軽自動車規格の電気自動車として、共通の基本構造で開発された『日産サクラ』&『三菱eKクロスEV』の公道試乗会がそれぞれ開催されました。ジャーナリストの連続試乗記を予定していますがその前に、購入前に知っておくべきことを整理しておきます。
「軽EV」という新たな電気自動車のカテゴリー
日産と三菱がそれぞれ、『日産サクラ』と『三菱eKクロスEV』のメディア向け公道試乗会を開催。ともに数日間の日程で行われ、EVsmartブログもサクラには6月29日(神奈川県横浜市内)、eKクロスEVには7月4日(千葉県浦安市内)に試乗してきました。
これから数日、ジャーナリストによる試乗レポートをお届けする計画ですが、その前に。電気自動車専門メディアであるEVsmartブログの編集長として感じた「購入前に知っておくべき注意事項」を整理してお伝えしておきたいと思います。
まず、大前提として踏まえておきたいのが、サクラ&eKクロスEVは、「軽EV」という新しいカテゴリーの自動車であるということです。各車2〜3時間程度ではありましたが、実際に街を走ってみて感じたのが、サクラ&eKクロスEVを、エンジン車の区分である「軽自動車」として考える必要はないということでした。
走りのインプレッションなど詳細はジャーナリストの評価をお待ちいただくとして、加速感や静粛性、室内空間の快適さなど、エンジンの軽自動車とは別モノです。一方で、総電力20kWhという搭載バッテリー容量や、最大受入出力30kWの急速充電性能は、テスラや欧州メーカーを中心に進展している昨今の「電気自動車の潮流」とも一線を画しています。
「ちょっと高性能な軽自動車」や「航続距離が短い電気自動車」という評価や先入観ではなく「軽EVという電気自動車の新しいカタチ」と理解しておくことが、サクラ&eKクロスEVを購入して、より幸せなカーライフを満喫するための、基本的なポイントだと思います。
『日産サクラ』と『三菱eKクロスEV』は何が違う?
プラットフォームを共有しているサクラ&eKクロスEVの基本スペックは、ほぼ共通しています。5月20日にお届けした発表時の記事でも紹介しましたが、両車の仕様はこんな感じです。
| 日産 | 三菱 | ||||
|---|---|---|---|---|---|
| **サクラ X** | **サクラ G** | **eKクロス EV G** | **eKクロス EV P** | ||
| 全長×全幅×全高 | 3395mm×1475mm×1655mm | ||||
| 車両重量 | 1070kg | 1080kg | 1060kg | 1080kg | |
| 最高出力 | 47kW | ||||
| 最大トルク | 195N・m | ||||
| 駆動方式 | 前輪駆動 | ||||
| バッテリー電圧 | 350V | ||||
| バッテリー容量 | 20kWh | ||||
| 一充電航続距離 | 180km(WLTC) | ||||
| 価格(税込) | 239万9100円 | 294万2600円 | 239万8000円 | 293万2600円 | |
性能は同じでも、パッケージングやコンセプトはそれぞれ明確な個性を与えられました。発表時のリリースやカタログ、今回試乗会での説明などから、少し読み解いてみます。
まずサクラ。車名の由来は「日本の電気自動車の時代を彩り、代表するクルマになって欲しい」という願いを込めたと説明されています。試乗会のプレゼンでは、『アリア』『リーフ』『サクラ』と揃ったEV三兄弟の末っ子であり「日産の軽自動車のフラッグシップである」との説明がありました。
防水ファブリック仕上げのフロントパネルやゴールドのアクセントが際立つインテリア。そして何よりアリアと共通する2つのディスプレイが緩やかな曲線で連続するインターフェースディスプレイなど、試乗した印象を端的に表すると「小さな高級車」です。
eKクロスEV、カタログ冒頭のキャッチコピーは「ふだんに馴染む。かしこく使える」と、「EV×軽自動車」が実現してくれる世界観をアピールしています。インテリアや外観デザインは、サクラに比べてベースとなったエンジン車モデルと共通する部分が多いと感じます。テイストとしては、アウトドアユーティリティヴィークル、というイメージです。
長くなるので細かな説明は省略します(EVsmartブログのアーカイブ記事を読み進めていただければわかるはず)が、キャッチコピーが提言する「賢く使う」のは、EV活用の大切なポイントでもあります。
ガラガラの、通路や区画も広いホテル屋外駐車場という絶好の条件下ではありましたが、試しに使ってみた「マイパイロットパーキング」(自動駐車支援機能。日産サクラではプロパイロットパーキング)が、想像以上にスムーズ&スピーディだったことにも驚きました。個人的に「駐車支援機能なんて必要ないのに」と思っていましたが、これなら、結構使ってしまうかも知れないレベルです。
普通充電ケーブル
具体的に、サクラとeKクロスEVで違うことのポイントのひとつが、普通充電ケーブルです。eKクロスEVでは7.5mの200V用ケーブルが標準装備ですが、サクラはオプションです。サクラのオプションカタログには「ニーズに合わせて充電ケーブルを3種ご用意」として、15m/200V用(6万3910円)、3m/200V用(5万6100円)、7.5m/100V用(5万8960円)がラインアップされていました。
個人的に、私の場合はリーフ用(車種を問わず使えますけど)の7.5m/200V用を2本持っていて、1本は常時車載、もう1本を自宅ガレージのコンセントに挿しっぱなしにしています。充電リッドとコンセントの位置関係は場所や車種によって異なるため、長さは7.5mが使いやすいと思うので、200Vの7.5mタイプがないのは不思議です。
【追記】コメントでご指摘いただいたように、200Vの7.5mタイプはメーカーオプションとして、5万5000円で用意されていました。
V2L対応オプション
EVの電力を屋外で活用する「V2L」に関しては、両車とも100Vコンセントは装備されていません。オプションカタログを確認すると、サクラには12Vバッテリーに装着してAC100Vを取り出す「DC-ACインバーター」(専用ケーブルキットや収納バッグ付きで16万9400円)が掲載されていました。
でも、eKクロスEVのオプションカタログに、DC-ACインバーターは見当たりません。もともと三菱には、MiEVシリーズやアウトランダーPHEVなどの急速充電口から100V電源を取り出す『MiEV power BOX』(15万6933円)がありますが、今回は日産と充電プログラムなどを共有した影響からか、eKクロスEVでMiEV power BOXは使えません。
MiEV power BOXはもともと日産リーフなど他社EVでは使用不可。聞きかじりで「装置用電源供給の違い」と理解していたのですが、試乗後の懇談会で技術ご担当者に確認したところ、充電プログラムが新しくなったため、MiEV power BOXのプログラムと整合性が取れなくなったのが要因とのこと。調べてみると、モデルチェンジ後のアウトランダーPHEVでも使えないようです。うーん、私自身はMiEV power BOXを所有してはいませんが、EVの魅力を引き立てる素晴らしいアイテムだと応援しているので、残念です。
オプションカタログにはテーブルやタープ、キャリアなどアウトドア用のアイテムが並び、パッケージングとしてもアウトドアに似合いの遊び心がアピールされているだけに、もともとあったMiEV power BOXを失い、DC-ACインバーターの紹介もなく、V2Lの手足をもがれたのは三菱にとっても痛恨ではないかと推察します。
いっそのこと、より安価に「プリウスPHVやIONIQ 5で標準装備されている、普通充電口から100Vを取り出すコネクターを出してください」と、懇談会ではお願いしておきました。
充電カード
もうひとつ、まったく異なるのが充電カードの仕組みです。日産が用意しているのはいわゆる「ZESP3」。三菱は「三菱自動車電動車両サポート」です。それぞれいろんなプランがあってややこしいので、月額料金が最も安いベーシックなプランで、東京からドライブに出かけて新東名駿河湾沼津SAで30分間急速充電するといったケースで比較してみると……。
日産ZESP3は、シンプルプラン。月額550円で、急速充電は550円/10分で、30分の充電料金は1650円になります。
三菱自動車電動車両サポートは、個人向けベーシックプラン。月額は550円。高速道路SAでの急速充電は13.2円/分なので、30分で396円とZESP3のおよそ4分の1の料金で充電可能です。東京-大阪間のロングドライブに挑み、途中6回×30分の急速充電を行ったと仮定すると、日産は9900円、三菱では2376円と、かなり切実な差額が出ます。普通充電設備の利用料金も、日産が1.65円/分に対して、三菱は1.54円/分と微妙に安くなっています。
日本国内の充電カードの詳細は『電気自動車用充電カード徹底検証』という記事で紹介しているのでご参照ください。
『充電』へのもろもろが課題、かな
というわけで、サクラとeKクロスEVにはデザインとパッケージング、そして充電関連で大きな違いがあることがわかります。どちらを買うか迷っているという方に、参考にしていただければ幸いです。最後に、ちょっと物足りない点を考えると、これもまた「充電」に関連した事柄です。
まず、三菱のオプションカタログに掲載されている普通充電用ケーブルホルダーが、どう見ても日産の純正品のロゴだけを変えた流用品。まあ、ケーブル自体が流用でコントローラーの形状やサイズも同じなので、何も不足はないのですが。自宅ガレージの充電設備はユーザーが最も頻繁に使う場所。ホルダーはただの箱であるだけに、三菱ならではの工夫を凝らした独自アイテムがあるといいのに、と、少しもったいなく感じます。
ちなみに、私の自宅ガレージのコンセントは日東工業のアイテムで工夫しました。
そして日産。普通充電ケーブルがオプションなのは前述の通り。じゃあ、ケーブル付きの普通充電器が紹介されているのかと思ったらカタログにはなく。ウェブサイトにはデルタ製の『Q-VEC』という6kW普通充電器が別売として紹介されています。本体価格は明記されていませんが、15〜20万円程度と思います。
でも、サクラの普通充電は最大2.9kW(なぜ3kWぴったりの表記でないのかは、懇談会で質問したけどよくわかりませんでした)なので、6kWはオーバースペック。6kW対応可能なEVとの複数台所有や将来の買い替えを想定して「大は小を兼ねる」的な考えもあるでしょう。とはいえ、それならば、社外品の別売ではなく、日産オリジナルのケーブル付き普通充電器を出すべきではないか、と、ご担当者に提言しておきました。日産の充電器を自宅ガレージに設置したら、「次も日産のEVを買おう」という動機にもなるでしょうし。
急速充電の出力が最大30kWに抑えられて出力制御も強めに働くのは、まあ、バッテリー保護のためと、そもそもの容量が小さいので甘んじて許容するとして。電気自動車のパイオニアである日産&三菱をして、ことに普通充電ソリューションの提案が少し心許ないのはいかがなものかとも感じます。
頑張れ日産、頑張れ三菱! です。
サクラ試乗の様子は、テスカスさんがEVsmartの動画チャンネルでも紹介しています。
日産サクラ試乗レポート!坂道や細い道でも楽々でした!
明日以降、ジャーナリストによる両車試乗レポートをシリーズでお届けします。お楽しみに!
(取材・文/寄本 好則)







