いよいよスズキ製の軽EVが動き出しました。スズキは2026年8月24日、軽自動車初となるバッテリーEV「eSKY(イースカイ)」のティザーサイトを公開し、「秋」の発売に向けて本格的に始動しました。一足先にプロトタイプに試乗した印象などをレポートします。
スズキだからこそ実現できた「日常使い」の性能とは?
スズキが2026年秋の発売を予定している軽EV「eSKY(イースカイ)」のプロトタイプ試乗会に参加してきました。結論から言えば、奇をてらわず、軽自動車らしい使い勝手をそのままEVに落とし込んだ、実に「ちょうどいい」クルマという印象です。
試乗前のプレゼンテーションで、チーフエンジニアの津幡知幸氏は、eSKYの開発姿勢を「EVである前に軽自動車である」と強調しました。日常の足として今まで通り使える軽自動車に、EVならではの快適さを加える。その考えのもとで導き出されたのが、一充電走行距離310kmという数字です。単純な通勤や買い物の往復だけでなく、少し遠回りしたり、週末に隣県まで足を伸ばしたりする使い方までちょうどよくカバーしつつ、実用としては200km走れることを目標に開発したとのこと。
大きな電池を積んで航続距離を稼ぐのではなく、車両全体の効率を高めることでたくさん走る性能を実現しようとしているあたりがスズキらしいアプローチです。交流電力消費率は97Wh/kmで、現在国内で販売されているEVの中でもっとも電費の良いレベル(スズキ調べ)とのこと。
軽EVに大きなバッテリーを積む必要はないと思っていますが、EVに乗り慣れた人でもメーター表示が100kmを切ってしまうのは、エンジン車でいえばエンプティランプが点灯した状態で走っているような感じで、あまり気持ちのいいものではありません。「実用で200km」であれば、日常使いの中で航続可能距離表示が100kmを下回るケースは少ないはず。軽EVとして実用200kmの航続距離、26kWhというバッテリー容量は、絶妙なさじ加減だと感じます。
充電性能は急速充電50kW、普通充電6kWに対応し、エアコンにはヒートポンプを採用しています。実用的に十分な性能といえるでしょう。
キャッチフレーズは「Easy to Switch!」
開発コンセプトとして掲げられているのが「Easy to Switch!」というキャッチフレーズです。「いつもの軽から無理なくEVへ。毎日を変えずに走りを変える」。つまり、今、軽自動車に乗っている人が、生活スタイルを変えずに乗り換えられるクルマを目指したということです。
デザインについては、エクステリア、インテリアともに「SMART」「ICONIC」「COZY」という3つのキーワードに沿って紹介されました。エクステリアのSMARTは洗練さと安心感、軽快感を与えるスマートな造形、ICONICは流行に左右されないタイムレスなデザイン、COZYは親しみやすく穏やかな相棒のような印象を表現しています。フローティングルーフや、アッパーグリルを設けない親しみやすいフロントフェイスも特徴的です。
インテリアのSMARTは先進的なワイドディスプレイ、ICONICは陶器のようなトレーを組み合わせた温かみのあるインパネデザイン、COZYは乗員を包み込むラウンドした空間として表現されています。新色「イマージョンブルー」や、車体色と連動するCピラーカラーパネルなど、EVらしい先進感を演出するディテールも盛り込まれていました。
プロトタイプ試乗で感じた気持ちよさ
車両の土台となるのは、軽EV専用に新規開発されたプラットフォーム「HEARTECT e」です。最小回転半径は4.4mと、ガソリン車を含めてもトップクラスの取り回しの良さを実現しています。
スズキが長年掲げてきた開発コンセプト「小・少・軽・短・美」を、eSKYは気持ちよく実現してくれていると感じました。実際にサーキットのコースを走らせてみても、剛性感などに不安を覚える場面はなく、パイロンスラロームもスムーズに、気持ちよく走り抜けることができました。
「少ない電気でたくさん走る!」という目標の成果を実感
サーキット走行の中で、そこそこスピードは出しながらも少し電費を意識した走りを試したところ、1周走り終えた時点でメーターの電費が「10.1km/kWh」を示していました。他車種と条件をそろえた比較をしたわけではありませんが、シンプルに「お。電費いいね!」という印象です。
この数字を支えているのが、モーターとインバーター、ギアを一体化したコンパクトで軽量な「3in1」構造のeAxleと、軽自動車トップレベルを目指したという空力性能です。大きな電池に頼るのではなく、車両全体を作り込んで効率を高める。まさに軽自動車で培ってきた技術の成果だと感じます。
価格は補助金抜きで「200万円程度」を期待!
試乗後の懇談では「価格はいくらくらいを期待するか」という質問もありました。タイミング的にベンチマークとなるのは、今年発売されたBYD「RACCO(ラッコ)」でしょう。その場では「補助金抜きで、RACCOの中間グレードよりも安いといいですね」と答えました。
中間グレードの「RACCO 300 Plus」は、価格が239万8000円、バッテリー容量35.84kWh(航続距離約320km)というスペックです。RACCOはバッテリー容量が大きく、電動スライドドアなど装備もてんこ盛りであることを考えると、eSKYが200万円を切れるかどうかが注目のポイントになりそうです。
| eSKY(試乗車スペック) | BYD RACCO 300 Plus | |
|---|---|---|
| 価格(税込) | 未発表(期待値:200万円程度) | 239万8000円 |
| バッテリー容量 | 26kWh | 35.84kWh |
| 一充電走行距離 | 310km | 約320km |
| 急速充電 | 50kW | 49kW |
| 普通充電 | 6kW | 6kW |
仮に価格が200万円で、CEV補助金が軽自動車最大の58万円になるなら、実質価格は142万円。エンジン車からの乗り換えにも十分魅力的な水準です。なお、本記事で紹介する数値はプロトタイプ試乗車のもので、市販時までに変更の可能性がある参考値です。
いずれにしても、軽EVとして必要十分な「ちょうどいい」性能を備えた新型モデルが登場することに意義があります。RACCOを含め、新車でも魅力的な価格設定のコンパクトなEVが街に増え、数年後に中古車市場を賑わすようになった時、日本のEV普及がようやく本格的に広がり始めるのではないかと期待しています。
取材・文/寄本好則










