電気自動車のメリットとデメリット

電気自動車やPHEVを検討するにあたり、メリットやデメリットがあります。あまり知られていないメリットもありますが、絶対電気自動車にしてはいけない人も!

電気自動車のメリットとデメリット

目次

  1. 電気自動車にしてはいけない人
  2. 電気自動車のメリット
  3. 電気自動車のデメリット
  4. まとめとPHEVについて

電気自動車にしてはいけない人

いきなり過激な内容から始まりましたが、非常に重要なことなので最初に断っておきましょう。電気自動車やPHEVの種類についてはこちらを見ていただくとして、純粋な電気自動車(BEV)はガソリン車・ディーゼル車(この記事では以後、化石燃料車と呼ぶことにします)と全く概念が違います。そのため、「同じような使い方ができる」と思ってはいけません。違う商品なのです。携帯電話も、スマホが出てくる前、電池の持ち時間の競争が行われていました。今のスマホは画面の綺麗さや音、処理速度、音楽や映像のサービスなどで選択されていて、電池の持ちの悪さは、ユーザーがより頻繁に充電することでちょっとだけ我慢している状態です。

電気自動車は充電が必要で、かつ、電池容量が大きいほど高速に充電できますが、それでも化石燃料車の6倍から10倍以上の時間がかかります。家庭では高速に充電はできず、また車のサイズの割には一回の充電で走行できる距離が短く、化石燃料車より頻繁に充電が必要となります。
そのため、下記のような方には電気自動車は向いていません!

  1. 車を常時置いておく場所、すなわち自家用なら自宅、業務用なら会社で充電できる環境を用意できない方。一戸建てであれば、比較的簡単に充電設備を設置できますし、会社が利用しているのがビル内の賃貸駐車場であれば、探せば充電設備設置を許可するオーナーさんもいるでしょう。しかし、自宅がマンションであって既設の充電設備がなかったり、会社の駐車場に充電設備がなく、かつ設置も難しいということであれば、電気自動車はほぼ運用ができません。
  2. 購入検討している電気自動車の実航続距離(実航続距離一覧はこちら)を往復で超える距離を、週に2回以上運転する方。経路途中で充電も可能ですが、毎週となると、ゆっくり休憩の間に充電ができないケースもありそうです。
  3. 実航続距離を超えるドライブの際、充電計画を立てるのが面倒な方。

夕暮れの大型マンションポイント1は自宅/常置場所充電ですね。総務省統計局の平成25年住宅・土地統計調査(確報集計→全国編→表番号5)を見ると一戸建てが2800万戸、集合住宅が2200万戸でまだ戸建てのほうが多く、半数以上の世帯では問題がないとも言えます。集合住宅のうち27%が1-2階建てで、これらの住宅の駐車場は平置きと考えられますから、充電設備は設置できる可能性もありますね。ただそれ以外の集合住宅では、自己所有か賃貸かに関係なく、充電設備の設置にはある程度困難が伴います。米国ではすでに集合住宅に充電設備を設置する議題が管理組合に上がった場合、組合は拒否できない法律が施行されている州もあります。日本でも、法制化が進めばこの問題はだんだんと少なくなっていくのかなと思います。

Electric Car in Charging Station.ポイント2は、長距離BEVすなわち長い距離を走行できる電気自動車が増えれば、該当する人は減ることになりますので、だんだんと解決されていく問題と考えられています。例えば2016年1月の現時点では、EPA基準(実際に走行できると考えてください)で300km以上走行できる車を長距離BEVと仮定した場合、テスラのモデルS(2012年発売)とモデルX(2015年発売)の二車種だけが現行車種ということになります。2016年中には米ゼネラルモーターズがシボレーBOLT、一年空いて2018年にはテスラモデル3、メルセデスベンツがCクラスかEクラス、もしかすると日産リーフ、そして2019年にはポルシェ ミッションE、メルセデスベンツからSUV/CUVが2車種と長距離BEVがリリースされてきます。これでコンパクトカーから中型・大型セダン、SUV/CUVにスポーツカーまで、軽自動車以外のラインアップが揃うことになります。
残念ながら現在の技術では、軽自動車サイズにバッテリーを積み込んで、300km以上走行させるのはまだ難しいようです。そのため、軽自動車の電気自動車は、現行で三菱のアイミーブがありますが、これ以外に出てきても航続距離はある程度限られたものになると思われ、主に通勤・買い物専用車、もしくは2台目の車としての用途が主になると思います。

Searching in map.ポイント3は性格にも関係するかも知れません。電気自動車で旅行する際に、行きあたりばったりで、電池が空になりそうになってから充電スポットを探すというふうに行動すると、充電に30分から1時間以上かかったりする可能性があります。これを避けるためにはできる限り、「ついで充電」を心がけること。長距離ドライブの休憩や食事、観光の合間、寝ている間に充電を組み合わせます。そのため、多少なりとも充電の計画を出発前に立てる必要があります。
電気自動車の充電時間は30分、、と思っている方も多いかと思いますが、実はそうではありません。自宅や、最近ホテルや旅館、ショッピングセンターなどにも設置が進んでいる普通充電器では、リーフ30kWhで11時間、テスラモデルS 85kWhなどでは24時間以上、空から満充電までにかかります。また急速充電器にもいろいろな出力を持つものがあり、遅い急速充電器(中速充電器と便宜上呼んでいます)と速い急速充電器があります。20kW中速充電器では、リーフ30kWhを空から80%まで充電するのに、1時間12分ほどかかります。50kW急速充電器でも、テスラモデルS 85kWhを空から80%まで充電するのに、1時間25分ほどもかかるのです。
注意しないといけないのは、この時間をまるまる待つ必要はない、ということです。20分の休憩を取るなら、20分間充電すれば、航続距離は充電器のパワーに応じて増加するのです。できる限り、充電器のあるところで休憩・食事などする場合には、充電するように心がけると、充電のために待つ必要はなくなります。充電計画の立て方は当ブログでもテスラのカテゴリで紹介しています。

電気自動車のメリット

電気自動車のメリットをご紹介しましょう。人によって優先度・重要度は異なると思いますので、あくまで私の意見としてご理解ください。

Peaceful and tranquil nature landscape of sea coast after sunsetスムースで振動がなく、静か 電気自動車に普段乗り慣れていると、化石燃料車に乗った時に驚きを感じます。ATがシフトするたびにギクシャク(同乗者の頭が揺れます)、停止していてもわずかな振動、そして高速道路では音楽の音量をアップしないと聞こえなかったり、後部座席に座っている人と会話が難しかったり。電気自動車では、AT/CVTがなく、1速だけなので、シフトショックはゼロ。バックするときもギアじゃなくてスイッチなのですぐバックできます。細かいところでは、踏切や細い道の四つ角などでの一時停止が全く苦になりません。スッと停まってスッと発進です。そして、家族を後部座席に乗せたりすると全員が、普通に4人で会話できることに驚いてくれます。
クイックでレスポンスが良い 電気自動車は化石燃料車やハイブリッド車(低速域のみモーター)と異なり全域モーターで走ります。そのため、右折の際にサッと対向直進車の切れ目で右折できますし、高速道路での車線変更時も、まれに邪魔しようとする方がいますが、化石燃料車がアクセルを踏んで加速し始める前にスッと入れます。そして、このレスポンスのおかげで長距離の移動でも疲れにくいのです。
Beautiful brunette punching gas station because of high price給油が面倒でない 電気自動車は毎晩、自宅・常置場所で充電するのが基本です。例えばテスラモデルSでは、車を降りる→ドアを閉める→車の後ろに回る→充電器のケーブルを取る→ケーブルのボタンを押しながら(ここで充電ポートのドアが自動で開きます)ケーブルを挿す、の流れで、約5秒で充電が開始できます。車を出すときは、逆に、車の後ろに回る→充電器のケーブルのボタンを押しながらケーブルを抜く→ケーブルをハンガーにかける→充電ポートのドアを閉める→車の前に回る→ドアを開ける→乗り込んでドアを閉める、という流れになります。毎日、10秒ずつ多めに時間がかかるというわけです。月に8回車を使うなら計80秒、20回使うなら200秒=3分20秒かかるのです。化石燃料車では、月1回の給油で、ガソリンスタンドに行く→給油口のフタを開ける→車を降りる→車の後ろに回る→油種(レギュラー・ハイオク・経由)を選択する→満タンを選択する→クレジットカードを通す→給油口を開ける→ノズルを取って挿してレバーを握り続ける→満タンになるまで待つ→ノズルを外して給油機に置く→給油口を閉めて給油口のフタを閉める→レシートを取る→車の前に回る→ドアを開ける→乗り込んでドアを閉める、という動作をすることになります。私は一回の給油で5分くらいかかっていましたし、毎月4回給油していましたので実に20分。しかも寒いときは外で待たなければならず、コートを着て給油することもありました。
Car mechanic repairing a automobile消耗品が少ない 維持費の記事で1年点検のコストを詳細に紹介していますが、私のテスラモデルSでは、1年点検で交換した部品はワイパーブレード2本とエアコンのフィルターだけで3,341円。化石燃料車にお乗りの方は、オイル交換を覚えていらっしゃると思います。これがなくなるんですよね。金額としては、小型車では年間1万円程度、大型乗用車や外国車では年間2万円から4万円くらい?がゼロになるというわけです。長期間化石燃料車に乗る方は、それ以外にも車検ごとにラジエーターのクーラント、5万キロを超えるとエアクリーナー、Vベルトやタイミングベルト(主に外国車)などの交換が必要となります。
New Brake Pads and Disksブレーキが減らない 電気自動車では回生ブレーキと言って、ハイブリッドなどでもある、減速時にバッテリーに電力を充電できます。しかし電気自動車のバッテリーはリーフ30kWhでも、ハイブリッド車プリウスの1.3kWhに対して23倍もあるのです。したがって、減速時のほとんどのパワーは電気に変換することができます。箱根の七曲りを下って回生した写真を見ていただければ分かりますが、14.6km走行して0.9kWhの電力を充電できています(=電力を使わず、発電しながら走行したということ)。化石燃料車ならエンジンブレーキは使うものの、やはりカーブの手前ではフットブレーキを使って速度を落とす必要があります。結果として、テスラモデルSでは1年29000kmでブレーキパッドの残が9mmでした(新品は10mm)。このペースだと10万キロは楽に持ちそうですね。化石燃料車の場合、日本車の普通車は4万キロ、軽自動車は5万キロでブレーキパッド交換、ブレーキパッド2回交換でブレーキディスクも交換。輸入車はその半分くらいですから、いかに電気自動車に整備の手間がかからないかお分かりいただけるかと思います。
暖房がすぐ効く 夏でも冬でも電気自動車ではプレ空調という機能を使って、乗車する前にエアコンを入れておくことができます。しかし、不思議なもので、実は冬はあんまりこの機能を使わないことに気づきました。電気自動車は暖房の熱をエンジンではなく、PTCヒーターで取り出しています(一部ヒートポンプ式もあります)。PTCヒーター式の車種では、車を雪の降る屋外に駐車していても、走り出してすぐ温風が吹き出してきます。寒く感じるのも最初の1分だけなのですよね。冬は電費が悪くなると言われている電気自動車は、乗るとすぐに暖かくなるのです。
Woman cleaning car windshield of snow winter雪が降ったときがラクラク 化石燃料車に乗っていたころは、冬は朝、やかんにお湯(熱湯はNG)を入れて持っていき、駐車場でまずエンジンをかけ、屋根・トランク・ボンネットの雪を降ろしてからフロントガラスにお湯をかけて霜や氷を取り除いていました。外出先などでお湯がないときは、車の中でデフロスターをON。霜が解けるまで5-10分アイドリングして待っていたものです。電気自動車ではプレ空調15分で車のところに行く頃にはフロントガラスは透明に!雪を降ろすだけで出発できるのです。アイススクレーパーとかも要りません。
oil and gas industry in a powerful color concept(気分の問題)環境に優しく、化石燃料からの脱却への第一歩 電気自動車は、少なくとも、住宅街を走行してもCO2、NOx、PM2.5などの排出がありません。もちろん電気を発電所で発電する場合、再生可能エネルギー(水力・太陽光・風力など)以外に火力発電も多く使われていますので、発電所での排出はやはり存在します。しかし、電気自動車の排出量の計算によれば、リーフとハイブリッドのプリウスは、CO2排出量で比べると、石炭火力が少ない東京電力区域や中部電力区域では、リーフのほうが排出が少ないのです。微妙なところですが、全国レベルでならしてみると、この二車種では2014年度現在(原発ゼロ)、CO2排出量はほぼ同等と言ってよいと思います。テスラモデルSとレクサスLS600hでは、LS600hはモデルSの2倍のCO2を排出しています。つまりこういうことです。電気自動車なら、少なくとも先進のハイブリッド車とほぼ同等のCO2排出量に抑えることができ、かつ有害物質であるNOxやPM2.5は工業地帯にある発電所でしか排出しません。また、今後再生可能エネルギーの比率が高まることで、電気自動車の環境への貢献度はさらに高まると考えてよいでしょう。ちなみに日本国内で乗用車が使っている石油は1,706PJ(ペタジュール)、国内の石油供給は8,980PJ(資源エネルギー庁 エネルギー白書2015より)ですから、19%を乗用車が占めていることになります。電気自動車に乗ることにより、石油以外、すなわち再生可能エネルギーや原子力などの他の電力を活用できるようになるのです。

電気自動車のデメリット

電気自動車のデメリットについては、最初のセクションでも紹介しましたのである程度お分かりですね。

  • 自宅充電が必須
  • 航続距離が化石燃料車よりも少ない
  • 長距離ドライブでは充電計画が必要

の三点でした。

View macro of several AA blue batteries.実は、電気自動車に使われているリチウムイオン電池にはいろいろな種類があり、東芝のSCiBのように、たった6分で80%まで充電できる電池も発売されています。しかし残念なことに、この電池は体積エネルギー密度が大変低く、かなり車内で場所を取ってしまい、重量も増えてしまいます。例えばホンダFitの場合、ガソリン車であるFit 15XL FFと電気自動車のFit EVを比較してみましょう。

車種Fit 15XL FFFit EV
寸法(mm)3955 x 1695 x 15254115 x 1720 x 1580
重量(kg)10601470
室内寸法(mm)1935 x 1450 x 12802040 x 1415 x 1175

Fit EVは全体的に16cm長く、2.5cm幅広く、5.5cm高くなっているにも関わらず、室内は前後こそ10.5cm長くなっていますが、幅は3.5cm狭くなり、高さは10.5cmも低くなってしまっています。Fit EVは20kWhのバッテリーでEPA 131kmを走行できますが、長距離BEVにするために300km走行できるようにすると、最低でも300/131=2.3倍のサイズのバッテリーが必要になり(実際には車重が2tを超えるのでもっと必要になります)、現状のように底面搭載を続けるとすれば、室内の高さが100cmを切ってしまう可能性が高く、ダイハツの軽自動車コペンの104cmより低くなってしまいます!

そう、実は、長距離BEVを小型化するのに必要なのは、体積エネルギー密度(Wh/l)が大きく、場所を取らない電池なのです。そして長距離BEV用の高体積エネルギー密度の電池はパナソニックとLG Chemが世界のリーダーであり、それらを利用している(利用する)テスラとGMが、世界で最初に長距離BEVを出荷できるのです。

freezing woman話は変わりますが、メリットのところで、冬は電気自動車が便利、というポイントが出てきました。しかし、電気自動車ではエンジンの熱が使えないため、暖房にはバッテリーの電力を使わざるを得ず、そのため航続距離が低下してしまいます。これが第四のデメリットです。
# 化石燃料車では、燃料のパワーの最大35%が走行に使われ、残りの65%は熱や音として捨てられています。そのため、暖房するのに十分な熱があるのです。
航続距離の低下は24%から40%程度にも及びます。相対的にバッテリー容量が小さい車のほうが、暖房に必要な電力量が割合として大きくなるため、航続距離はより多く低下することになります。寒冷地では、この点をよく理解して購入することが必要です。例えばリーフ24kWhでの冬の航続距離は満タン100km、長距離ドライブ時の急速充電を想定して80%充電では80kmとなります。

第五のデメリットは、バッテリーヒーター・クーラーの存在です。特に冬は、バッテリーの温度が低くなると、急速充電ができなくなります。テスラモデルSのようにバッテリーヒーターが搭載されていれば問題はないのですが、ヒーター非搭載車では充電に時間がかかり、2倍以上の時間がかかることもあります。寒冷地で電気自動車を導入される方で、急速充電を多用される予定の方は、バッテリーヒーターが搭載されているか確認してから購入することをお勧めします。
逆に夏場は、バッテリーの温度が上がりやすくなります。バッテリーは化学物質でできており、温度が上がるほど性能は出やすくなるのですが、逆に劣化が激しくなります。そのため、夏の暑いときに走行による負荷や急速充電による負荷がかかると、バッテリーの温度はかなり上昇してしまいます。バッテリークーラーが搭載されている場合、自動的にバッテリーは適切な温度まで冷やされて管理されますので、バッテリーの寿命が長くなります。クーラー非搭載車では、バッテリー温度が表示されており、温度が高くなると急速充電ができなくなります。

まとめとPHEVについて

Reduce greenhouse gas emission for climate change and sustainablさて、大まかに電気自動車のメリットやデメリットについて、お分かりいただけたでしょうか?電気自動車はまだ新しいジャンルの自動車で、技術が完成されているわけではありません。電気自動車を検討される際には、ぜひ参考になさって、自分に合った車を選ぶことをお勧めします。

さて、この記事ではPHEV(プラグインハイブリッド車、外部から充電のできるハイブリッド車のこと)についてはあまり記載しませんでした。その理由は、「PHEVにはデメリットがあまりないから」です。PHEVはほとんどハイブリッド車と同様に取り扱うことができ、ガソリンを給油すれば走り続けることができます。自宅に充電設備がなくても、ガソリンさえ入れれば、いつでもガソリンがなくなるまで走行できます。
こう考えると、自宅近辺の買い物や通勤には自宅で充電した電気で走行してガソリンを使用せず、遠出のときだけ電気+ガソリンで走行できるPHEVは欠点がないように見えますよね?実際、日本で最初に発売(2013年1月)された三菱自動車のアウトランダーPHEVは非常に人気で販売も好調だと聞いています。PHEVのデメリットは一つだけ。化石燃料車と電気自動車のすべての機能を両方持っており、そのため構造が複雑になり、電気自動車のメリットの一つ「消耗品が少ない」が失われてしまうというものです。これとて大した金額ではありません。

yoga woman practice on mountain peakPHEVには、化石燃料車にも電気自動車にもない特徴があります。それはメンテナンスモード。PHEVを充電して走行していると、人によってはガソリンを全く使わず、エンジンを全くかけずに走行することができるのですが、そのような使い方をすると、ガソリンエンジンの油膜が切れやすくなり、ガソリンの品質も少し劣化するため、エンジンの寿命が短くなってしまいます。そのため、アウトランダーPHEVでは3か月間エンジンを未使用の場合(ガソリンを15l給油するまで)、BMW i3 REXでは50日間エンジンを未使用の場合(10分間)、GM Voltでは6週間エンジンを未使用の場合(2分間)、メンテナンスモードとなり、エンジンがかかります。面白いですね。

この記事のコメント(新着順)12件

  1. YasukawaHiroshi様
    ご丁寧かつ詳細な回答、貴重な関連情報を早速頂戴し誠に有難うございます。
    EVの電池の劣化による利便性・リセールバリューの低下と、その対策・対応の難しさが、(ガソリン車と異なり)「EVユーザ個人による所有・運用・管理」の課題になっていると感じています。
    その対応策を検討する上で、今回頂戴したお話は大変役立ちます。
    有難うございました。

    1. TO様、参考になるかどうかわかりませんが、フランスのルノーはバッテリーだけをリースにするプログラムを行っています。
      https://offers.renault.co.uk/cars/zoe/renaultselectionszeaccess?offer=387
      Additional mandatory battery hire from £69 per month requiredというのがそうです。右のほうにはこの記述がなく、その代わりバッテリーが買い切りになりますので高くなりますね。

      ただこれが理想なのか?というとそれは私にはわかりません。携帯電話のバッテリーは、当初アナログ携帯(多くの方は見たこともないと思います)では数か月しか持ちませんでした。私はポケットに3つバッテリーを入れて仕事をしていました。数か月ごとにそのうちの1-2個をリサイクルに出して新しいのを買う、という生活です。しかし今はどうでしょう?多くの方がスマホを2年くらいは使うと思いますが、2年の間、容量の劣化は起こっていますが何とか使えていますよね?最近のスマホは賢くなって、深夜自宅で充電を開始すると、急速充電ではなく普通充電をゆっくり始めて、朝までに満充電にする、みたいな処理が入っていたりして、だんだんと寿命が長くなってきています。初期の日産リーフは普通充電すると自動的に100%まで充電されていましたが、最近発売されている車両は、ほとんどが初期80%までまたは90%まで充電するように設定されています。テスラでは、満充電に設定して、満充電が実際に2-3日続くと、「そろそろやめたら?」と表示されて満充電設定をキャンセルするよう勧めてきます。こういうのが、ハイブリッド車にはない、電気自動車のちょっとしたノウハウなんですよね。
      自働車メーカーの趨勢は、ルノーが考え出したようなバッテリーリースよりも、よりハードウェアとして寿命の長いバッテリーへ、そしてソフトウェアによる寿命の延命へと向かっているように思います。

  2. 素晴らしい記事有難うございます。幅広い観点で、詳細かつ正確なデータに基づいて解説されているため大変勉強になります。
    ところで、EVのデメリットの一つだと思いますが、「EVの電池の劣化」については、どのように理解し、どのように対応すべきなのでしょうか。関連する情報、知見があれば共有いただきたく。
    例えば、「何年乗ると、何km走ると、何回充電すると、どのような充放電パターンを何回繰り返すと、etc.、どの程度劣化することがわかっている」とか、「必要な充電頻度がどの程度増加する」とか、「どの程度になったら〇〇円くらいかけて電池を交換する方が良い」等、目安になる情報があればと思っています。

    1. TO様、コメントおよびご感想をありがとうございます。
      電池の劣化は大変難しい仕組みらしく、先日実際に業界で活躍されている電池のエンジニアの方にお会いし、科学的な解説動画を翻訳させていただくことができましたので、ご紹介しています。
      https://blog.evsmart.net/electric-vehicles/battery-degradation-explained/
      字幕付けてありますので、ちょっと内容は難しいのですがご覧ください。

      劣化についての目安はなかなか難しいですが、以下のことに気を付けるのが良いです。(上の動画の中にもいろいろ出てきます)
      – 普段は80-90%充電までに留めておき、旅行のときだけ100%充電を使用する
      – 100%充電をした後は、何日も放置せず、できる限り早く使う
      – 気温が非常に高い時、バッテリークーラーの付いていない車両では急速充電は避けるほうがよい
      – 気温が非常に低い時、電池が暖まっていない場合には、急速充電は避けるほうがよい
      # 電池が暖まっているかどうかを調べるにもツールが要りますが

      劣化の頻度について、多くのメーカーが新車時に対して70%程度の容量になった時点で、寿命が来たというように考えているようです。このあたりで保証を行っているメーカーも多いです。
      そして、最近の電気自動車が70%まで容量劣化することは、10万キロ程度や10年くらいの期間ではなさそうなデータが出てきています。なので、今後、電池交換まで行うような車両は少ないのではないでしょうか?
      https://blog.evsmart.net/electric-vehicles/ev-battery-longevity/
      一応まとめ記事も作成しています。

  3. こんにちわ。
    運送会社の者です。
    「CO2を主に排出しているのは運輸部門である」をいうのは間違いないと思います。
    ただ・・・
    代替としてのEVは難しいと感じています。
    1つに 車両総重量の問題です。FITのGVとEVの車両重量が1.4倍違いましたが、もしこれが大型車・中型車で同じなら最大積載量が激減してしまいます。
    大型車には高速道路を特別許可なく走るのに最大積載量25トンの縛りが有ります。現行は車両11トン弱積載14トン弱ですが、車両が1.4倍したら15.4積載は9.6トン弱になり、積めなくなる荷物が出来ますし、運行で利益が出せないです。
    4トン車でも車両総重量8トン未満の縛りがあるので同様です。
    軽い電池の研究や可能性について情報があればしりたいです。
    2つめに代替としてCNGやハイブリッドのトラックを試験的に入れていますが、CNGはEVと同じ走行距離が短い点(近距離配達では使用中)、ハイブリッドはトルクと積載量・価格の点で増やすのは改良型が出るまで待つ段階です。
    車両総重量を増やすのは道路(アスファルト・コンクリート)にかかる負担が増大するので簡単ではないと思います。
    ただでさえ、燃料消費が大きいトラックは大きなバッテリーを積まなければならないのでまだまだ遠い先になるのだろうか?と憂いています。
    運輸部門に関する未来の情報があれば教えて下さい。

    1. yk様、コメントありがとうございます。承認が遅れ申し訳ありません。基本的にはイタズラやスパム以外はすべて承認し、可能な限り返信を書いておりますが、どうしてもタイムリーに返信できないことがあります。ご了承くださいませ。
      おっしゃる通り、トラックにおける最大の問題は重量でしょうね。米国では36tまでなので、日本の25tよりもかなり余裕があるのです。そこで、国内でもまた違いが出るかもしれません。
      https://blog.evsmart.net/ev-news/tesla-semi-roadster-update/
      すでにお読みいただいたかもしれませんが、現時点でテスラが計画しているセミトレーラーについては、上記のような情報が分かっています。最も肝心な、最大積載可能量についてはまだ言及がありません。
      https://www.teslarati.com/how-much-tesla-semi-truck-battery-pack-weigh/
      https://www.reddit.com/r/RealTesla/comments/7zxbyr/tesla_semi_tare_weight/
      このあたりの推測を読むと、同等のセミトレーラーより2t程度重いのではないか、という計算例が出ています。つまり荷物が2t少なくなっちゃうということです。これは当然ですがコストに跳ね返って、電気によって運行するコストメリットを減少させると思います。

      一方イーロンマスクは、積載可能量は通常のトレーラーと同じくらいだ、とも発言しています。これはおそらく、今後エネルギー密度(つまりWh/kg)をいかに上げるかのチューニング次第で、バッテリーを軽くできるという予測があるからなのかも知れません。一つの例を挙げますと、
      https://www.reddit.com/r/teslamotors/comments/65pt0k/tesla_2170_battery_cell_specifications_calculated/
      ここにあるように、18650セルから最新の2170セルでは、約15%のエネルギー密度向上が見られるとあります。例えば上記のセミトレーラーのケースでも、試算時に15%を引いていますが、これは乗用車のバッテリーパックを拡大したときの計算ですので、実際にはトレーラーに搭載する場合にはもう少し構造物が減らせて軽くできる可能性もあるかなと思います。とはいえ仮にさらに10%軽くできたとして-0.6tですから、やはり1-2tオーバーになるのは今の技術では避けられなさそうですね。

  4. こんにちは
    運送会社の者です。
    今回の記事を読んでいて「運輸部門」が、CO2排出を大きくしているのを拝見しました。その通りだと思います。
    デメリットのところで書かれていました「重量の増加」は、大型車、中型車にとって非常に大きな問題です。
    大型車に限って言えば、高速道路を特別許可無く走るには車両総重量25トン以下の縛りが有ります。現行は車両重量約11トン・最大積載14トンで車両総重量25トンです。車両総重量が1.5倍になれば16.5トン「最大積載は8.5トン」となり、仕事として出来ないことがかなり増えてしまいます。
    4トン車は、車両総重量8トンの縛りが有り、現在でも最大積載が3トン強しかありませんから車両重量4.5トンを1.5倍すると6.8トンで1トンしか積めません。
    車両重量の重さは、運輸部門のEV化の最大の問題となるでしょう。
    重量が重いとアスファルトやコンクリートに掛かる負担が大きくなりすぎるのでなかなか変更が難しいと思います。
    軽い電池を研究しているところはあるのでしょうか?
    パワーや走行距離以前にこの問題が解決され、ディーゼルエンジンによるC02/NOXが格段に減ることを願います。

  5. ガソリンエンジンが無くなると当然ガソリンは不要になる。ガソリンの原料は原油であり、原油から作られる石油製品の内訳はガソリン28.2% ナフサ 10.5% ジェット燃料 8.4% 灯油 8.3% 軽油 21.6%A重油 6.8% B,C重油 9.6% その他アスファルト等 6.6% である(石油連盟HP1915年度統計)
    航空機はジェット燃料、トラックや建設機器は軽油が必要、工場などの加熱作業にはA重油が必要、船舶はB,C重油が必要である。ガソリンが要らなくなっても石油精製産業が不要になることは無い。余ったガソリン留分は高温で分解しLPGにしても余るであろう。
    電気とガソリンを価格比較する場合、揮発油税53.8円/リットルも考慮に入れないといけない。最後にその他アスファルト等であるが、道路工事に不可欠なアスファルトは代替が無い。二酸化炭素を単純に減らせば良いとは言えない。

    1. 高月様、コメントありがとうございます。
      CO2排出は地球全体の問題であり、日本国内から世界に目を向けてみると、CO2を主に排出しているのは運輸部門であることは間違いないですね。その中でガソリンを減らすとどうなるかなのですが、実は石油製品はほとんどフラッキングと呼ばれる方法で、長い炭素の鎖を分割してより分子量の低い軽い油へと精製されていっています。したがってガソリンはLPGにフラッキングすることも可能ですが、それ以前にもっと長い鎖になっているのですから、ガソリンを作らず軽油を作ることも重油を作ることも可能。すなわち、ガソリンを減らすことにより、我が国の石油への依存度を下げることができるのです。そのため、各省庁および様々な機関では、運輸部門を通じた省燃費化や代替燃料化に力を入れているのです。

  6. 一番に大きい違いはスタンドに行く度に現金やカードで¥10,000が無しに成る事ですね!私の場合は月に10万円位が節約出来ますね!                 海や山奥に行く時はホンダの発電機を3万円で買い現地で使用してますよ。      バイクの50CC位のエンジンを積み発電機付けてくれたら良いのにな!

    1. 麻布くるま道楽様、コメントありがとうございます!おっしゃる通り、車が大きいとコストの節約金額は大きいですね。大型セダンや大型SUVだと、ガソリン代を電気にして数分の一になるというのはよく聞きます。私自身もほぼ6分の1くらいになりました。中型車というかリーフやプリウスクラスだと、夜間の安い電気料金が使えるかどうかで、まあまあ得になるかどうか決まるみたいな感じです。
      発電機のエンジン、、BMW i3がちょうどそういう感じですが、航続距離の心配がなくなる代わり、エンジンのメンテナンスが必要になっちゃうので、メリットが一つなくなっちゃうような気もします。

    2. ホンダの発電機は新品では10万円以上します。出力がそこそこ大きいと20万円近くします。また排ガスレベルも乗用車よりとても悪くて(バイクよりも悪い機械も)室内では使えませんし、運搬時にも注意してくださいね。また電圧変動やら、正弦波と違う場合もあるので、ご注意ください。

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この記事の著者


					安川 洋

安川 洋

日本アイ・ビー・エム、マイクロソフトを経てイージャパンを起業、CTOに就く。2006年、技術者とコンサルタントが共に在籍し、高い水準のコンサルティングを提供したいという思いのもと、アユダンテ株式会社創業。プログラミングは中学時代から。テスラモデルX P100Dのオーナーでもある。

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