EV用充電設備が日本一(推定)充実しているホテルに宿泊して考えたこと

テスラのスーパーチャージャーが設置されている長野市のホテルへ、モデル3で行ってみました。『ロイヤルホテル長野』の駐車場には、チャデモ規格の急速充電器と普通充電器2台も併設。滞在&充電中に考えた充電インフラの近未来についてレポートです。

別件取材の宿泊先にスーパーチャージャーが……

東京の緊急事態宣言がいったん解除されていた6月末、私がフリーランスのライターとして取材レポートを担当している環境省『グッドライフアワード』の環境大臣賞受賞取組の取材で、長野県長野市で宿泊する機会がありました。取材先である『野菜のカネマツ』があるのは、長野市内の松代町。先方と相談して決めた宿泊先は松代にある『ロイヤルホテル長野』でした。

ん? なんだか聞いたことがあるホテル名だな、と確認すると。そうです。駐車場にテスラのスーパーチャージャー(SC)長野が設置されているホテルです。当初は新幹線で長野まで行ってレンタカーを借りる計画でしたが、SCがあるホテルに泊まる機会はそうそうありません。電気自動車、というかテスラ車の使い勝手を自ら体感するためにも、急遽、EVsmartブログチーム社有車のモデル3を予約して、2泊3日の取材に行ってきました。

ロイヤルホテル長野の電気自動車用充電器

充電スポット検索サービスの『EVsmart』で確認すると、ロイヤルホテル長野には2件のスポットが登録されています。

長野スーパーチャージャー EV充電スタンド

テスラスーパーチャージャー 120kW/4台

Royal Hotel 長野 EV充電スタンド

CHAdeMO中速 30kW/1台

ケーブル付き充電器 2台

4台のテスラSCに加え、CHAdeMO急速充電器が1台、そしてeMP(e-Mobility Power)ネットワークの普通充電器が2台併設されています。全国各地でホテル駐車場にSCが設置されているケースはままありますし、SC仙台(仙台ロイヤルパークホテル)には20台の普通充電器が設置されているとかありますが、SC & CHAdeMO & NC を併設しているのはおそらく日本でここだけ、だと思います。

ロイヤルホテル長野を運営するダイワロイヤルホテルでは電気自動車用充電設備に早くから注力しており、CHAdeMO急速充電器1台と普通充電器2台は全国のチェーンホテルではデフォルトといっていいくらい設置されています。でも、さすがにテスラSCを備えているのは長野だけ。

普通充電器が2台だけなので、タイトルの「日本一(推定)」という評価はちょっと盛り気味ですけど、SC、CHAdeMO、普通充電器というバリエーションを揃えているという点で「日本国内ではトップクラスの充電環境を備えたホテル」と言えるのです。

滞在中の充電は2回でした

6月26日〜28日まで、2泊3日の旅程の中で、充電したのは2回だけでした。

【1回目】6月26日午前7時30分ごろ

●テスラSC

●約15分間/41%→75%

【2回目】6月27日午後18時ごろ

●普通充電器

●18時ごろ〜翌朝まで/62%→100%

東京(自宅)〜ロイヤルホテル長野までの距離は約220km。モデル3パフォーマンスではSOC(電池残量)50%くらいで走りきれる距離なので、往復とも経路充電(移動中の急速充電)は行っていません。

1回目、長野到着時にわざわざSCで充電したのは、この日、同じ長野市内ではあるものの、20km以上離れた山中にある自然栽培の畑を取材することになっていたから、念のためです。同行のカメラマンや環境省ご担当者(おふたりは事前の予定通り新幹線で長野へ)とは8時30分に長野駅で待ち合わせだったので、早めに着いて空いた時間で少しだけ注ぎ足しておこうという算段でした。

翌日は松代地区内だけの移動だったので1泊目の夜は充電なし。

2泊目の夜、ホテルに戻ってから翌朝までeMP認証の普通充電器に繋ぎ、残62%から満充電に。そのまま、昼過ぎまで近辺での取材を終えた後、無充電で東京のオフィスまで帰着しました。復路は全体として下りのルートなので、往路以上に余裕でした。

今回のクルマは電池容量75kWhとされるモデル3パフォーマンスです。長野への遠征くらい、まったく充電のあたふたはありません。たとえば、日産リーフe+や、もうすぐデリバリーが始まるアリア、各社の輸入高級EVでも同様の「使い勝手」で往復できるでしょう。

ただし、ある程度(目安としては50kWhプラスα以上、くらいですかね)の電池を積んだEVだからこそ、東京=長野の経路を無充電で一気に駆け抜けることができるのは、ホテルに「目的地充電」を可能にしてくれる普通充電器があったからです。

目的地充電インフラのあるべき姿

というわけで、片道200kmちょいという「ありがちだよね」な長距離行程で、SC、CHAdeMO、NCとバリエーションが揃った充電設備を備えたホテルを利用したことで、宿泊施設の電気自動車用充電設備について、いくつか「考えるべきこと」に気付くことができました。

CHAdeMO急速充電器はありがたいけど必須ではない

まず、テスラSCと並んで設置されていたCHAdeMO規格の急速充電器。最大出力は30kWのいわゆる「中速充電器」は、いざという時にはありがたいでしょうけど、ホテル(宿泊施設)にとって必ずしも必要な充電器ではありません。宿泊にしろ宴会などにしろ、ホテルに滞在する時間は長いので、充電の必要があったとしても30分の時間制限があるCHAdeMO急速充電はかえって面倒。基本的に時間制限はない普通充電器に繋ぎっぱなしにできるほうが便利です。

もちろん、いろんな人生が交錯するホテルという舞台なので、「15分だけちょこっと充電したいんだよ」というニーズが生じることもあるでしょうから、急速充電器を設置してくれているのはありがたいことです。でも、今後、宿泊施設をはじめとする「目的地充電」設備の拡充を進めるために、初期コストや運営コストがどうしても高額になる急速充電器が「足かせ」になるのは違うよね、ということです。

10年後、普通充電器が何台くらい設置されているべきか

宿泊施設に普通充電器があるのは、EVで長距離移動しようとするユーザーにとって本当にありがたいことです。ロイヤルホテル長野、そしてダイワロイヤルホテルのチェーンがおおむね1施設に2台の普通充電器を用意してくれているのは、とても素敵なことだと思います。でも、数年後には2台では足りなくなってくることでしょう。

欧米メーカーやホンダなど、世界の自動車メーカーが相次いでエンジンからの卒業を宣言しています。たとえば、今から10年後の2030年、日本国内でも約30%が電気自動車になると仮定してみます。ロイヤルホテル長野の駐車場収容台数は276台。そうそう満車になることはないでしょうから、150台が長時間駐車するとして、その30%は45台。すべての電気自動車がずっと充電するわけではないので、50%が充電するとしておおむね23台分(できれば同時に稼働できる)の普通充電器が必要、ということになります。

まあ、ひと晩で日本中の自動車がEVになる、というわけではないし、すでに2台設置されているロイヤルホテル長野であれば、今年から毎年2台ずつ増設していけば、2030年までに24台増設、合計26台の普通充電器が用意できる計算になります。

実際、日本国内でどのくらいの速度でEV普及が進展するかはまだ未知数ではありますが、多くの人が「EVの優位に気付く」ようになり、メーカーが本気で大衆EVを作り始めたら、現状では想像できないくらい、一気にEVへのシフトが進む可能性もあります。宿泊施設や商業施設など、目的地充電のスポットになり得る施設の方は、そろそろ自らの施設の電気自動車用充電設備のあり方を、本気で考えなければいけないタイミングになってきているといえるでしょう。

認証&課金の方法などはまだまだ進化の途上

今回の充電2回、まず、テスラのSCはプラグを挿すだけで認証&課金まで行ってくれるプラグアンドチャージで手間いらず。eMPネットワークの普通充電は、このモデル3のためにEVsmartブログチームで保有している日産『ZESP3』の充電カードで認証しました。加入しているプランは急速充電10回(100分相当)が月会費2750円(3年定期契約)に含まれた『プレミアム10』なので、普通充電の料金は無料です。

無料で充電できるのはありがたいことではありますが、個人的には「だから、まだダメなんだよな」と感じるところでもあります。

ご承知のように、ZESP3は月額2000円で急速充電し放題の「旅ホーダイ」で好評だった『ZESP2』を改訂して誕生したサービスです。日産が普通充電を無料としたのは、それまでのユーザーの充電データを解析して「普通充電はそんなに利用されてないから無料にしても問題なし」(想像です)と判断したからでしょう。

リーフユーザーとして言わせてもらうと、eMP(かつてはNCS)認証の普通充電器をあまり使わないのは「宿泊するホテルとかにそうそう都合良く充電器が設置されていなかったから」というのが最大の理由です。ZESP2から進化して誕生したはずのZESP3ですが、普通充電無料という仕組みは、目的地充電設備がまだまだ普及していない日本の現状を前提とした、ちょっといびつな制度と言えます。

認証や課金システムの根本的な改革は、eMPに期待するところ。今後は、eMPネットワーク以外にも、合理的な認証&課金方法を備えた普通充電器がリリースされて(いろいろと鋭意取材中です)広がっていく可能性もあります。朝起きて出発時、普通充電器のプラグを抜きつつ「無料で満充電にしてしまった気持ち悪さ」を噛みしめながら、日本の電気自動車社会の進展を願った(いや、きれいごとではなく本心で)のでした。

【追記】(2021年7月26日)

テスラSCや経路充電については、今までにレポートしたこちらの記事などもご覧ください。

スーパーチャージャー故障でテスラ モデル3も「ただの電気自動車になるのを実感」レポート(2021年7月17日)

テスラ『モデル3』長距離実走レポート:東京=兵庫【充電1回でOKだった!編】(2020年8月16日)

ジャガー I-PACE(アイペイス)で長距離実走レポート:東京〜兵庫【復路編】(2019年8月16日)

(取材・文/寄本 好則)