『EVsmartブログ』チームに新加入したライターが、自腹でマイ電気自動車(EV)を購入する実録レポート。今回は「電気自動車購入を検討する際、バッテリー劣化を気にする前に気付くべきこと」をテーマとして、中古車日産リーフ実録購入記のまとめにしたいと思います。
私が購入した中古車の日産リーフ(AZE0)30kWhのエアロスタイル。納車から約2ヶ月、ZESP2カードの入手から約1ヶ月が経過しました。『EVsmartブログ』には、ベテランEVユーザーの方が多いですが、今回はあえてEVビギナーに対して「初めての電気自動車購入で、バッテリー劣化を気にする前に気付くべきこと」を整理してみます。
日常的に必要不可欠な航続距離は?
中古車リーフを購入した我が家で最も大きな変化。それは、アルファロメオ155やアルファロメオGTを所有していた20年近い期間、ほとんど自分でハンドルを握ろうとしなかった妻が、やたらと運転したがるようになったことです。おかげで、納車から1ヶ月も経たないうちに、自宅への車庫入れで壁にぶつけられてしまいました(苦笑)。あと1回くらいはやらかしそうなので、まだ修理してません。
と、そんな話はともあれ、私が購入した中古リーフ、1月5日の納車時の走行距離は「22,811km」でした。今日、2月26日の走行距離は「23,424km」。52日間で613kmしか乗っていません。1日平均では約11.8kmです。今月は地方取材続きで私が東京にいない日が多く、趣味であるゴルフや釣りに行けなかったこともあり、まあ、こんなものでしょう。リーフの主な活躍の舞台は、近所のスーパーへの買い物 by 妻、です。
「電気自動車は航続距離が短い」とよく言われますが、少なくとも我が家の日常生活にとって、満充電でおよそ200km走れる中古リーフで何の問題もありません。地方在住で、通勤が毎日片道30kmという方でも、自宅に充電用の200Vコンセントがあれば、毎日の使い勝手には何の心配もないでしょう。
**気付くべきこと〜その1
「自分のライフスタイルを知る」**
毎週のように「片道150km以上走ってサーフィンやゴルフに行く」という人に、私は中古車リーフを勧めません。でも、多くの方の日常は「1日に安心して100km走れれば十分」ではないでしょうか。中古電気自動車を買うときは、闇雲に「バッテリーが劣化しているからダメ」ではなくて、まず「このバッテリーで日常的に何キロくらいなら走れるか」を知ることが大切です。30kWhリーフのセグ欠けと残容量については『電気自動車購入は「中古車」が得? 候補車種の中古EVを探してみた!』で紹介しているので、参考にしてみてください。
もちろん、先月発売された日産リーフe+や、テスラ Model S、Model X といった大容量電池を搭載した電気自動車であれば、毎週片道150kmの遠出も問題ありません。ただ、今回は電池容量30kWhの中古車リーフが題材ですし、これから日本でもっと電気自動車が普及するべきという観点から、あえて大上段に断言すると、一充電航続距離が250kmに満たない電気自動車の購入を検討するのなら、まずは自分(とクルマを使う家族など)のライフスタイルを今一度見直して、日常生活に不可欠な航続距離を確認し、購入しようとする電気自動車の航続距離が「ライフスタイルに合っているかどうか」を考えてみるべきです。
その際、エンジン車で享受してきた生活をそのまま電気自動車で置き換えようと考えるのは、あまり正しくありません。電気自動車の航続距離に自分を合わせられるかどうかが大事です。面倒だなぁと感じる方、また500万円以上のクルマは高すぎる(e+の車両価格は400万円台ですが)と感じる方は、電気自動車の購入はもう少し待ってみるのがオススメです。
高速道路での遠出はどうなんだ?
1日平均の走行距離は20km足らずですが、高速道路でちょっと遠出(というほどでもないですが)もしました。その際のデータを確認してみましょう。
**2019年1月13日
東京都世田谷区〜埼玉県熊谷市**
【出発時】
電池残量/98%
セグ表示/12セグ
航続可能距離表示/193km(エアコンオフ)
【帰着時】
電池残量/15%
セグ表示/2セグ
航続可能距離表示/29km(エアコンオン)
世田谷区内を出発して環八から関越自動車道へ。往復の走行距離は約135km。大人3人が乗り、エアコンは設定温度21度で、高速道路では往路はゆっくり目で90km/h巡航くらい、帰りは普通に流れに乗って走りました。
出発時の航続可能距離表示が193kmで、135km走り、帰着時の航続可能距離は29km。「193-135=58km」なので、29km分は余計な電気を使ってしまったことになりますが、途中で充電せずに往復することができました。片道70kmくらいであれば、高速道路でエアコン使って気持ちよく走って、何も問題はありません。正確にはわかりませんが、SOHが90%を切っている私のリーフの満充電時のバッテリー容量が27kWhとして計算してみると平均電費は約8.5km/kWh(ちょっと良すぎるな…)という結果です。
と、途中で急速充電もしていない中途半端なドライブデータを提示しても、どないやねん! って話ですよね。このエピソードのポイントは、エンジン車で高速道路を走るときには常に流れをリードする走りを得意としてきた私が、電気自動車に乗るとできるだけエネルギーを使わない走りが好きになっている、ということです。
**気付くべきこと~その2
「そんなに急いでどこへ行く?」**
とはいえ、私自身が極端な省電費運転を目指しているわけではありません。エアコンは使うし、流れに乗って走ります。省電費運転の感覚は電気自動車に乗り慣れると自然とわかるようになるはずですが、ざっくり言うと「急なアクセル操作を避ける」ことが大事です。
エンジン車でも省燃費を心がけているドライバーは少なくないでしょうが、恥ずかしながら私はそうではありませんでした。エネルギー消費に対して敏感になれる電気自動車に乗ることで「狭いニッポンそんなに急いでどこへ行く?」と、改めて気づくことができ、エネルギーを浪費しない走り方を自然と実践できるようになりました。
たとえば、100kWhのバッテリーを搭載したEVであっても、一度電池残量が減ってしまうと現在のチャデモの急速充電器を使う条件下では、おおむね1時間に一度の休憩=急速充電を強いられます。エンジン車で東京〜大阪間を7時間で走っていた人も、私が買った中古車リーフでは10時間くらいはかかるでしょう。
電気自動車を購入するということは、エンジン車と比べて「ちょっと不便」を受け入れて、電気自動車に合わせた日程やプランを立てることが必要になると知っておきましょう。
急速充電ってどうなんだ?
これも『日産リーフの中古車を購入して確認できたいくつかの真実』で詳報したように、今、中古車リーフを購入すると「旅ホーダイ」で知られる月額2000円の日産ゼロ・エミッションサポートプログラム2(ZESP2)の「使いホーダイプラン」が、実質4年間無料になります。登録から2年間は無料。さらに月額料金約2年分に相当する4万8000円分の商品券がもらえるのですが、ZESP2カード到着から約3週間後、分厚い封筒で商品券も届きました。
とはいえ、私の場合は自宅ガレージでの普通充電を中心に使っているので、ZESP2のカードが届いて約3週間、カードを使って急速充電器を利用したのは、日産ディーラーへ1ヶ月点検に行った際についででやった10分ほどだけ。先日、羽田空港へ行った時、思ったより早く着いたので駐車場(P1)4階の急速充電器で充電しましたが、この充電器は誰でも無料で使えたので、旅ホーダイの恩恵は活かせませんでした(笑)。
現状の市販電気自動車の充電には、おもに200Vのコンセントや普通充電器を使う「普通充電」と、直流の20〜50kWで充電できる「急速充電」があります。しばしば「充電スポットが少ない!」と批判されるのは、おおむね急速充電器の設置数のことです。
**気付くべきこと~その3
「急速充電器は社会のインフラ」**
電気自動車を初めて購入する前に、まずは試乗車などで「普通充電」と「急速充電」を体験し、エンジン車の「給油」との違いを少しでも理解しておくのがいいでしょう。とくに意識してみて欲しいなと思うのは、電気自動車の充電設備はモビリティを支えるための「インフラ(ある意味で公共施設)」ということです。
どういうことか、もう少し説明しておくと、電気は社会インフラですよね。発電方法や電力供給のシステムは、生活の根幹にも関わることです。そして、電気自動車には「大きな蓄電池」という機能もあり、今後、スマートグリッドの発展などに深く関わってくる可能性が高いのです。そもそも、スマホやテレビ、冷蔵庫や掃除機まで動かして、生活を支えている「電気」という力でマイカーを走らせているということを、ぜひ気にとめてみて欲しいと思います。
電気自動車用の充電スポットは、まだ発展途上です。ざっと思いつく「課題」を列挙してみましょう。
【充電インフラが抱えている課題】
●高速道路SAPAなど利用頻度が高いスポットで充電待ちが起こりやすい。
●利用頻度が高い急速充電スポットには複数台設置が望ましいが、まだまだ。
●大容量バッテリー搭載車が増え、急速充電器の最大出力が50kWでは力不足。
●しかも、出力20〜30kWの力が弱い急速充電器が増えてしまっている。
●商業施設や宿泊施設など「目的地」にはもっと普通充電設備が普及するべき。
●課金システムが複雑かつ混乱気味(ビジターにはほぼ嫌がらせ)。
●充電器利用のマナーを守らない利用者が少なくない。
エンジン車でももちろん「社会」と関わるのですが、電気自動車の場合、エネルギーが「電気」であり充電インフラやシステムなどが発展途上であることから、自分とマイカーが「社会と関わっている」ことをより強く意識させられます。
電気自動車を好きになるほどに、社会のさまざまな仕組みに対して「もっとこうなればいいのに!」という思いを抱くはず。個人的には、より多くの人が電気自動車を日常的に活用し、持続可能な自然エネルギーを普及させることが必須の課題だと感じてくれるといいのにな、と思っています。
ともあれ、充電インフラの課題として挙げた「高速道路SAPAなど利用頻度が高いスポットで充電待ちが起こりやすい」という状況は、急速充電可能なプラグインハイブリッド車が増えたこともあり、ますます火急の課題になりつつあります。はたして、その実情はどうなのか。今度、GWには東京から兵庫県の実家に中古車リーフで帰省する予定があるので、ZESP2の旅ホーダイを活用しつつ、充電待ち(それなりに覚悟してます)の実情をレポートしたいと思います。
欲しい電気自動車を待てばいい!
いろいろ書いてきたように、私は、誰にでも電気自動車を勧めることはできません。今、電気自動車を生活に取り入れるには、いくつかの覚悟を決めて、意識を改めることが必要になるからです。
さらに、あちこちで言ってきたことですが、日本でなかなか電気自動車が普及しない最大の原因は「欲しくて買える車種がない」「車種の選択肢が少なすぎる」ことだと思っています。たとえば「僕はスバリストなんだ」という人に「日産リーフの中古車がいいよ」と勧めても、何でやねん! って話ですもんね。
**気付くべきこと~その4
「欲しくて買える電気自動車の発売を待てばいい」**
私自身は、もうエンジン車に戻るつもりはありません。電気自動車がエンジン車以上に「気持ちいい」乗り物であり、東京で暮らす日常生活には中古車リーフで何の不便も感じないことは、声を大にしてお知らせしたいと思います。でも、電気自動車をさほど好きになってもいないのに、「そろそろ電気でもいいか」くらいの気持ちで無理して電気自動車を購入するのはやめておくのがいいでしょう。無理して買うと、さまざまな不満がたまり電気自動車を嫌いになってしまうかも知れないとさえ思います。
また、テスラの Model S が素晴らしい! と思っても、新車価格が1000万円レベルの高級車をほいほい買える人は少ないでしょう。たとえば、先日ご紹介した『中国製電気自動車 ORA R1 を世界が絶賛! 100万円で200KM以上を実現』のように、100万円台で安心して200km走れる軽自動車が発売されれば、日本でもすごく売れるだろうと思います。「自動運転はなくていいから300万以下で買える4WDを!」とか、「8人乗りで400万以下。自宅の車庫に入れやすいSUVを!」「航続距離は200kmでいいから、とことんスポーティな走りを楽しめるクルマを!」といったニーズもあるはずです。
つまり、「自分自身が本当に欲しくて買える電気自動車が発売されるのを待つ」のが、賢明なチョイスであるということですね。魅力を感じるクルマであれば、電気自動車特有の「我慢」だって楽しむことができるでしょう。大げさに言うと、値段や機能、さまざまな面で魅力的な電気自動車のバリエーションを揃えて持続可能な社会へのシフトを実現するのは、経済発展を支えてきた日本自動車産業の責務だと思っているし、期待しています。
というわけで、電気自動車のことがよくわからないんだよね、という方に向けたアドバイス(上から目線ですみません)を整理、また納車1ヶ月足らずで傷物になってしまった涙ぁ〜の報告で、私のマイ電気自動車実録購入記のシリーズを締めくくりたいと思います。EVsmartブログの読者にはベテランEVオーナーが多いはずですが、みなさんは友人に自信をもってEVを勧められますか? また、この記事を読んで「オレにも言いたいことがある」という方もいらっしゃることでしょう。ユーザーならではの思いや私が言葉足らずだったりする点を教えていただけるとうれしいです。
これからは、中古車リーフを普通にマイカーとして使いながら、電気自動車ユーザーが気になる話題、場所などをレポートしていきたいと思っています!
(寄本好則)
【実録購入記シリーズ】
第一弾●『2020年まで待てない! 今、買うべき電気自動車を比較検討「コストパフォーマンス」編』




