10分単位で課金される『ZESP3』で大容量電気自動車の急速充電を行う際、JFE『RAPIDAS-R』で20分をわずかに過ぎて自動停止する事象について、日産自動車のご担当部署に確認しました。また、そもそもZESP3に移行した意義や10分単位課金の目的についてお話しを伺うことができました。
途中停止はユーザーが自分で気をつけましょう
JFEの蓄電池内蔵型チャデモ認定機『RAPIDAS-R』という急速充電を行う際、大容量電気自動車では20分をわずかに過ぎて自動停止する事象について、以前の記事でお伝えしました。私が体験し、検証した事例としては、テスラ モデル3(75kWh)では1回目が「21分」、2回目は「22分」で自動停止。後日、日産リーフe+(62kWh)で軽井沢まで行って検証した際には23分ほどで2回連続して自動停止したのです。
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現在、NCS(日本充電サービス)加盟のチャデモ急速充電器は、時間単位で課金されます。NCSカードをはじめ、ほとんどのメーカーが発行する充電カードでは1分単位の課金なのでとくに問題はありません。ところが、2019年12月に日産が導入した『ZESP3(ゼロ・エミッションサポートプログラム3)』の課金制度は10分単位。私が体験したケースのように21分で自動停止した場合、20分を過ぎた1分間に対して10分1回分の料金が発生してしまうことになります。
損した気分(というか、実際に損するわけですが)にならぬよう、●ZESP3カードを使い ●大容量電池搭載の電気自動車で ●JFE『RAPIDAS-R』 で急速充電を行う際は、20分を少しだけ過ぎて自動停止しないよう、19分過ぎを目安に手動で停止するのがオススメ、というのが今までに紹介した記事の主旨でした。
こうした事象については、充電器を発売するJFEテクノスのご担当者にお話しを伺い、1本目の記事でご紹介しています。また、軽井沢検証記事の際には、「バッテリー容量が大きい車両の場合、30分経たずに充電が終了する場合があります」という真新しい注意書きが充電器本体に掲出されていることを確認しました。
とはいえ、ZESP3は日産の制度です。また、10分単位の課金についても、公式には「10分を1秒でも過ぎたら次の1回分課金」となっていますが、実際には「10分59秒まで10分1回分でOKだった」というユーザーの報告があったりして、ほんとのところどうなのか、今ひとつはっきりしない点があります。
そこで、日産自動車のご担当部署に取材をオファー。複数のご担当者に対するリモートインタビューを行うことができました。また、せっかくの機会なので、今回の途中停止の件だけでなく、そもそもなぜZESP3? といったことについてもストレートに伺いました。以下、複数の方のお答えの場合は適宜まとめつつ、質問と回答をご紹介していきます。
JFE『RAPIDAS-R』の自動停止について
●自動で途中停止が起こることはご存じでしたか?
把握はしていませんでした。
●日産として確認などは行っていますか?
充電器は大きく2つの機器で構成されています。1つは充電器本体、もう一つは充電カードの認証、充電時間の計算やシステム連携を行う課金機です。ZESP3開発の段階で、各充電ネットワークベンダーの課金機で正しく充電時間が連携されて、料金計算されるかの検証は行いました。
一方で、JFE様製充電器のような蓄電池が搭載された充電器において、蓄電池のバッテリーがゼロになると、30分以内であっても自動停止する充電器があることは、弊社として把握できておりませんでした。NCS経由でJFE様へ本事象の事実確認も行いまして、暫定的な対応策として、充電器本体に注意書きの紙を貼っていただきました。また、その他にも同様の事象が発生する充電器がないかについても、現在検証を進めているところです。
電気自動車や充電器の技術は日進月歩ですから、新しい組み合わせは今後ますます増えていくでしょう。メーカーとしては多くの車種や充電器を素早く市場に投入し、都度新たな仕様に対応していくことが必要であると考えています。また、そのためにもユーザーのみなさんのご理解とご協力をいただけると心強いです。
●検証充電では、21分などで途中停止。課金は10分3回分ですよね?
はい、その通りです。
●10分59秒まで10分1回分課金という報告もありますが?
制度としては10分を1秒でも過ぎたら1回分の課金となることで間違いありません。
●充電器や認証システムによって違うことはありますか?
個別の詳細は未確認です。充電時間の情報は「充電器本体→認証器のベンダー→NCS(日本充電サービス)→日産」という経路でもたらされます。ZESP3でもその情報に基づいて料金を計算しています。
(インタビューここまで)
結論として、ZESP3で大容量電気自動車をJFE『RAPIDAS-R』で急速充電する場合、20分をわずかに過ぎて自動停止することを避けるためには、ひとまず「ユーザー自身が気をつける」のが最善、というか唯一の対処法ということです。該当するみなさん、お気を付けください。
なぜ、ZESP3を導入したのか?
さて、ここからはZESP3という制度そのものについて質問します。ちなみに、私自身は日産リーフAZE0(30kWh)を所有していますが、購入したのが2018年12月で、今でも月額2000円で急速充電は使い放題の「ZESP2」会員。おおむね、あと2年間はZESP2の期間が残っています。さらに中古車のキャンペーンで月額会費が実質4年間無料の恩恵にもあずかっています。
とはいえ、個人的な思いとしてはそもそも「旅ホーダイ」をアピールするZESP2の仕組みには疑問を抱いていました。細かなエモーションを説明すると長くなるので割愛しますが、サブスクとはいえ、無料で急速充電できるのは決して気持ちいいことではないと感じています。という私自身の状況やスタンスも正直にお話しした上で、ZESP3について気になっていたことを伺いました。
●旅ホーダイ(ZESP2)からZESP3に移行した理由は?
新型リーフ、そしてe+が登場し、EV普及が進んできました。また、それに伴い充電渋滞が発生してきました。電気自動車の利便性を最も有効に発揮できるのは自宅充電を上手に活用することです。また、経路充電の利便性を高めるために急速充電器のインフラネットワークも重要です。ところが、サブスクリプション(月額定額)方式で急速充電器を使えることは、電気自動車の魅力の一つである自宅充電ではなく、外での充電を促す結果となってしまいました。EVの普及が進み、お客さまのカーライフも多様化してきたため、複数の料金メニューの中から個々のお客さまのご利用方法に沿って最適なプランを選択いただけるZESP3の導入を決定しました。
●料金決定の根拠などをご教示ください。
ZESP3を導入したのは、急速充電を利用するユーザー一人ひとりのご利用状況に応じて、料金をお支払いいただく仕組みをつくるためです。実はZESP2のご契約者の方の中でも、月に一回も充電していない(外部の急速充電器などを使用していない)お客さまも一定数いらっしゃいます。そのようなお客様向けも含めて、月間の走行距離や急速充電利用回数に応じて、お客さま自身でご選択していただけるプランを複数ご用意しました。
●日産は充電インフラ整備に前向きですよね?
継続的な電気自動車ビジネスを行っていくのであれば、充電インフラへの投資を行うことは不可欠なことだと思っています。EV市場を健全化させるためにも、お客さま一人ひとりのご利用に応じて、平等に料金をお支払いいただくZESP3の導入を決定しました。
●外で充電した電気を家庭で使う人もいるとか?
そのようなケースもあります。V2Hや太陽光発電が普及して、電気自動車を自宅で充電することのメリットが高まっています。ところが、サブスクで電気を配るのは、再生可能エネルギーの自家消費促進の流れにも逆行することになります。ZESP3への進化は、EVという商品の進化でもあると考えています。
●課金を10分単位とした理由は?
最大の理由は、急速充電を20分以内で切り上げていただきやすくするためです。20分を過ぎると、おおむね充電器の出力は低下します。課金額は10分1回単位で同じですから、20分、または10分で切り上げるように行動変容を促すことができれば、充電渋滞の緩和にも有効だと考えています。
●シンプルプランはゲスト認証と同料金。月額500円のメリットは?
公共の充電器を利用される全てのお客さまに広く平等にコストをご負担いただくために、基本料を設定させていただきました。また、使う都度の面倒な認証手続きを省けるのがメリットでございます。
●他社の充電カードの仕組みや料金への評価は?
具体的な事例への評価は差し控えます。ただ、たとえば月額料金を低く抑えるとそのコストが車両の価格に含まれることになります。つまり、急速充電を利用しないユーザーにもコストが転嫁されてしまいます。
前述のように、ZESP3は「利用者に適切な対価をご負担いただく」という考え方であり、EVの進化の過程であると捉えています。ご批判の声が少なくないことは承知していますが、これからますます電気自動車を普及させていくためにも、ZESP3の真意と意義をより多くの方にご理解いただけるよう、真摯にお伝えしていくことが私たちの務めだと思っています。
(インタビューここまで)
ZESP3のプラン詳細については、日産のウェブサイトをご参照いただくとして。私の場合は自宅が戸建てでガレージに200Vコンセントも設置しているので、日常的にはほとんど自宅充電。月に数回、ゴルフや釣り、取材などで遠出する時に急速充電するだけなので、もしZESP3に加入するなら、月額4000円(3年定期契約で月額2500円)で10分10回分の急速充電が含まれている「プレミアム10」を選ぶでしょう。ZESP2の月額2000円より500円高くなりますが、納得できる範疇です。逆に、ZESP2では有料(1.5円/分)だった普通充電が無料になるのは、ホテル宿泊時などにはむしろうれしいサービスとも思えます。
ZESP3導入が発表された際の速報記事では「もっとシンプルでいいのに」と評しましたが、今回のインタビューのなかで、「プレミアム10」「プレミアム20」「プレミアム40」という段階的なプラン設定が、月間の走行距離や急速充電利用回数によって合理的に「適切な負担」がなされるよう考え抜かれていることもわかりました。
ZESP3 プラン別月間走行距離と料金想定グラフ
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●【速報】日産リーフ『旅ホーダイ』終了~「ZESP3」への改定を正式にアナウンス(2019年12月3日)
集合住宅でガレージに充電設備がなくても大丈夫! というセールストークを信じてリーフを購入したユーザーさんが「騙された!」と感じる気持ちはある程度理解できます。でも、仕組みの変容が「EVの進化」であるという言葉にも共感します。今まで2000円で急速充電使い放題だったのがそもそも持続可能な仕組みではないとするなら、たとえば月額4500円(3年定期契約)で10分20回分の急速充電と普通充電が無料のZESP3「プレミアム20」が、ユーザーの利便を無視した法外な料金設定だとは感じないのが正直な気持ちです。
ともあれ、NCSからe-Mobility Power(イーモビリティパワー)への事業承継も道半ば、日本の電気自動車や充電インフラ事情はまだ進化の過渡期にあります。新車販売台数の1%にも満たない日本の電気自動車ユーザーとして、関係するメーカーや企業とともに、一緒に正直な思いを伝え合い、よりよい未来を切り開いていきたい! と思っています。
(取材・文/寄本 好則)



