日産が62kWhの電気自動車「新型リーフe+」発表。電池冷却システムは無いが新搭載方法で発熱に対処

日産自動車は2019年1月9日、62kWhの電池を搭載した「新型リーフe+(イープラス)」を発表しました。電池のエネルギー密度は25%、航続距離は40%向上し、最高出力とトルクがアップしました。今回も電池の冷却システムは搭載されませんでしたが、電池の搭載方法を変えて発熱を抑える設計となっています。日本での発売は1月23日、米国は春、欧州では今年半ばから始まります。

日産が62kWhの電気自動車「新型リーフe+」発表。電池冷却システムは無いが新搭載方法で発熱に対処

一充電の航続距離は364km(EPA)にアップ!

日産自動車(本社:神奈川県横浜市西区、社長:西川廣人)は1月9日、電気自動車「リーフ」シリーズに、これまでより大容量の62kWhの電池を搭載した「リーフe+」を追加したことを発表しました。早々に注文したユーザーへの納車は「早い方で2月初旬頃からを見込んでおります」(日産自動車広報部)とのことです。

日産自動車のプレスリリースはこちら

電池は総容量が大きくなっただけでなくエネルギー密度が25%向上し、それにもかかわらず車内スペースは従来のまま。航続距離は40%伸びてWLTCモードで458km(当ブログで比較の標準にしている、より実際の走行に近い「EPA」値では「364km」)、最高出力は160kWになり、最大トルクも340N・mへ向上、と各メディアが一斉に報じています。

価格は「e+ X」が4,162,320円、上位の「e+ G」が4,729,320円となっています。

「e+ X」と従来の「X」との差額は約50万円。既存エンジン車メディアでの記事では「この程度の出力アップで50万円の差額は高い」といった評価も見受けられますが、EV目線が欠落していると感じます。増えた電池1kWh単価に換算すると2万3000円程度ですから、日産のコストダウンへの取組は評価するべきでしょう。

さて、さまざまなメディアの記事に目を通していると、「EVsmartブログ読者の皆さまが知りたいことはこれだけではないだろう」と感じました。そこでEVsmartブログ的な速報をお伝えします。

まず、EVsmartブログ的な視点で知りたいことを箇条書きでまとめておきます。

1. 電池の冷却システムは搭載されたのか?
2. 電池の搭載方法は、どう変わったか?
3. 室内スペースは変わらないのか?
4. 電池セルは何か?
5. 電池モジュールは従来からの96セルグループか?

1. 電池の冷却システムは搭載されたのか?
2. 電池の搭載方法は、どう変わったか?

結論から言うと、今回も電池の冷却システムは搭載されませんでした。既存リーフのユーザーの間では、特に夏期の高速道路走行や急速充電器の連続使用において、電池温度が上昇して充電速度に制限がかかったりするトラブルが話題になってきました。また近年の研究で、電池の温度管理が電池の劣化と大きく関係していることも分かっています。今回、日産はどう向き合ったのでしょうか。

EVsmartブログチームのメンバーでもある塩見智氏が1月9日の発表会の際に日産自動車のエンジニアに質問したところ「従来の電池モジュールを『3並列』に変えて、急速充電時の温度上昇を緩和させようという戦略を採っている」とのことです。以下、塩見氏からの報告です。

・バッテリーは3並列。
・バッテリーは従来電池セル8個を1モジュールとして垂直および水平に配列していたが、今度からセルを1個単位ですべて水平に配置するレイアウトになった。モジュールを構成する枠のようなものがなくなり、その分多くの電池を置くことができるようになった。従来はバッテリースペースの中央にセルのない部分があったが、新型ではセルがびっしりと詰まっている。
・バッテリー重量は310kgから440kgに増加した。

これまでは電池セルをまとめた「モジュール」を「ハーネス(配線)」で接続していましたが、これを廃して基板で直接接続する方法に変えたことで、スペースのさらなる有効利用を進めた、となったようです。

3. 室内スペースは変わらないのか?

電池のエネルギー密度は上げたものの、電池自体の量が増えているので、室内スペースが犠牲になっていないかは気になるところです。公式サイトのウェブカタログに掲載されている室内の寸法図は、40kWhモデルも62kWhモデルも共通です。念のため日産広報部に確認したところ「室内は現行リーフと同じです」とのこと。従来モデルより全高を5mm上げ、最低地上高を15mm下げることで室内スペースを確保しています。

4. 電池セルは何か?

電池セルは、他社の動向も考えると「NMC622」が採用されていると予想していますが、現時点では未確認です。一部メディアでは「NMC111」がいまだに採用されていて、これを「NMC622」や、今後登場するであろう「NMC811」に変更することで、さらなる電池エネルギー密度の向上が望めそうだ、と伝えていますが、さすがに今の時代、リーフが「NMC111」をまだ使っているとは考え難いと思います。今後情報が得られ次第、追記してゆくつもりです。

【参考記事】『新世代電池セル「NMC811」の大量生産に遅れ』

5. 電池モジュールは従来からの96セルグループか?

電池モジュールの構成はどうなのでしょう。近年ではジャガーやアウディは108セルグループを採用していますが、リーフは96セルグループでした。

今回は8個ごとのモジュール構成をやめて、電池セル1個単位で構成するように変えたということですが、日産自動車広報部からは以下のような回答でした。

「今回、モジュールに搭載するセルの数に自由度を持たせた新しい形状のモジュールを開発、また新しい溶接技術を採用しセルのタブを接合する部分のスペースを縮小したことにより、モジュールがコンパクトになり、これまでデッドスペースとなっていたようなスペースにもモジュールを入れることができるようになりました」

配線の構成などはわかりませんが、196セルから288セルに増加した事実から考えると、従来の「96セル×2グループ=192セル」から1つグループを増やして「96セル×3グループ=288セル」という計算となります。8セルをモジュールとしてまとめる構成はやめたものの、制御は従来のように96セルを一つの塊として行っているのではと推測されます。

この「3つのグループ」を並列接続にすることで発熱を抑える、というのが今回の工夫と言えそうです。このあたりに関しても目下継続取材中ですので、情報が得られたら追記いたします。

ライバル、テスラModel3とのスペック比較

今後、「リーフe+」が競合するであろう電気自動車は、ずばり「テスラ Model3」でしょう。スペックなどの比較をまとめてみました。

スペック日産
新型リーフe+X
テスラ
モデル3ミッドレンジ
車両本体価格4,162,320円46,000ドル
(約519万円)
全長×全幅×全高(mm)4480×1790×15454694×1849×1443
ホイールベース(mm)27002876
車両重量(kg)1670㎏約1672㎏
駆動方式フロントモーター前輪駆動リアモーター後輪駆動
バッテリー形式・容量リチウムイオン・62kWhリチウムイオン・詳細未発表、60kWh前後
航続距離364km(EPAモード)418㎞(EPAモード)
最高出力160kW(218ps)詳細未発表
最大トルク340Nmm(34.7kgf・m)詳細未発表

冷却(電池温度管理)機能の搭載を見送った「リーフe+」の実力は、電池搭載方法の変更でどこまで通用するのか。今後実際にユーザーが走り出すと証明されてくることでしょう。ちなみに、「急速充電時の電池温度上昇について」の見解を日産自動車広報部に質問したところ、以下のような回答をいただきました。

「リーフには短時間に繰り返し急速充電が行われた場合に、バッテリー性能を保護するための機能が搭載されています。この保護機能により急速充電を複数回繰り返すと充電時間が長くなる場合がありますが、これはバッテリーの寿命を長くするための重要な機能となっております」

また、日産自動車のプレスリリースによると「e+」は最大出力100kWの急速充電に対応しています。ただし、注釈として「バッテリーの充電受け入れ性との最適化やバッテリー保護のため、最大充電電力は70kW程度になります」とのこと。現状で普及している50kWの急速充電器の場合「バッテリー温度が約25℃、バッテリー残量警告灯が点灯した時点から、充電量80%まで」に約60分(40kWhモデルは約40分)かかります。

テスラのスーパーチャージャーはすでに最大電力120kWを実現しています。今後、チャデモ規格による充電インフラの大出力化が進むことを前提にすると、ユーザーから「さらなる大出力への対応」を求める声が上がることも想定できます。

いずれにせよ、非常に魅力的な電気自動車がまた1台現れたと言えそうです。当ブログチームでも関心を持って追い続けたい(改めて試乗レポートも!)と思います。

(文:箱守知己、寄本好則)


16 thoughts on “日産が62kWhの電気自動車「新型リーフe+」発表。電池冷却システムは無いが新搭載方法で発熱に対処”

  1. すばらしい!!!
    何が素晴らしいかというと、リーフe+自体が素晴らしいわけではなくて、EVsmartブログの記事が素晴らしいです。
    ネット上に本当に知りたい情報が全く流れていない中、EVユーザーとして知りたい情報が記事に溢れていました!

    いつか、充電渋滞の避け方なども特集して頂けるとありがたいです。

    今後とも宜しくお願いします。

    1. シーザー・ミラン様、お褒めいただきありがとうございます。お言葉、とても嬉しいです。EVユーザー・潜在ユーザーの皆さんが知りたい情報は、やはりEVにこだわってきた私たちが探して伝えるべきだろうと考えております。

      EVsmartブログチームは、従来の自動車メディアが呼ばれた12月の袖ケ浦での試乗にも参加していませんし、事前の情報はそれほど持っていませんでした。そこで、9日の発表会に参加したチームのライターの塩見智さんと連絡を取りながら、他メディアが落とすであろう情報を重点的に取材した経緯があります。チームで議論しながら骨子をまとめ、広報に確認を取り、下書きをして肉付けして…。速報ですからまだまだ足りない部分もありますが、今後も「EV目線」にこだわって、EVの素晴らしさを一人でも多くの方に安心して愉しんでいただけるように、情報を伝えていこうと考えております。

    1. たきりん様、コメントありがとうございます。リーフがさらに魅力を増しましたね。今後ともよろしくお願いいたします。

  2. 詳細な情報ありがとうございます。
    とても参考になりました。

    Model 3の寸法のところですが、4694×1933×1443の1933mmは、米国基準のドアミラーを閉じた幅ですので、リーフと比較するのであれば、国内基準のボディー幅1849mmではないでしょうか。

    1. mania3bbさま
      コメント、そして全幅へのご指摘ありがとうございました。
      全幅表示の日米の違い、ご指摘の通りですね。
      テスラジャパンの発表時資料でも1849mmとなっており、比較表を修正いたしました。

      ありがとうございました!

  3. 今リーフ24Kwに乗っています、40wkにしょうか62kwにしょうか迷っています
    リーフに詳しい方アドバイスを、お願い致します。10年は乗りたいと思っています
    今のリーフは5年目に成りますが充電に時間が掛かるだけで30分急速充電器で100km
    程は走れます、遠乗りは200Km圏内しかしませんので40Kwでも良いかと思いますが、62Kwにした方が賢明かなっ?とも思いますが、どうでしょうか???

  4. maokiさま

    コメントありがとうございます。

    10年乗りたいとのこと。価格が同グレードで50〜70万円高い。電池が130kgほど重い(チョイノリでもこの重量物を運ぶことになります)という差異を許容できて、迷っているなら62kWhモデルの選択が賢明かと推察します。

    まだ検証できないし実例もないですが、電池が大容量&3並列になって急速充電時の負荷が減ることや、おそらくは電池の性能(内部抵抗など)も改善されていることを考えると、10年間の電池劣化はかなり違うのではないかと思います。日進月歩のEVの世界。最新 is better かな、と。

    ただ、24kWhから62kWhに乗り換えると、もう「電気自動車に乗ってる気がしない」感じになるでしょうね。w

    10.5kWh大ベテランの箱守さん、いかがですか?

    1. なんか、よりさんに呼ばれてしまったので出て来ました(笑)。容量が大きくなると、毎回上まで入れる必要も無いですし、下まで使い切ることも無いので、電池の「美味しいところ(充放電が速い部分)」だけを多用できる可能性が高くなります。劣化もしにくいですし、快適だと想像できます。

      さらに今回は、96個のセルを1つのグループにして、それらを3グループ並列につなげていますから、急速充電時の発生熱量は、従来の直列接続の時より小さくなります。並列だとそれぞれのグループに流れる電流が小さくなるので、電流の2乗に比例する熱量も小さくなります。

      私のところの10.5kWhは、幸いにもLTOケミストリーのSCiBなので、全域が「美味しい領域」なので助かってます。7万キロ超えた車検では、容量は対出荷時比103%(新車時からの最大値は105%)でした。

  5. リーフとアウトランダーPHEVを太陽光発電システムとV2Hで運用しています。
    近距離と太陽光発電システムのバッテリー兼用でリーフを、長距離はアウトランダーと使い分けています。
    魅力的なEVが出てきているのですが、V2Hとの接続情報が全くありません。
    日産、三菱は問題ないでしょうが海外メーカーや、トヨタのPHVなどどうなんでしょうかね。
    自動車は電力インフラに組み入れていくことがこれから必須となるでしょう。
    我が家では、太陽光パネルで屋根が焼けず夏涼しく、夜間電力でEVに充電して、FITを活用しつつ、余剰電力を年間2軒分送電網にお返ししています。
    そのあたりの情報も欲しいところです。

    1. バイクはカタナ様、コメントありがとうございました。

      BEVとPHEVの2台体制、良いですね。しかも太陽光(PV)パネルとV2Hも。私はV2Hはまだですが、色々と検討しています。確かに、PVパネルを設置してから、上の階の夏の暑さがかなり緩和され、エアコンの使用電力も減りました。

      日産と三菱以外のEV・PHEVのV2H対応に関しては、各社ともまだ動きがありませんね。自動車メーカーとV2H機器メーカーは接触しており、研究はしているようです。昨年、日本のV2H機器大手の一つであるニチコンさんに取材したところ、同様の回答がありました。
      https://blog.evsmart.net/ev-news/home-battery-nichicon-tribrid/

      海外のEVもV2Hに接続できるようになると、さらにEVの世界の魅力が増しますね。期待したいものです。EVsmartブログチームでも、今後も継続してリサーチしていこうと思います。

  6. 同じi-MiEV(M)乗りとして、黙って見てはいられませんw
    理工系ですので物理・電気関連の公式を適宜当てはめてまいります。

    充電電流と熱の関係はW=R*I^2、つまり発熱のワットは抵抗に比例し電流の2乗に比例します。
    同じ充電電流でセル数が2→3だと、セルひとつあたりの電流が2/3、よって発熱は4/9(約44%)になります。だから充電時の発熱が半分以下になりダメージが減るわけで。
    ここまでは箱守さんと同じです。

    リーフ・アイミーブG・同Mの中古を今までネットで見比べてきましたが、リーフが最も劣化が大きく、アイミーブGは冷却装置のおかげでさほどでもなく、Mは基本冷却不要だから問題ないでしょう。
    そしてバッテリー劣化最大の理由は高温での満充電。日産ディーラーで聞いた話、普通充電で満タンにする個体より急速充電で80%止まりで使う個体のほうが痛みにくいという意外な話を聞きました…たぶんリチウムイオンの美味しい領域をうまく使っているんでしょうね。
    アイミーブMのSCiBは全域が問題ない電池なので満充電から空近くまで使ってもビクともしません…現に製造後6年の愛車も未だに残り航続距離120km近く表示されますし!

    あと4年でFITが切れる自宅ソーラーもあり、家庭蓄電もかねてもう一台の愛車セレナをリーフe+(62kWh)へ買替え、近々出てくるニチコンV2H(系統連系型)を組み合わせようと考えています。
    EVは走る蓄電池であり、それをより生かすにはソーラー+V2Hが得策でして。
    ただリーフe+の熱問題がどうなるかで計画も変わりますので、まだ正確な答えは出ていません。では。

    1. ヒラタツ様、いつも参考になるコメントをありがとうございます。

      リチウム二次電池は確かに熱管理が大切なようですね。過去にここで記事にさせていただきましたが、欧州で集めている複数台のテスラのデータで25万キロを超えても90%以上残存の例や、テスラを使って乗り合いサービスを提供するTesloop社のテスラも48万キロ走行で87%残存ですし、温度管理は今や常識と言えるでしょうね。リーフe+が実際どうなのか、ぜひ知りたいものです。EVsmartブログチームでも、早く試したいと皆うずうずしています。

      LTOケミストリーのSCiBは、仰るとおり劣化とは無縁ですね。私もほぼ毎日乗っていますが、深夜200V満充電後の朝の表示は、真冬の今でも「126〜132km」の表示が常態化しています。エネルギー密度は現代のMNCに比べるべくもありませんが、これはこれで「近距離用BEV」の形としては一つの理想型だと感じています。

  7. はじめまして!アイミーブMに乗っています。ウチの個体は 9万km走行で104%の残容量です。 SCiBは リチウム系では放充電性能でもトップクラスではないでしょうか…【SCiBがワンボックスのピュアEVに採用されたら、是非買いたい】と思っています。国産車では搭載見込み無いですかね…アメリカでは路線バスだったかに搭載されてますよね。営業用の車両に搭載されるほどなのですから信頼度も高いと思うのですが、コストも高いのかなぁw

    1. 12MはちのへDA様、コメントありがとうございます!i-MiEV Mにお乗りなのですね。さすがSCiB、9万キロでもまったく劣化なしという感じですね。
      SCiBが一般の乗用車で採用されていない唯一の理由はエネルギー密度だと思います。現行で他の電気自動車に搭載している最新のNCA/NMC822バッテリーと比べると、おおよそ1/3程度の密度になっています。そのため、最新の(未発売)東芝SCiBの資料:
      https://www.toshiba.co.jp/tech/review/2018/03/73_03pdf/a02.pdf
      これでエネルギー密度350Wh/lとされていますね。これはこれから発売されるものですので、既存の車両に使われているものはおおよそ1/3くらい。テスラが現在使用しているNCAは877Wh/lと言われています。つまり、同じアイミーブの筐体になら、10.5kWhの少なくとも5倍くらいすなわち50kWhくらいは搭載できてしまうわけなのです。もちろんこれはセルの密度ですので、電池パックにするときにどこまで軽量化・小型化するかというところになり、このあたりは自動車メーカーの力の見せ所になると思います。リーフでも、小型化はかなり工夫がされているようですね。

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