市販EVの実用的な電費(燃費)性能を確かめる「東名300km電費検証」シリーズ。第31回はアウディ『RS e-tron GT performance』の結果をレポートします。エンジン車では考えられないEVならではの驚愕の結果を残してくれました。
【インデックスページ】
計測方法や区間などについては、下記インデックスページ参照。
電気自動車の実用燃費「東名300km電費検証」INDEXページ/検証のルールと結果一覧
100km/h巡航で約520kmの航続距離性能
RS e-tron GT performance(以下、RS GT)の基本的なスペックを確認します。全長4995mm、全幅1965mm、全高1380mm、ホイールベース2900mm、車重2340kg。システム最高出力は680kW/925ps、トルクは1027Nmと、スーパーカーを超えてハイパーカークラスです。バッテリー容量は105kWh、一充電走行距離631km(WLTP、EPA換算推計値は505km)、車両本体価格は2469万円(税込)、国のCEV補助金は28.8万円(2026年8月現在)です。
今回の注目点は、アウディ史上最もパワフルな市販モデルのRS GTがどんな電費を記録するのか、2025年8月のアップデートで手に入れた150kW急速充電性能の確認、ライバルの電費検証結果との比較でした。
RS GTの一充電走行距離631kmを、バッテリー容量の105kWhで割った目標電費は6.01km/kWhになります。2026年3月某日、計測日の外気温は最高14℃、電費検証に臨んだ深夜は2.5~12.5℃でした。
各区間の計測結果は下表の通り。目標電費を上回った区間を赤太字にしています。
【今回の計測結果】
目標電費を超えたのは、下り勾配で電費が伸びやすい往路のD区間、復路のBとC区間、往復のB区間の合計4区間でした。往復では80km/hが5〜6km/kWh台、100km/hが4〜5km/kWh台、120km/hが4km/kWh台でした。速度による電費の変化が少ないのは、最高速度が250km/hであるRS GTのような高性能EVに見られる傾向です。
各巡航速度の電費は下表の通りです。「航続距離」は実測電費にバッテリー容量をかけた数値。「一充電走行距離との比率」は、631kmの一充電走行距離(目標電費)に対しての達成率です。
巡航速度別電費
| 各巡航速度の電費 km/kWh |
航続距離 km |
一充電走行距離との比率 | |
|---|---|---|---|
| 80km/h | 5.75 | 603.5 | 96% |
| 100km/h | 4.95 | 520.1 | 82% |
| 120km/h | 4.40 | 461.8 | 73% |
| 総合 | 4.98 | 522.6 | 83% |
(注)80km/hの電費は、80km/hの全走行距離(97.4km)をその区間に消費した電力の合計で割って算出、100km/hと120km/h、総合の電費も同じ方法で求めています。
総合電費の4.98km/kWhで計算すると、満充電からの実質的な航続距離は約522kmになります。100km/h巡航はほぼ同値の約520kmでした。そして80km/h巡航は600km超えで、カタログスペックの一充電走行距離まであと4%にせまる約603kmでした。
「東名300km電費検証」企画の独自の基準として、この表の100km/h巡航と総合の達成率が90%台だと優秀、100%を超えると相当優秀な実測電費性能であると判断できます。RS GTはどちらも80%台でしたが、気温を考えれば十分に健闘していると思います。
巡航速度比較では、80km/hから100km/hに速度を上げても電費は14%しか悪化しません。さらに120km/hにしても23%減です。反対に120km/hから80km/hに下げたとしても航続距離は約1.3倍(131%)の伸びにとどまります。この結果からも、RS GTは80〜120km/hの速度域では、速度変化による電費への影響が比較的小さいことが分かります。
速度比較
| ベースの速度 | 比較する速度 | 比率 |
|---|---|---|
| 80km/h | 100km/h | 86% |
| 120km/h | 77% | |
| 100km/h | 80km/h | 116% |
| 120km/h | 89% | |
| 120km/h | 80km/h | 131% |
| 100km/h | 113% |
ボディサイズなどが近いライバル車種と比較
ここで、全長5m級のフラッグシップまたは1000ps前後のハイパワー車という括りで「BMW i7 eDrive50 M SPORT(以下、i7)」、「メルセデス・ベンツEQS 450+(セダン、以下、EQS)」、「テスラ モデル S Plaid(以下、モデルS)」の記録と比較してみます。なお、i7は2024年3月、EQSは2024年4月、モデルSは2024年7月の計測で、車両のスペック、車両本体価格、CEV補助金は当時のものです。
スペック比較
| RS GT AWD |
i7 RWD |
EQS RWD |
モデルS AWD |
|
|---|---|---|---|---|
| 全長(mm) | 4995 | 5390 | 5225 | 4970 |
| 全幅(mm) | 1965 | 1950 | 1925 | 1990 |
| 全高(mm) | 1380 | 1545 | 1520 | 1445 |
| 車重(kg) | 2340 | 2600 | 2560 | 2190 |
| Cd値 | 0.26 | 不明 | 0.20 | 0.208 |
| システム出力(kW/ps) | 680/925 | 335/455 | 245/333 | 760/1020 |
| システムトルク(Nm) | 1027 | 650 | 568 | 不明 |
| バッテリー容量(kWh) | 105 | 105.7 | 107.8 | 100 |
| 一充電走行距離(km) | 631 | 652 | 700 | 600 |
| 目標電費(km/kWh) | 6.01 | 6.17 | 6.49 | 6.00 |
| フロントタイヤ | 265/35R21 | 255/45R20 | 265/40R21 | 265/35ZR21 |
| リアタイヤ | 305/30R21 | 285/40R20 | 265/40R21 | 295/30ZR21 |
| 車両本体価格(万円、税込) | 2469 | 1598 | 1563 | 1566.9 |
| CEV補助金 | 28.8 | 52 | 52 | 52 |
| 実質価格 | 2440.2 | 1546 | 1511 | 1514.9 |
(注)テスラのバッテリー容量は非公表ですので、EVsmartの「EV一覧」に記載のある数値です。パフォーマンスで揃えるならば本来、i7はM70 xDrive(AWD)、EQSはMercedes-AMG EQS 53 4MATIC+(AMG)と比較するべきですが、実際に検証したグレードの組み合わせで比較している点をご承知おきください。
全高に注目すると、i7やEQSの1500mm台に対して、モデルSの1445mmやRS GTの1380mmの低さが目立ちます。車重もRWDのi7とEQSに対して、2モーターAWDであるRS GTの2340kg、3モーターAWDのモデルSの2190kgは相当軽量に仕上がっています。
航続距離に直結するCd値はRS GTの0.26も健闘していますが、EQSとモデルSの0.20台はBEV全体としてもトップクラスの値です。システム最高出力が925psのRS GTと1020psのモデルSは、i7やEQSの2〜3倍ですが、目標電費にそこまでの差はありません。
各車の電費と航続距離に加えて、総合のみ一充電走行距離との比率を加えた表が下記です。
検証結果比較
| 車種 | RS GT | i7 | EQS | モデルS | |
|---|---|---|---|---|---|
| 気温 | 2.5〜12.5℃ | 5.5〜8.5℃ | 18〜20℃ | 27〜32℃ | |
| 80km/h | 電費 | 5.75 | 6.11 | 7.49 | 6.78 |
| 航続距離 | 603.5 | 646.1 | 806.9 | 678.4 | |
| 100km/h | 電費 | 4.95 | 4.98 | 6.15 | 5.88 |
| 航続距離 | 520.1 | 526.1 | 662.8 | 587.6 | |
| 120km/h | 電費 | 4.40 | 4.35 | 5.50 | 5.16 |
| 航続距離 | 461.8 | 459.7 | 592.7 | 515.9 | |
| 総合 | 電費 | 4.98 | 5.05 | 6.28 | 5.87 |
| 航続距離 | 522.6 | 534.0 | 676.9 | 587.2 | |
| 一充電走行距離との比率 | 83% | 89% | 97% | 97% |
RS GTは最も気温が低いことやタイヤも最も太いサイズだったこともあり、ライバルと比較すると全体的に数値では後塵を拝する結果となりましたが、総合電費で522kmも走行できますので、この性能に不満な人は少ないのではと思います。i7はRS GTと同じように気温が低い状況でしたが、車重のハンデをRWDの効率で補ったかのようにRS GTとあまり変わらない数値が並びました。
EQSとモデルSは気温が高く電費には有利な状況のため、あくまで参考値としてご覧ください。
ACCとLKAは安心感の高い「ほぼ自動運転」レベル
東名300km電費検証では、毎回同じ区間を3つの速度で定速巡航するため、巡航中は基本的にACC(アダプティブクルーズコントロール)を使用します。さらに交通量の少ない深夜に走行することで、渋滞に遭遇する可能性を極力低下させ、ブレが出ないよう留意しています。
RS GTのACCはウインカーレバーの下にある小さいレバーで操作します。レバーを手前に引くと、その時点の速度でACC走行を開始します。設定速度の変更は、レバーを軽く上下させると1km/hごとに、レバーを停止位置まで上下させると10km/hごとに変わります。DISTANCEスイッチの操作により先行車との車間距離設定を5段階で調整できます。
ACCによる先行車への追従時の車速調節はかなり上手く、一番短い車間距離設定でも急ブレーキにならないような制御でした。停車時も滑らかに速度を落とし、最後にわずかな「かっくんブレーキ」で止まります。テスラのような完璧な0G停車が実現できるとさらにプレミアム感が増すと思います。
LKA(レーンキープアシスト)の能力が高く、この検証コース中で最もきついカーブである鮎沢PA手前の300Rもその後の左右連続カーブも、車線維持は非常に安定しており、終始安心感がありました。
プレミアムブランドらしくドライバーがステアリングを握っているか否かの判定は静電式センサーなので、トルクセンサー車のように「ハンドルを操作してください」という警告に煩わされることがなく、快適でした。
スピードメーター表示とGPSによる実速度の差は、5〜7km/hと輸入車の中では大きめに感じました。実速度を100km/hにする場合は、メーター速度を106km/hに合わせました。
速度差、騒音
| 80km/h 巡航 |
100km/h 巡航 |
120km/h 巡航 |
|
|---|---|---|---|
| メーターの速度 km/h |
85 | 106 | 127 |
| ACC走行中の 室内の静粛性 db |
60〜69 | 63〜70 | 63〜64 |
停車時は車外の騒音から隔離されたような静粛性を誇るRS GTですが、巡航時の車内の最大騒音(スマホアプリで測定)は、これまでの検証で最大級の幅を持つタイヤも影響したのか少し大きめの数値になりました。
騒音の音源は80km/hと100km/hはタイヤのパターンノイズが大半です。120km/hになると風切音の割合が大半になるクルマが多い中、RS GTの風切音はフロントガラス前端くらいからパサパサと軽く聞こえるくらいで、やはりパターンノイズの方を大きく感じたことが特異点でした。
電費比較であげたライバル達と数値を比較すると、モデルSはRS GTとあまり変わらない、i7は62〜63dBで圧倒的に静か、EQSは80〜100km/hの速度域の最小騒音が56〜57dBで静か、という感じでした。
PCAの150kW器30分で52.347kWhを充電
RS GTの充電能力は「33分で10%から80%」が公式情報ですので、30分だと約64%を充電できる計算になります。今回は検証走行の終点である東名川崎ICを降りてすぐのアウディ東名川崎に設置してあるプレミアムチャージングアライアンス(PCA:アウディ、ポルシェ、フォルクスワーゲンの3ブランドが共同で展開する急速充電ネットワーク)の150kW器で2回充電を行いましたが、50%と49%でしたので64%には届きませんでした。
しかし、充電量は52.347kWhとこれまでの「CHAdeMO 30分充電」でトップだったメルセデス・ベンツ「G580 with EQ Technology」の54.598kWhに次ぐ2位の記録で、これにより290kmの航続距離が追加されました。
充電結果
※「外気温」は車内メーター表示の温度。
※「充電時最大出力」は、車両もしくは充電器で確認できた数値。
※「航続距離表示」は、エアコンオフ時に確認。
※「充電器表示充電電力量」は充電器に表示、もしくはアプリなどに通知された電力量。表示がない場合は不明としています。
1回目の充電は、開始からちょうど30分で他のアウディオーナーが充電に来られたため終了しました。一方、2回目は30分経過後も利用者が現れなかったため、実験的に充電を継続し、30分以降の充電性能の変化を確認しました。
30分経過時点ではSOC 68%、充電出力は80kWでした。その後も充電を継続し、27分後にSOC 97%、出力37kWとなった時点で利用者が来られたため、そこで検証を終了しました。
充電開始から30分でSOCは49%上昇した一方、その後の27分で増えたのは29%にとどまりました。この結果からも、BEVの急速充電は「30分ちょうど」や「満充電」にこだわるより、次の目的地や充電スポットまでの必要量を目安にするのが合理的だと改めて感じました。
タイヤ・ホイールはオプションの21インチ
今回の取材車のRS GTはオプションの21インチのタイヤを装着しており、サイズは前265/35/R21 101Y、後305/30R21 104Yで、メーカーはブリヂストン、商品名はPOTENZA SPORT Aです。このタイヤは、RS GTのための専用開発品で「ハンドリング、パフォーマンス、乗り心地を最適化」「航続距離の延長に貢献する低転がり抵抗」などが特徴です。
EVだからこそ実現できた高性能と高効率の両立
今回は2025年8月にアップデートされたe-tron GTシリーズのトップモデルであるRS e-tron GT performanceの検証を行いました。このクルマはe-tron初のRS performanceモデルかつアウディ史上最もパワフルな市販モデルでもあります。
そのような高性能車でありながら、総合電費はコンパクトEVと肩を並べる数値を記録しました。これをガソリン車に置き換えるなら、A1(WLTCモード燃費18.1km/L)とS8(同8.0km/L)が同じ燃費を記録したようなもので、驚くべき結果です。大排気量エンジンほど燃費が悪化する内燃機関車とは異なり、EVはモーター効率の高さや回生ブレーキによるエネルギー回収によって、このような結果を実現していると考えられます。
アップデートにより150kW充電器にも対応した実力を見せてくれました。2回の充電ではどちらも最高出力143kWを確認、30分の充電量もトップクラスの数値を記録しました。
全高1380mmで5人乗りの市販車としては非常に低いスタイルでありながら、室内には十分な居住空間を確保。エアサスペンションによる快適な乗り心地、0-100km/h加速2.5秒という圧倒的な動力性能、コンパクトEV並みの総合電費、そしてトップクラスの充電性能まで兼ね備えています。高性能電動GTを求める方にとって、非の打ち所がない1台と言えるでしょう。
主要スペック
| アウディ RS e-tron GT performance |
|
|---|---|
| 車両型式 | ZAA-FWECXR |
| 全長(mm) | 4995 |
| 全幅(mm) | 1965 |
| 全高(mm) | 1380 |
| ホイールベース(mm) | 2900 |
| トレッド(前、mm) | 1700 |
| トレッド(後、mm) | 1665 |
| 車両重量(kg) | 2340 |
| 乗車定員(人) | 5 |
| 最小回転半径(m) | 5.2 |
| 交流電力消費率(WLTC、Wh/km) | 179 |
| 一充電走行距離(WLTC、km) | 631 |
| EPA換算推計値(km) | 505 |
| バッテリー総電力量(グロス値、kWh) | 105 |
| 使用可能容量(ネット値、kWh) | 97 |
| 急速充電性能(kW) | 150 |
| 急速充電時間 | 33分で10%から80% |
| 普通充電性能(kW) | 8 |
| V2X対応 | 非対応 |
| 暖房システム | ヒートポンプ |
| モーター数 | 2 |
| 駆動方式 | AWD |
| モーター型式、フロント | EBG |
| モーター型式、リヤ | ECX |
| モーター種類(前後) | PSM(永久磁石同期モーター) |
| フロントモーター出力(kW/ps) | 176/約239 |
| リヤモーター出力(kW/ps) | 415/約564 |
| システム最高出力(kW/ps) | 680/925 |
| システム最大トルク(Nm) | 1027 |
| トランスミッション | フロント1速/リア2速 |
| フロントサスペンション | ウィッシュボーン式エア |
| リアサスペンション | マルチリンク式エア |
| ブレーキディスク(前後) | カーボンセラミック(オプション) |
| タイヤサイズ(前) | 265/35R21(オプション) |
| タイヤサイズ(後) | 305/30R21(オプション) |
| タイヤメーカー・銘柄 | ブリヂストン ポテンザスポーツ |
| 荷室容量(L) | 350 |
| フランク(L) | 77 |
| 0-100km/h加速(秒) | 2.5 |
| 最高速(km/h) | 250 |
| Cd値(空気抵抗係数) | 0.26 |
| 生産工場 | ドイツ・ハイルブロン |
| 車両本体価格 (万円、A) | 2469 |
| CEV補助金 (万円、B) | 28.8 |
| 実質価格(万円、A - B) | 2440.2 |
取材・文/烏山大輔







