ショッピングモールへ出かけるついでに充電するか、それとも家で充電を済ませるか……。EVオーナーであれば直面しがちな日常的な判断が、実は将来のV2Xエネルギーマネジメント社会実装のカギを握っています。名古屋大学の研究チームが、EVオーナーの「リアルな判断」をデータ化するための大規模アンケートを実施します。みなさんの協力をお願いします!
太陽光の電気を活用した蓄電池を地域のEVユーザーが共同利用
アンケートを実施するのは、名古屋大学大学院工学研究科 機械システム工学専攻、鈴木達也教授の研究室(公式サイト)です。鈴木教授は1991年に名古屋大学で工学博士号を取得して以来、自動運転や運転行動モデルなど「知能機械システム」を専門に研究してきた制御工学のスペシャリスト。2026年5月にはシステム制御情報学会会長にも就任しており、国内の計測・制御分野を代表する研究者(鈴木教授のホームページ)です。
エネルギーマネジメント研究への本格的な取り組みは、2015年にJST(科学技術振興機構)の大型プロジェクト「CREST」で採択された「エネルギー消費行動の観測と分散蓄電池群の協調的利用に基づく車・家庭・地域調和型エネルギー管理システム」に参画したのがきっかけでした。このプロジェクトを通じて、V2G(Vehicle to Grid)研究の世界的な第一人者であり、EVを活用したエネルギーサービス企業「Nuvve」を創業した米デラウエア大学のウィレット・ケンプトン教授と交流を深め、現在も共同研究を続けているとのこと。今回のアンケートは、こうしたエネマネ研究の一環です。
研究室が目指すのは、太陽光発電の余剰電力を活用する「共有蓄電池」を、ショッピングモールをはじめ駅や空港、公共施設、スタジアムといった大規模商業施設に設置して、地域のEVユーザーが共同利用するV2X(Vehicle to Everything)の仕組みづくりです。多くのEVが待ち時間なく充電できるよう利用順序や時間帯を定める「コミュニティの全体最適化」や、ユーザーが自然とその最適解に沿って行動したくなる「ナッジ」型のインセンティブ価格設計を見出すことを目指します。この価格設計を研究テーマとしているのが、博士課程の大野結人さん(プロフィール紹介ページ)。今回実施するアンケートの作成者でもあります。
EVユーザーのリアルな声がV2Xエネマネ社会実装のために必要
これまでのエネルギーマネジメント研究は、数式モデル上の「社会最適解」を計算するものが中心でした。しかし人間は必ずしも最適な行動を取るとは限りません。今回の研究の狙いについて、鈴木教授は「実際にEVオーナーの反応がどうなのかをうまくブレンドして、本当の意味で社会に実装できるシステムにしたい」とのこと。
そこで重要になるのが、価格や充電残量といった条件に対してEVユーザーが実際にどう反応するかという「需要」や「受容性」のデータです。大野さんも「充電価格とうまく組み合わせることで、EVユーザーにとっても、街にとっても、充電器を置く施設にとってもハッピーな世界をつくりたい」と話しており、最適解を見出すための第一歩が今回のアンケートというわけです。
アンケートへの協力をお願いします!
アンケートでは、年齢や性別、所有するEVなどの基本属性に加え、「休日にショッピングモールへ出かける予定があり、充電料金は時間帯などによって変動する」という状況設定のもと、現在時刻・充電残量・充電時間・移動時間・充電料金などの条件を変えた12パターンのシナリオが用意されています。
利用するのは急速充電器であることが前提。シナリオごとに変化する価格などの条件によって、充電に「行く」か「行かない」かを素直な感覚で選択していく設問なので、前提条件は理解した上で、あまり悩まずに回答するのがオススメです。
回答は匿名で処理されて、EVオーナーの行動原理を探求するデータとして活用されます。回答者の中から抽選で20名様に謝礼(1,000円分のEV充電エネチェンジ充電クーポン)をプレゼント。V2Xの社会実装を前進させるためにも、多くのEVオーナーさんが協力してくれることを期待しています。
●EVユーザーの充電行動に関するアンケート(フォームへリンク)
鈴木教授や大野さんがイメージしている電気自動車社会の可能性
オンラインで実施したインタビューでは、鈴木教授と大野さんに「電気自動車社会にどんな可能性を感じ、今回のアンケートに何を期待しているのか」聞いてみました。
鈴木教授は、EVを単なる乗り物ではなく「動く電池」と捉えています。「車は1日のうち数時間しか動いておらず、残りの20時間以上はどこかに停まっている。その停まっている時間のEVにどんな付加価値をつけられるかが普及にとって大事」であり、太陽光発電と連携させることで脱炭素と経済性を両立できる可能性に期待を寄せています。また、普及シナリオとしては「郵便配達やライドシェアなどスケジュール化しやすいビジネス用途から先に広がり、充電インフラが整うことで一般ユーザーへ波及していく」というビジョンを話してくれました。
大野さんは、もともと自動運転に関心があり、スマートシティやエネマネの研究へ。EVについては「脱炭素モビリティと経済性を両立するために大切だけど、充電インフラが課題になっている。EV普及にはEVユーザーの需要と受容性を的確に価格設計へ反映させることが、今後の研究のポイントになると考えています」とのこと。アンケートの最後に用意した自由記述欄には、EVオーナーが積極的に充電したくなる充電インセンティブのアイデア(ポイントや食事券とか)など、「EVと充電インフラの普及に向けた自由な意見を寄せてほしい」(大野さん)と期待しています。
V2X商用展開に向けた解決すべき課題とは?
V2Xの社会実装に向けた最大の課題は、やはり「いくらでEV充電を提供すれば施設側、ユーザー側の双方が納得できるか」という価格設計だと鈴木教授は指摘します。需給状況やユーザーの生活リズムに応じてどの程度の価格にして、どんなインセンティブを設定すべきか、まだ確立した答えはないのが実情。今回のアンケートは、まさに「人間は実際どうなのか」(鈴木教授)という、価格に対するリアルな反応を集めるためのものです。
「モビリティとエネルギーマネジメントの融合は、スマートコミュニティの実現にとって非常に重要なキーになる。その中心的なデバイスがEV」と話す鈴木教授。大野さんも「EVユーザーの皆さんがより快適に、より便利にシステムを使っていただけるよう、ぜひアンケートへのご協力をお願いします」と呼びかけています。名古屋大学の研究室へ、EVオーナーのリアルな声を届けましょう!
取材・文/EVsmartブログ編集部



