ベンツの電気自動車『EQA』長距離実走レポート【往路編】急速充電最大100kWの実力は?

東京〜兵庫往復の長距離実走レポート。今年は、メルセデス・ベンツ『EQA』で走ってきました。注目のポイントは、チャデモ対応車種としてポルシェ『タイカン』に次ぐ「最大100kW対応」であることです。はたして、言葉通りの高出力充電ができるのか。まずは往路のレポートです。

※『復路編』はこちら

90kW器が新設されたPAを発見して計画はシンプル

私の実家は兵庫県北部の但馬地方。EVsmartブログの編集に関わるようになってから、夏休みやGWの帰省を利用して、30kWhリーフ、ジャガー『I-PACE』、テスラ『モデル3』などによる長距離実走レポートをお届けしてきました。東京都世田谷区の自宅から兵庫県養父市の実家までの距離は今回走った往路のコースで613km程度(Googleマップ調べ)です。年に1〜2回の長距離ドライブのモデルコースとして、多くの読者のみなさんにも参考にしていただきやすい事例になるかと思っています。

今回、試乗したのはメルセデス・ベンツ『EQA』、先月「10年後にはすべての車を電気自動車(EV)にする準備ができている」と衝撃的な発表をしたメルセデス・ベンツが、DセグメントSUVの『EQC』に続く2車種目の完全電気自動車として日本市場にも導入したEQCよりは少しコンパクトなSUVタイプのEVです。

参考までに、EQAとEQC、ついでに日産『アリア』のサイズなどを比較しておきましょう。

EQA

250

EQC

400 4MATIC

日産アリア

B6 limited

日産アリア

B9 e-4ORCE limited

全長×全幅×全高(mm)4465×1835×16254770×1885×16254595×1850×16654595×1850×1665
バッテリー容量66.5kWh80kWh66kWh91kWh
駆動方式前輪駆動全輪駆動前輪駆動全輪駆動
急速充電対応出力100kW50kW130kW130kW
一充電航続距離(WLTC)

※EPA推計値

422km

※約338km

400km

※約320km

450km

※約360km

580km

※464km

車両価格(税込)6,400,000円〜8,950,000円〜6,600,000円〜7,900,200円〜
※EPA換算の一充電航続距離はWLTCの値に「0.8」を掛けた推計値です。

こうして並べてみると、日産アリアがベンツ並みの高級車(先行予約の限定モデルとはいえ)だということがわかります。

ともあれ、電気自動車なので加速が気持ちよくて走りがスムーズなこと、ベンツならではの足回りやインテリアの快適さ、ACCの秀逸さなどは私が評するまでもなく(塩見さんの試乗レポートもあります)。今回、私が注目したのは、最大100kW対応というチャデモ急速充電の実力でした。

ただし、現在の日本の高速道路SAPAに、100kWを超える急速充電器はまだ設置されていません。東名の海老名SAや名神の草津PAに設置された90kW器は使ったことがありますが、東京からの距離が200〜300kmあたりで「高速を下りて90kW器で充電できる場所を探してみるか」と『EVsmart』で検索すると……。

なんと、今年になってから、下り線は「長篠設楽原PA(愛知県新城市)」に、そして上り線は「遠州森町PA(静岡県周智郡森町)」に、新電元の90kW器が「2本出し」で設置されているのを発見しました。2本出しというのは、1台の急速充電器から2本のケーブルが出力を分け合うタイプ。1台だけで利用する際には最大出力の90kWを享受できる、はずです。

というわけで、往復のドライブ&充電計画はとてもシンプルに立案できました。

【往路】

●東京

↓ 254km

●新東名 長篠設楽原PA下り線

↓ 171km

●名神 草津PA下り線

↓ 189km

●実家(養父市関宮)

【復路】

●実家

↓ 188km

●名神 草津PA上り線

↓ 210km

●新東名 遠州森町PA上り線

↓ 215km

●東京

とはいえ、たとえば公称スペックでは最大70kW対応の日産リーフe+で三重県四日市市まで往復約750kmの日帰り実走レポートでも、スペック通りの出力ではなかなか充電できない現実を体験しました。はたして、EQAは最大90kW(200A)の急速充電能力を発揮してくれるのか。

8月11日23時ごろ、少なからずワクワクしながらスタートしました。

結果は「とても素敵!」でした

では、写真とともに往路の急速充電結果をご紹介します。

自宅ガレージで普通充電。21時くらいに出発しようと思っていましたが、仕事が片付かず、23時ちょうどくらいの出発になりました。

出発時のSOC(バッテリー残量)は100%。この画面に航続可能距離表示があると思いこんでいて、うっかりメーターの写真を撮り忘れてました。400km強だったと思うんですけど記憶は曖昧。ともあれ、最初の充電を予定している長篠設楽原PAまでは問題なく届きます。

急速充電1回目

1時45分ごろ、SOC33%で長篠設楽原PAに到着。少し慎重に、90〜100km/h程度で巡航したので、平均電費も5.7km/kWhと、まずまずな感じです。

まだ真新しい90kW器。もう一区画は空いているので、90kWを期待できそうです。小さなPAではありますが、コンビニスタイルの売店が営業していたので、お土産のうなぎパイをGETすることもできました。

広報車に備え付けの「Mercedes me Charge」カードで認証。このカード、最初の1年間は月会費も充電料金も無料(詳しくは充電カードの記事をご覧ください)です。

この新電元製90kW器のスペックは最大「450V×200A=90kW」です。充電開始から10分ほど経過しても、しっかり最大電流である200Aが流れています。経過を観察していると、75%を超えて少し出力が落ち始め、30分間際には、87%で166Aになりました。今まで、リーフe+で数分間程度は200A流れるのを見たことはありますが、こんなにしっかり200A、そして高出力を維持してくれるのは小気味いいくらいです。

ちなみに、この写真でいうと「384V×201A=約77kW」しか出ていません。電圧が充電器最高出力の450Vより低いからですが、これは車両側バッテリーの総電圧(SOCが上がると電圧が上がっていきます)なので、充電器は全開といえます。

30分間で充電できたのは「38.1kWh」。SOCは87%まで回復しました。先ほどの平均電費「5.7km」で考えると「5.7km×38.1kWh=約217km」分の電力が充電できたことになります。「87%ー33%=54%」で、EQCのバッテリー容量66.5kWhの54%は約36kWhだから、少々算数の計算は合わないですが、なにはともあれ、大容量EVのチャデモ30分充電で、ここまで入るのは感激です。

急速充電2回目

午前4時。SOC37%で滋賀県の草津PAに到着。航続可能距離はまだ152kmもあるので、気持ち的にも余裕です。

東京ー大阪であれば、草津で充電しなくても走り切れます。

トイレが近い私ですが、なぜか今回のドライブではこの2回の急速充電以外に休憩はなし。約250kmと180km弱を一気に走るのは、正直ぎりぎりな感じです。EQAのシステムからも「休憩しませんか?」と薦められました。

草津PAでも90kW器ひとりじめ。さあ、しっかり出力を発揮してくれるでしょうか。

問題なく、最大出力の200Aが流れてくれました。

2回目も30分で38kWh充電できました。

SOCは91%、航続可能距離表示は365kmとなりました。1回目にしっかり充電できることが確認できて余裕をかまし、少々巡航速度を上げたので平均電費は5.4kmにやや低下。実家までは雨の中、全体として登りのルートにはなりますが、残す距離は200km程度なので余裕です。

到着&参考までに25kW器で急速充電してみました

12日午前6時30分、北近畿豊岡自動車道の八鹿氷ノ山ICを下りてすぐ、実家から10kmほどの場所(田舎の10kmは東京の「ひと駅」くらいの感覚。ここから実家まで信号機は数カ所しかありません)にある道の駅「ようか但馬蔵」に到着。出発したのが23時だったので、なんと、たったの7時間半ほどで着いてしまいました。これなら、エンジン車とさほど変わりはない、というか、むしろエンジン車でかっ飛んでいた頃よりも、ずいぶん楽に走り切れた印象でした。

道の駅到着時のSOCは35%。ここには25kW出力の急速充電器があります。参考のために、30分間充電してみました。

30分間の充電電力量は約10.9kWh。平均電費5.7kmで計算しても約62kmの走行分ということになります。もちろん、道の駅に急速充電器を設置してくれるのは電気自動車ユーザーとしてありがたいことなのですが、こうして実際の充電量を比べてみると、高出力器のありがたさがわかります。

実感できた「ポイント」は?

東京〜兵庫の約620kmを、充電&休憩2回で7時間半。66.5kWhのバッテリーと、最大100kWの急速充電性能を備えたEQAが、文句なしに素晴らしい、いわゆる「グランドツアラー」であることを実感できました。そんなこんなで、今回の往路で改めて実感した「ポイント」をいくつか挙げておきます。

高出力の急速充電はEVの重要な性能である。

まず、目安としてしっかり200kmオーバーの航続距離(バッテリー容量50kWh程度か)と最大100kWの急速充電性能があって、高出力の急速充電インフラがあれば、電気自動車のロングドライブはエンジン車に比して不便でも何でもないということです。

今までにも、テスラ車とテスラのスーパーチャージャー網を利用して感じていたことではありますが、スーパーチャージャーは一度高速道路を下りなければ使えません。でも、今回のドライブでは東京ー大阪間の「ちょうどいい塩梅」の場所に90kW器が新設されていたことで、すごく便利に走りきることができました。

ちなみに、モデル3をスーパーチャージャーでしっかり充電すると、今回の90kW器以上の電力を補給できるので、運転する人間のほうが持たなくて充電しない休憩が必要になります。EQAと90kW器で実現できた「充電1回200km分」は、私自身が無休憩で走る限界に近い、いい感じにチャレンジングなロングドライブを楽しむことができました。

高速道路SAPAへの高出力器複数台設置はやっぱり急務。

「いい塩梅」のPAに高出力器を新設してくれたのは、NEXCO中日本、ご担当者のグッドジョブ。とはいえ、今回、2カ所のPAで90kWの出力を満喫できたのは、たまたまもう一区画を利用するEVがいなかったからです。2台が同時に利用する場合、ざっくり言って45kWずつの出力を分け合うことになるので、30分の充電電力量もおおむね半分程度になってしまいます。

数年後、あるいは2030年を想定すると、大容量&高出力対応のEVの車種がますます増えてくるでしょう。省スペースのために「2本出し」にするのは一案だとは思いますが、理想をいうと、せめて「150kW器の2本出し」を増やしてほしいと思います。

また、電気自動車によるスムーズな長距離移動を実現するためにも、高出力器をもっと多くのSAPAに設置して休憩&充電場所の選択肢を増やすこと。また、各SAPAへの複数台設置が急務であることを、ますます実感できました。

高級車路線の輸入車EVは高出力に対応すべき!

日本国内で買えるEVの車種は次第に増えてきましたが、高級車が多い輸入車EVのほとんどで、チャデモ急速充電は最大50kW対応になっています。以前、ジャガー・ランドローバー・ジャパン(JLRJ)のご担当者に「輸入電気自動車はなぜチャデモ最大50kW対応が多いのか?」とインタビューしたこともあるように、最大の理由は「日本国内の急速充電器普及状況が、おおむね最大50kWとなっている」からということでした。

同じメルセデス・ベンツでも、実はEQAの上級車種ともいえるEQCは最大50kW対応です。欧州仕様ではCCS(コンボ)規格で100kWレベルに対応するポテンシャルがある車種がほとんどなので、本当に、心からもったいないと思います。

日本国内の高速道路SAPAへの高出力器複数台設置の普及はまだ「今後に期待」ではありますが、今回利用した、長篠設楽原PA下り線と、遠州森町PA上り線に90kW器が設置されたということだけでも、すでに日本に導入されている輸入高級EVは、すぐにでも100kW程度の高出力対応にするべきだと感じます。

というわけで、【往路編】はこのくらいにしておきます。数日後に予定している【復路編】では、私にとっての「思い切った決断」をレポートします。お楽しみに……。

【今までの「東京=兵庫」長距離実走レポート】

日産リーフ30kWhで長距離実走レポート:東京〜兵庫【往路編】(2019年5月1日)

日産リーフ30KWHで長距離実走レポート:兵庫〜東京【復路編】(2019年5月5日)

ジャガー I-PACEで長距離実走レポート:東京〜兵庫【往路編】(2019年8月10日)

ジャガー I-PACEで長距離実走レポート:東京〜兵庫【復路編】(2019年8月16日)

テスラ『モデル3』長距離実走レポート:東京=兵庫【充電1回でOKだった!編】(2020年8月16日)

テスラ『モデル3』長距離実走レポート:東京=兵庫【テスラにはもう追いつけない? 編】(2020年8月17日)

(取材・文/寄本 好則)