【動画あり】EVの長距離走行ってどうなの? EV4台で充電レース!『bZ4X/アリア/モデルY/IONIQ 5』充電性能は大切です

ディズニーランド(浦安)から青森県大間崎まで約800kmをSUVのEV4台『トヨタbZ4X/日産 アリア/テスラ モデルY/ヒョンデ IONIQ 5』で走行。それぞれがルートや充電パターンを考えながら、大間崎までの到着時間を検証しました。

【動画あり】EVの長距離走行ってどうなの? EV4台で充電レース!『bZ4X/アリア/モデルY/IONIQ 5』充電性能は大切です

SUVの電気自動車4台で 東京→青森 充電レース

今回の「浦安→大間崎 キャノンボール」は肌寒さを感じ始めた11月中旬に実施しました。ルールとしては、ゴール地点を大間崎のマグロ一本釣り漁師モニュメント前として、法定速度で無理な運転をしない(ちゃんと休憩すること)。ルートや充電計画、暖房の使用などは各ドライバー判断で自由とします。

「キャノンボール」なんて銘打つと、早く到着するのを競うだけの印象が強いですが、EVの場合、少しニュアンスが違います。最も重要なのは「電気自動車で本州最北端の大間崎までのドライブを楽しむ」こと。超ロングドライブなので高性能EVの各車種でも途中で複数回の急速充電が必須となるため、東北方面へ走るルート上の急速充電インフラの現状を検証しつつ、「限られた充電スポットを上手に活用して走破するのは誰(どんな方法)か、どの車種(充電性能)かを、競技形式で確かめてみよう」という趣旨のチャレンジなのです。

参加したドライバー&ユーチューバーは4名とも3年以上は電気自動車に乗っておりEVでのロングドライブや急速充電の経験も豊富です。4車種、それぞれの視点でまとめた動画を一気に紹介しておきます。全部の動画を合わせると4時間以上の大長編スペクタクル……、ですが、電気自動車を上手に活用するために大切なヒントが満載なので、ぜひまったりとお楽しみください。

【トヨタbZ4X視点】
トヨタbZ4Xで東京→青森までレースしたらそれどころじゃなかった

【日産アリア視点】
【SUV対決】最新電気自動車を4台集めてみた。東京~青森間 キャノンボール対決!!

【テスラモデルY視点】
【充電レース】東京から青森まで一番早く着く電気自動車SUVはどれなのか!?

【ヒョンデIONIQ5視点】
ヒョンデIONIQ5に乗ってテスラを打ち負かす【反逆のテスラオーナー】

撮影の裏話〜EVロングドライブのヒント

動画の内容を詳細に説明していくと膨大になってしまうので、撮影の裏話とともに、EVでのロングドライブの参考ともなる「ポイント」を抜粋して紹介します。

ルートを東北方面へ設定した理由

ゴールを本州最北端の大間崎としたのは、たとえば東京-大阪間と比較して、チャデモ急速充電器整備状況の差を確認するためです。東北へのルートに当たる高速道路上には出力90kWの充電器がなく、郡山や仙台市街地の日産ディーラのみ。東京-大阪間は長篠設楽原PA(下り線)や遠州森町PA(上り線)、草津PAなどに90kWの充電器があり、この区間を一気に走るEVオーナーが立ち寄る充電器が定番化しています。

テスラのスーパーチャージャーは本州最北端が岩手県の盛岡SCで、青森県の本州最北端まで走るのはまだ不安。八戸あたりへの設置が期待されます。

結果として、仙台あたりまでは各車の到着時間に大きな差は生まれず、盛岡を超えるあたりから差が徐々に広がっていきました。テスラの盛岡スーパーチャージャーから大間崎までは約290km。盛岡で満充電にできるモデルYが有利なのは予見できましたが、1位に輝いたのはチャデモ充電器の性能をフルに引き出せるヒョンデ IONIQ 5でした。七戸北ICで高速を下りてからでも110km以上の距離があり、車中泊や復路のことも考えると一般道沿線でのチャデモ急速充電が必須となる大間崎をゴールに選定したのも、チャデモによる急速充電性能の違いを検証する狙いがありました。

日産アリアが選んだ本来のルートは常磐道

3位となった日産アリア。動画では外環→東北道で向かっていましたが、元々アリアのナビは常磐道で行くルートを選択していたそうです。でも、IONIQ 5とbZ4Xが先に常磐道へ流れたので、あえて東北道経由を選択。2手に分かれる形になりました。

最速ルートは仙台で90kWを使用?

bZ4Xとアリアが立ち寄った日産プリンス宮城販売 多賀城店 EV充電スタンドは最大出力90kWの急速充電器です。常磐道から向かうと、ちょうど仙台港北IC降りて数分で到着する場所にありました。常磐道ルートで、この90kW充電をするのが最速かもしれません。bZ4Xのテスカスさんは、理に適った選択をしてたんですね。

ただし、動画の中でも紹介しているように、このディーラーに設置されている新電元の90kW器は充電口2本出し(ダイナミックコントロールという仕組みで出力を分割する)なので2台充電になると90kWの恩恵はなくなります。

90kW器では、いつでもちゃんと90kWで充電したい。また、大容量バッテリーを搭載した高性能EVのロングドライブでは、高速道路SAPAに最低でも90kWの高出力急速充電器が必要だということが理解していただける結果だと思います。

日産アリアが渋滞にハマる

金曜日の夕方だったこともあり。90kW充電を狙って仙台で高速(東北自動車道)を降りた日産アリアは30〜40分ほど渋滞にハマっていたようです。やけに仙台滞在が長いことは位置情報共有で見ていました。

高速道路を下りてから急速充電器までの距離が長いという悪条件を選んでしまった痛恨の失敗例、ではあります。でもね、繰り返しになってくどいですけど、高速道路SAPAへの高出力器複数台設置を関係各所に強く要望しておきます。

日産アリアかテスラモデルYが1位だったかも

IONIQ 5(私)は高速道路は下りないと決めていました。もし常磐道を選択して、仙台で90kW充電するルートが計画通りに行けたら、1位は日産アリアだったかもしれません。また、序盤の高速道路選択での渋滞がなければモデルYが1位でした。

いずれにしても、高出力急速充電インフラの有無が、電気自動車の長距離ドライブ性能そのものであることを実感していただけるかと思います。

テスラ モデルYの充電性能

トシさんのモデルYが搭載しているのはLFPバッテリーで、充電が95%の時でも40kWくらいの出力が出ていました。また、テスラスーパーチャージャーを利用すれば最大250kWレベルの超高出力充電が可能であり、今回の動画でもアダプターを使ったチャデモ50kW器(最大125A)でも、ほぼフル出力の121Aで充電できていたことが紹介されています。

LFP(リン酸鉄バッテリー)は常時100%運用が推奨されるなど、いわゆる三元系のNMCやNCAバッテリーより長寿命であるともされています。一点、LFPだからなのか、トシさんは「テスラナビでの残量予測と実際の残量の乖離が大きいように感じる」と言っていました。

EVsmartブログ編集部がモデルYで新潟遠征した際のバッテリー残量予想グラフの表示。

実は、このテスラの「残量予測」が優れモノ。ナビでゴールを設定すると、高低差まで勘案した残量予測をわかりやすいグラフで表示してくれます。ルートの高低差情報はどこかに存在しているはず(すでに終了してますが、Yahoo! のβ版サービスがありました)なので、日産をはじめ、ほかのEVメーカーがなぜこの機能を提供してくれないのか、謎です。

トヨタbZ4Xの充電ポート開けっ放し

充電後に急速充電ポートを開けっ放しで出発しそうになったとのこと。普通充電ポートは警告が鳴り、急速充電ポートは警告が鳴らなかったそうです。説明書には急速&普通に開閉センサー有りとなっています。

筆者が把握している範囲ですが、各車の充電ポート警告を整理しておきます。
●モデルY=自動で開閉。閉め忘れはない。
●アリア=警告なし。閉め忘れ走行経験有り。
●IONIQ 5=警告なし。内側ゴム蓋を出したまま走行経験有り。

各車のエアコン(暖房)ON/OFF状況

●bZ4X=ほぼOFF。寒かったとテスカスさん。
●アリア=ほぼON。
●モデルY=ずっとON。21℃に設定。
●IONIQ 5=ずっとON。21℃に設定。

バッテリ残量を10%以下にしない

筆者の決め事として普段の運用や長距離の経路・目的地充電までの間に「10%を下回らないように到着」することを目指してます。今回、モデルYとアリアでは1桁%を出していましたが、「電欠ギリギリがすごいこと」といった風潮が広まるのはよろしくないというのが個人的な感想です。電池の種類がNMCやNCA搭載車は10%〜80%の間、LFP搭載車は10%~100%の間で運用するのが良いとされています。

充電計画について

動画内では充電計画なんて立ててないじゃないか! といった雰囲気ですが、各々裏ではがっちり調べており、充電中にも次どうしようかと策を練っていました。充電計画をユーザーに強いるのは、ことに急速充電インフラがまだまだ発展途上であることの証拠だと思います。ちなみに、自分で使ってみるとわかりますが、テスラの経路検索がダントツで使いやすいです。

全員の動画を見た後のテスカス氏が一言

「到着時の皆さん元気過ぎる。僕は本当に満身創痍でスカスカになりました。急速充電の出力制限が発動してからは、ずっと心細かったですよ。精神的負担の差も大きいですね……」

最終結果まとめ

EVsmartではヒョンデIONIQ 5とトヨタbZ4Xの2台を借りました。向かうルートは同じ常磐道だったにもかかわらず、到着時間の差は2時間14分にもなりました。これは【車側の充電性能差】です。

以前、3台のテスラモデル3で「テスラスーパーチャージャー vs CHAdeMO」の【充電器の性能差】を比較しました。今回は同じCHAdeMOを使用しての【車側の充電性能差】比較になります。

筆者は1位で到着したヒョンデIONIQ 5に乗りました。IONIQ 5では計4か所の50kWチャデモ充電で終始48〜49kW充電することができており、帰路に90kWチャデモを試しても81kW前後で充電できていたので出力制限知らずでした。むしろ車両側が本来備えている800Vシステムを生かし切れていないのが現状です。日本でも早く、350 kW DC chargerを見てみたいものです。

帰路の仙台90kW充電器でIONIQ5。80kW前後で充電。

一方、トヨタbZ4Xでは計6か所で充電。50kWチャデモ充電で出力は43kW前後。出力制限後は充電残量(40%-50%-60%とか)に応じて段階的に充電速度は落ちていき、20kW以下にまで下がりました。

また、bZ4X動画を見た方はお気づきかもしれませんが、充電中にもkWが車両ディスプレイ上に表示されません。充電残量の%も表示されません。充電器画面の電圧(V)と電流(A)を見て(表示されない急速充電器機種もあります)頭の中で計算しないと充電速度がまったくわからないのです。

電費を比較しても、ずっと暖房ONであったIONIQ 5(5.6km/kWh=178Wh/km)とほとんど暖房OFFだったbZ4X(4.8km/kWh=208Wh/km)の差は歴然。暖房つけるとさらに電費は悪くなってしまいます 。

出発前。「この車いいですよ」とご機嫌に話すテスカスさん。

実際にbZ4Xで長距離走行して実感した疑問点

トヨタでは、おそらく今回のような「一気に800km!」なんていう常識外れの長距離利用を想定していないのかも知れません。また、急速充電時に出力制限をかけるのもバッテリー保護のためと理解できます。

とはいえ、今回の検証で実感した、急速充電制限の発動条件がわからない、SOC(%)表示がない、充電中の出力情報がわからないといった疑問は、購入を検討する方にとってはとても重要なポイントとなるはずです。

テスカス氏は「いいクルマだと思ったけど、EVとしては……」と最終的に総評していました。EVsmartブログ編集部としては、テスカスさんが実感した疑問に答えるよう引き続き取材を進めていきますので、続報をお待ちください。

文/石井光春 動画/テスカス(EVsmart)、EV Life Japan、僕テス(トシさん)

この記事のコメント(新着順)8件

  1. 動画も拝見しましたが、少しモヤモヤ感が残りました。
    何故皆さん高速道路で時速100km/hで走ろうとするのでしょうか?
    大変残念ながら120km/hで走って遠回りしてもその方が早いとかの動画音声もありました。案の定充電回数が多くて論外でしたね。120km/hで走ってその後自宅充電するなら分かりますが。
    充電時間も含めての競争なのですから、電費を稼げる速度に落として充電回数を減らしてトータルでの所要時間を短縮するという知的な競争が見たかったです。
    クルマによって電費と所要時間の良い塩梅が異なると思います。
    ある車両は車速を上げても電費が落ちにくいから100km/h で走るとか、90km/hに抑えた方が結果的に電費良く走れるので充回回数が少なく済むので早いとか色々あると思うのですが。

  2. 3年前のコロナによって車の長距離移動が少なくなったので、マンション住まいですがクラウンハイブリッドからこのブログに煽られて3のパフォーマンスを昨年5月購入。コロナになってから数日放置のちょい乗り中心でクラウンの場合給油は半年5,000kmで僅か7回。テスラに替えたら同じ条件で乗ると電費は180w/kmチャデモ中心だとイラつく位充電時間が長く高いカード加入(orゲスト充電))が走行距離にして割高。アップデートやプレコン使う電量は走行距離に反映されず。2週に1回は充電に行かないと表示の残量の7掛け以下で長距離には不安でしょうがありませんね。最近は悪貨が良貨を駆逐するという格言の通り。これが生活習慣の一つとして慣れました。馬力が前の車の2.5倍くらいあり設計も走行性能も斬新で高性能車の価格破壊とは思いますが、自宅充電できない人がこの車を買うとちょい乗りの場合、ランニングコストは欧州ガソリン車とそんなに変わりませんね。車には満足していますが、刷り込まれた先入観と違ってコメントしました。塗装の質も30年くらい前の車並みで小さな虫(テントウムシ)が高速でバンパー当たっただけで陥没していたのはビックリしました。

  3. 充電スポットも含めた面白い検証でした。
    トヨタは全然ダメだな、買うならヒョンデかな。って思ってたけど最近のIONIQ5の事故を見るとトヨタの安全制限も必要なのかなと〜とも思ってます。

  4. この検証動画について、twitterで次のEVで改善してもらうべくダメなところはダメと声を上げるべきと呟いたら、案の定信者が絡んで来たのですが…

    ●ナビで行先を設定してもどれくらいのバッテリー残量%で到着出来るかの予測が表示されなかったり、急速充電時の出力が表示されないなど、EVに最適化されてないインフォテイメントを改善すべき
    →【信者】製品はメーカーに縛られるもので、人が製品に合わせるべきだし、ユーザーが多くいる中での最適解は出てこない。

    ●他社にはない1日2回の急速充電制限、それも発動条件が明確化されてないため予測不能で、EVに乗り慣れたユーザーでも電欠の危機に陥る現状を初心者でも容易に充電計画を立てられるようにすべき
    →【信者】制限は安全マージンで、他所がやっていないというのは否定の常套句で、慣れれば予測できるので別に構わないはず。

    ●発売開始からリコールを経ても今だにOTAアップデートしていない対応とスピード感はいかがなものか?
    →【信者】アップデートはマストじゃないでしょう。

    こんな感じでした。
    我慢して乗るのが当たり前になってる。
    技術云々の前に、ユーザーフレンドリーを前提とした“ものづくり”をしてほしいって感じたのが正直なところです。

  5. >>以前、3台のテスラモデル3で「テスラスーパーチャージャー vs CHAdeMO」の【充電器の性能差】を比較しました。

    上記のリンクは大黒の6口充電器の記事に飛びますがリンク先あってますか?

  6. EVはやはり充電器ありきですね!昨今のEVの進化に対して、国内の充電インフラがついていっていないです。やはり高速道路には90〜150kWクラスの急速充電器を複数設置して欲しいです。それとEV普及のために高速道路料金制度も見直して欲しいです。現状では、高額な大容量バッテリーを搭載したEVを購入して長距離高速走行するメリットは全く無いです。このままではおそらく日本では軽EV以外は普及しないと思います。しかし欧米先進国では、あと10年でガソリン及びハイブリッド車が禁止されます。国としてきちんとしたEV政策を持たないと、いずれ日本の自動車産業は国際競争力を失い衰退すると思います。世界最大の自動車メーカーであるトヨタが作ったbZ4XのEVとしての実力のなさが示す通りです。

    1. そもそもの話ですけどEV化ってCO2削減や、現代の人類が未来の資源の前借り状態なのでEVにしましょうって事ですし急速充電器を普及させるのも如何なものでしょうか?
      やるなら車体の軽量化や効率を上げて電費を引き上げるべきで急速充電増やして大量消費をしていたらEV化の意味ないですよね。
      異端なんでしようけど私はEVの充電時間はエネルギーを浪費しすぎた事への罪滅ぼしと思ってるので充電で出かけられない時はそういうもんだと思ってEVと付き合ってます。

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この記事の著者


					石井 光春

石井 光春

10年落ちドイツ車を所有しつつレンタカーで様々な車を楽しんでいました。 初期日産リーフに乗ってから電気自動車に興味を持ち、AnycaでテスラモデルSP100Dを借りてテスラ購入へ。過走行気味な2台(モデルS &モデル3)の点検様子などもお伝えできればと思います。 続々と発売される新しい電気自動車に乗ってみたい今日この頃ですが、欲しい車はAudi TTRSです。

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