東名300km電費検証【33】ホンダ『N-ONE e:』/4区間で単独トップの電費を記録〜冬季の雪辱を果たす!

市販EVの実用的な電費(燃費)性能を確かめる「東名300km電費検証」シリーズ。第33回はホンダ『N-ONE e:』の再検証結果をお伝えします。今年2月の検証では目標電費を1区間も上回れない厳しい内容でしたが、夏の検証では素晴らしい成績を残してくれました。

100km/h巡航で約222kmの航続距離性能

【インデックスページ】
計測方法や区間などについては、下記インデックスページ参照。
電気自動車の実用燃費「東名300km電費検証」INDEXページ/検証のルールと結果一覧

今回の検証は2月の検証時と同一の車両(e: Gグレード)で実施しました。基本的なスペックを確認しておきます。全長3395mm、全幅1475mm、全高1545mm、ホイールベース2520mm、車重1030kg。モーター出力47kW/64ps、トルク162Nm、バッテリー容量は29.6kWhで一充電走行距離295km(WLTPモード、EPA換算推計値は236km)です。車両本体価格は269.94万円(税込)、国のCEV補助金は58万円(2026年10月現在)になっています。

今回の注目点は、冬季の記録からどれだけ挽回するのか、全15区間中9区間で単独ベストの記録を持つ日産「サクラ」(検証は2024年7月)にどれだけ対抗できるか、また、7月に検証したSuper-ONEとの比較でした。

N-ONE e:の一充電走行距離295kmを、バッテリー容量の29.6kWhで割った目標電費は9.97km/kWhになります。2026年7月某日、計測日の外気温は最高31℃、電費検証に臨んだ深夜は23~27℃でした。

各区間の計測結果は下表の通り。目標電費を上回った区間を赤太字にしています。

【今回の計測結果】

目標電費を超えたのは、下り勾配で電費が伸びやすい往路のD区間、復路のBとC区間、往復のBとC区間の合計5区間でした。往復では80km/hが10km/kWh台、100km/hが7km/kWh台、120km/hが5km/kWh台で、10-7-5と高速化によって明確に電費の悪化が見られます。この10-7-5はサクラと同様の結果です。

計測結果の表を色分けしてみました。黄色が単独トップになった4区間、紫がトップタイになった2区間です。

標高差が少ない往路A区間はヒョンデ「KONA」の8.0km/kWhを更新しました。前面投影面積の小ささと車重の軽さが奏功したと考えます。300m超の登りである往路C区間と復路D区間は、サクラより60kg軽く、110mm低い全高がもたらした結果ではないかと考えます。往復のC区間も今まででトップの記録です。

120km/hで標高差67mの登りである復路E区間はヒョンデ「KONA」と同値、往復のE区間は、サクラおよびトヨタ「bZ4X」と同値でした。

各巡航速度の電費は下表の通りです。「航続距離」は実測電費にバッテリー容量をかけた数値。「一充電走行距離との比率」は、295kmの一充電走行距離(目標電費)に対しての達成率です。

巡航速度別電費

各巡航速度の電費
km/kWh
航続距離
km
一充電走行距離との比率
80km/h 10.25 303.5 103%
100km/h 7.53 222.8 76%
120km/h 5.85 173.1 59%
総合 7.49 221.7 75%

(注)80km/hの電費は、80km/hの全走行距離(97.4km)をその区間に消費した電力の合計で割って算出、100km/hと120km/h、総合の電費も同じ方法で求めています。

総合電費の7.49km/kWhで計算すると、満充電からの実質的な航続距離は約222kmになります。100km/h巡航もほぼ同等の約223kmでした。そして80km/h巡航は約303kmと、カタログスペックの一充電走行距離を超える数値になりました。

「東名300km電費検証」企画の独自の基準として、この表の100km/h巡航と総合の達成率が90%台だと優秀、100%を超えると相当優秀な実測電費性能であると判断できます。N-ONE e:はどちらも70%台でしたので、ここでも80km/hとの差を感じる結果ではありました。

巡航速度比較では、80km/hから100km/hに速度を上げると電費は27%悪化します。さらに120km/hにしても43%減とほぼ半分になってしまいます。反対に120km/hから80km/hに下げると航続距離を約1.75倍(175%)も伸ばせる計算です。

速度比較

ベースの速度 比較する速度 比率
80km/h 100km/h 73%
120km/h 57%
100km/h 80km/h 136%
120km/h 78%
120km/h 80km/h 175%
100km/h 129%

サクラや冬の記録、Super-ONEとの比較

ここで、サクラとSuper-ONE 、N-ONE e:による冬季の記録と比較してみます。なお、サクラは2024年7月、N-ONE e:冬季は2026年2月、Super-ONEは2026年7月の計測です。まずは各車のスペック比較です。

スペック比較

N-ONE e:
e: Gグレード
サクラ
Gグレード
Super-ONE
全長(mm) 3395 3395 3580
全幅(mm) 1475 1475 1575
全高(mm) 1545 1655 1615
車重(kg) 1030 1090 1090
システム出力(kW/ps) 47/64 47/64 70/90
システムトルク(Nm) 162 195 162
バッテリー容量(kWh) 29.5 20 29.5
一充電走行距離(km) 295 180 274
目標電費(km/kWh) 9.97 9.00 9.26
タイヤサイズ(前後) 155/65R14 155/65R14 185/55R15
車両本体価格(万円、税込) 269.94 299.86 339.02
CEV補助金 57.4 58 130
実質価格 212.54 241.86 209.02

N-ONE e:とサクラの比較では、全長と全幅は軽の枠いっぱい。N-ONE e:の方が110mm低い。バッテリーは1.5倍大きいが60kg軽いこともN-ONE e:の特徴です。Super-ONEとN-ONE e:では、全高はアンテナ分によるプラスですので、幅が100mm広いことと、タイヤが30mm太いことが電費悪化につながりそうです。検証中はACCによる巡航で、全開にすることはありませんので、最高出力が大きいことはさほど影響していないと思います。普通車登録のメリットで補助金が多く、実質価格が最も安くなっています。

各車の電費と航続距離に加えて、総合のみ一充電走行距離との比率を加えた表が下記です。

検証結果比較

車種 N-ONE e: N-ONE e: サクラ Super-ONE
気温 24〜27℃ -2〜6℃ 21〜23℃ 23〜26℃
80km/h 電費 10.25 6.79 10.01 8.59
航続距離 303.5 200.9 200.2 254.2
100km/h 電費 7.53 5.54 7.71 6.57
航続距離 222.8 163.9 154.3 194.4
120km/h 電費 5.85 5.00 5.85 5.10
航続距離 173.1 148.0 116.9 150.9
総合 電費 7.49 5.68 7.51 6.47
航続距離 221.7 168.2 150.2 191.4
一充電走行距離との比率 75% 57% 83% 70%

サクラは全高と車重でハンデを負いますが、電費は全く引けを取らない結果で、総合ではN-ONE e:を0.02km/kWh上回っています。バッテリー容量の差で航続距離に開きができてしまうのは致し方ありません。

冬季との比較では、80km/h巡航において航続距離が100kmも、100km/h巡航でも60kmもの差があることに、現状のN-ONE e:の暖房によるものと思われる電費悪化の弱点を見せつけられた感じです。

Super-ONEはN-ONE e:と比べると、全体的に15%ほどの電費悪化が見られました。ただし、Super-ONEの独自のデザインやブーストモードの楽しさを15%の電費悪化で手に入れられるなら納得できる方の方が多いのではないでしょうか。

先進運転支援を活用して計測しています

東名300km電費検証では、毎回同じ区間を3つの速度で定速巡航するため、巡航中は基本的にACC(アダプティブクルーズコントロール)を使用します。さらに交通量の少ない深夜に走行することで、渋滞に遭遇する可能性を極力低下させ、ブレが出ないよう留意しています。

ACCやLKAなどの先進運転支援機能の印象。また、ACC設定時の実際の速度とGPS計測した速度との差や騒音については、前回レポートで紹介しています。

なお、冬の取材時には下道でもパターンノイズが大きく、静粛性の高いタイヤへの交換を検討したいと思ったのですが、前回走行時は荒れた路面が多かったようで、路面状態の良い場所を走行した今回は騒音がかなり抑え込まれており、これなら問題ないなと思いました。

冬の記録を上回り30分で16.170kWhを充電

N-ONE e:の急速充電性能は、「充電残量警告灯の点灯から80%まで30分」が公式発表です。充電残量警告灯はSOC 15%で点灯します。SOC 18%から開始した駿河湾沼津SA上りの150kW器において、30分で16.170kWhをチャージし、SOCは82%になりましたので、ほぼ公式発表通りの結果になりました。

この充電量は総合電費の7.49km/kWhで計算すると約121km分の増加になります。航続距離は118km分増えて150kmへ。冷房を入れると7km(約5%)減の143kmになりました。

充電結果


※「外気温」は車内メーター表示の温度。
※「充電時最大出力」は、車両もしくは充電器で確認できた数値。
※「航続距離表示」は、エアコンオフ時に確認。
※「充電器表示充電電力量」は充電器に表示、もしくはアプリなどに通知された電力量。表示がない場合は不明としています。

冬の充電では14.028kWhの充電電力量だったので、夏は2.142kWh多くチャージできました。N-ONE e:には急速充電用のプレコンディショニング機能はありませんから、気温によりバッテリーの温度が上がっていたことがこの差を生んだ要因だと思われます。

今回も90kW器と50kW器と出力違いの充電器も試しましたが、充電時の最大出力は46kWで、充電量の増加は充電開始時のSOCに連動した結果になり、当然ながら充電器最大出力による差は見られませんでした。

電費はトップクラス、弱点は冬の暖房か

今回N-ONE e:は4区間で単独トップ、2区間でトップタイを記録する素晴らしい結果を残してくれました。これにより、6区間で単独トップ、1区間でトップタイになったサクラに急接近しました。

なお、この2車種以外で単独トップを持っているのは、bZ4Xの2区間とメルセデス・ベンツ「EQSセダン」の1区間です。秋に登場予定のスズキ「e SKY」が大記録を出すのか、はたまた今後登場する高性能車が抜群の結果で上回ることがあるのか、楽しみです。

東名300km電費検証では、エアコンオフで測定するWLTCのモード測定と異なり、走行中は常時エアコンをオンにして、より実際の使用環境に近い電費計測となるようにしています。そんな中で浮き彫りになったのは、エアコンにヒートポンプを採用していないN-ONE e:の暖房の弱点です。

80km/h巡航で比較すると電費(km/kWh)は10.25と6.79と大きく差が開き、それにより航続距離も303.5kmに対して200.9kmと100kmも異なります。また冷暖房のオン/オフで減少する航続距離の比率も冷房の約5%に対して暖房は約25%と、その影響の大きさは明らかです。

これが冬季のN-ONE e:の実情ではないかと考えます。ヒートポンプ非搭載はスペースを重視した結果と聞いています。オーナーの方は、冬季の電費低下を理解して運用するようにしてください。また、サクラの30kWより急速充電性能が優れているとはいえ、30分の充電で追加される航続距離は120kmほどにとどまります。やはりロングドライブが得意なクルマではなく、街乗りが気持ちいいクルマだと思います。

N-ONE e:はEVならではの爽快な走りを実現しており、軽サイズですから細い道でも余裕を持って運転できます。さらに全高は1545mmと1550mm以下。多くの立体駐車場に入庫できるのがサクラやBYD「ラッコ」に対するアドバンテージです。

一点、今回検証したGグレードは急速充電ポートがメーカーオプションです。これもホンダがロングドライブよりも街乗りを重要視している意図の現れだと感じます。

取材・文/烏山大輔

:bar_chart: 読者アンケート

N-ONE e:の電費性能、どう感じた?
  • かなり優秀!興味がわいた
  • 軽EVの可能性を感じる
  • もう少し様子を見てみたい
0 投票者数

あなたがEVを選ぶとき、一番重視するのは電費ですか?ぜひコメントで教えてください!

やはりヒートポンプが搭載されていないことの最大の欠点が良く分かります。

非常に残念です。ライバル車である「Suzuki e SKY」はヒートポンプ搭載(最廉価Aグレード除く。)です。(バッテリー冷却は不明。)しかし、Honda N-ONE e:公式サイトを訪れバッテリー冷却の項目を見ると興味深いことが書いてあるのです。

「バッテリー低温時にはヒーターの熱で温め、バッテリー高温時はラジエーターで冷却。」

おそらく、液冷なのです。動力源であるバッテリーはしっかりと液冷にすることで充電能力を上げつつ、ヒートポンプは非搭載というアンバランスさ。いくらシートヒーターがあるとはいえ、エアコンを使わないなどということは不可能です。

と、最後は締めくくられていますが、日本の消費者が一番重要視すべきそしてメーカーはきちんと搭載非搭載を公表すべきところは「ヒートポンプの有無」でしょう。なかなかデメリット(非搭載)と記述するメーカーはいないでしょうが、それなら最初からヒートポンプを搭載すべきということです。

「いいね!」 2

Honda N-One e:は完全停止できるワンペダルができるので、時期購入するならば軽EVでは最有力候補です。電費もよくいい感じですね。

冬の電費の悪さも気にはなりますが、4シーズンのうちの1つですので、そこが決定打にはならないかもと思います。

日本の充電インフラが、普通充電がいつでもどこでもあれば、どこでも寄った時に繋げておけば「経路充電に頼らねばならない」こともかなり減ってくると思います。

ただ、最近ではインスターが出たおかげでコンパクトEVの方に気持ちがいっています。

「いいね!」 2