6月16日の販売開始を前に、日産サクラの受注が1万1000台を突破、プラットフォームを共用する三菱eKクロス EVが約3400台、合計でおよそ1万5000台を受注したことを、両社が相次いで発表しました。今年度のCEV補助金は軽自動車でも最大55万円。はたして、予算は足りるのでしょうか?
期待の軽EVがロケットスタート
魅力的な軽EVの発売が日本におけるEV普及の起爆剤になる、と思ってはいましたが。5月20日に発表された、日産サクラ、三菱eKクロス EVの先行注文が絶好調。6月13日には、日産サクラが「11,429台 (6月13日時点 日産調べ)」、三菱eKクロス EVが「約3,400台(6月12日時点)」を受注したことを、両社が揃って発表しました。
全国軽自動車協会連合会が発表している2022年5月の新車販売台数によると、1位のスズキ スペーシアが8670台です。もっとも、この数字は当月の「登録台数」なので、サクラ&eKクロス EVがこれからどのくらい生産&納車できるかが課題ではありますが、ロケットスタートと評していいレベルの支持を集めたといえるでしょう。
今年のCEV補助金総額は約400億円
経産省のCEV補助金は、令和3年度補正予算で375億円(65億円は充電インフラ、60億円は水素への補助)、令和4年度当初予算で155億円が計上されています。インフラ整備やV2H充放電設備、水素供給設備への補助、令和4年予算分では「高度な安全運転支援技術を備えた車両の上乗せ支援」などもあるので、全額が車両購入への補助金となるわけではないものの、総額で令和3年補正約250億円、令和4年約150億円で合計約400億円程度の補助金が用意されていることになります。東京都などではさらに自治体独自の助成事業(つまりは補助金)を行っており、国や自治体による補助金の存在が購入決意の後押しになった方も多いことでしょう。
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とはいえ、6月1日には、4月27日から受付を開始していた神奈川県の「EV導入費補助金」が「申込み多数につき、5月31日に到着した分をもって、受付を終了」すると発表されました。予算額は「5億7350万円の一部」で、補助金額は「車両購入費用の1/3または20万円のいずれか低い額」。補助対象車両には5月20日時点でサクラ&eKクロス EVも記載。ほかに、日産リーフ、アリア、トヨタbZ4X、スバルソルテラ、Honda e など、輸入車ではヒョンデIONIQ 5、BYD e6など、給電可能なEVとPHEVが並んでいます。
(申請のタイミングも国とは異なり「登録や支払いの1カ月以上前に申請」となっていました)
考えてみれば、2021年6月には発表早々の日産アリアの限定モデルが、受付開始から10日間で約4000台の予約注文があったと発表されたし、IONIQ 5も受注開始日には予約サイトに繋がりにくくなるほどの人気ぶり。しかも、給電機能をもつアリアやIONIQ 5へのCEV補助金は、最大額の85万円です。
はたして国のCEV補助金は、サクラ&eKクロス EVを注文した人全部にちゃんと行きわたるのでしょうか。ざっくり計算しつつ、補助事業の執行団体(事務局)となっている一般社団法人次世代自動車振興センター(NeV)にいくつか質問してみました。
軽EVが1万台で55億円
まずは台数×補助金額の皮算用です。今年施行されているCEV補助金の対象期間は、購入した車両の初度登録が令和5年(2023年)2月17日までと規定されています。サクラ&eKクロス EVの販売開始は6月なので、6〜2月の約9カ月間の登録車両が対象ということになります。両車を生産する水島製作所のポテンシャルや搭載するバッテリーの調達計画はよくわかりませんが、仮に月間2000台を生産し納車されるとして、9カ月×2000台=1万8000台が補助対象となります。
ちなみに月間の販売目標台数は、日産サクラは非公表ですが、三菱eKクロス EVは850台とされているので、合わせて月に2000台くらいは作る計画であろうと推察します。
軽EVへの補助金額は上限45万円、さらに「A.車載コンセント(1500W/AC100V)から電力を取り出せる給電機能がある車両」「B.外部給電器やV2H 充放電設備を経由して電力を取り出すことができる車両」のどちらかの条件(給電できる)を満たす車両の場合、上限額が55万円となり、サクラ&eKクロス EVはともに上限の55万円です。
ということで、サクラ&eKクロス EVへの補助金総額は、55万円×1万8000台=99億円、という試算になりました。
ただし、補助対象のEVは軽だけではありません。普通車にも給電機能の有無などの条件で上限額の規定があります。輸入車に多い給電機能なしの場合は最大65万円。日産リーフ、アリア、トヨタbZ4X、スバルソルテラ、Honda e、ヒョンデIONIQ 5など給電機能がある車種は最大85万円。さらに、日産アリアでプロパイロット2.0搭載車は「高度な安全運転支援技術を装備する車両」として7万円加算された92万円という補助金額となっています。
台数は当てずっぽうになりますが、テスラを含めた、補助金額65万円のEVが2月までに1万台登録されたとして、65万円×1万台=65億円です。
アリアの加算額はややこしくなるので度外視して、補助金額85万円のEVが、軽EVと同等で2月までに1万8000台登録されるとすると、85万円×1万8000台=153億円となる計算です。累計してみると、99億+65億+153億円=317億円、です。
あ、ただし、水島製作所や日産&三菱などがさらに奮起して、軽EVを月間1万台生産、とか、アリアを月間5000台納車、といった状況になると、この当てずっぽうな皮算用はすっかり変わってしまうのでご注意くだざい。
追記&訂正
コメントで「サクラ納車待ち」さんにご指摘いただいたように、PHEVを別に試算して加えるのを忘れてました。
PHEVへの補助金額は上限55万円。今年度対象期間の最初から2月までに2万台登録されるとして、55万円×2万台=110億円。先のBEV分と合計すると、317億+110億=427億円となり、総額の400億円を超えてくる計算になります。
当初記事で「昨年比でも大きく増額されたCEV補助金は、おそらく底を突くことなく支給されるのではないか」と予想しましたが、年内納車をこぼれると、次年度予算に期待! になるかも知れないですね。
NEVに聞いてみました
いくつか、ポイントについて、NeVに確認してみました。
●予算額に達したら申請受付は終了するんですよね?
はい。ご理解の通りです。登録台数などには関係なく、予算額に達したら終了となります。
●申請できるのは、原則「支払い&契約が完了」し「登録完了後」という理解で正しいですか?
ご理解の通りです。
一点、昨年までは領収書が必要でしたが、今年から、「ローン、クレジット、保証、割賦等の契約書(申込書は不可)を添付すれば、領収証は不要」となっています。
●現時点までの申請件数は?
現時点で公表できるようなデータはありません。ただ、予算の執行状況は随時監視しております。予算額満了が近づくようであれば、できるだけ早めのアナウンスをさせていただきます。
●今年度予算分が終了となったら、もう補助金はもらえない?
(来年度予算での救済措置は? とする質問に対して)申し訳ありません。来年度事業のことはNeVとしては分かりかねます。
ただ、過去の実績では、受付終了以降の登録については、基本的に次の事業の補助対象となっています。
EVが増えるのはいいけど、充電インフラ強化を
そもそも、今年度のCEV補助金は、軽EVの発売を予見して策定されたものでした。車種も増え、これだけの数のEVが世に出ることを支えるのに十分な額の補助金が用意されたことに感慨を覚えます。
ただし、日本の道に繰り出すEVが一気に増えるということは、かねてEVsmartブログでも繰り返し提言している「高速道路SAPAへの高出力(90kW以上)急速充電器の複数台設置」が、より火急の課題となることは明らかです。同じ予算枠の「充電インフラ補助金」も、経路充電に加え集合住宅などの基礎充電設備拡充を見据えた内容になっています。e-Mobility Powerをはじめ、集合住宅の建築や管理に関わるみなさんの、さらなる理解とアクションを期待しています。
一方で、補助金頼みのEV普及はどうなんだろう? という思いもあります。たとえば、テスラはアメリカで累計販売台数が20万台を超え、政府による税額控除の対象外となってからも売れ続けています。充電インフラに自動車メーカーがもっと関与することも必要ではないかとも感じるし。なにより、補助金がなくても価格的にも手頃で魅力的な電気自動車が登場することが、本当のEV普及を広げていくために大切であることは言うまでもありません。
バッテリー容量20kWhと控えめな軽EVがヒットしているのは、ここ数年の「電池大容量化」&「高級車化」の流れで進んできた電気自動車のあり方と一線を画するものだと思います。個人的にEVシフトを応援してきた中で、EVには「移動の脱炭素」を実現する力だけでなく、「移動の進化」を促す力があると感じてきました。端的に表現すると「エンジン車で享受してきた無駄な移動の楽しさ」から脱却して、「小さなバッテリーのEVで便利に暮らすためのライフスタイルを構築する」ということです。
改めて記事にしたいと思っているところですが、サクラ&eKクロス EVをオーダーした新たなEVユーザーのみなさんには、テスラ的な「エンジン車を超える利便」(これはこれで大好きですけど)ばかりに目を向けるのではなく、EVならではの新たなライフスタイルを楽しんでいただけるといいな、と思っています。
(取材・文/寄本 好則)




