EVの回生ブレーキで電力を回収するコツは?【日産サクラ】富士スバルラインで体感実走

電気自動車の大きな特長が、下り坂の「回生ブレーキ」によってバッテリーの電力が回復する、つまり充電できること。標高2305mの富士山五合目からの下りで、日産サクラがどのくらい充電できるのか。EVsmartブログ執筆陣の中尾真二氏が、マイカーのサクラで体感しました。

富士山五合目から麓までの走行でSOCは12%回復

EVの特長のひとつは下り坂を走ると電力が回復することだ。上り坂ではより大きなエネルギーが必要だが、下り坂では小さいエネルギーで走れるだけでなく、回生ブレーキによって充電されて、条件次第ではバッテリー残量が回復する。下り坂で運動エネルギーが得られるのは物理法則なので、パワートレインによる違いはないが、内燃機関車では燃料が下り坂で増えることは決してない。

もちろん坂の上に登るため(位置エネルギーを確保するため)、平地を走るより多くのエネルギーは必要だ。これはこれで、移動しながら目に見えてメーターや数値が変動するのを確認できるのがEVならではの体験でもある。

では、実際にどれくらい増えるのだろうか。所有するサクラで試してみることにした。

これまでも、サクラで筑波山や箱根峠、白馬EVラリーでは黒菱林道など白馬方面の山道など、激しいアップダウンのドライブは何度かあった。しかし、ちゃんと電費や回生充電能力を調べたことがなかった。そこで、あらためて実験するなら、EVsmartでも以前に検証したことがある(関連記事)富士スバルラインで確かめることにした。

結果の要点だけ先にまとめると、富士スバルラインの五合目から麓まで約29.7kmの下りでおよそSOCを12%分(12ポイント)増やすことができた。サクラのバッテリー容量を20kWhとするとおよそ2.4kWh分を充電することができた。サクラの通年電費が7~8km/kWhとすると18kmから20km分の航続距離を稼げたことになる。

前出の過去記事によると、寄本編集長の30kWhリーフがSOCで15%増加したとなっている。セグ欠けで総量が25kWh程度とのことで、充電できた電力は3.8kWhだったと推計している。筆者のサクラは、購入2年で9000kmほどの走行でインパネのマルチファンクションディスプレイの表示ではセグ欠けはない状態。他にも計測地点など実験の条件は同一ではない。単純な比較はできないが、その前提で結果だけみると、筆者のサクラは、回生電力ではリーフに及ばなかった。

なお、過去記事で同時に実験したモデルX(100kWh)はSOCで6%、電力量で5.4kWhの回生充電を記録している。

リーフとサクラの充電量の差は、おそらくモーター出力の違いが最大の要因と思われる。どちらもPM同期モーターを採用しているが、リーフはEM61という出力80kWというスペックを持つ。サクラはMM48という出力47kWのモーターを採用している。サクラももう少し出力が大きいモーターならもっと回生ブレーキによる下り坂充電ができただろう。

**【筆者追記】**コメントにて、リーフとサクラの回生能力の差はモーター出力ではなく重量差という指摘をいただいております。ご指摘どおり、位置エネルギーは質量と高さを係数とするもので、よほどモーター出力の違いや性能差がないかぎり影響はないと考えられます。拙稿への適切なご指摘に感謝いたします。誤認の経緯を残すため本文は訂正せずこの追記にて対応させていただきます。(2024年9月4日)

サクラの富士スバルライン走破で得られた知見

実験の結果は、車格相応の回生性能を確認できたといっていいだろう。富士スバルラインを約30km下って2.4kWhのエネルギーが回収できた。大きな数字とはいえないかもしれないが、サクラの電費で20km走行分が追加されたことは大きい。状況によっては大きな違いとなる。

たとえば、今回、川崎市の自宅から富士山五合目を日帰りで往復したわけだ。富士山周辺ではエアコンをオフにしていたとはいえ、自宅からの標高差はおよそ2000m。走行距離は278.5km(Nissan Connectアプリの走行履歴)を急速充電2回、区間電費は10km/kWh以上を記録した。この電費は旅行など長距離移動をしないとなかなか出ない数字だ。

とりわけバッテリー容量の小さいサクラでも、高低差が1500mほどもあり、距離にして60km近い富士スバルラインの往復で電欠の心配もなくストレスフリーで走り切ったのは大きい。五合目駐車場でSOC12%となり、メーターには航続可能距離さえ表示しなくなった。下りも最寄りの急速充電器までは30km以上あるので電欠の心配もしたが、考えてみれば、SOCが増えなくても減らなければ何キロだろうと走ることはできる。

結果論だが、事前にコースや充電計画などとくに立てることなく、必要になったら充電スポットを探すという運用で自宅に戻ることができた。また、上り勾配が続く場合の電費は3km/kWhという目安を得ることができた。約30kmの下り坂でSOCが12%分増えたということは、アクセルオフで2.5kmほど下るごとにSOCが1ポイント(1%分の充電)増える計算だ。単純計算で万能ではないが、これも目安になる。

編集部注※富士スバルラインの平均勾配は5%、最大8%とされており、比較的なだらかな山岳路です。

下り坂でSOCを増やすドライビングテクニック

今回の実験では、下り坂でどれくらいSOCを回復できるかに注力したので、全行程でエコランを意識した運転になっていた。幸い、当日の天候は曇りのため、富士山周辺では20度前後だったので富士スバルラインではエアコンをオフで走行することができた。登り下りでの運転方法については、事前に寄本編集長からコツを伝授されていた。それを踏まえて、回生エネルギーを生かす運転方法やコツを参考情報としてまとめたい。

●できるだけバッテリーから放電しない。

EVにはたいていバッテリーの充放電を示すインジケーターがついている。サクラの場合、タコメーター式とバーグラフ式の2種類の表示が選べる。どちらも、バッテリーが放電している(モーターはバッテリーの電力を使って動いている)状態はオレンジ色の目盛りになる。アクセルオフで回生ブレーキが働いている状態で、バッテリーに充電されると青色の目盛りになる。停止時や充放電のどちらもしていない場合はメーターの針が0または中立の位置で静止する。

下り坂で回生電力を生かすには、アクセル操作のみでメーターがオレンジ色にならないように調整する。フットブレーキでも回生電力は発生するが、スピードが落ちるので速度回復にアクセルを踏む必要がでてしまう。流れに乗るには必要な操作だが、可能な限りブレーキは踏まない。ただサクラ(や一部のEV)にはeペダルモードがある。今回の実験では、スバルラインの下りでフットブレーキを踏んだのはおそらく数回だ。前車に追いつそうになったら、アクセル操作でスピードコントロールができる。なお、前車(観光バス)に追いついたということは、流れを乱すような低速走行をしていないことを意味する。

●サクラの場合e-Pedal「ON」、セレクターは「D」がおすすめ

具体的には、アクセルペダルには常に足を乗せている状態。完全に足を離してしまうと、勾配がきついと加速してカーブでフットブレーキによる減速が必要になる。勾配が緩いと速度が落ちてくるので、アクセルオンが必要になる。

インジケーターがオレンジにならない程度の力加減でアクセルに足を乗せる。この状態で青ならそのままをキープ。速度が上がってきたらアクセルを離すかフットブレーキで調整する。すると回生ブレーキが働きインジケーターは青くなる。メーターの針が0(充放電ゼロ)で続くようなら、軽くアクセルを開けてすぐに戻す。これを繰り返して青の時間・距離をかせぐ。

サクラの場合、ドライブモードのセレクターは「D」がいいだろう。「B」は回生ブレーキが強くなり瞬間の発電量は増えるが、速度がすぐに落ちるのでアクセル操作が増えてしまう。

このような運転を心がければ、下り坂の回生エネルギーを有効に回収することができるはずだ。各自のEV運転の参考にしてほしい。

ただし、あくまで安全運転と流れに乗った走行が最優先される。今回はマイカー規制のある道路、時期を選んで実験を行っている。富士スバルラインのように30kmほども急勾配が続く道は多くないので、数値は実験レベルのものと思ってほしい。

日産サクラ/富士スバルライン走行&充電記録

場所外気温充電開始時充電終了時/中間記録
SOC

距離

km

SOC

距離

km

充電時間
自宅(起点)26--95147-
中井PA下り26--6797-
足柄SA下り2445648912830分
富士山パーキング先22--5680-
富士山五合目P16--12--
富士山パーキング手前22--2249-
甲斐日産富士吉田店2124517611630分
自宅(終点)31--2644-

取材・文/中尾 真二