トヨタ自動車は、トヨタ初の量産電気自動車としてデビューした『bZ4X』にバッテリー残量の%表示追加などのアップデートを実施。すでに納車済みの車両でも5月以降、無償アップデートを行うことを発表しました。オーナーの声に応えた迅速な「一歩」で、トヨタのEVが前進します。
急速充電性能やメーター表示を改善
トヨタがブランドとして初となる電気自動車『bZ4X』をリース専用車として発売したのは2022年5月のことでした。直後、海外のオーナーの指摘で脱輪の懸念が発覚、原因究明に時間を要して10月にリコールを届け出るなど、苦難の道を歩んでいたのは、みなさんご承知の通りです。
bZ4Xへの懸念は脱輪だけではありませんでした。EVsmartブログでも発売直後の試乗レポートからメーター表示にバッテリー残量(SOC)の「%表示」がないなど「EVとしての完成度が低い」こと。また、長距離ドライブで数回の急速充電を繰り返すと受入出力の制限が発動して機動力が著しく低下することなどを指摘してきました。
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こうした不満の声は、世界各国のbZ4Xオーナーからもトヨタに届いていたということで、今回の性能アップデート無償提供が実現しました。
性能改善はすべてソフトウェアアップデートによるもので、今後生産される車両が改善済みのソフトウェアを搭載するのはもちろん、すでに納車済みの車両にも無償で提供されることになっています。納車済み車両の場合、2023年5月以降全国のディーラーで行うことを予定。具体的な時期や実施方法は追ってアナウンスされるとのこと。アップデートは「1〜2時間ほど」で完了する作業になる見込みです。
具体的な改善内容は以下の通りです。
【1】急速充電性能改善
①1日あたりの急速充電によるフル充電回数を、現状の「2回程度」から約2倍に変更。
フル充電というのは「150kW器でSOC10%〜80%に充電」を意味しているとのことです。急速充電器の出力が50kW以下でも、YouTubeのEVsmartチャンネルでテスカスさんが検証した「東京ー大間」ドライブでは3回目の急速充電以降、充電器側の性能としては100〜125A(40〜50kW)の電気が流れるべきところ、ある程度のSOCに達すると50数A(20数kW)程度にまで制限されることを確認していました。改善によって、1日4回程度の急速充電は充電器の性能をフルに引き出せるようになるということなので、実用的な利便は格段に向上すると思われます。
②SOCが80%を超えてからの急速充電に掛かる時間を約20〜30分(外気温によって異なる)短縮。
海外、ことに北欧などのオーナーから「SOCが80%を超えてからの急速充電時間が長過ぎる」という不満の声が大きかったようです。リチウムイオン電池搭載のEVでは、そもそもSOCが80%を超えると充電速度が遅くなるようにプログラムされていますが、bZ4Xの場合、他メーカーの他車種と比較してもより慎重な設定になっていました。今回のアップデートでは、慎重に過ぎた制御を緩めて充電性能を高めるということになりました。
【2】実航続距離改善
①航続可能距離表示が「0km」になるタイミングを現状よりも遅らせることで、可視化される航続可能距離を増やします。
※メーターに表示される航続可能距離は増えますが、実際(認証やカタログ上)の航続可能距離が増えるわけではありません。
bZ4Xの搭載バッテリー容量(総電力量)は71.4kWh。でも、実際の走行時にバッテリー性能の全てを使い切っているわけではありません。容量の下限と上限にたとえば5kWh程度ずつのマージンを設けて、実際に使っている(航続可能距離として表示する)のは60kWh程度といった「安全策」は、bZ4Xに限らず、ほとんどの市販EVが採り入れている方法(詳細な割合などはブラックボックスですけど)です。
今回の改善は、「メーターで航続可能距離表示が0kmになるタイミングが早い」というオーナーからの声に応えたとのこと。つまり、0kmになってからもかなりの距離が走れるじゃないか! ということだったのでしょう。トヨタでは、電欠のリスクなどを軽減するため、あえて多めのマージンを取った表示にしていたのを、少し攻めた表示に変えたということです。
【3】メーター表示改善
①充電容量(SOC)が%表示されるようになります。
充電容量、すなわちバッテリー残量の%表示が追加されました。走行中はもちろん、充電中も表示されるようになります。
②エアコン使用時の航続可能距離表示を、より実態に合わせた表示に変更します。
これも「エアコンをオンにすると航続可能距離が大幅に減りすぎる」という声に応えたもの。従来は、ここでも「より慎重」な表示にしていたのを、実際の走行データに基づいて実態に合った表示に変更するということになります。
マイナーチェンジを待たない迅速な対応を歓迎
SOCの%表示がなかったのはEVへの理解不足だったと言うしかありませんが、そのほかの改善点はおおむね「EVに対して過剰に及び腰」だったのが、「ここまでは大丈夫」というボーダーを引き上げた成果と考えることができそうです。
EVに及び腰なのは、トヨタやbZ4Xに限ったことではありません。Honda eも急速充電性能はとても控えめだし、バッテリーの温度マネジメント機構をもたない日産リーフ(現行型でも)も、急速充電を数回繰り返すと充電速度が低下します。ステランティスグループでプラットフォームを共用するプジョー、シトロエン、DSなどのEVも、チャデモ急速充電の受入出力はやや控えめ(昨年後半以降未確認ですが)になっています。
一方で、テスラの各車種をはじめ、メルセデス・ベンツやBMWの各車種、ヒョンデ IONIQ 5 などは、EVとしてのパッケージングを各社それぞれに工夫して、気持ちいい急速充電性能を発揮してくれます。bZ4XはベンツやBMWにも匹敵する高級EVだったので、EV性能不足が目立ってしまったという見方もできます。
今回、発売から1年足らず、マイナーチェンジのタイミングなどを待つことなく、トヨタが迅速にbZ4Xの性能アップデート提供を発表したのは、今後、本気でEVを開発&販売していくためにも正しいことだと評価できます。先日発売されたレクサス『RZ450e』にも同様の改善が行われるでしょう。さらに今後に向けて、トヨタのEVとして実現すべき性能やパッケージングがどうあるべきなのか。今回の教訓を糧として、トヨタからさらに魅力的なEVが登場することに期待しましょう。
また、トヨタではbZ4Xのウェブサイトに「BEV実用情報」というページを設けて、今回の改善点を含め、電気自動車に関するさまざまな情報を発信しています。このあたりの丁寧さはさすがにトヨタ。bZ4Xに限らずEV全般に共通した知識も多いので、EVオーナーの方は一度目を通しておくこと(ベテランEV乗りの方には既知の内容も多いでしょうが)をオススメします。
ちなみに今回の性能改善。ソフトウェアアップデートだけということだったので、OTAで対応できなかったのか確認したところ、車両システムに関わるソフトウェアについてはOTAには未対応。今後、より高度なOTAを行えるよう検討していくとのことでした。
世界市場の電気自動車バトルはまだまだこれからが本番です。すでに宣言済みの「2026年までに10モデル年間150万台」、「2030年までに年間350万台」の目標を達成するために、がんばれ! トヨタ、です。
取材・文/寄本 好則

