電気自動車の日産サクラをマイカーとして愛用する自動車評論家の御堀直嗣氏が「Nissan Connect」のエコランキングで初めての二桁順位を獲得。喜びのメールが来たので、御堀流の電費向上テクニックを伝える記事を依頼してみました。人それぞれ、お好みはあるでしょうが、基本として参考にしてみてください。
推定10万台の中で90位にランクイン!
私事ながら、スマホのNissan Connectに表示される6月13日の平均電費が13km/kWhを記録した。これにより、Nissan Connectでの6月のエコランキングが90位と示された。Nissan Connectのエコランキングには、上位20%以内がプラチナで、以下、ゴールド/シルバー/ブロンズのランク分けが設けられている。私は、サクラ購入以来ずっとプラチナに位置してはいた。ただ、今回のように二桁順位になったのは、記憶する範囲で初めてだ。
90位というのが、どれほどなのか正確にはわからない。サクラは、2022年の発売開始から、22年度決算報告で33,000台に達したとあり、その後、23年度は34,083台、24年度は20,832台というところまで数字が公開されていて、その合計は88,000台近くになる。そのすべてがNissan Connectに加入しているかは不明だが、10万台近くのサクラの中で90位の電費と想像すると、凄いことだ。
いつも記録を狙って運転しているわけではないが、率直にうれしかった。
平均電費が向上した日の運転状況は、気温が21~26℃の範囲で、空調を使わなくても済んだことが大きい。また、これは千葉県にある乗馬クラブへの往復で、早朝に家を出て昼には帰宅する時間帯も、気温や交通の流れなどに好影響をもたらしたといえなくもない。
すでに気温が上がりはじめた4月には12km/kWh台を記録しており、スタッドレスタイヤを装着する冬の間も、10km/kWhを下回ることはなかった。サクラのメーター画面上のドライブコンピュータによる年間を通じた総合電費は、11.2km/kWhの表示である。
愛車のサクラをいつもどのように運転しているのか
では私が普段どのような運転をしているか、簡単に紹介しよう。
まず、常にe-Pedal(いわゆるワンペダルドライブ機能)を使っている。
次に、シフトは市街地ではBを選び、高速道路ではDとしている。市街地でBにしている理由は、これとe-Pedalの組み合わせで、回生(アクセルを戻した際のモーターの制動力で発電した電気をバッテリーに戻す機能)がもっとも強くなるからだ。この点は、日産自動車の電動系開発技術者に確認済みだ。
高速道路でDへ切り替える理由は、高速走行時に回生が強く入り過ぎるのを嫌うためである。想定以上に回生が強く効いてしまうと速度が落ちすぎ、次の加速で電力消費が増えることを懸念している。
プロパイロットを活用して基本は80km/hに設定
高速道路では、プロパイロットを常時使っている。速度設定は、80km/hだ。そして、一番左の走行車線を淡々と走っている。
今回、13km/kWhを記録した日、追い越しで85~90km/hに一時的に速度を上げたことが二度あるが、それ以外はプロパイロットにお任せだ。
高速道路を80km/hで巡航するのは遅すぎると思う方がいるかもしれない。しかし、基本的に100km/h(一部では120km/h)が制限速度の日本では、よほど遠くへ移動する以外、80km/hでも大幅に到着が遅れるわけではない。
ちなみに、東京・瀬田から東名高速道路にのると、しばらくして御殿場までの到着予測時間が電光掲示板に示される。渋滞などなければ70分とある。80km/hで走り続けても、ほぼ70分で御殿場インターチェンジに到着できるのだ。
乗馬クラブのある千葉方面へ首都高速湾岸線で走っていると、追い越し車線をどんどん抜いていったクルマが、高谷ジャンクション付近のちょっとした渋滞で横並びになることが多い。つまり、100km/h前後の走行は、気分的に速いが、実質的には80km/hでの巡航と大差ないといえる。理由は、走行車線より追い越し車線を走るクルマの台数が多く、ちょっとした流れの詰まりがあると、渋滞の列が長くなり、逆に走行車線側は走行台数が少ない分、順調に走れる可能性があるためだ。日本のそうした交通事情も、走行車線を80km/hで巡航する意味を高めてくれる。
80km/hと100km/hでは、空気抵抗が1.5倍以上も増えることが、電費に大きく影響していると思う。空気抵抗は、速度の2乗に比例して大きくなる。たとえば、100km/hと200km/hでは、速度が2倍になるのに対して空気抵抗は4倍になる。この関係を、80km/hと100km/hの差に当てはめると、約1.56倍という計算になる。
サクラは、ハイトワゴンと呼ばれる背のやや高い造形で、見るからに空気抵抗は影響が大きそうだ。80km/hで走ったほうが、電費は当然よくなる。
高速道路走行でもe-Pedalを使い続ける意味
次に、高速走行でもe-Pedalを使い続ける意味について。
EVを運転する際、高速道路や郊外のバイパスなど、比較的速度が高く、安定して走り続けられる状況では、回生0で滑空させた方が燃費はいいと、思っている方が多いかもしれない。
しかし、多くの市販EVが搭載している回転子(モーターの回転軸)に永久磁石を使う同期型モーターは、固定子(モーターの外筒)の電磁石の電気を切っても、回転子側の永久磁石は磁力を持ち続けている。そして、固定子の電磁石とは、要は、鉄芯に銅を巻いた仕組みなので、回転子の磁力の影響を受ける。永久磁石に、鉄釘を近づけると吸い付くのと同じことが、モーター内で起きている。
なおかつ、永久磁石式同期モーターの回転子は、ネオジムやジスプロシウムといったレアアースを用い、子供のころに遊んだフェライト磁石の10倍もの磁力を持つ。一度くっついたものを人間の力ではがせないほどの強力さだ。
回生0の設定は、発電をしていないだけで、磁力は働き続けている。
日産アリアは、永久磁石式同期モーターを使わず、4輪駆動の前後とも電磁石のモーターだ。したがって、回生0は本当に滑空状態になる。テスラやBYDの4輪駆動車は、常時使わないモーター側に電磁石だけの物を使っている。前後とも永久磁石式を使うと、必要ない時にも磁力の影響を受け、損失が生じるからだ。
これも開発に携わった日産の電動系技術者によれば、サクラでは回生を常に利用するのがもっとも電費がよいとのことだ。
一般道におけるブレーキの使い方
そのような運転を続ける私は、よほど呑気な運転をしているのかと思われるかもしれない。しかしドライブコンピュータの表示では、平均時速は43km/hと表示されている。決してのんびり走っているわけではないといえるのは、東京都内の移動に掛かる平均時速は約20km/hとされているからだ。
そのうえで、一般道での運転で一つ加えると、無駄な電力消費はしないよう心掛けている。具体的には、先の信号が赤になったら、徐々に速度を落とし(アクセルペダルを戻し)ながら、停車位置へ近づける。その間に、青へ切り替わったら、停車せず再加速できる。
停車しない意味は大きい。クルマの燃費や電費は、停車からの発進でもっとも悪化するからだ。軽自動車も大柄なSUVも同じだ。ところが、EVに限らず多くの運転者は、見えている信号が赤なのに、停止線近くまでアクセルペダルを踏み続けていることが多い。これでは、EVでもエンジン車でも、電費や燃費がよくなるわけがない。
Nissan Connectによる私の運転評価は、アクセルが5つ星、ブレーキが1つ星で、ブレーキをほとんど使っていないことが示されている。
机上の計算だが、13km/kWhを記録したいま、サクラのバッテリー容量20kWhを掛け合わせると、260km走れると試算できる。私にとって、20kWh以上のバッテリー容量は無用であることが見えてくる。
【参考】
●日産自動車2022年度決算報告
●「日産サクラ」が2023年度の国内販売で電気自動車販売台数No.1を獲得
●「日産サクラ」、3年連続で国内市場における電気自動車(EV)販売台数No.1を獲得
文/御堀直嗣





