ヒョンデ『KONA』京都往復からの提言~復路は急速充電1回で余裕の完走でした

ヒョンデの電気自動車『KONA(コナ)Casual』で京都まで往復してみました。目的地充電のありがたさを再確認しつつ、復路は充電1回だけで余裕の完走。バッテリー容量46.8kWhで何も困ることはないと実感できました。超高出力崇拝への疑問とともにレポートします。

累積電費は6.7km/kWhに向上

10年ほど前、市販電気自動車で東京と京都を往復するのはちょっとしたアドベンチャーでした。三菱i-MiEVはもちろん、日産リーフやBMW i3でも、東名〜新東名〜新名神〜名神の高速道路では急速充電器があるSAPAでほぼ各駅停車。当時の新東名では駿河湾沼津、静岡、浜松という3カ所のSA(たしか清水PAにも)上下線に急速充電器があり、巡航速度を落としてもSAひとつ飛ばしは不可能であることを悟った私は、流れに乗った巡航速度を維持しながら3カ所のSAで10〜20分(次のSAに届くSOCまで)程度の急速充電を行う「新東名3ストップ作戦」なる秘技を得意としていました。

1月に私が新しくマイカーとして購入したヒョンデ『KONA Casual』は、バッテリー容量48.6kWhです。上位グレードの「Voyage」や「Lounge」は64.8kWhとさらに大容量ですが、目指すのは「300万円で300km」。約50kWhのCasualで十分でしょ、と考えたのは購入決断レポートで書いた通りです。

はたして、KONA Casualでの京都往復はどうだったのか。まずは、電費などの走行データを紹介します。

時間区間走行距離SOC航続距離表示表示電費

km/kWh

SOC推計

消費電力

kWh

SOC推計

電費

km/kWh

**往路**
出発時0912100%355km
東名

中井PA

102657.6km84%306km6.97.87.4
新東名

浜松SA

1229168.4km34%

71%

114km

256km

7.224.36.9
新名神

土山SA

1447140.5km28%90km6.920.17.0
名神

草津PA

152852.9km14%

46%

44km

154km

8.56.87.8
三井のリパーク

京都国立博物館前

164520.4km44%

100%

147km9.41.021.0
**復路**
出発時0740100%343km
新東名

静岡SA

1655273.6km33%127km8.432.68.4
駿河湾

沼津SA

174057.8km18%

63%

70km

251km

8.87.37.8
自宅ゴール1955112.2km36%140km8.013.18.6

トイレ休憩などで停車して、メーターの区間電費を確認したポイントもいくつか表に盛り込みました。

往路は2月19日、復路は2月20日。外気温は往路が14〜15℃、復路は15〜20℃と、2月にしては温暖な日の長距離ドライブでした。今回は、あまり充電を繰り返さずに走り切ることを重視して、ACCの設定は往路がおおむね100km/h、復路は90km/hを基本に(50km/hや80km/h制限区間は落としつつ)走行しました。

先だって新東名で120km/h巡航(制限速度区間)しながら豊橋まで走った時(関連記事)と比べても、格段に電費が向上。浜松SA(下り)到着時のSOCは前回6%(外気温が2〜10℃程度と低かった)だったのが、34%も残ったことに驚きました。出発前に6.1km/kWhだった累積電費は、東京帰着時には6.7km/kWhまで向上しました。

復路で時間が掛かっているのは、京都でエムケイの超急速充電器開所式を取材。途中、大津SAと岡崎SAで各小一時間のオンラインミーティングをこなしつつ走ったから。室内V2Lでパソコンに100V電源繋いで作業できる恩恵を活用できました。OM中はエアコンもつけっぱなしだったので、ノンストップで走るだけならもう少し電費が上がっていたはずです。

復路は1回の充電で余裕の完走

走行データでSOC(電池残量)と航続距離表示が2段になっているのは充電を行ったポイントで、上段が充電前、下段が充電後の値です。

おわかりのように、往路は浜松SAと草津PAで2回の充電。草津PAは充電せずとも京都に届きそうではあったのですが、新電元90kW器でどのくらい入るか試しておきたかったのと、コインパーキングの200Vコンセント(3kW)での目的地充電を予定していて、あまり空っぽにして翌朝までに満充電にならない(48kWhを充電するには16時間必要になる)のは嫌だったので、あえて2回目の急速充電をしておきました。

また、浜松到着時のSOCはまだ34%も残っていたので、複数口の90kW器がある長篠設楽原か刈谷まで走って充電すれば、往路も充電1回で完走できたはずですが、ランチ休憩したかったのと、前回との比較を重視して浜松での充電を選択しました。

復路は、スタート時から充電1回で完走を計画し、1回の急速充電だけで京都〜東京を余裕で完走することができました。充電データも表にしておきます。

充電場所

区間距離

外気温充電器

最大出力

充電時

最大出力

時刻

開始時

終了時

SOC

開始時

終了時

航続距離

開始時

終了時

増加分

SOC

航続距離

充電器表示

電力量

**往路**
新東名

浜松SA下り

226km

15℃90kW48kW12:35

13:05

34%

71%

114km

256km

37%

142km

18.8kWh
名神

草津PA下り

193.4km

14℃90kW54kW15:28

15:58

14%

46%

44km

154km

32%

110km

17.7kWh
三井のリパーク

京都国立博物館前

14℃3kW3kW16:50

7:35

※出庫時間

44%

100%

147km

343km

56%

196km

27kWh

※推計

**復路**
新東名

駿河湾沼津SA上り

18℃150kW52kW17:45

18:15

18%

63%

70km

251km

45%

181km

23.5kWh

ちなみに往路の草津PA。新電元の90kW2口器を選択し、1台だけのスタート直後は200A(54kW)流れて快調だったのですが、数分後にメルセデス・ベンツのEVが接続。100Aほどに出力が落ちてしまったので、30分間の充電電力量は17.7kWhだけという結果でした。

少し離れた売店の前からベンツが入ってくるが見えて、ニチコンの6口器がズラリと空いているのに「なぜそこに?」と思いつつ……。90kW器フル出力30分での充電量確認は、また次の機会に試してみます。

充電インフラは「必要十分」を満たしてほしい

いかがでしょう。このくらいの充電で東京=京都を往復できる「300万で300km」のEVに、私はとても満足しています。

とはいえ、日本ではまだまだ「航続距離が足りない」とか「もっと高出力な急速充電器を!」といった声が多いのも現状です。もちろん、大容量バッテリーを積んでいっぱい走れて、急速充電の速度が上がるのはいいことですが、「でかい」「速い」を追い求めるばかりでは大量生産大量廃棄で突き進んできた20世紀から進歩がありません。

ことに、EV用の充電インフラについて、普通の人の普通の使い方による「必要十分」を満たすためにはどんなことが大切なのか。私なりに感じたポイントをいくつか挙げておきます。

使いやすい場所に目的地充電設備の拡充を!

走行&充電データの表でわかるように、今回の往復で最も多く充電したのは、宿泊したホテルの近くにあった三井のリパーク京都国立博物館前に設置されていた200Vコンセント(出力3kW)でした。駐車料金は平日が入庫後24時間最大800円ポッキリで、充電はなんと無料です。

おかげで、翌朝は気持ちよく100%で再出発。EVのロングドライブにおいて、目的地充電の有無がいかに重要であるかを理解いただけるのではないでしょうか。

今回は駐車場のない安価な宿泊施設を予約して、エネチェンジのアプリで近くの充電設備を探しました。ホテルから歩いて数分(約350m)の場所にこの駐車場が見つかったのはラッキーでした。今後は、もちろん充電は有料でいいので、宿泊施設(もしくは近隣のコインパーキング)にはすべからくEV用充電設備がある(できれば複数基設置で)という状況になるのが理想です。

また、以前のマイカーだったリーフAZE0の普通充電は3kWが最大でしたが、KONAは6kWで充電できるので、目的地充電設備も最大6kW出ると素敵です。

さらなる高出力よりもSAPAの複数口設置拡大を!

今回の長距離ドライブで改めて実感できたのが、東京=京都間の高速道路SAPAで、最大出力90kW以上で複数口設置された充電スポットの選択肢が一気に増えてきたことです。挙げていくと長くなるので割愛しますが、いくつもの「90kW以上複数口設置」のSAPAをスルーしています。

自分が乗るEVのバッテリー容量が大きくなったのとともに、以前は「どこに行っても1口だけ」だったことを思うと、まさに時代の進展を実感します。

とはいえ、月曜日のお昼頃だった浜松SA(下り)では私のほかに2台のEVが充電していたり、草津PAでも90kW器で並んだベンツのほかにもう1台が入ってきたり、EV普及の進展とともにSAPAでの充電ニーズが高まっていることも実感しました。連休などの繁忙期には、8口あるスポットでさえ充電渋滞が多発するようになるのも、そんなに先の話ではないのかも知れません。

SNSなどでは、テスラスーパーチャージャーの250kWや、コンボ規格で増えている350kW器を引き合いに出し、日本のチャデモに対して「(150kWでは不足で)さらなる超高出力を!」といった意見が多いように感じます。

でも、これからEV普及が本格化していくほどに、バッテリー容量50kWh前後、あるいはそれ以下の大衆的EVの数が増えるはず。仮に10年後を見据え、4Cや5C(1C=1時間で満充電にできる出力)といった充電性能をもったバッテリーが広がるとしても、公共の充電インフラとしては150kWあれば当面はこと足ります。充電器の性能をフルに引き出して30分で60kWh充電できた場合、電費が5km/kWhとしても300km走行可能になるということなので、それで「必要十分ではないか」というのが、私個人の思いです。

このあたり、詳しく説明すると長くなるので、新電元の150kW器で高級EVが30分でどのくらい充電できるか検証した記事のリンクを貼っておきます。

【関連記事】

新電元150kW器で最新EV3車種の充電性能検証テスト~30分40kWh超えで十分でしょ?(2022年5月18日)

最大130kWとか150kWの充電性能を誇る高級EVも、150kW器30分で充電できるのは40〜50kWh弱程度であることがわかります。さらなる高出力がまったく不要と言っているわけではありません。たとえば、テスラSCの性能(V3で最大250kW)を追うのであれば、EVを発売する各メーカーが800Vシステムなどより高度な充電性能を備えたEVをラインナップした上で、公共充電インフラの出力アップについてもしっかりと意見やお金を出して進めていくことが不可欠だと考えているということです。

これ以上の高出力よりも重要なのは、複数口スポットがもっと拡大されること。あと、パワーシェアリングとかダイナミックコントロールとか、ただでさえユーザーにわかりにくい急速充電の仕組みを、さらに理解しにくくするのは止めてほしいという点です。

e-Mobility Powerには、複数口設置SAPA選択肢拡大への感謝を捧げつつ、もっと! を要望しておきたいと思います。

3月のはじめには、三重県の伊勢方面へ取材に行く予定があります。いい機会なので、今度はより大容量バッテリーを搭載したKONAのLoungeを借りて、同様の往復レポートをしてみたいと思っています。

私のKONA Casual

総走行距離 1763.1km

平均電費 6.7km/kWh

取材・文/寄本 好則

レポートありがとうございます。

現状では口数の増加が最優先だし、90kW以下でも足りるケースも多いのは同意です。

一方で長い目で見て今後の事も考えますと、より高出力に対する下記のような需要も考えられます。

・平均よりも休憩時間の少ないドライバー

・小型・中型のトラックやバス(例えばマイクロバス)

・積雪路や低温による電費悪化

・牽引してる車

・高級車(Taycan等)

・30kWh程度の搭載容量だけど充電レート5Cとか6Cとかで充電する小型車

こうした需要も見据えて整備を進める必要があるかと。

少なくともバスに関しては、既に国内メーカーに対して不利に働いているように思われます。(中国勢の3相交流直結の安価な充電器を自前で設置するしかないか、となる)

寄本様

konaのどのグレードにするか悩んでいたので試乗レポートは非常に助かります。私は九州住まいなのですが、通勤は基本JRなので運転は専ら土日祝のみ、時々登山や観光目的で遠出する時以外は県内で完結することが多く、自宅に普通充電器を設置予定なので、casualで十分かなと感じています。

記事後半の"大量生産大量廃棄で突き進んできた20世紀から進歩がありません"という部分に強く共感します。スペックばかり追い求めるのは重厚長大的発想と言いましょうか。

よほどハイスペックな車種でない限り超急速充電は生きしきれないのではと思いますし、バッテリーの寿命も短くなるのではという懸念があります。なので、急速充電のスペックアップより充電器や充電場所の拡充をもっと行っていれば欲しいと切に願います。

次回の記事も楽しみにしております。

櫻井さま、コメントありがとうございます。

はい。長い目の高出力、対応していくべき課題だと思います。

が、記事中に書いたように、現状、10年後程度までを見据えた公共充電インフラとしては、今、eMPが進めている「90kW+150kW」の複数口推進を歓迎したい、という意図です。

バスや高レート充電対応にしても、EV側がどう対応するかでもありますし。究極はJ3400(NACS)にしようよ、ってことでもあろうかと思いますが、それは、充電サービサーが決めることじゃないよねぇ、って感じです。

ちなみにバス。BYDも最新のJ7はチャデモに一本化したようですし、北九州のEVMJは自社製チャデモ2.0規格の急速充電器を用意していたり。このあたりも、結局はOEM次第。今まで、日本メーカーがあまりに何もしてこなかったことの蹉跌のように感じています。

2024年こそEVを購入する者 さま、コメントありがとうございます。

KONA Casual。航続距離含めて基本性能にはとても満足。バッテリー容量は、これで十分だと感じています。

上位グレードのLoungeと比較すると、後席シートヒーターやARナビ、電動テールゲート、ウインカーで車線変更してくれる高速道路の運転支援などはCasualではオプション設定もないので、そのあたりをどう判断するかでしょうが。

私は、ないものはない、で納得してます。

充電性能については、せめて70%くらいまでは安定して1〜1.5Cくらい流れてくれればなぁ、と夢見つつ。OTAの吉報を待ち望んでますけど。

あと、地方のSAPAへの高出力複数口設置も、合理的に進めて欲しいですね。

KONAでEVライフ、楽しみましょう!

寄本様

ありがとうございます。そういう趣旨なら分かります。

>何もしてこなかった

ですねぇ…。

個人的にはハイスペック急速充電器(800V, 1MVA)の開発及び高速道路上への設置を検討するべきだと思います(料金はプレミアムな単価で)。

現状では活用できる車はありませんが中国では次々と800V対応の車種が発表されています。

国内の車両メーカーが必要十分として150kW器に対応できる車にか作らなかった場合、海外での競争に勝てるとは思えません。

海外仕様だけ800V対応にするのは厳しいコスト競争で難しいでしょうし、量産メリットを出すなら国内仕様も800V対応としてそれを活かせる充電器を整備することは重要だと思います。

車が250, 350kW対応なのに150kWで十分でしょと決めつけて整備をしないのはよくないと思います。

尤も、個人的には50kWで30分制限なくを充電できる方が嬉しいと感じますので、

お急ぎ >350kW器 PA向け

標準 100〜150kW器 SA/PA向け

時間無制限 50kW器 SA向け

と分けてそれぞれで電力単価、充電終了後の放置ペナルティ単価を調整するべきかと思います。その上で350kWのユーザーがおらず、いらないねとなるならその時に需要子ある設備に置き換えればよいと思います。

しまねこ さま、コメントありがとうございます。

高電圧高出力対応や従量課金、放置対策、時間制限のあり方など、eMPでも視野に入れ、さまざまな動きをされているのは、11月に掲載した四ツ柳社長インタビュー記事でもお伝えした通りです。

https://blog.evsmart.net/charging-infrastructure/e-mobility-power-president-yotsuyanagi-interview-japan-ev-charging-future/

ご指摘のように、800Vシステムで充電性能の高いBEVを出さないと世界で闘えないのではと心配ですが、そんなこんなを含めて国内メーカーがどうするか。新車販売シェアが50%になるということは、バッテリー容量30〜50kWh程度の大衆的EVが増えるということでしょうし。充電インフラは市販されるEVの動向に合わせた整備を進めるのが合理的だと考えているところです。また、350kWhなど高級EV用の高性能インフラを広げるなら、該当するOEMが意見もお金もしっかり出すべき、と。

今、最優先で進めるべきは、SAPAへの90〜150kW複数口設置の拡大だと今回の長距離でも実感(さらに、東京=大阪間以外などはまだまだ脆弱ですし)しました。