | 北海道電力 | 97 | 150 | 99 | 323 |
| 4 | 東北電力 | 90 | 139 | 99 | 323 |
| 5 | 東京電力 | 88 | 137 | 99 | 323 |
| 6 | 中部電力 | 86 | 134 | 99 | 323 |
| 7 | 北陸電力 | 94 | 146 | 99 | 323 |
| 8 | 関西電力 | 88 | 136 | 99 | 323 |
| 9 | 中国電力 | 105 | 163 | 99 | 323 |
| 10 | 四国電力 | 100 | 155 | 99 | 323 |
| 11 | 九州電力 | 81 | 126 | 99 | 323 |
| 12 | 沖縄電力 | 115 | 178 | 99 | 323 |
さてどうでしょうか?
いくつかのことが言えると思います。
- リーフと新型プリウスの排出量は、平均的に見れば若干リーフのほうが少ない
- モデルSは、レクサスLS600hの約三分の一のCO2を排出する。車両が大型になると、ガソリン車の燃費が相対的に悪化するのに対し、電気自動車は悪化の度合いが少ない
- 沖縄のように、石炭発電依存度の非常に高い地域では、リーフより新型プリウスのほうがCO2排出量が少ない
- 今後、再生可能エネルギーの割合が増加すれば、電気自動車のCO2排出量は減少する





