トヨタ『bZ4X』東京ー青森長距離走行で実感した「疑問」について考えてみる

最新EV4台で東京ー大間崎を走った動画レポート。トヨタ『bZ4X』で走ったEVsmartチームのテスカスさんが実感した疑問について、トヨタからメールでいただきいた回答を紹介します。はたして「魅力的なEV」にユーザーが求めているのは何なのか。考えてみたいと思います。

確認しておきたかった4つの疑問点

12月14日の記事でご紹介したのが「最新電気自動車が大集合! みんなで大間のマグロを食べに行こう! チキチキ東京-青森間キャノンボール対決!」という、EV4台による長距離充電レースの動画レポートでした。

EVsmartチームのテスカスさんがトヨタ bZ4X、石井さんがヒョンデIONIQ 5で参加。テスカスさんとはかねてからテスラオーナー&ユーチューバー仲間であるEV Life Japanさんが日産アリア、僕テス(トシさん)がテスラモデルYで参加して、同時に千葉県浦安市のディズニーランドを出発。本州最北端の大間崎までの約800kmを一気に走り、到着順位を競うチャレンジでした。

「キャノンボール」なんて銘打つと、早く到着するのを競うだけの印象が強いですが、法定速度を守ってきちんと休憩を取るのがルール。そして、これは「充電レース」です。途中で行う急速充電の効率や車両側の充電性能が最も重要な勝負を分けるポイントになります。

結果はチャデモ充電器のパワーをフルに引き出す急速充電性能をもったIONIQ 5が1位となりました。ちなみに、八戸とか三沢あたりにテスラスーパーチャージャーが開設されたら、テスラ車が圧勝することは想像に難くありません。

**1位/ヒョンデ IONIQ 5(12時間23分/充電回数4回/充電時間150分)

2位/テスラ モデルY(12時間36分/充電回数3回/充電時間113分)

3位/日産 アリアB6(13時間43分/充電回数6回/充電時間178分)

4位/トヨタ bZ4X(14時間37分/充電回数6回/充電時間225分)**

1位のIONIQ 5と最下位となったbZ4Xの差は2時間14分(134分)で、充電時間の差が75分(回数も2回多い)もあるので、充電に多くの時間が掛かってしまったのがテスカスさんの大きな敗因になったことがわかります。

でも、これはテスカスさんの充電計画や方法が悪かったのではありません。充電回数が増えて時間が掛かってしまったのは、3回目(おかわり入れると4回目)の急速充電以降、bZ4Xの充電受入出力制限が発動し、充電器側の性能としては100〜125A(40〜50kW)の電気が流れるべきところ、ある程度のSOCに達すると50数A(20数kW)程度にまで制限されてしまったのが原因です。

さらに、bZ4Xはメーターなどで正確なSOC(%)表示をする機能がなく、あまりアテにならない航続可能距離表示だけを頼りに、深夜の下北半島で急速充電を繰り返し、へとへとに疲れ果てていく様子がレポート動画で生々しく報告されています。

bZ4Xはトヨタブランドで初めての市販BEVとして注目の車種であり、EVsmartブログ編集部としても気になるところ。そこで、テスカスさんが今回の長距離ドライブを敢行しつつ実感した「疑問点」をピックアップして、トヨタ自動車広報部に質問してみました。

【今回質問した4つの疑問点】

**●急速充電制限の発動条件がわからない。

●SOC表示がないのは、なぜ?

●充電中も出力などの情報がないのは、なぜ?

●FWDモデルだけど、電費が良くない。**

トヨタからの回答です

ご担当者にメールで質問を送って3日後(迅速に対応いただきありがとうございました!)、技術部門に確認もしていただいた上で、以下のような回答をいただきました。トヨタからの回答と、EVsmartブログ編集部としての見解を紹介します。

●急速充電制限の発動条件がわからない。

<回答>

お客様に安心して長くBEVをお使いいただき、また安全には万全を期すために制限を行っています。

急速充電の出力制限については、公式サイトの「BEV実用情報」で以下のような説明をさせていただいております。

▽外気温の条件による、急速充電の抑制

▽80%以上に充電する場合の充電量の抑制

ただし、お客様にはわかりにくい部分もあるかと存じます。そこは今後改善してまいります。

<EVsmartブログとしての見解>

「外気温が低温」と「80%以上の急速充電」が条件となっていますが、今回の出力制限はSOC30%程度(アナログ残量計の目分量ですけど)でも発動していました。また、どんな条件で、どの程度の出力(kW)、もしくは電流(A)に制限されるのかという情報がないと、ユーザーは充電に掛ける時間を予測することもできません。今後の「改善」に期待しています。

●SOC表示がないのは、なぜ?

<回答>

お客様にとって最も重要な情報は、航続可能距離と考えています。また電池は外気温により性能が変化するため、現状の電池の状態(SOC)が必ずしも航続可能距離とは紐づきません。この考え方に基づき、お客様が混乱しないために、航続距離のみの表示としております。

ただし、お客様からのご要望が大変多いため、今後、SOC表示の追加を検討しております。

<EVsmartブログとしての見解>

テスラ車以外のEVのメーターに表示される航続可能距離は、走行ルートの勾配や走り方で、頻繁に大きく変わります。EVユーザーの多く、少なくとも私自身は、メーターに表示される曖昧な後続可能距離はあまり重視することなく、SOCから到達できる距離を計算しながら走ることがほとんどです。

EVが表示してくれる航続可能距離が重要とするなら、せめて、テスラのような残量予想グラフなど、ルートの勾配まで勘案した正確な情報を提供する必要があると感じます。SOC表示は追加を検討中とのことなのでまずは一安心ですが。世界のトヨタとして、テスラの残量予想グラフに匹敵、もしくは凌駕するユーザーに優しい情報提供をお願いします。

●充電中も出力などの情報がないのは、なぜ?

<回答>

車両から離れた場所では、スマホアプリで確認できるようにしています。

車両にお戻りになられたときは、充電器表示での確認を想定していましたが、車内で待機される方に対する配慮が欠けていました。ご指摘ありがとうございます。

また、ドア開閉時、マイルームモード時にメーター上に、SOC、航続可能距離の表示の追加を今後検討しております。

<EVsmartブログとしての見解>

今回、EVsmartチームが乗ったbZ4Xは、トヨタのカーシェアサービス「TOYOTA SHARE」で借りたものでした。充電出力はEVユーザーにとってすごく重要な情報なので、カーシェア車両利用時にアプリをインストールしたスマホを一緒に貸し出してくれる(もしくは利用者のスマホでも情報を得られる手段を提供してくれるとか)といいのになと感じます。

ちなみに、テスカスさんに確認したところ、TOYOTA SHAREでbZ4Xを借りるためにインストールしたアプリでドアロックの解錠&施錠はできたものの、充電出力などは確認できなかったということでした。また、ドアロック&アンロックがこのアプリでしかできない(普通のキーなどは付属していない)のが「ちょっと面倒だった」という感想もありました。

●FWDモデルだけど、電費が良くない。

<回答>

基本的には各車で走行条件を極力そろえていただいての走行ではあったと思いますが、現状頂いている情報の範囲内では何とも言えない部分がございます。一般的には、加減速の強さ、車速(定常走行車速の高さ)、走行以外の電力消費(空調、オーディオ、外部電源供給)等により影響をうけます。特に空調に関しましては ECOモードのご使用、もしくは直接暖房(シートヒータ、ステアリングヒータ、輻射ヒータ)のご利用をお勧めしたいと思います。

<EVsmartブログとしての見解>

質問時、細かなデータは提示していませんでしたが、テスカスさんの動画内(上に結果一覧画像も)でも紹介しているように、電費としてはモデルY(6.5km/kWh)、IONIQ 5(5.6km/kWh)、アリア(5.1km/kWh)、bZ4X(4.8km/kWh)という結果でした。

今回のドライバー4人はみんなEVには乗り慣れており、今回の充電レースではとくに電費に配慮した運転をしていました。また、テスカスさんはほとんどエアコンは使用せず、シートヒーターやbZ4Xの特長的な装備である輻射ヒーターを積極的に活用していました。一方、モデルYやIONIQ 5は21℃設定で、アリアの設定温度は未確認ですが、ほかの3車種はずっとエアコンを使用しての結果ですから、もし、bZ4Xでもっとエアコンを使用していたら、さらに電費の差が大きくなったと思われます。

結果として、bZ4Xの電費性能にはまだまだ磨き上げる余地があるのではないかというのが率直な感想です。ここもまた、今後のトヨタに期待です。

開発ご担当者自身が最も厳しいEVユーザーになるべき

bZ4Xについて、結論としては「今後の改善に期待!」ということになりますが、トヨタの、いやトヨタに限らずこれからEVを開発して発売する自動車メーカーのみなさんには、ぜひ、ご自身でも日常的にEVを活用していただいて、ユーザーにとって魅力的なEVって何? ということに対して、うれしい答えを出していただけることをお願いしたいところです。まして、EV開発を直接担当される方は、ぜひマイカーをEVにして徹底的に活用し、自らが最も厳しいEVユーザーとなって開発を進めるべき(すでにこんなことは常識であって欲しいですが)ではないかと思います。

動画の中でテスカスさんは、私が質問としてピックアップしたポイント以外にも、EVユーザーとしてbZ4Xについて感じたこと(長所も短所も)に関していろいろと言及しています。テスカスさんの動画だけで約1時間20分、ほかの3名の動画を合わせると約4時間という超大作になってしまいますが、EVユーザーのリアルを疑似体験できる有意義な動画です。ことにトヨタでEV販売に関わるみなさまには、せめてテスカスさんの動画だけでも「しっかりと全部観る」ようお願いしておきたいと思います。

ひとつ、EV普及を応援するメディアとしてとても残念なのは、こうしたEVによる長距離ドライブの検証を行って、遭遇したトラブルや苦労をレポートすると、どうしても「EVはまだ使い物にならない」といったネガティブなコメントをいただいてしまうことです。

EVに慣れてしまえば、自分が乗るEVのバッテリー容量や電費性能、充電性能を理解してチャレンジするロングドライブは、急速充電のプランを考えることさえゲーム感覚で楽しいものです。70kWh以上の大容量バッテリーを搭載し、最大150kWの急速充電性能をアピールしているbZ4Xは、本来、1日で800kmくらいは楽しみながら走りきれるグランドツアラーであって欲しいと感じます。

出力制限は「長くBEVを使う」ためということなので、急速充電の発熱による劣化防止が主な理由だと思います。でも、独自のスーパーチャージャーで最大250kW級の超高出力急速充電が可能なテスラ車は、『25万7千キロ走っても、テスラのバッテリー劣化は10%以下』という記事などで紹介しているように、徹底したバッテリー温度マネジメントシステムや、ディスプレイを通したユーザーへのアドバイス機能などを備えていて、たとえば「数年で航続距離が短くなって使えない」といった例はほとんど聞いたことがありません(もちろん、テスラ車のバッテリーも長年&長距離乗ればそれなりに劣化はするし、SOHが低下した場合の保証もあります)。

最後に、テスカスさんの動画を改めて埋め込んでおきます。なんと、公開から12日で22万回(12月16日現在)も視聴されてます。やはり、bZ4Xへの注目度は抜群ですね。

取材・文/寄本 好則