私はキャンプやアウトドアライフ(フィールド取材はあるものの)とは縁遠い生活を送っている。しかし、EVを乗り回すようになり、車中泊には興味を持つようになった。インスターで車中泊をしたらどうなるか。豪雨や地震被害が問題になる中、一度は経験しておくべきだろうと思い実行してみた。
電気ポット+コンビニRVパークで「にわか車中泊」
きっかけはインスター車内のACコンセントだ。EVの特長でもある「V2L」(Vehicle to Load)と呼ばれる機能で、インスターにはACコンセントと、普通充電口から 電気を取り出すアダプター(ともに100V 1500W)を標準装備されている。バッテリー残量を気にせず車内でパソコンを使えるのはもちろん、せっかくだからと電気ポットを車に積むようになり、充電中やちょっとした休憩にコーヒーを淹れたりしている(インスタントだが)。仕事や出張では、車内でカップ麺をつくったりもできる。電気が使えるだけで、車中泊が急に身近な存在になった気がした。
ガチのキャンパー、車中泊勢にしてみれば「にわか」もいいところだが、インスターでの車中泊を試すことにした。だが、キャンプとしての車中泊でも、ガチ勢は装備も用具も本格的だ。車両側も魔改造レベルで車中泊仕様にする強者も少なくない。このレベルはキャンプの専門誌やサイトに任せるべきで、「にわか」なりの検証を考えた。
ちょうど「コンビニRVパークの対応施設拡大」というニュースを聞いた。車中泊もコンビニに立ち寄る感じでできるのか? 急な予定変更で、車で寝泊まりすることになったらコンビニRVパークは便利なのでは? そもそも、ちゃんと準備しない飛び込み的なパーク利用、車中泊は可能なのか? こういった「にわか」なニーズにどれだけ応えてくれるのか。これを検証することにした。
増加中のコンビニRVパーク
「RVパーク」(公式サイト)は、全国のキャンプ場、オートキャンプ場、道の駅などが、車中泊キャンパーのために整備した施設だ。基本は広めの駐車場だが、屋外ACコンセントを配置していたり、トイレやシャワー室、水道などを用意しているところもある。
車中泊ブームもあり、RVパークは全国に広がっているが、これをコンビニの駐車場でもできるようにしたものが「コンビニRVパーク」だ。千葉県で実証実験が始まり、2026年8月現在、千葉県・埼玉県・静岡県・愛知県の4県30店舗(ローソン)ほどに対応店舗は広がっている。
今回の検証目的は、いわば突発的な状況、あるいは思い付きの車中泊は可能なのかという点にある。この目的なら、本当はアポなしで、適当な時間に見つかったところのコンビニRVパークを利用してみる形が理想だが、当然、先客がいると使えない。コンビニRVパークは、既設の駐車マスの一部(通常受入可能台数は1、2台)を有料で車中泊用に長時間駐車と店舗のトイレやゴミ箱利用を許可する仕組みなので、複数台のスペースが確保されているRVパークのようにはいかないだろう。対応店舗が30店舗程度と少ないので、予約は事前に入れておくようにした。当日に使える店舗が見つからないとレビューができなくなるからだ。
「RVパーク」や「くるま旅」のサイトなどを調べて、今回は、静岡県内のコンビニRVパークを予約した。せっかくなのでコンビニではない長野県内のRVパーク(日帰り温泉施設併設)にも予約を入れた。レビューの主体はコンビニRVパークだが、普通のRVパークとの比較もできると思ったからだ。
コンビニRVパークの使い方
まず予約方法や当日の利用の流れなどを整理しておく。ただし、以下の情報は、筆者が特定の店舗で行った流れであり、すべての施設、店舗でまったく同じとは限らない。店舗や施設ごとのルールやプロセスがあるので、必ずサイトの注意事項、現場で受ける指示や説明を優先させてほしい。
コンビニRVパークを利用する場合、RV公式サイトの「コンビニRVパーク一覧」ページがスタートとなる。
ここに全国のコンビニRVパークの一覧が表示される。利用したい店舗がきまったら、その店舗名のリンクをクリックし、施設概要を確認する。店舗の写真(といっても今のところローソンのみなのでどれも似たような写真だ)、利用可能スペースの写真、地図や住所情報、基本情報としてゴミ箱や電源が使えるかどうか、ペット同伴の可否などがわかる。
画面をスクロールさせるとカレンダーが表示されるので、空き状況を確認して予約に進む。
チェックイン・チェックアウトは、おおむねチェックインが午後3時から午後10時まで。チェックアウトは午前10時までとなっている。
コンビニRVパークは、店舗が直接運営しているわけではないので、予約や問い合わせは利用するコンビニではなくサイトに記載の連絡先になる。オートキャンプ場などが運営するRVパークとも違うので、予約はWEB予約のみ。店舗に直接連絡しても予約はできない。利用料金は1泊・1台で2500円のところがほとんどだ。
予約画面を見るかぎり、最低でも翌日からの予約しかできないので、当日の午後や夕方に思い付きで予約を入れることはできないと思ったほうがいい。本当に突発的な利用は、コンビニRVパークではできないことになるが、前日までに延泊予定がわかり、宿の手配が間に合わないときには選択肢になるだろう。
コンビニ以外のRVパークでは、施設によってはスタッフがいて、空きさえあれば当日対応をしてくれる場合もある。
トイレ・ゴミ箱・ACコンセント・コンビニ完備
予約した店舗に到着したら、レジに行って「コンビニRVパークを予約したものです」と申告し、車両に掲示する利用許可証とバッジとゴミ袋、利用ガイド(注意事項)の紙を受け取る。店員が利用できる駐車区画を教えてくれるので、そこに車を移動させる。
指定場所は、RVパーク利用を示すスタンドサイン(急速充電スペースにあるサインと同様なもの)があり、駐車マス2台分を1台で使うことができる。利用中に車を使いたい場合は、スタンドサインを駐車マスに立てておけばよい。
予約した店舗はAC電源が利用できるとのことで、ドラムリールのACコードを貸してくれた。インスターにはV2Lアダプターもついているし、車内コンセントもあるので借りなくてもよかったが、せっかくなので借りることにした。
なお、ドラムリールの利用は、ACコンセントが近くても、コードを全部引き出して使うのが基本だ。借りると言ったら、スタッフがコードを全部出してくれた。安全管理マニュアルがしっかりしていると感じた。
ちなみに、コンビニRVパークではEV充電用の200Vコンセントや充電器設置はまだ「今後の課題」となっている。通常のRVパークにはEV充電設備があるところが増えてきているようだ。また、100V対応の充電ケーブルを所有していたとしても、100V電源からのEV充電は出力の問題などもあるため、店舗に確認することが必要だ。
利用中、ゴミ箱やトイレ、洗面台の水道は自由に使える。ただし、店舗に出入りする際は、受け取ったバッジを首から下げるようにする。店員や他の客とのいらぬトラブルを避けるためなので、面倒がらずに実行したい。トイレやゴミ箱も自由に使えるからといって野放図な利用、指示された施設・装備以外の利用、利用に関係のないゴミ捨てはしない。渡される注意書きや禁止事項は厳守したい。
料金はWEB予約時に決済しているので、チェックアウトは、利用許可証とバッジをレジに返却し、スタンドサインを元に戻すだけでOKだ。ドラムリールはそのままでよいと言われたが、巻き取っておいた。
インスターのシートアレンジはどれが最適か?
以上はコンビニRVパークの利用概要だが、車中泊のメインは車の中でどう寝床を確保するかだ。インスターではどんなシートアレンジがよいのか?
もちろん、これは車中泊が一人なのか二人なのか、子供もいるのか、といった状況による。今回は1名での検証だ。スペース的には大人2名まで横になることは可能だが、インスターサイズでは2名が限界だろう。子供が小さければ3名も不可能ではないだろうが、家族で車中泊を考えるならそもそもコンパクトカーを選んではいけない。
車中泊のシートアレンジはおそらく2パターンが基本となるだろう。ひとつは、後席の背もたれを最大まで後ろに寝かせ、その前席のまくら(ヘッドレスト)を外して前に倒すパターン1。もうひとつは、その状態で後席の背もたれを前に倒すパターン2である。
パターン1の後席ヘッドレストはつけたままでも外してもよい。インスターの後席は前後にスライドするため、ヘッドレストをつけたままフラットにすることができるし、ヘッドレストをはずせば、倒した前席との間隔を調整して、間に荷物を置くこともできる。
数パターンのアレンジを試したが、とりあえず、車内で食事をしたりPCを操作したり、映画を見たりするのはパターン1(後席背もたれを後ろに倒す)で、後席を最大まで後ろにさげて足元空間を確保する。前席の平らな部分をテーブルがわりにするというもの。
このとき、反対側の後席も最大まで後ろに下げてそこにキャリーケースを置いて、もうひとつのテーブルとした。
横になって寝るときは前席までフルフラットになるパターン2とした。前後シートの背もたれは両方とも前に倒した状態で高さがだいたい揃うようになっているので横になるのにちょうどよい。ただし、前席・後席の間にスキマが必ずできるので、キャリーケースやカバン類で間を塞ぐか、シートスライドを調整してスキマを最小にする必要がある。身長や体形によるが、うまく調整できればスキマがあっても寝ることはできる。
筆者は現地の試行錯誤でシートアレンジを決めたが、寝る段階でも何度か配置換えなどをした。結局、自分にあった寝床は自分で試行錯誤するしかない。可能なら、休日などに車内清掃をかねてシートアレンジのテスト、車中泊シミュレーションをしてみるのもいいだろう。
コンビニ駐車場であることは思った以上に便利
インスターはV2L機能によって車中泊でも電源がつかえるので、電気ポットや照明類、PC電源、スマートフォン充電に不自由することはない。朝晩の洗顔・歯磨きはコンビニ内のトイレや洗面台が使える。食事は店舗にイートインスペースがあればそれを使ってもよいし、車内で食べてもよい。入浴は、近くの銭湯もしくは日帰り温泉施設などを利用することになる。
コンビニ以外のRVパークはキャンプ場併設だったり山の中であることが多いので、飲食店などが見つかりにくいケースがある。コンビニRVパークは、郊外でも街道沿い、住宅が近いところに多いので、入浴施設、コインランドリー、飲食店やホームセンターなどが見つかりやすいことも、にわか車中泊には便利だ。そもそも車中泊程度のニーズならコンビニでたいていのものが揃う。
店舗には24時間スタッフがいるので防犯上のメリットにもなる半面、深夜の車両の出入りや店舗の照明など気になる人には向かないかもしれない。筆者が利用した店舗は、店に沿ったスペースのいちばん端だったが、深夜の人・車両の出入り、周辺道路の騒音は気にならなかった。
いずれにせよ、車両ウィンドウの目隠しは必須となる。フロントは、日よけの反射シート、シェードが使えるが、リアゲートのウィンドウ、側面4枚のウィンドウにはなんらかの目隠しがほしい。韓国のヒョンデサイトなどでは、インスター(キャスパー)用の車中泊、レジャー用の目隠しシートを売っている。持っていなければ、タオルやTシャツなどで目隠しをする。
筆者は、フロントウィンドウの日よけシート(折り畳み傘タイプ)を持っていたが、他の窓は、トランクに積んでいたタオル、スーパー銭湯で買ったタオルなどを利用した。リアウィンドウサイズの布がなかったので、荷物類を積み上げてごまかした。なお、インスターのパワーウィンドウは挟み込み防止機構のため、ウィンドウにタオルなどを挟むことができない。ドアに挟んでしっかりロックする。
今回の車中泊でわかったことは、サイフやスマートフォン、車の鍵、腕時計など小物類の置き場所はなるべくわかりやすい一か所にまとめるとよい、ということだ。普段使わないシートアレンジで、かつ荷物などが散乱していると、スマートフォンなどをどこに置いたか見失いがちだった。シートの下に落ちたりすると、回収も簡単ではない。
インスターのリアラゲッジには、いちおう細長いシェルフトレイがある。普段はほとんど使っていないが、ここをスマートフォンや鍵などの小物置き場にすると便利だった。
また、フルフラットになる車両でも、シート形状による凹凸やギャップは避けられない。車中泊用のマットやラグ、毛布のような敷物は必須と思ってよい。インスターサイズだと、車中泊用の厚みのあるマットレスの常時搭載はつらいが、今回は、ダブルサイズの厚めのブランケットを持っていった。かなり重宝したので、圧縮パックに入れてリアラゲッジの下に入れておくことにした。
EVと相性がいいコンビニRVパーク
EV車中泊のアドバンテージはエアコンを終夜稼働させられることだ。RVパーク、コンビニRVパークでも、アイドリング禁止のところは多い。禁止はしていなくても「アイドリングストップにご協力を」といった注意書きは必ず確認できる。就寝中のドアロック、窓全閉を基本とすると、終夜のエアコン稼働の必要性は高い。EVとコンビニRVパークの相性は良い。
今回利用したコンビニRVパークは湖に近かったこともあり、未明以降にエアコンを止めても(窓を少し開けていれば)寝ることができた。だが、夕食以降、寝るまでの間、朝起きてからしばらくは車の中で過ごしたので、その間はエアコンを25度設定でONにしていた。
気になる消費電力だが、1時間ごとにだいたいSOC 1%くらい減っていった。今回、5時間ほどの連続稼働でSOC46%から40%まで消費した。インスターのバッテリー容量49kWhで単純計算すると、1時間あたり0.6kWhが目安となる。
インスターは、走行モーター、エアコン、電装品の消費電力を表示させることができる。車中泊中に、エアコンや電装品の消費電力を測ってみたところ、夜間のエアコン定常運転時でエアコンが約0.3kW、電装品が約0.4kWだった。昼間の炎天下だとエアコンだけで1.5kWを超えること(稼働直後)もあるが、マージンをとるなら1kW×時間と考えればいいだろう。
1回の実測値で全体を見るのは少々危険だが、SOCで残量30〜40%くらいあれば、一晩くらいのエアコン連続稼働に支障はなさそうだ(V2L利用のSOC下限設定値にもよる)。
コンビニRVパークは今のところローソンのみが対応しているが、駐車場内に急速充電器を設置している店舗が多いファミリーマートやセブンイレブンなどのチェーンが参入したら、EV車中泊勢にはかなりの朗報となる。次は冬場の検証もしてみたい。
取材・文/中尾真二










