ジャガー I-PACE(アイペイス)で東京〜兵庫、片道約620kmを往復。往路編では90kWhの電池で走る長距離ドライブの急速充電を速報でお伝えしました。復路編では、5日間、往復で1200km以上をたんまり走った I-PACEの印象を、EV大好き野郎目線(エンジン車基準の自動車評論家とはできるだけ違う観点)でレポートしてみます。
ちなみに冒頭アイキャッチ写真は、道の駅で充電しようと思ったら充電終了した車が放置されてて待ちぼうけの図、です。10分近く待った末、館内放送で呼び出してもらったドライバーさんが何も言わずに移動しようとするので「黙って立ち去るのは違うでしょ?」と言うと「いや、食事してて時間に気付かなくて……」と。結局、ごめんねとか失礼とかのはっきりしたひと言はありませんでした。きっと、何もモラルに反したことをしたとは思っていないのでしょう。というか、モラルを知らないのでしょう。今回の長距離ドライブではEV充電スペースのエンジン車放置にも嫌になるほど遭遇しました。EV・PHEV普及の悩ましい課題です、ね。実家にも200Vコンセント付けなきゃなぁ。。。
【2019.8.20 追記】
アイペイスのCHAdeMOでの急速充電。対応出力についてジャガー・ランドローバー・ジャパンに確認できました。
「I-PACEのポテンシャルとしては100kWまで対応していますが、現状日本では充電器の普及度に合わせて現在のソフトウェアが50kWまでの仕様となっています」とのことです。
今後、90kWや150kW器が増えてきたとき、ソフトウェアのアップデートはできるのかなどについては、また次に取材する際に確認してみたいと思います。
走行可能距離の感覚は日産リーフe+とほぼ互角
往路編でも白状したように、私は40kWhリーフ以降の大容量電池搭載EVで片道300km以上の長距離を走ったことがありませんでした。62kWhの電池を積んだe+では、横浜の日産本社から東京都内を撮影で走った程度ではありますが、満充電時に表示される航続可能距離とか、横浜〜東京を走った印象と、今回、アイペイスでたっぷり長距離を走った印象を比べてみると、満充電からの航続距離は「ほぼ互角」あるいは「ややアイペイス優位くらい」というのが、正直な感想です。
え? リーフe+は62kWh、アイペイスは90kWh。でも航続距離の感覚が「互角」っていうのはどういうことか。
まずは、今回の走行データを、アイペイスユーザー向けに用意されているスマホアプリ 『JAGUAR InControl Remote』の走行履歴で確認してみます。
こんな感じで、走行履歴の詳細データが確認できます。
【往路】
電費はざっくり5km/kWhくらいの感じです。
【復路】
復路の電費は、ざっくり4.8km/kWhくらいです。
往路よりもやや電費が落ちているのは、ACCの設定速度を往路は98kmをベースにしていたのが、復路は110kmにしてたから。基本は100km巡航だったのですが、90kmくらいで走るトラックとかを追い越す時にスムーズに走れるよう、設定速度を110kmにしてました。そのため、巡航速度が上がり、電費が少し落ちました。往路目的地の標高が約200mなので、実質はもっと差があったと考えることもできます。
e+で同じコースを走った場合、私はおそらくオートクルーズを90〜95kmくらいに設定します。その場合の電費は推定ですけど、7km/kWhくらいとして、「5÷7=71%」「62÷90=69%」ですから、実用的な体感電費としては「同じくらいかな」という印象になるのです。90kWhの電池を抱えている心の余裕から、追い越しなどでついつい長めに踏んじゃうってことも見逃せません。
頑張って走らず、適度に休むついでに充電、が正解!
今回、大容量電池EVで長距離ドライブをやってみて最も大切な学びだったのは「あそこで充電するぞと決めて頑張って走るのではなく、急速充電器が空いているSAPAで適度に休むついでに充電するのが正解」っていうことです。
実は、往路で3回充電になったので、復路ではあわよくば2回の充電で東京まで辿り着きたいと企んでいたのですが、結局、巡航速度を上げたことが祟って3回充電。鈴鹿と駿河湾沼津では少し「おかわり」までして、むしろ往路よりもいっぱい充電することになってしまいました。
あ、「おかわり」の言い訳をしておくと、駿河湾沼津では充電器側のスペースにエンジン車が駐車してて、やむを得ずその車の後ろを回り込むようにケーブルを接続。ドライバーさんが戻ってきた時に再接続して事実上のおかわり開始。そこまでに15分くらい充電してたので、10分くらいで終わるつもりが車内で眠ってしまい、気がついたら30分しっかりおかわりしてたという顛末です。
ま、鈴鹿のおかわり10分程度は「少し余裕をもって静岡まで走りたい」がゆえの確信犯だったので、言い訳しても詮無いですが。次のEVが来たらすぐに交替できるよう、おかわり中は車内で待機してました。
と、大容量EVで頑張っちゃうと、既存の上限50kWでも力不足で、おかわりしたくなっちゃうんですよね。
しかも、復路では鈴鹿の次は静岡! と決めて頑張っちゃったので、充電器が空いていた岡崎とかはスルー。結果、静岡ではほぼ30分まるまる充電待ちすることになりました。
こんなことなら、岡崎でサクッと充電しとけばよかったと思っても後の祭り。電池残量は9%だったので次の清水PAを目指すには心許なく、待機スペースに止まっていたエンジン車の前に横付けした車内で、おとなしく待つしかありませんでした。
エンジン車ユーザーの皆様、混んでるからついついEVスペースに停めちゃうんでしょうけど、混んでるからこそ待機スペースを占拠されると、EVはほんとに困るんです。
なにはともあれ、東京〜兵庫を充電回数2回だろうが4回だろうが、それほどの違いはありません。回数を減らそうとすれば30分がっちり、あわよくばおかわりしたくなっちゃうわけですが、適度に休憩がてら、充電器が空いているSAPAにピットインして充電すれば、1回の充電時間を15〜20分とかに短縮することも可能です。
62kWhのe+でも、1回の急速充電で復活できるのは30%程度でしょう。次に大容量電池車でロングドライブするときは、電池残量50%くらいを目安に充電器が空いてるスポットで適宜充電。あと、90〜95km/h巡航くらいが結局は楽ちんということを肝に銘じて走りたいと思います。
リアルタイムの充電スポット満空情報をナビ画面で表示して欲しい!
で、空いてるスポットで適宜充電しようとするときに、便利なのが「満空情報」です。私はリーフオーナーなのでスマホにインストールしてる『Nissan EV』アプリに満空情報をチェックする機能があります。また、ジャパンチャージネットワークがリリースしてる『高速充電なび』でも確認可能。
とはいえ、高速道路走行中にアプリ操作は御法度。車載のナビ画面にデフォルトで満空情報を表示してくれると便利です。
それにしても。。。テスラモデルXオーナーのEVsmartブログチームリーダである安川さんが「高速下りてスーパーチャージャーで充電でいいじゃん」というのを、正直「それはどうなんだろ?」と思っていたのですが、今回の体験で理解できました。高速下りる不便より、大出力でサクッと充電できる便利の方が勝ちです。
ポルシェはタイカン発売に向けて150kWの高出力充電器の独自ネットワーク整備を発表しています。往路編でも「高出力充電設備は高級車の性能のひとつ」と書きましたが、ジャガーや、これから日本でも大容量EVをリリースするはずのアウディとかも、まじで高出力充電ネットワークの整備を考えるべきだと感じました。
また、今回は高出力CHAdeMOでの充電は試す機会がありませんでした。アイペイスは100kWまでの出力に対応するポテンシャルはあるはずですが、以前、ジャガー関係者の方から「CHAdeMOの対応出力は50kWまで」とも聞いたこと(正確なことは未確認です ※確認できたので冒頭に追記しました)があります。すでに日産本社前などに設置され始めている90kW器や、これから登場するはずの150kW器に、アイペイスはぜひ対応するべき。また、往路編でも書いたように、日産製のスリムタイプの急速充電器でエラーが出る(充電できない)などの課題は、早急に解決しないといけないですね。
I-PACE の付加価値って何なんだ?
航続距離の実感がe+とほぼ同等。高速道路での追い越しといった速度域まで含めた加速の気持ちよさは、リーフ、ことにe+であれば肩を落とすほどの差(実用的に)は感じません。でも、e+がざっくり450〜500万円に対して、アイペイスは1000万円クラス。はたして、500万円分の付加価値はあるんでしょうか。って、まあ、ジャガーをほんとに購入する人が、こんなセコいこと考えることはないのでしょうが。。。
いくつか、なるほどなぁ、と感じたポイントを挙げておきます。
ブランド力!
なんといっても、最大の付加価値はブランド力。まして、アイペイスは「電気自動車」という新しい文化に擦り寄るというよりも、ジャガーが培ってきた「自動車」の伝統をそのまま進化させてますっていう感じなので、テスラとはまたひと味違う高級感を満喫できます。
たとえば、今回借りた広報車の赤いレザーシート。アイペイスを買うなら「あり」だけど、リーフでこれを選ぶのはちょっと度胸が必要な気がします。よしんばリーフにこの設定があったとしても、赤いのに派手すぎない(実物を見ないとわかりにくいでしょうが)気品は、さすがジャガーって感じです。
ちょっとした「満足感」の積み重ね
e+を試乗したときに最も印象に残った違和感は「シートが電動じゃない」ことでした。乗り味は高級車なのに……と。でも、アイペイスはあらゆる装備が非の打ち所ない高級車。身も蓋もない見方をすれば、1.5倍の電池と装備で、500万円くらいの差はあるのかも知れません。
2モーターの4駆で悪路走破性能の高さとか、そもそもの車格の違いはしょうがないとして、アイペイスにはリーフと比べて「ちょっとしたところでの満足感」に対する、さまざまな配慮が感じられました。
たとえば、充電カードはオリジナルデザインのレザーケース入り。カードだけでポケットとかに入れておくと、うっかり落としたり割れたりしそうな気がして心許ないですが、このケースがあるだけで存在感が増し、意外なほどありがたかったです。
あと、ちょっとマニアックかも知れませんが、付属している普通充電ケーブルがイエローだったのも、個人的にはそそられました。
スマートキーを車内に置いたまま、水遊びとかしても気にせず使える「アクティビティキー」ってヤツが付属しています。暗いところで撮影したので、写真がぶれててすみません。使い方はリアゲートのジャガーロゴに秘密が隠されていますが、詳細はあえて説明しないでおきます(買えばわかる!)ね。
あと、スマホアプリと車両が接続して、エアコンや充電の管理、走行履歴の確認などができるのはリーフと同様ですが、リーフのアプリに比べてサクサク動くのが好印象。冒頭の走行履歴画面でわかるように、詳細なデータが確認できるのもいいですね。
この写真は、出発直後、モンベルのアウトドア用ヘッドライトでスマホを頭に固定してアクションカメラ風に撮影した走行風景のキャプチャです。フロントガラスに、走行速度やACC(アダプティブクルーズコントロール)で前車を認識していることが表示されているのがわかるでしょうか。これが「ヘッドアップディスプレイ」。表示する内容は設定で変更も可能です。便利でした。
ACCやハンドルアシスト、つまり、リーフでいうところのプロパイロット機能。リーフのプロパイロットがかなり頻繁に「オレ知らないよ!」状態になるのに比べ、信頼感は上々。ただし、一般道などでカーブにさしかかる時に減速するといった自動運転的な賢さまではありません。
ひとつ、たとえば98km巡航時、前方に90kmで走るトラックがいて追い越す際、右にウインカーを出して追い越し車線に移ろうとすると適度にクンッと自動で加速してくれるのがとても運転しやすかったです。これ、プロパイロットでは確かめてないので、違いといえるかどうかわかりませんが。
駐車アシスト機能もありますが、これはハンドル操作を代行してくれるだけで、アクセルやブレーキはドライバーが操作します。自動加減はプロパイロットパーキングのほうが優れてます。ま、どちらにしても私は使わないですけど。
ラゲッジスペースは、新型リーフより車幅分は広い、くらいの感じです。今回、兵庫でゴルフに行きましたが、ゴルフバッグ2つであればドライバーを抜かず斜めに置いて積めました。バッグ3つとか4つ積むには、ドライバーを抜いて真横に積むとか、トノカバーを外すとか、後席シートを半分(1/3)倒す必要がありそうです(試してないので曖昧です)。
バッテリー温度は、表示なし!
これは、復路ドライブ中の、メーターパネルとタッチスクリーンパネルの表示画面です。急速充電を繰り返したので、電池温度を確認したいなと思っていろいろいじってみたのですが、アイペイスには電池温度を表示する機能は、ありません。
電池冷却機能(空冷とのことです)が付いていることもあり、電池温度の情報は「必要ない」と判断しているということでしょう。
メーターパネルの電池残量表示はガソリン車のような4分割の目盛りだけだし、そもそものコンセプトとして「ドライバーに電気自動車であることを必要以上に意識させない」という狙いが感じられます。
充電器出力についての考え方や、V2Hの考え方にも通じることですが、欧州メーカーはEVを特別な車ではなく、「エンジン車よりも魅力的な新型車」として展開しようとしているのかな、と感じます。一方でテスラはエンジン車とは異なる「ガジェットのようなモビリティ」として。日本メーカーは「V2Hなども踏まえた新しい社会ツール」としてEVを捉えているといえるのかも知れません。
1000万あったら、アイペイスにするかモデルXにするか。はたまた、さらにお金を積んでタイカンを待つか、あるいは新車リーフを買って高級温泉旅館に夫婦で100泊くらいするか、って。ちょうど今から眠るので、いい夢みたいと思います。おやすみなさい。
(寄本好則)






















