プジョー『e-208』で夏の急速充電性能を再検証〜「意外と入らない?」の理由を考えてみた

発売直後の真冬に試してみて、東名足柄SAの40kW器で52Aしか流れないなど「意外と入ってくれない」印象だったプジョー『e-208』の急速充電性能。気温が高い夏の急速充電ではどうなのか? 東京〜新東名〜清水JCT〜東名〜東京の周回コースで再検証してみました。

コストパフォーマンスなど魅力満点のBEV

グループPSAジャパンが早々に日本にも導入してくれたプジョー『e-208』は、バッテリー容量50kWhの完全な電気自動車です。1000万円クラスの超高級車が目立つ輸入EVが多い中、このe-208の価格は396万1000円〜(税込)とかなりお手頃。新車で購入する場合、次世代自動車振興センターのCEV補助金「33万6000円(令和3年度補助金の交付額)」が活用できるので、実質362万5000円でGETできます。

実質購入金額比較

車名車両価格CEV補助金額実質購入価格
プジョー e-208

Allure

3,961,000円〜336,000円3,625,000円〜
プジョー e-208

GT

4,328,000円~336,000円3,992,000円
日産リーフ X

(40kWh)

3,825,800円〜388,000円3,437,800円〜
日産リーフ e+ X

(62kWh)

4,417,600円〜420,000円3,997,600円〜

CEV補助金を活用した実質購入価格を、日産リーフの「X」グレードと比較してみました。補助金額は、車両ごとの「一充電走行距離(km ※WLTC)とEV電費性能」を元に算出されており、給電機能があると一律2万円が加算されるので、各車で少しずつ違っています。ともあれ、e-208と日産リーフが、ガチンコ勝負といっていい価格帯であることがわかります。

ボディサイズはコンパクト。ACCなどの運転支援機能はもちろん充実していて、プジョーのブランドイメージとともに、フランス車らしい小気味いい走りの味付けが楽しめる。現状、日本で買える電気自動車のラインナップを考えて「今、私が買い替えるとしたらコレだなぁ」と思わせてくれる、魅力満点の1台です。

【関連サイト】

プジョー『e-208』車種サイト

厳寒期の急速充電検証で「意外と入らない」を実感

日本国内へのデリバリーが始まってすぐ、2020年12月に『e-208』と、プラットフォームなどは共通のSUVである『e-2008』で、新東名〜東名を清水ジャンクションでUターンして周回するコースを走り、急速充電性能を検証しました。

その結果、約220km走行後の足柄SA上り線の40kW器では「30分で約10kWh」しか充電できないなど、「急速充電器最大出力のおおむね半分程度の充電性能」という感触でした。

ところが、2021年4月、EVで四国遍路という企画で宇野さんが寄稿してくれたレポートでは、新東名静岡SAの50kW器30分で約20kWh充電できるなど、実用的に「これならOK」と思えるデータが紹介されていました。

12月の検証時、外気温は5℃程度。EVのバッテリーは低温(おおむね5℃以下とか)でも高温(おおむね50℃以上とか)でも、急速充電などの出力を制御することがあります。私の検証時「意外と入らなかったのは寒かったから」であろうというのが、この時点での推察でした。

ならば、気温が上がったらぜひ確認してみなければ! というわけで、今回の再検証を行った次第です。

言葉をつらつら並べてもわかりづらいので、12月と今回(8月)の検証結果、また、4月の四国遍路の際の充電データを表にしてみました。

e-208 急速充電検証結果一覧

表は画像化して貼り付けてますが、私個人のアカウントでGoogleスプレッドシートのファイルも作成してあるので、細かい文字が見えないぞ! という方はご参照ください。

このデータから考察できることを、順に説明していきます。

寒くなければまずまずの出力で充電可能

まず要注目のポイントが、12月と8月、足柄SA上り線40kW器30分での充電電力量です。12月(外気温3℃程度)は約10kWhしか入らなかったのに比べ、8月(外気温33℃程度)では約17.5kWh入っています。

充電器の最大出力は40kWですが、実際にはロスなどもあって「40kW×30分=20kWh」という計算値通りには入らないので、約17.5kWhという充電量はまずまず納得の数値といえます。

検証走行の翌日、私の自宅近くの日産ディーラー、44kW器での充電結果も違いは一目瞭然。どちらもSOC約60%からの充電で、12月は約9kWhしか入らなかったのが、8月は約15.5kWh充電することができました。「これなら及第点」といえるでしょう。

念のため、足柄SAに設置されている東光高岳の関係者に確認してみると、急速充電器は「チャデモ規格による車両との通信で、車両側が要求する出力を出している」ので、12月に52Aしか流れなかったのは車両がそれしか要求しなかったから。「リチウムイオン電池にはおおむね0℃程度を目安として低温の環境では効率が落ちる特性があり、逆に高温になるとバッテリー保護のために急速充電出力を抑えるよう車両から要求が出るケースもある」ということで、検証結果における充電量の差は「低温が理由」と理解しておくのが良さそうです。

バッテリー容量に比べて充電量を少なく感じる

12月の充電量が少ないのは事実ではありますが、ことに大容量のバッテリーを搭載したEVで30分のチャデモ急速充電を行ったとき「あれ、これだけしか入らないのか」と感じることがあります。

たとえば、50kWhのe-208で、出力50kWで30分間急速充電しても、充電できる電力量は多くても22kWh程度。SOC(電池残量)にして50%に届きません。さらに、e-208で普通にディスプレイされているメーターでは電池残量がアナログ式の燃料計のような表示と残り航続距離予測の表示しかなくて、正確な充電量を把握しにくいのです。

「13%が53%になったから、40%=20kWhは充電できたな」と把握できれば納得しやすいけれど、アナログ式の残量計のメーターだけ見せられると「なんだ、まだ半分くらいにしかなってないじゃん」と感じてしまいがち、ということです。

これは、プジョーだけに限ったことではなく、現状のエンジン車ベースの電気自動車では「ありがち」な傾向です。ガソリンなどの燃料に比べて「電気」で走るEVのユーザーはエネルギーに敏感になります。残量のSOCや充電電力量などの数値は、しっかり把握できる、いわば「電池ともっとコミュニケーションしやすい」インターフェースが広がるといいのにな、と感じています。

ニチコン製の50kW器ではどうなのか?

12月の検証記事に、読者のJBさんから「東光高岳製の充電器は交流電源からDC 400Vを内部的に作り車両側の総電圧に合わせて昇圧、降圧を行いながら電力を供給している。DC 500Vを作り降圧のみで車両に電力供給を行うニチコン製の急速充電器であれば十分な電流が得られるのではないか」というコメントをいただきました。

設置場所として「道の駅いちかわ」を例示してくださっていたので、今回はそれも試してみる気満々で『EVsmart』で確認すると……。なんと「急速充電器は故障のため、現在ご利用いただけません」という表記。公式サイトにも「EV充電器不具合のお知らせ」が出たまま、でした。

ほかに、都合良くニチコン製50kW器を設置している充電スポットって「どうやって探せばいいんだよぉ」と途方に暮れそうになったのですが、ふと、ひらめきました。そういえば、カーシェアサービス『Every Go』で『Honda e』を借りたホンダディーラーには、たしかニチコンの50kW器が設置されています。

というわけで、東名周回ドライブから都内に戻ったその足で、自宅近くの『ホンダカーズ東京中央 野沢店』でニチコン50kW器による30分間の急速充電を試しました。

結果は21.5kWhとほぼ満点。とはいえ、今回は足柄の40kW器でも17.5kWh入ったので、その差は4kWh程度と、出力差を考えると「500Vのニチコンなら大丈夫」と断言することはできません。ここは、これからまた寒くなってきた時期に、e-208ユーザーさんからの報告コメントをお願いしておきます。

新電元90kW器で155A流れてるのは、謎

検証結果一覧表で気になる点をもうひとつ。宇野さんの四国遍路時のデータで、日産プリンス三重四日市本店(リーフe+のレポートで充電したディーラーでもあります)の新電元90kW器で、電流値として155A、30分の充電器表示で27.7kWh、SOC推計で30.5kWhも充電できているのは、私も説明できない「謎」の結果です。

90kWhスタンド約65kWhで充電中これはいいね pic.twitter.com/dURkDD6Ont
— 宇野 智/モーターエヴァンジェリスト (@uno_satoru) April 20, 2021

PSAジャパンにも確認しましたが、e-208の急速充電は「チャデモ1.0」規格。最大「450V 125A=50kW」対応です。宇野さんの充電時のデータはGoogleスプレッドシートでも確認可能。充電時のTwitter投稿へのリンクもあり、写真を確認すると、たしかに155A流れていて、終了時には「27.7kWh」という電力量が表示されています。電流も電力量も、規格を超えた数値を叩き出している、ということになります。

今回、周回ドライブ検証では足柄のQC1回で走りきることを優先して、海老名の90kW器は試しませんでした。広報車返却後、記事作成しながらデータを表に整理していて気付いて、謎が取り残された次第です。この点についても、リアルなe-208オーナーさんからのご教示コメントをいただけるとうれしいです。

30分で7.5kWhの差はデカい!

最後にもうひとつ注目して欲しいのが、12月と8月の東名周回コースにおける「充電回数」の違いです。

12月は足柄で10kWhしか入らなかったので、海老名SAにSOC13%で到着し、注ぎ足し充電しています。充電しないと、約310kmの周回コースを完走できなかった、ということになります。でも、同じ足柄で17.5kWh充電できた8月の検証では、ホンダディーラーに到着時でもS0Cは18%。足柄での急速充電1回で、余裕で完走できています。

急速充電性能がどうしたこうしたと、こうした細かい検証記事は、電気自動車に詳しくない方にしてみれば「ややこしい」とか「面倒臭い」と感じるかも知れません。でも、30分の充電でこうした「違い」がはっきりと出てしまうのが、電気自動車の特性でもあるのです。

たしかに「ややこしい」ことではありますが、それなりに理解が進むと「電池を使いこなしながら走る」楽しさに熟成されるので安心してください!

ユーザー目線で電気自動車のさまざまな情報(いいところも気になるところも)を発信するのが『EVsmartブログ』の役目と心得て。これからもいろんなレポートをお届けしていきます。一緒にEVライフを楽しんでいきましょう。

【追記】検証した車両とソフトウェアについて

(2021年9月3日)

2回の急速充電検証と、宇野さんの四国遍路に使用した車両は、グループPSAジャパンが取材用に貸し出してくれる「広報車」です。

昨年12月の1回目検証と、宇野さんの四国遍路はナンバーを確認すると同じ車両(e-208 GT Line)。今回8月、2回目の検証に使用したのはグレードが「GT」となった別の車両です。

1回目の検証後から何度か車両側ソフトウェアの改善を確認しました。今のところ、昨年12月の1回目検証以来、新グレードの車両を含めてソフトウェアアップデートなどの情報はないということです。

高速道路SAPAへの高出力器設置もそろそろ進んでいくでしょうし、チャデモ1.0規格対応の「改善」ではなく、いっそのこと「チャデモ1.2」規格(最大出力100kWくらい)対応にグレードアップしてくれれば、e-208、e-2008の魅力が格段に高まる、と思います。

バッテリー容量50kWhでQC100kW対応は、いろんなEVでロングドライブを試してきた私が、現時点で理想として思い描いているスペックです。

(取材・文/寄本 好則)