先日のモデル3スタンダードレンジの発表の際に予告のあった、スーパーチャージャー バージョン3が本日発表されました。世界最大の充電ネットワークを構築しているテスラの最新情報です。
本日の発表は予想に反してブログで行われました。おそらく日本語版もじきにリリースされると思います(こちらのリンクは、執筆時点では英語になっていますが、このページが日本語化されるはずです)が、当サイトではEVsmartチームの意見も加えて、より分かりやすく、充実した情報をお伝えします。当記事は翻訳をベースにしています。
テスラは北アメリカ、欧州、アジア地域に12,000基のスーパーチャージャーを設置し、そのネットワークは毎日成長を続けています。米国では99%の人口をカバーし、欧州でも同等の人口を2019年末までにカバーする予定です。中国では人口カバー率90%を最近超え、その率は上昇を続けています。しかし、電気自動車の普及を推進し、世界の再生可能エネルギーへのシフトを加速するためには、充電速度はもっと速くなる必要がありますし、一か所の充電スタンドにおける一日当たりの充電可能台数は、今より圧倒的に多くなる必要があります。
※EVsmart注:現在日本には20か所のスーパーチャージャーがあります。
本日テスラは、スーパーチャージャーの次のステップであるスーパーチャージャー バージョン3(スーパーチャージャーV3)を発表します。V3はテスラの世界最大の蓄電設備の経験から生まれ、テスラ車を現時点で発売中のどの電気自動車よりも高速に充電できる設備です。
※EVsmart注:高速充電を明示的に発表しているポルシェ社のタイカンは現時点未発売の車両です。こちらは最大350kW、20分で80%および、4分間で96km走行可能という情報になっています。EVsmartブログの読者の方々は最大出力があまり意味がないことはお分かりだと思います。結局、高出力をどのくらいの時間継続できるかで、充電時間は決まります。4分間で96kmということは、5分間だと120km。5分間での性能では、テスラのV3とほぼ同じであると言えると思います。80%まで20分で充電できるかどうか、というのは、これも読者の方ならお分かりと思いますが、0-80%のことを言っているとは限りません。電気自動車のバッテリーが0%に近い場合、フルパワーで充電できるケミストリー(電池の内部の種類)はほとんどなく、おそらく非常に空に近いところは避けて、10-80%とか20-80%あたりのことを指して20分としている可能性が高いと思われます。
高速な充電と、電力の共有なし(ペアリングなし)
スーパーチャージャーV3は、まったく新しいアーキテクチャーで設計されています。電力会社が利用しているテスラの製品と同じように設計された、新しい1MWの高圧受電設備で最高一台あたり250kWで充電することができます。250kWでは、モデル3ロングレンジの最も効率の良いときで、5分間で120kmを走行可能にします。本日発表する他の改善点と合わせて、今までのテスラ車の充電データに基づいて推測すると、テスラ車のお客様がスーパーチャージャーで充電に使う時間は今までの半分になる予定です。V3の新しいパワーエレクトロニクスを装備したスーパーチャージャーでは、一台のテスラ車が自分のバッテリーの許す限り、最大のパワーで充電することができます。今までのように2基のペアになっていて、隣の車両とパワーを分けることはありません。この新技術により、スーパーチャージャーV3での平均的な充電時間は15分に短縮されると推測しています。
※EVsmart注:「平均的」ですから、やはりバッテリーを空にしたら30分くらいはかかるでしょう。しかし仮にですが、20-80%が15分になったら多くのユーザーは15分しか充電しなくなるでしょうね。
オンルート・バッテリーヒーティング
充電体験を改善するのは、スーパーチャージャーV3インフラストラクチャーだけではありません。今週(※本日2019/3/7)より、テスラは「オンルート・バッテリーヒーティング」という新機能をリリースします。オンルート・バッテリーヒーティングは、スーパーチャージャーに向かって走行しているとき、到着時点で急速充電に最適な温度になっているよう、計算してバッテリーを予熱し、平均的な充電時間を25%短縮します。
※EVsmart注:名前は弊社の翻訳です。この機能は非常に重要で、毎日電気自動車を乗っているからこそ思いつくものです。今まででもパフォーマンスモデルには「バッテリー最大化」というスイッチがあり、バッテリーヒーターを強制的に入れることができましたが、わざわざそんなことしなくても、車が自動的にバッテリーを温めておいてくれるわけです。急速充電には、ある程度、できれば30℃以上の高いバッテリー温度が必要です。航続距離とバッテリーヒーターで使う電力量を考慮に入れつつも、結果として充電時間が短くなるシミュレーションがリアルタイムで行われることは、素晴らしい進化だと思います。この機能は寒冷地での電気自動車の利便性を飛躍的に高めるでしょう。
スーパーチャージャーV3による250kW出力、ペアリングなしの車両への電力供給とオンルート・バッテリーヒーティングを合わせることにより、充電時間を半減させ、1か所の充電スタンドにおいて1時間当たり従前の2倍以上の台数を充電できるようになります。追加として、既存の12,000基のスーパーチャージャーV2ステーションにも、これから145kW出力ができるよう改善をしていきます。※EVsmart注:スーパーチャージャーステーションには、90kW、120kW、135kW、145kWなどの「バージョン」がありました。現在は90kWのスーパーチャージャーは存在せず、すべてが120kW以上となっています。日本ではまだ一部120kWのスーパーチャージャーが存在しますので、日本においてもこの改善の恩恵は受けられると思われます。なお120kWはペアリングありにおける、2基分の合計出力。つまり、2台で同時に充電すると60kWずつになるというわけです。145kWのスーパーチャージャーで2台で同時に充電すると、72kWずつに分配されます。
(中略)
2019年に追加される予定の数千基のスーパーチャージャー、V3のリリースやその他の改善を合わせることにより、テスラ スーパーチャージャーネットワークは2019年の年末時点で、1日当たり本日時点の2倍以上の車両を充電することができるようになり、2019年のテスラ車の増加に余裕をもって対応が可能になります。
本日より、ベイエリア(※カリフォルニア州のサンフランシスコからシリコンバレー近辺の範囲)に最初のスーパーチャージャーV3ベータサイトをオープンし、テスラのアーリーアクセスプログラムに参加しているオーナーが徐々に利用可能になります。スーパーチャージャーV3は最も台数の多いモデル3にまずは提供開始され、その後数百万回におよぶ充電履歴データを確認したうえで、他のテスラ車両にも提供を開始する予定です。モデルSとモデルXの充電速度は、今後のソフトウェアアップデートで高速化されます。アーリーアクセスプログラム以外の一般のオーナーがスーパーチャージャーV3を利用できるのは、スーパーチャージャーV3の設備が増加したのち、第2四半期(4-6月)のソフトウェアアップデートにより可能になります。ベータではない正式のスーパーチャージャーV3は4月に工事を開始し、北アメリカでは第2四半期と第3四半期に利用可能になり始め、欧州とアジアでは第4四半期になる予定です。
※EVsmart注:モデル3だけでなく、モデルS/Xでも新スーパーチャージャーの恩恵をソフトウェアアップデート後、受けられるというのは素晴らしいのですが、恐らく現行の車両についてはさすがにまったくモデル3と同じだけの250kWを受けられるということはないのではないかと思います。もしかするとバッテリーのリビジョン(バッテリーもたった7年間で何回も改善されています)によって、制限が変わってくるのかもしれません。今後どこかで、新しいバッテリーを使ったモデルS・モデルXが発売されるかどうかは不明ですが、その場合はもちろんこのスーパーチャージャーのV3に対応した、新バッテリーが用意されることと思います。
EVsmart総括
今回の発表は電気自動車の歴史に残るものだと言えると思います。モデル3スタンダードはもちろんリーフe+より電費は良いのですが航続距離はわずかに短く、またコストという意味ではGM BoltやKia Soul EVなどに負けています。しかし電気自動車はハードウェアだけで戦うものではありません。結局長距離を快適に移動できなければ、移動手段としての自動車の必要条件を満たさないわけで、スーパーチャージャーV3により、
化石燃料車は唯一のメリットを奪われつつある
ということが明確になりました。


