東名300km電費検証【32】レクサス『RZ550e F SPORT』/100km/h巡航で航続距離約432km相当を記録&急速充電性能はトップクラス

市販EVの実用的な電費(燃費)性能を確かめる「東名300km電費検証」シリーズ。第32回はレクサス『RZ 550e F SPORT』の結果をお伝えします。2025年12月の改良でBEVシステムを全面刷新したRZに新たに加わった高性能グレードで、レクサス初のステアバイワイヤシステムを採用した注目のモデルです。

100km/h巡航で約432kmの航続距離性能

【インデックスページ】
計測方法や区間などについては、下記インデックスページ参照。
電気自動車の実用燃費「東名300km電費検証」INDEXページ/検証のルールと結果一覧

まず、RZ 550e F SPORT(以下、RZ 550e)の基本的なスペックを確認します。全長4805mm、全幅1895mm、全高1635mm、ホイールベース2850mm、車重2140kg。システム最高出力は300kW/407.8psです。バッテリー容量は76.96kWh、一充電走行距離582km(WLTC、EPA換算推計値は466km)、車両本体価格は950万円(税込)、国のCEV補助金は104万円(2026年9月現在)です。

今回の注目点は、2025年12月にBEVシステム全面刷新が実施されたRZがどんな電費を記録するのか、その数値は区間ベスト記録を持つ兄弟車であるトヨタ「bZ4X」のFWDやAWDのライバルと比較してどのような結果になるかです。

RZ 550eの一充電走行距離カタログスペックである582kmを、バッテリー容量の76.96kWhで割った目標電費は7.56km/kWhになります。2026年6月某日、計測日の外気温は最高25℃、電費検証に臨んだ深夜は18~25℃でした。

各区間の計測結果は下記表の通り。目標電費を上回った区間を赤太字にしています。

【今回の計測結果】

目標電費を超えたのは、下り勾配で電費が伸びやすい往路のD区間、復路のBとC区間、往復のB区間の合計4区間でした。往復では80km/hが7km/kWh台、100km/hが5km/kWh台、120km/hが4km/kWh台と、80km/hから100km/hへの落差が大きい結果になりました。

各巡航速度の電費は下表の通りです。「航続距離」は実測電費にバッテリー容量をかけた数値。「一充電走行距離との比率」は、582kmの一充電走行距離(目標電費)に対しての達成率です。

巡航速度別電費

各巡航速度の電費
km/kWh
航続距離
km
一充電走行距離との比率
80km/h 7.47 575.2 99%
100km/h 5.62 432.8 74%
120km/h 4.74 364.5 63%
総合 5.75 442.1 76%

(注)80km/hの電費は、80km/hの全走行距離(97.4km)をその区間に消費した電力の合計で割って算出、100km/hと120km/h、総合の電費も同じ方法で求めています。

総合電費の5.75km/kWhで計算すると、満充電からの実質的な航続距離は約442kmになります。100km/h巡航はそれよりも少し短い約432kmでした。そして80km/h巡航では約575kmと、カタログスペックの一充電走行距離に対しても比率にしてわずか1%差になりました。

「東名300km電費検証」企画の独自の基準として、この表の100km/h巡航と総合の達成率が90%台だと優秀、100%を超えると相当優秀な実測電費性能であると判断できます。RZ 550eはどちらも70%台でしたので、ここでも80km/hとの差を感じさせる結果でした。

巡航速度比較では、80km/hから100km/hに速度を上げると電費は25%悪化します。さらに120km/hでは37%減です。反対に120km/hから80km/hに下げると航続距離を約1.6倍(158%)も伸ばせる計算です。

bZ4Xやライバル車種との比較

ここで、兄弟車で区間ベストを記録しているbZ4X(FWD)やAWDでライバルになると思われる日産「アリアNISMO B9 e-4ORCE(以下、アリア)」とヒョンデ「IONIQ 5 N」の記録と比較してみます。なお、bZ4Xとアリアは2024年8月、5 Nは24年9月の計測で、車両のスペック、車両本体価格、CEV補助金は当時のものです。

スペック比較

RZ 550e bZ4X アリア IONIQ 5 N
全長(mm) 4805 4690 4650 4715
全幅(mm) 1895 1860 1850 1940
全高(mm) 1635 1650 1660 1625
車重(kg) 2140 1920 2230 2210
Cd値 非公表 0.29 非公表 0.313
システム出力(kW/ps) 300/407.8 150/203.9 320/435 478/650
システムトルク(Nm) 非公表 266 600 700
バッテリー容量(kWh) 76.96 71.4 91 84
一充電走行距離(km) 582 559 504 561
目標電費(km/kWh) 7.56 7.83 5.54 6.68
フロントタイヤ 235/50R20 235/60R18 255/45R20 275/35ZR21
リアタイヤ 255/40R20 235/60R18 255/45R20 275/35ZR21
0-100km/h加速(秒) 4.4 8.4 非公表 3.4
車両本体価格(万円、税込) 950 600 944.13 858
CEV補助金 104 85 68 35
実質価格 846 515 876.13 823

※アリアNISMOの一充電走行距離は非公表ですが、ベースモデルの10%減になると日産に確認しているので、今回のアリアNISMO B9 e-4ORCEはB9 AWDプレミアの560kmの10%減の504kmとして算出しています。そのためスペック比較の一充電走行距離と検証結果比較の一充電走行距離との比率は参考値としてご覧ください。

全長、全幅、全高の3サイズは、IONIQ 5 Nのみ全幅の1940mmが目立ちます。車重は唯一のFWDであるbZ4Xが1920kgと2トン以下です。

システム最高出力ではRZ 550eはbZ4Xの2倍ですが、一充電走行距離や目標電費が同等であることに昨年のRZ 550eに実施されたアップデートの効果を感じます。IONIQ 5 NはRZ 550eの1.5倍超の出力ですが、バッテリーが少し大きいこともあり一充電走行距離は同等です。

各車の電費と航続距離に加えて、総合のみ一充電走行距離との比率を加えた比較です。

検証結果比較

車種 RZ 550e bZ4X アリア IONIQ 5 N
気温 18〜21℃ 27〜29℃ 25〜27℃ 25〜27℃
80km/h 電費 7.47 9.28 7.12 5.92
航続距離 575.2 662.7 648.0 497.5
100km/h 電費 5.62 7.21 5.60 4.61
航続距離 432.8 515.1 509.4 387.2
120km/h 電費 4.74 5.85 4.35 3.95
航続距離 364.5 417.7 395.8 331.7
総合 電費 5.75 7.20 5.48 4.70
航続距離 442.1 514.2 498.4 394.8
一充電走行距離との比率 76% 92% 99% 70%

RZ 550eとbZ4Xは一充電走行距離や目標電費は同等でしたが、実測値では想定以上に差が広がりました。bZ4Xは総合の一充電走行距離との比率も92%と優秀な数値です。

RZ 550eとアリアはモーター出力が近いこともあってか似たような数字が並びました。アリアにわずかながら気温の有利さはある可能性はありますが、2年前にすでにこの性能を実現していた日産にBEV技術の一日の長を感じます。

IONIQ 5 Nとの比較では明らかにRZ 550eの電費の良さが目立ちます。やはり1.5倍超の出力や幅広で1インチ大きいタイヤ・ホイールが影響しているのだと思います。総合電費の航続距離も、IONIQ 5 Nは唯一400kmを下回る394.8kmになっています。

LKAはドライバーの意思尊重タイプ

東名300km電費検証では、毎回同じ区間を3つの速度で定速巡航するため、巡航中は基本的にACC(アダプティブクルーズコントロール)を使用します。さらに交通量の少ない深夜に走行することで、渋滞に遭遇する可能性を極力低下させ、ブレが出ないよう留意しています。

RZ 550eのACCはステアリングの右スポークのスイッチで操作します。とは言えスイッチ自体に機能を表すイラストなどはなく、スイッチを触るとメーターとHUD(ヘッドアップディスプレイ)に、状況や設定によってスイッチにあてがわれた機能が表示されます。

左上の「走行支援スイッチ」を押すと、その時点の速度でACC走行を開始します。設定速度の変更は、スイッチを上下に押すと1km/hごとに、スイッチを上下に長押しすると5km/hごとに変わります。車間距離スイッチの操作により先行車との車間距離設定を4段階で調整できます。

ACCによる先行車への追従時の車速調節はかなり上手く、停車時も滑らかに速度を落とし、最後にわずかな「かっくんブレーキ」で止まります。プレミアムブランドのレクサスとしては、テスラのような完璧な0G停車の実現を望みたいところです。

LKA(レーンキープアシスト)の能力は高い一方で、ドライバーが操舵を加えると、その操作を尊重してアシストが控えめになる傾向も感じられました。コーナーでもクルマ側が積極的にハンドルを切るというより、あくまでドライバーの操作を優先する制御で、その結果、LKA作動中でも白線を踏む場面がありました。

レクサスはドライバーがステアリングを握っているか否かの判定に関して、静電式センサーに加えて、スポーク部など静電式センサーがない部分をドライバーが握っていても分かるようにトルクセンサーも併用するハイブリッド方式を採用しています。そのため、「ハンドルを操作してください」という警告に煩わされることがなく快適でした。

スピードメーター表示とGPSによる実速度の差は、どの速度でも2km/hでした。実速度を100km/hにする場合は、メーター速度を102km/hに合わせます。

速度差、騒音

80km/h
巡航
100km/h
巡航
120km/h
巡航
メーターの速度
km/h
82 102 122
ACC走行中の
室内の静粛性 db
59〜67 60〜68
新東名60〜63
62〜64

巡航時の車内の最大騒音(スマホアプリで測定)は、このクラスの平均的レベルといった感じで、電費比較であげたライバル達と数値を比較すると、アリアが最も静かで、そこからRZ 550e、bZ4X、IONIQ 5 Nと1dBずつ大きくなる感じでした。

数字の結果としては上記なのですが、100km/hから120km/hで風切り音の増加幅はかなり小さい気がしました。通常はドアミラーやフロントガラス付近から風切り音が聞こえる感じがするのですが、RZ 550eはルーフくらいから聞こえるのも特異点でした。

RZのカタログには、フード開口部のシールによる風の吹き出し抑制や前後席のアコースティックガラス、新断面ガラスラン、アウターミラー配置の工夫など、風切り音を抑えるための対策が随所に施されていますので、このような風切り音の感じ方になったのかもしれません。

150kW器30分で52.487kWhを充電

RZの充電能力は「28分で10%から80%」が公式情報です。駿河湾沼津SA下りの150kW器の充電ではSOC 9%から30分で78%までチャージできましたので、ほぼ公表値に近い充電性能を確認できました。

しかも52.487kWhの充電量はこれまでの検証で実施してきた「CHAdeMO 30分充電」で歴代2位の記録です。トップは116kWhバッテリーのメルセデス・ベンツ「G580 with EQ Technology」の54.598kWh、3位が105kWhバッテリーのアウディ「RS e-tron GT performance」の52.347kWhです。

両車ともに100kWh超のバッテリーで、RZ 550eよりも大きな器であるため大量の電気を飲み込みやすいと考えられます。そのため76.96kWhのバッテリーでのこの記録はRZの充電効率がかなり高いレベルにあることを証明していると思います。

充電結果

※「外気温」は車内メーター表示の温度。
※「充電時最大出力」は、車両もしくは充電器で確認できた数値。
※「航続距離表示」は、エアコンオフ時に確認。
※「充電器表示充電電力量」は充電器に表示、もしくはアプリなどに通知された電力量。表示がない場合は不明としています。

ホイールはF SPORT用の20インチ

RZ550eには、エアロホイールカバー付きの専用デザインの5本スポークホイールを採用。軽量化に加え、空力性能を高めることで電費性能の向上にも寄与しています。

タイヤはダンロップのSP SPORT MAXX 060を装着し、サイズは前235/50R20 104V、後255/45R20 105Wです。スポーツタイヤらしくドライ・ウェット性能を重視しつつも、静粛性も極端に悪くはなく、RZ550eでは走行性能と快適性のバランスが取れた印象でした。

F SPORTならではの硬質な走りと、先進のステアバイワイヤ

今回検証したRZ 550eは、現状のRZラインナップの中で唯一のF SPORTグレードで、レクサス初のステアバイワイヤシステムを搭載したモデルでもあります。F SPORTらしさは街中を少し走っただけで、明らかに固めだなと思えるサスペンションセッティングから感じ取れます。

先進のステアバイワイヤシステムを目当てにこのグレードの購入を検討している方は、一度ディーラーでversion LグレードであるRZ500e(AWD)やRZ350e(FWD)にも試乗されることをおすすめします。RZ350eの733kmの一充電走行距離も魅力的です。

なお、ステアバイワイヤシステムは、はじめは駐車時などに舵角が切れすぎて戸惑いますが、割とすぐに慣れることができました。通常走行時は低速時ほどにクイックではないため、違和感を覚えることはありませんでした。

ドライブモードはノーマルだと速すぎると感じて、エコに切り替えましたが、それでも十分に速いと思いました(検証走行時はノーマルモードです)。エコではアクセルレスポンスも穏やかになるはずですが、極端な変化は感じませんでした。レンジモードもありますが、エアコンがOFFになりますので、電欠の危険性がある緊急時にしか使用する機会はなさそうです。

2035年にグローバル販売BEV100%を目指すレクサスにとってRZはBEV専用モデルとして2023年デビューしました。今年6月にセダンの「ES」が加わり、冬には3列シートSUVの「TZ」も追加される予定です。BEVスポーツカー「Lexus LFA Concept」の続報にも注目していきたいと思います。

主要スペック

レクサス RZ550e F SPORT
車両型式 ZAA-XEBM25-AWDSS
全長(mm) 4805
全幅(mm) 1895
全高(mm) 1635
ホイールベース(mm) 2850
トレッド(前、mm) 1610
トレッド(後、mm) 1620
最低地上高(mm) 205
車両重量(kg) 2140
前軸重(kg) 1140
後軸重(kg) 1000
前後重量配分 53:47
乗車定員(人) 5
最小回転半径(m) 5.6
荷室容量(L) 522
プラットフォーム e-TNGA
交流電力消費率(WLTC、Wh/km) 144
一充電走行距離(WLTC、km) 582
EPA換算推計値(km) 466
電費(目標電費、km/kWh) 7.56
Cd値(空気抵抗係数) 非公表
バッテリー総電力量(kWh) 76.96
急速充電性能(kW) 150
急速充電時間 バッテリーが25℃の時に10-80%が150kW器で約28分
普通充電性能(kW) 6
普通充電時間(時間) 約13時間
V2X対応 V2L、V2H
プレコンディショニング機能 あり、ナビ連動もあり
モーター数 2
AWDシステム名 DIRECT 4
モーター型式、前後 2XM
モーター種類、前後 交流同期電動機
モーター出力(kW/ps) 167/227
モータートルク(Nm/kgm) 268/27.3
システム最高出力(kW/ps) 300/407.8
最高出力 ps 407.8
フロントサスペンション マクファーソンストラット
リアサスペンション ダブルウィッシュボーン
ブレーキ、前後 ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(前) 235/50R20 104V
タイヤサイズ(後) 255/40R20 105W
タイヤメーカー・銘柄 ダンロップ・SP SPORT MAXX 060
0-100km/h加速(秒) 4.4
車両本体価格 (万円、A) 950
CEV補助金 (万円、B) 104
実質価格(万円、A - B) 846
※車両重量は車検証に記載の値

取材・文/烏山大輔

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回生ブレーキでいっぱい回収するより、回生ブレーキを必要最小限になるぐらい、スタートはサッと加速してなるべく長くストップまで滑らかーになるようにしています。