三菱の軽EV『eKクロス EV』で長野県白馬村で開催された「ジャパンEVラリー白馬」に参加。モータージャーナリストの諸星陽一氏が改めてEV充電を検証しつつ、各地の急速充電スポットでの気付きなどをレポートします。
日産ディーラーで感じた鋭い視線に困惑
白馬で行われる日本EVラリーには2022年同様、ekクロスEVでの参加となった。2022年は往路を高速道路、復路を一般道で走ったので、2023年はその逆、つまり一般道で白馬に向かい、高速道路で東京へ戻るという予定を組んだ。EVラリー主催者からの要望は金曜日の夜までに白馬に入り、土曜日の朝から試乗イベントに使うekクロスEVで白馬に行って欲しいとのこと。余裕をみて木曜日に出発し、途中で1泊しつつ白馬入りを予定した。
試乗車のekクロスEVは月曜日にピックアップ。一度充電してから自宅に保管し、木曜日朝に出発というスケジュールを組んだ。三菱自動車のEV系広報車両は葛飾区保管。筆者は中野区在住なので、葛飾から中野に帰る途中の三菱ディーラーでの充電を予定していた。このディーラーには充電器が2台あるので、充電に入って充電できないという状況を経験したことはない。今回もアウトランダーPHEVの先客がいたが、片方の充電器は空いていた。
ところが、このもう1台の充電器に難あり。ソケットのロック部分が破損していて通信不良で充電できず、結局あきらめざるを得ないという状況だった。ディーラーのスタッフの方もていねいに対応していただいたのだけど残念であった。このディーラーでのやりとり中にアウトランダーPHEVが2台来店。この充電器2台設置のディーラーも、いつも空いているという状況ではないようだ。
気を取り直して別の充電施設に向かう。近くで充電できるのは日産ディーラーとなる。日産ディーラーに来てみるとラッキーなことに待ちはなしで、充電を開始することができた。
充電を開始して、2~3分したところで充電目当てで来たらしきリーフが駐車スペースに入ってきた。すると、こちらに鋭い目線を向けてくる。こっちも三菱車を日産ディーラーで充電するのは若干の後ろめたさはあったけど、そんな目で見なくてもねー。こちらの考えすぎかもしれないけど、そういう感じを受けちゃう状況って、なんだかなあ、と思う。日産ディーラーの充電で容量は89%に達したのでこれでヨシとして、翌日の出発に備えた。
道の駅の充電器で思った以上の「力不足」を実感
木曜日。一般道で白馬に向かうにはまずは国道17号、そして国道18号を使うという道順だ。グーグルマップで確認するとルート上、埼玉県の本庄あたりには急速充電器が密集している。まずはこのあたりを目指して出発する。本庄に近づくとバッテリー残量は25%程度。充電するにはいい感じである。
数ある充電設備のなかから選んだのは「道の駅おかべ」。ルート上で比較的手前にあり、道の駅なのでトイレも使いやすいし、売店もあるという理由だ。しかしこれが大失敗。残22%から30分充電して45%にしか上がらない。
これじゃあ、ちょっともの足りないので日産ディーラーの「プリンス本庄」へ。昨日のイヤな経験からちょっと遠慮しようとも思ったのだが、着いてみると急速充電器は2台ある。これならあまりイヤな思いはしそうもない。結局、別のお客さんは来ず、40%から86%(8.3kWh)に充電できた。「道の駅おかべ」の30分は何だったのだろうと、呆然としてしまう。
「峠の茶屋」的急速充電器は維持してほしい
そのまま長野県を目指し国道17号、国道18号を走る。このルートでのクライマックスは碓氷バイパスである。けっこうな急勾配の登りが続く碓氷バイパスだが、登り口のローソンには急速充電器があると車載ナビに表示されている。こういうところの急速充電器は本当に大事だなと感じる。
江戸時代の街道などだと、峠の登り口に茶屋があって、そこで“力餅”を食べてから一気に峠を登ったという。このローソンの急速充電器は、まさに現代の“力餅”。ここで充電してから碓氷バイパスを上れば、あとは基本下りなので安心である……などと考えながらローソンにたどり着くと……なんと急速充電器がない。
土台らしきものはある。最近見かけることが増えてきた「急速充電器址」そのものだ。後で充電インフラに詳しい関係者に確認すると、2013年ごろからの補助金で設置した急速充電器には運用費への補助もあったのが廃止されたことから、撤去されるケースが増えているそうだ。稼働率が低くても、碓氷峠の登り口など「あってほしい場所」の急速充電器は維持してほしいと感じる。
この時点でバッテリー残量は40%、走行可能距離は54km。碓氷バイパス越えの距離は20kmだが、登り勾配を考えるとちょっと怖い。ここは大事を取って、Uターンして松井田妙義インターから上信越道に入り、横川SAで充電するのが安全策であると判断。一般道で白馬を目指すという計画はここで終了してしまった。横川SAでは30分で9.2kWhの充電が行えた。
この日は上信越道で佐久まで移動。一般道で上田に入り一泊。そもそも、車載ナビだけに頼るのもよくない。かといって、運転中にスマホをいじるのは違反。そこで上田の100円ショップで300円のスマホホルダーを購入して、クルマに装着してみた。これでばっちりだと思ったのだが、目のほうの能力が追いつかず、結局役立たなかった。この点は、今後の音声認識などをいかに上手に使うかの課題だといえる。翌金曜日には、知人の施設で急速充電を2回行って、白馬に向かった。金曜の晩は白馬のペンションで普通充電をしつつ土曜日の試乗会イベントに備え、土曜日のイベント終了後も普通充電で日曜日の帰路に備えた。
宿泊した白馬のペンションは毎年利用している宿である。昨年も利用して一部の充電器がトヨタウォレットで課金するタイプの機種であることを確認していた。筆者は今年の冬にトヨタウォレット式充電器で相当に苦労した(関連記事)ので、今回は出発前にトヨタウォレットのセッティングを済ませ、500円ばかりをチャージしておいたのだが、この心配は杞憂に終わった。
ペンションオーナーがその使いにくさに気付きトヨタウォレットは不採用。暗証番号で認証の上、自己申告で1時間100円という料金システムになっていた。おかげで、充電は楽に行うことにできた。トヨタウォレットに入っている500円をどう使おうか? が現在の大きな悩み事である。
復路は急速充電2回で東京へ
白馬から東京は基本下り勾配となるので、EVとしては楽な道のりになる。白馬をスタートする際に100%充電されていれば、途中で1回充電すれば東京までたどり着けるはずである。しかし、日曜日にもパレードなどのイベントがあったため白馬村内をある程度走行。どうも1回充電では東京まで届きそうもない。結局、上信越道の東部湯の丸SAで1度充電(8.9kWh)、その後に関越道の上里SAで充電となった。
上里SAは最新の充電設備で6基の充電器が並んでいた。筆者が到着した際にはプリウスPHVとアリアが充電していたが残りの4基は空いている。一番端の充電スロットにクルマを止めて充電を開始。30分で35%から85%まで(8.3kWh)回復したが、この先はまだ渋滞している。この時点の時間が19時だったので、渋滞解消を期待して30分のおかわり充電を行ったがさすがに入らない。30分で充電できたのはわずか2.2kWhであった。
今回の旅程で、いくつか気付いたことがある。まず、車載ナビだけに頼ると、充電設備の能力や最新の稼働状況がわからないのでちゃんと「EV充電エネチェンジ(EVsmart)」などの充電スポット検索アプリで確認するのが大切だということ。これはEVユーザーならば今さら何を……ということだと思う。
また、これは提案なのだが、もし充電器のケーブルがねじったままで放置されていたら、「気付いた人が直すようにしましょう」ということ。ねじれたままだとケーブルに負担が掛かることになり、故障の原因にもなりかねない。荒っぽい使い方をする人もいるだろうけど、ねじれを直す人が増えてくれば、自然とマナーもよくなってくる気がする。プラグでなくケーブルを持つを手が汚れるので、軍手をクルマに積んでおくようにしたい。
最後の提案は高速道路SA、PAにおける急速充電器の設置場所である。多くの急速充電器の設置場所は施設の端が多い。別に端でもいいのだが、喫煙所とは離すべきだろう。急速充電は30分間行うことが多く、その間にクルマに乗りっぱなしであったり、クルマの外で充電終了を待つことも多い。そう考えれば、急速充電器と喫煙所は離れた場所に設置するのが理想ではないだろうか?
取材・文/諸星 陽一






