2026年7月11日、12日の2日間、長野県白馬村で開催された「第13回ジャパンEVラリー白馬2026」に、筆者の愛車であるトヨタ・クラウンFCEVで参加してきた。はたして、水素ステーションの整備は進展しているのだろうか。東京から白馬へと往復したレポートをお届けする。
水素ステーション整備の進展を確認したい
「ジャパンEVラリー白馬2026」の2日間、全国からEV、PHEV、FCEVのオーナーが集まり、最新EVの試乗会や車両展示、V2Xのデモンストレーション、オーナー同士の交流、EVをテーマにしたディスカッション、白馬村内を走るEVパレード、表彰式など、多彩なプログラムが行われた。
日本EVクラブのメンバーである筆者は、近年では、2023年にホンダ・クラリティ FUEL CELL、2024年にBYD ATTO 3で参加した。FCEVとBEVを乗り換えての参加を通じて強く感じたのが、EVの充電インフラは想像以上に整ってきたということだった。
では、FCEVはどうか。水素ステーションはEV充電インフラのように進化しているのだろうか。3年前にクラリティ FUEL CELLで参加した時と比べ、クラウンFCEVでの遠征はどれほど楽になったのか。それを確かめたかったことが、今回クラウンFCEVで参戦した大きな理由である。
FCEVの「ラリー」は出発前から始まっている
ジャパンEVラリーの「ラリー」とは、オフロード競技ではなく「集合離散」を意味している。「いざ、白馬!」を合い言葉として、白馬に集まることに意義があるという主旨だ。
さて、FCEVでのラリー参加は、自宅で充電できるEVとは大きく事情が異なる。筆者はイベントスタッフも務めるため、現地には前日の金曜日13時に集合する必要があった。つまり、筆者にとってのEVラリーは、木曜日からすでに始まっていたのである。
まず確認しなければならないのが、水素ステーションの営業状況だ。東京から白馬へ向かうルート上で利用できる水素ステーションは、長野市内の1か所のみ。往路となる金曜日と、復路となる日曜日の営業状況を、電話であらかじめ確認する必要があった。結果は、いずれの日も通常営業とのことだった。
この「電話で確認する」というアナログな作業が、FCEVの運用では非常に重要になる。水素ステーションは、点検や臨時休業が少なくないからだ。ともあれ、長野のステーションが通常営業であることを確認できたことで、計画通りクラウンFCEVで白馬へ向かうことを決めた。
実際、7月9日(木)の夕方、自宅から約5kmの場所にあるENEOS杉並水素ステーションで水素を充填した際、気になる告知を目にした。7月23日から8月12日まで、およそ3週間、点検のため休業するという。もし長野の水素ステーションも休業だった場合、今回もFCEVではなく、2024年と同じくBYD ATTO 3で参加することを考えていた。
水素の充填自体は約5分で終わる。筆者にとって、このENEOS杉並水素ステーションが今回のスタート地点だ。帰路もここをゴールとし、燃費やランニングコストを算出するためである。水素充填後、自宅ガレージで梅雨時の汚れが残っていたクラウンを洗車。ここまでが木曜日の準備だった。
白馬へ出発。課題は「水素ステーションの昼休み」
10日金曜日の朝8時、筆者は自宅のある練馬区を出発した。白馬まではおよそ250km。クラウンFCEVの一充填走行距離はカタログ値で850kmだが、筆者の使い方では、常時オートエアコンを使用して実走行でおよそ550kmが目安となる。
単純な往復なら500km程度なので不可能ではない。しかし、現地での移動や余裕を考えると、途中での水素充填が必要となる。そこで、東京・練馬から白馬までのルート上で唯一となる、長野市の水素ステーションで充填する計画を立てた。練馬から長野まではおよそ220kmである。
本来、白馬での集合時間は13時だったので、9時出発でも休憩を入れて十分に間に合う。しかし、長野の水素ステーションは12時から13時までの1時間が昼休みだ。岩谷産業が運営するセルフ式ステーションであるにもかかわらず、昼休みがあることには日頃から少々疑問を感じている。運営会社によっては、週に1〜2日の定休日があるステーションもある。
この昼休みを避けるため、11時30分までに長野へ到着するべく、自宅を8時に出発した。朝8時に出発するには、前日に水素を入れておく必要がある。結果、予定より早い11時過ぎに長野市内のステーションに到着し、無事に水素を充填できた。昼食は少し早めに上信越自動車道の横川で済ませていたため、残り約30kmをノンストップで白馬へ向かい、予定より30分早い12時30分に到着した。
過去最多85台が参加したEVパレード
白馬到着後は、イベント準備を行い、EVクラブスタッフの定宿である「あぜくら山荘」へ。翌日はクラウンFCEVで会場へ向かい、参加者のゴールを迎え、各車両を駐車位置まで誘導した。
午後は試乗会のインストラクターを担当。そして夜は、イベントの目玉のひとつである「EV白馬ナイト」(懇親会)へ。地元で有名なレストラン「チェリーパブ」で自慢のピザなどをいただきながら集まったみなさんと歓談し、終了後は宿へ戻った。
ラリー最終日の12日は、白馬村内をEVでパレードした。参加台数は過去最多となる85台だったという。今回のEVラリー全体の参加台数は101台。そのなかでFCEVは、ホンダが展示車・広報車として持ち込んだCR-V e:FCEVが2台あったものの、個人参加のFCEVは筆者だけだった。
パレード後は集合写真の撮影、表彰式などが行われた。最も遠方から参加したのは、岩手県から来た日産アリア。そのほか各種表彰が行われ、試乗車として最も高い評価を得たのはBYD SEALION 6だった。これによりBYDは、3年連続の栄冠を達成したことになる。
帰路も水素ステーションの営業時間との戦い
イベント終了後、スタッフとして片付けを行い、帰路についた。今年は例年より早く終了したため、長野での水素充填も余裕を持って行うことができた。
とはいえ、水素ステーションは営業時間が短い。朝8時から12時、13時から17時までというところも多く、常に時間との戦いになる。
長野で水素を充填し、東京へ向けて出発した。筆者にとってのゴールは、ENEOS杉並水素ステーションである。閉店時間は19時30分。長野を出た時点では、ナビ上では間に合う見込みだった。
しかし、日曜日夕方の関越自動車道上り線である。ところどころで渋滞が発生し、練馬インターに到着した時点で19時30分になっていた。結局、その日のうちに杉並水素ステーションで充填することはできず、ゴールを迎えることはできなかった。
翌日の13日月曜日、ENEOS杉並水素ステーションで水素を充填し、ようやく筆者のEVラリーは無事ゴールとなった。木曜日の午後から月曜日の午前まで、足かけ4日間にわたるEVラリーになったのだった。
EVより丸1日余計にかかるFCEVの現実
自宅充電ができるEVオーナーと比べると、筆者のラリーは実質的に丸1日余計にかかったことになる。これが、現在の水素インフラの現実だ。
日本国内のEV充電スポットはおよそ3万7000基とされる。一方で、水素ステーションは全国でおよそ150か所にとどまる。しかも、3年前にクラリティ FUEL CELLで参加した時より1割ほど減っている。結果として、今回もEVラリーの往復で利用できる水素ステーションは、長野の1か所だけだった。状況はまったく進展していなかったのである。
クラウンFCEVの燃費とランニングコスト
最後に、今回のEVラリーにおけるクラウンFCEVの燃費とランニングコストを報告したい。
ENEOS杉並水素ステーションをスタートおよびゴールとした総走行距離は605km。使用した水素量は5.25kg。水素代は9,756円だった。
つまり、コストは16.13円/km、平均燃費は115.2km/kgとなる。筆者のクラウンFCEVは、これまで約8,000kmを走行して平均燃費が100km/kgほどなので、今回は15%ほど良い結果となった。高速道路でクルーズコントロールを多用し、一般道も比較的空いていたことが好燃費につながったのだろう。
ランニングコストについても、運営会社によって水素価格は大きく異なる。ENEOSは2,200円/kg、岩谷産業は1,650円/kgであり、今回は岩谷産業のステーションで多く充填したため、ENEOSでの利用が多い普段よりもランニングコストは低くなった。
とはいえ、EVで電費6.5km/kWh、仮に自宅での電気代を30円/kWhとした場合、コストは約4.62円/kmとなる。ラリーでは途中充電が必要になるため単純比較はできないが、今回のFCEVのランニングコストとは約3.5倍の差がある計算だ。
オーナーとして感じるFCEV普及への壁
政府は2030年に水素ステーションを1,000か所、水素価格を300円台/kgにする目標を掲げている。しかし現実には、ここ2年で水素価格は倍になり、ステーション数は減少傾向にある。さらに、昼休みや限られた営業時間、休業日の問題もある。高速道路上の水素ステーションにいたっては、日本では足柄SAの1か所のみという状況だ。
水素充填そのものは短時間で済み、FCEVならではの魅力も確かにある。しかし、インフラの不便さと水素価格がこれほど大きいままでは、FCEVの普及は難しい。今回、クラウンFCEVで白馬まで走ってみて、オーナーとしてあらためてFCEV普及の壁を実感した。
取材・文/福田雅敏







