日本晴れになった3月12日の日曜日の午後。EVsmartブログの寄本編集長と筆者は、関越自動車道下り線の上里SAで目を見張りました。新規オープンした6口のEV用急速充電器が、すべて埋まったのです。同時に、充電マナーの疑問も浮かんできました。当日の様子をお伝えします。
マルチコネクターの急速充電設備が増加中
eMP(e-Mobility Power)は2025年までに、2023年2月時点で約7800口あった急速充電器のコネクター数を約2倍の1万5000口まで増やすべく、高速道路のSAPAなどには複数基の設置を進めています。
2023年1月からのニュースリリースを見ると、2022年12月に47基(65口)、2023年1月に115基(160口)、2023年2月に108基(150口)の急速充電器を設置したとアナウンスしています。
既設基のリプレイスも含まれていますが、最近は新東名の浜松SA(上り/下り)に各8口、駿河湾沼津SA(上り/下り)に各6口を設置したように、高速道路上のマルチコネクターも増えています。
そんな最新設備を確認する機会があったので、さっそく充電してきました。場所は関越自動車道の上里SA、上り線です。設置してあったのは、ニチコン製の6口基でした。
6口充電器がなんと満車!
時は2023年3月12日。筆者は、日本EVクラブの打ち合わせのためにEVsmartブログの寄本編集長らと訪れた長野県白馬村から帰京するため、関越自動車道の上里SAに立ち寄りました。
乗っていた車は、筆者がフォルクスワーゲン・ジャパンから借りた『ID.4』、寄本編集長は日産から借りた『アリア』でした。
実のところ、『ID.4』(Pro)くらいのバッテリー容量があれば、白馬村から上信越道、関越道を経由する約260kmのルートなら充電なしでも帰ってこられるのですが、スマホアプリの『高速充電なび』を見ていたら上里SAが6口基の表示になっていることに気がつきました。
寄本編集長の話によれば、3月10日の往路で確認した上里SA(下り)の6口基は供用が始まっていなかったのですが、上り線ではすでに始まっていたのでした。
後日確認したところ、上里の供用開始日は、上り線が3月1日、下り線が3月14日でした。ちなみに同時期に三芳PAで4口基が開設されています。こちらは上りが3月1日、下りが3月13日に供用開始されました。
新しい充電器があると知れば、寄らないわけには行きません。ということで、急速充電器の性能を確認できるくらいにSOC(バッテリー残量)を減らすよう、調節をして、上里に寄ってみました。
3月12日は日曜日。渋滞を避けるため少し早めに白馬村を出て、上里SAに着いたのが14時20分頃でした。
まず筆者が充電器に着いてみると、真新しいニチコン製6口基に、3台がコネクターをつないでいました。6口もあるから余裕だろうと思ってアプリで確認をしてなかったので、ちょっと冷や汗でした。
そのすぐ後から寄本編集長が到着。しばらくするとヒョンデ『IONIQ5』や入ってきて、なんと、6口基が満車になりました。
この時点で充電器に並んでいたのは、三菱『アウトランダーPHEV』が2台のほか、テスラ『モデル3』、『IONIQ5』、それに筆者らの『ID.4』と『アリア』でした
6台中2台の充電器は「終了」後の放置
到着してさっそく充電を開始。ニチコンの6口基はケーブルが吊り下げ式なので、つなぐのがとてもラクです。CHAdeMOのケーブルはすごく重いので、つなぐのもそうですが、片付けるのも骨が折れます。心の底から、全部を吊り下げ式にしてほしいと思うのです。
さて、とりあえず充電器に接続して、なかなか壮観だなあと思いながら、6口基が満車になっている様子を記念に撮っていると、各車の充電状況を見て回っていた寄本編集長が、「あ……」と、少しくぐもった声を上げたのが聞こえました。
続けてひと言、「2台、充電終わってるじゃん」。
そうなのです。筆者らに先だって充電スペースに止まっていた4台のうち2台は、筆者らが着く10分~15分ほど前には充電が終わっていたのでした。
そのうちの1台は、持ち主がいちど車に戻ってきたのですが、コネクターを外すことなく、車内の荷物をとっただけでまた、SAの施設に戻っていきました。
びっくりしました。こういうこと、あるんだなあと思いました。
その間、『リーフ』がやってきて、満車なのを見て、待機するために充電器の前の駐車スペースに車を止めていました。
それから10分前後で、充電が終わっていた2台は持ち主が戻ってきて充電スペースから出ていきました。
この10分前後をどう見るかですが、筆者は、短くない時間だと思っています。公共の場での時間は、短くても、積み上がることで多大なロスになります。
これでは充電器の口数を増やしてもきりがありません。それになにより、待っている人にしてみれば、無駄以外のなにものでもない時間です。
EVの普及が進むと、こういうことも増えそうではあります。寄本編集長は、口数が増えるとすぐに車を動かす意識が薄くなるかもしれないとも言っていました。
いずれ、基本的な公共意識の問題とともに、充電器の使い方という、ごく基本的なマナーの啓蒙も必要になるのかもしれません。あるいは、コネクターを抜いて充電区画から移動しないと課金が続く(テスラのスーパーチャージャーはそうなっています)など、システム側での対応もありえそうです。
マナー意識があれば余計なコストはかからないのですが、そうも言っていられないだろうなあと、上里SAの青空の下で感じたのでした。
上里SAの急速充電器が一時的に全滅
ここからは後日談です。
3月16日午後、筆者のFacebookに上里SAの充電器が不調だという投稿が流れてきました。数日前には動いていたので、おやおやと思って『高速充電なび』を見てみると、なんと上里SAの上り/下りと、4口基になっている三芳PAの下りに設置されている急速充電器が、すべて「運休中」になっていました。
翌日の昼前に見てみると、やっぱり「運休中」のままです。ただごとではないように感じました。
eMPのホームページで「充電器毎の運休情報はこちら」の埼玉県を見ると、上里SAと三芳PAについて「休止」と「復旧」の情報が複数、出ていました。何度かトラブルを繰り返していたようです。
これに関して、Twitterには、充電器に表示されている電話番号に電話したところ、ナビダイヤルで10分以上待った後に出たオペレーターから、充電不可能という情報が得られただけだったという批判的な投稿が上がっていました。愚痴のひとつも言いたくなる気持ちは理解できます。
それにしても、いったい何が起きていたのでしょうか。eMPに問い合わせてみました。どうやら、認証機能の不具合があったようです。
コネクターの数は多くても電源部がトラブると全停止
まずニチコン製マルチディスペンサータイプ(マルチコネクター)の急速充電器について、基本的なことをおさらいしておきます。
6口基、4口基ともに、最大出力は90kWで、システム総出力は200kWです。設備は、電源部本体と、充電コネクターのあるディスペンサー部に分かれています。電源部本体には交流から直流に変換する電源ユニットが10台設置されていて、それぞれの電源ユニットは20kWの出力を出せます。
20kW×10台の電源ユニットを組み合わせて、6基(または4基)のディスペンサーを運用しているわけです。例えば最大90kWを出す場合は電源ユニット5台を使用します。充電するEVが増えたら、10台の電源ユニットをシェアすることで充電出力を調節します。
そのため、EVが2台までなら最大の90kWを出すことができますが、3台になると40kW(電源ユニット2台)+80kW(電源ユニット4台)+80kW(電源ユニット4台)、以降はEVの数が増えるごとに、ひとつのディスペンサーに割り当てられる電源ユニットが少なくなり、充電出力が落ちていきます。
このように、電源部本体を6個(または4個)のコネクターが共用しているので、本体側で異常があると、接続しているコネクターすべてが使用不能になります。
停止原因は通信部の不具合で対策検討中
大黒PAや浜松SAなどに設置している、ケーブルが吊り下げ式のニチコン製急速充電器は、4口基、6口基ともに同じ設備構成になっています。
さて、上里SAのトラブルについては、eMPから以下のような回答がありました。なお回答は3月22日21時現在のものです。
**ー 上里SA等に設置されているニチコン製急速充電器(マルチディスペンサタイプ)は、「電源設備本体」と「複数のコネクターを持つディスペンサー部」が接続された構成です。3月17日に発生した故障は、電源設備本体が持つ通信部に不具合が発生したため、全てのディスペンサー部が停止していました。3月17日中に作業員が向かい、既に復旧しています。
ー 電源設備本体の通信部(認証機能)に不具合があり、弊社と充電器メーカーにて対策を検討中です。**
新しい充電器とは言え、大黒PAなどで実績があったはずなのですが、トラブル要因はまだつかめていないようです。今後に、少し懸念が残ります。
また、課金されるナビダイヤルを採用しているのは、以下の理由のためだそうです。
ー お問い合わせ番号をフリーダイヤルにした場合、充電器のご利用者様が、現地にてご自身で解決できる簡単な内容のお問い合わせ(入電)が増加すると想定されます。その場合、真にサポートを必要とされているご利用者様からのお問い合わせへの対応ができなくなる恐れがあるため、ナビダイヤルを採用しております。
わからなくもないのですが、ナビダイヤルであれば待ち時間が発生しないくらいでないと、トラブル時に電話をする充電器利用者の不満は高まってしまいそうです。
なにはともあれ、原稿を書いている3月24日未明の時点では、上里SAの急速充電器はきちんと動いているようです。でも今後も、コネクター数が多いからと言って安心は禁物かもしれません。トラブルで全停止している可能性とともに、休日などは満車になることもあります。『高速充電なび』で事前にチェックしたほうがいいでしょう。
そうなると、今度は『高速充電なび』の使い勝手がもっとよくならないものかと思ってしまうのですが、何年経ってもあまり変わらないですね。ちなみに急速充電器の利用情報を、「高速充電なび」以外のアプリ(EVsmartなど)からでも提供できればいいのですが、今はそうなっていません。理由はわかりませんが、とても残念なことです。
なおSNSへの投稿から、上里SA(下り)では3月18日、友部SA(下り)では3月24日にそれぞれ、認証機能不具合のために充電器を無料開放しているらしいことがわかりました。いずれもニチコン製の新型機です。今後も認証機能だけの問題であれば、運休ではなく無料開放で対応してもらえると、EVユーザーとしては助かりますね。
EV普及の速度は充電ネットワークの利便性にも左右されます。数カ所の高速道路SAPAにマルチコネクター器が登場したのは素晴らしいことですが、設置がEV普及のスピードを上回らないと悪評が広がりやすくなってしまいます。もう一息、eMPをはじめとする関係事業者さんにはがんばってほしいと思ってしまう春の午後なのでした。
取材・文/木野 龍逸




