電気自動車・プラグインハイブリッド車の普及により、日本をはじめとする世界の自動車産業および、石油産業は大きな影響を受けます。しかし、ご存じの通り、この変化に抵抗しても意味がありません。
なぜなら、電気自動車は化石燃料車より優れた存在であり、いずれは普及しますし、一つの国で抵抗を続けても他の国で普及し、最終的には産業自体が終焉を迎えるからです。変化を遅らせることは、変化の痛みを子供たちの世代に先送りすることであり、決して良いことではありません。
車両の電動化という大きなトレンドを否定しようとする記事がマネー現代というサイトに掲載されました。著者は大原氏。この記事は、間違いだらけです。その理由はなんでしょうか?電動化に抵抗する意図によるものなのか、それとも単なる無知によるものなのか。いずれにしろ当サイトでは、正しい情報をデータを持って紹介することがポリシーでありますので、訂正を試みたいと思います。
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EVsmartによるコメント付き!電気自動車・プラグインハイブリッド車の全車種解説
>1ページ目:「実のところAIはまだこの世の中に存在していない」
本当ですか!それは驚きですね。
いわゆる深層学習(ディープラーニング)をAI(=人工知能)の分類に入れるかどうかという議論かと思いますが、記事の著者大原氏は現存するエキスパートシステムとの対比の上でAIを記述しています。深層学習はエキスパートシステムとは全く異なるシステムであり、特徴量をデータから自動的に学習することができます。つまり簡単に言うと、深層学習では、人間がルールを一つ一つ教えなくても(プログラミングしなくても)、実際のデータを与えるだけで自動的に学習をすることができますので、通常はAIの手法の一つであると考えられています。
>2ページ目:「(ハイブリッド車は)自動車自身で発電するため送電ロスがほぼない(つまり超電導が必要無い)だけでなく、これまで無駄に捨てていた、ブレーキを踏んだ時の抵抗力などもエネルギーとして再利用」
ハイブリッド車は発進時には発電した電気で走行しますが、1-2kmも走行すればエンジンの駆動力で走行します。そして、最も効率の良い走行パターンでも、ガソリンを燃焼したときの60%ものエネルギーが熱として無駄に捨てられます。
また、ハイブリッド車はブレーキを踏んだ時の抵抗力をエネルギーとして再利用できますが、それは最大1kWh程度まで。バッテリーが満充電になればそれ以上は再利用できず、やはりブレーキの熱として無駄に捨てるしかありません。
>2ページ目:「今回の「電気自動車ブーム」が始まってすでに10年は経つと思う」
ディーゼルゲートからではないでしょうかね。。ですから2015年くらいからと考えると、まだ3年くらいでしょう。
>2ページ目:「読者が街で電気自動車に遭遇することはまず無いはずである」
!!
日本国内で販売された日産リーフの台数は10万台を超えています。
こちらが次世代自動車振興センターが把握している保有台数統計(2016年まで)ですが、これでも159,387台(電気自動車、プラグインハイブリッド車の合計)。これで「遭遇することはまず無い」はないと思います。私自身毎日東京で電気自動車に乗っていますが、ほぼ毎日どこかで自分の以外の電気自動車に遭遇します。
>2ページ目:「充電時間はもっと絶望的だ」
これは当記事最大の、絶望的な間違いです。
電気自動車はガソリン車とは全く異なった使い方をします。まず充電は自宅で夜間に行います。そのため、例えば月に2回給油するケースと比較すると、
| 前提 | 無駄になる時間 | |
|---|---|---|
| ガソリン車 | 月1回の給油あたり5分、月に2回給油 | 月間10分 |
| 電気自動車 | 毎晩充電する際に1回プラグ挿して5秒、毎朝出発する際に1回プラグ抜いて5秒
毎日充電 | 月間6分 |
結果として、電気自動車のほうが給油の手間が省け、無駄な時間も少なく、夏の暑い中や冬の寒い時にセルフスタンドで給油する必要もないのです。
>2ページ目:「テスラ「モデルS」は専用充電器で80%から満タンにするのに30分から1時間必要である」
80%から満タンにする、という表現がよく分からないのですが、通常、急速充電器では80%までしか充電しないので、毎回満タンにする、というのは一般的には電気自動車の誤った使い方です。そして80%まで充電するのにかかる時間は、空からだと100kWhバッテリーでおおよそ50分間。しかし通常は完全に空から充電することもほとんどないため、一般的にテスラの専用充電器スーパーチャージャーでの充電時間は30-40分間程度となっています。
充電時間は車から離れることができるため、この時間を利用して休憩したり、食事したりすることもできます。充電スタンドには、トイレや軽食のとれる場所が選定されています。
>2ページ目:「30分から1時間も場所を占有されて雀の涙ほどの料金しかもらえなければ、誰も充電ステーョンなど建設したくない」
これは残念ながら認識不足と言っても言い過ぎではないでしょう。基本的に充電設備は自動車のインフラの一部であり、自動車メーカーもその充実のために投資をしています。電気自動車のリーディングメーカーである日産自動車、三菱自動車、そしてテスラは自社のお金を投じて充電ネットワークを充実させてきました。今後も、商業ベースで(充電料金を取る目的で)充電設備が建設されることはほぼないと言ってよいでしょう。例外的に、電力会社は電気を販売するのが仕事ですから、電力会社主導での充電ネットワークは、欧州や米国では数多く見られます。
また、商業施設においては、集客施策またはCSRの一環として充電スタンドに投資されることは、今後もあるかも知れません。現実に、米国Electrify Americaの直近の計画では、主要高速道路沿いにあるWalMartに超急速充電設備を設置する計画になっているようです。
>3ページ目:「電気自動車は、化石燃料の効率悪い使い方に過ぎない。結局、環境を破壊しているのである」
これは当ブログをご覧いただいた方はすでに間違いであることをご存じですね。
こちらの記事に計算根拠と共に掲載していますが、上の著者大原氏の言葉を言い換えるなら、「化石燃料車は、化石燃料の効率悪い使い方に過ぎない(ハイブリッド車を除く)」となります。上記記事ではCO2の排出量を計算していますが、CO2のC(炭素原子)は化石燃料から取り出されたもの。つまりCO2を少なく排出する電気自動車は、1km走行当たり、化石燃料をより少ししか消費しないのです。
>3ページ目:「今後、電気自動車が普及すれば今以上に莫大な量の電気が必要になる」
世の中の乗用車が全部電気自動車になったら電気は足りなくなる?で計算していますが、日本中の自家用・営業用を含む、乗用車(軽自動車も含みます)を電気自動車に変えてしまったとして、必要な発電電力量はおおよそ10%程度となります。決して莫大な量の電力ではありませんし、2010年度には実際に発電していた電力量程度なのです。
なお、日本政府は2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指す計画を閣議決定しており、これを化石燃料車だけで実現するには、燃費を今の5倍にしなければなりません。燃費を5倍にするということは、化石燃料車の燃焼効率を100%に近づける必要があり、物理的にほぼ不可能だと思われます。
>3ページ目:「再生可能エネルギーは実際のところ役に立たない。太陽光発電のように晴れた日の昼間しか発電できない役立たず」
太陽光発電については各国は非常に前向きに取り組んでいます。例えば米国カリフォルニア州では太陽光パネルが新築の際に義務付けられましたし、既報のテスラの大規模蓄電池の成功にあるように、太陽光発電を大規模蓄電池と組み合わせることによって、太陽光発電のピーク時や、既存の発電所の予期しない停止の際にも役立てることができます。
先ほどの火力発電の記事内にもありますが、九州電力では、太陽光と風力などの新エネルギーが11%、水力発電が6%と、再生可能エネルギーだけで全体の17%にも達しています。他の電力会社でも再生可能エネルギーは20%を超えているところが多くなっています。
これは一つの事例ですが、九州電力の発表によると、九州電力エリアで2017年4月23日午後1時に太陽光の出力が需要の76%をまかなった事例もあり、決して「役に立たない」ものではありません。もう少し再生可能エネルギーについて調べてから記事を書いていただきたいものですね。
>3ページ目:「ハイブリッド車は、「自家発電」できるので、このような災害の際にも大いに頼りになる」
今までの災害時には、ほとんどの場合、ガソリンの給油規制が行われたり、ガソリンスタンドが休業していました。給油ポンプだって電気で動くのです。しかし、大地震が起こっても電力の供給は最も早く復旧する傾向にあり、実際には電気自動車のほうが災害に強いのです。
>4ページ目:「LPGはタクシーにおいては既にメジャーな燃料であり全国に分布するLPGスタンドはおよそ1900軒。30000軒以上あるとされるガソリンスタンドに比べれば見劣りするが、この数でも十分機能する」
LPGにしろLNGにしろ液体燃料ですから充填にかかる時間は少なくて済みますが、日本全国に急速充電スタンドが7000か所に加え、高速道路の主要SAPAにも設置、そして普段は自宅で充電できる電気自動車またはプラグインハイブリッドのほうが、圧倒的に便利だと考えられます。
またLPGもLNG(もCNGも)すべて、輸送しなければならないという点を忘れてはいけません。日本全国津々浦々、燃料の必要なところには、ガソリン・軽油・灯油の三点セットに加え、ガスを運ばなければならないのです。もちろん都市ガスインフラのある東京などではガス会社が充填スタンドを経営していますが、地下に都市ガスの配管がない地域ではタンクでガスを運ばなければなりません。
都市ガスがある場合、都市ガスの主成分は天然ガスですから、それを圧縮したCNGを供給することは技術的に可能で、実際に圧縮天然ガス充填設備は存在しています。しかし気体のままタンクに充填するので、航続距離が最新の電気自動車と同じくらいの300km程度しかありません。液体にしてLNG(マイナス162℃)で充填すればもちろんガソリン車と同等になりますが、今度はボイルオフといって、少しずつ燃料が揮発してしまう問題が発生します。ボイルオフは1日に2%程度にも達するそうです。そのため、LNG自動車は長距離走行をメインとするトラックやバスにしか適しません。
そこで残るのはLPGすなわち液化プロパンガスです。LPGは都市ガスのように地下の導管で送ることはできず、タンクに蓄積して供給する必要があります。1900軒のLPGスタンドには、単にLPGを充填する車だけでなく、LPGを届けるLPガスタンクローリーも出入りする必要があるのです。充電スタンドと異なり、1900か所のLPGスタンドを19000か所にするには、10倍の数のLPガスタンクローリーを走らせる必要が出てきます。CNG・LNG・LPGはそれぞれ互換性がないことにも注目してください。
最後に、水素燃料電池車にも言えることですが、LPG自動車にはガソリン車と比較して、CO2排出量が少ない・燃料費が少し安いことくらいしかメリットがない、というのが最大の課題ではないでしょうか。この点を著者大原氏は指摘していませんが、現時点までLPG/LNG/CNG自動車が爆発的に普及していない最大の理由は、このメリットのなさにあると言っても良いと思います。
電気自動車・プラグインハイブリッド車は、以下の大きな利点を備えています。電気自動車のメリットとデメリットの詳細はこちらをご覧ください。
- 給油の手間がない
- 部品数が圧倒的に少ないためメンテナンスコストが安い
- 1速のみのトランスミッションであるため発進や走行がスムース
さて、当マネー現代がこのような間違いだらけの記事をリリースする理由はなんでしょうか?




