トヨタ『bZ4X』&スバル『ソルテラ』公道長距離試乗レポート【4】SoC表示がないEVの乗りこなし方【寄本 好則】

トヨタとスバルが合同で開催した『bZ4X』と『ソルテラ』の公道試乗会。期待と注目が集まる新型電気自動車の出来映えについて、複数の視点で評する連続企画をお届けしてきました。最終となる第四弾は、EVsmartブログ編集長である寄本が航続可能距離表示を中心にレポートします。

トヨタ『bZ4X』&スバル『ソルテラ』公道長距離試乗レポート【4】SoC表示がないEVの乗りこなし方【寄本 好則】

『bZ4X』&『ソルテラ』公道試乗会について

2022年5月下旬、トヨタとスバルが合同で『bZ4X』&『ソルテラ』のメディア向け公道試乗会を開催しました。「東京〜静岡」「静岡〜名古屋」「名古屋〜金沢」「金沢〜軽井沢」「軽井沢〜東京」という5区間を設定し、各区間に10組のメディアやジャーナリストが参加。2週間の日程で、5区間のコースを2周して、合計で100組の試乗を行うという大規模なものでした。

配布された資料冒頭のメッセージ。

EVsmartブログでは、1周目の第3区間である「名古屋〜金沢」に塩見智氏が参加。第4区間の「金沢〜軽井沢」に、御堀直嗣氏、諸星陽一氏とともに、編集長の寄本が参加してきました。この記事は私、寄本のレポートなので、「金沢~軽井沢」区間です。

出発地点は金沢駅前のホテル、ハイアットセントリック金沢です。我々のチームはまずbZ4Xで中継地点の長野県松本市(ホテルブエナビスタ)を目指します。松本市でソルテラに乗り替えて、ゴールは軽井沢プリンスホテル。合計で約262km(資料記載の距離)のコースを、御堀さん、諸星さんと交替で運転しながら走行しました。

新型EVとしての印象は「トヨタとスバルの新型車」

高速道路からワインディングまで、おもに助手席でbZ4Xとソルテラにたっぷり乗った印象は、端的にまとめると「トヨタとスバルの新型車」という感じです。2022年2月にサーキットでプロトタイプの試乗会があった際のレポートでも指摘したように「バッテリー残量のSoC(%)表示がない」ことが、この新型EVが提供してくれる価値観を象徴しています。

ワンペダル感覚で加減速をコントロールできる、トヨタは「Regeneration Boost」、スバルでは「S PEDAL DRIVE」と呼ぶボタンがあり、「ECO」「NORMAL」などのドライブモードを選ぶボタンはあるものの、液晶画面を含めて操作系の配置や印象はエンジン車とまったく違和感がない、逆に言うと「EVらしさ」的な要素は極力排除されていると感じます。

bZ4Xの操作ボタンなど。

もちろんEVなので走行時のエンジン音などはありません。とはいえ、最近試乗した日産アリアやヒョンデIONIQ 5、ボルボC40 Recharge などの最新EVと比較すると、EVだからといってことさらに遮音性を高めている印象は感じませんでした。

私個人としては「電池残量=エネルギーと対話しながら移動する」のがEVの大きな魅力だと感じています。でも、エンジン車に慣れ親しんだ自動車ユーザーのなかには「電池残量を気にしながら走るなんて面倒臭い」と感じる方も少なくないことでしょう。全国にディーラー網がないテスラやヒョンデのEVより、長年付き合いのあるトヨタやスバルの営業マンから、最新の電気自動車を購入したいと考えるニーズもあるでしょう。電気自動車であることを意識せず、「トヨタとスバルの新型車」としてEVらしいスムーズな加速感などを享受できるbZ4Xとソルテラは「電気自動車の新たな選択肢」となっています。だからこそ、加速感や回生ブレーキの効き方なども、エンジン車と違和感がないよう仕上げられているという印象でした。

金沢〜松本〜軽井沢の走行データ

平湯では5分ほど充電待ち。急速充電のリッドが左前フェンダー部で、駐車枠通りに停めるとケーブルが届きませんでした。

メーターパネルの「航続可能距離表示」を中心に、bZ4Xとソルテラそれぞれの走行&充電データをまとめてみました。駆動方式はbZ4Xが4WD、ソルテラはAWD、つまりは両方とも全輪駆動モデルです。

『bZ4X』走行データ
時間場所航続可能距離区間距離走行距離備考
0906ハイアットセントリック金沢361-0エアコンをON/23度オート
0953道の駅 細入2504040
1203平湯バスターミナル11995135食事休憩
急速充電30分間で19.5kWh(充電器表示)充電。出発時航続可能距離表示は「222km」。
1308奈川渡ダム手前21616151
1409ホテルブエナビスタ21333184
『ソルテラ』走行データ
時間場所航続可能距離区間距離走行距離備考
1525ホテルブエナビスタ190-0エアコンをON/23度オート
1613姥捨SA下り1564141
1643東部湯の丸SA上り1384283トイレ休憩
急速充電4分間で2.3kWh(充電器表示)充電。出発時航続可能距離表示は「124km」。
1650軽井沢プリンスホテル5147130

それぞれ、途中で1回の急速充電を行いました。1回目の平湯バスターミナルは日産製の44kW器。充電器側の表示によると、SoCは32%〜61%まで、電力量にして19.5kWh充電できました。bZ4Xとソルテラのバッテリー容量は71.4kWhです。61-32=29%で、19.5kWhは71.4kWhの約27.3%なので、まあ、こんなものでしょう。ソルテラで充電した東部湯の丸SA上り線は、東光高岳製の40kW器。トイレ休憩の間、4分間だけ、2.3kWhをちょい足し充電。この充電器にもSoC表示がないので、「何%充電できたのか」はわかりません。

平湯バスターミナルでは食事して30分、充電器表示で19.5kWh充電しました。

242km分の電力で135kmを走行

平湯到着時のメーター表示。

なぜ私がSoC表示にこだわるのか。実際のデータのポイントを見ながら考えてみます。まず、金沢から平湯バスターミナルまで、航続可能距離表示は242km減っていますが、実際に走った距離は135kmだけ。平湯バスターミナルの標高は約1260m。長い上りを走ってきたので、約110km分、余計に電池を消費したことになります。

9km分の電力で49kmを走行

逆に、平湯バスターミナルから標高約590mの松本まではおおむね下り坂を走ります。諸星さんのレポートでも紹介されていたように、今回の試乗では「中継地点の松本には航続距離を200km残して到着」「ゴールの軽井沢には50km残して到着」するというオーダーがありました。平湯から松本のゴールまで約50kmありますが、急速充電を終えた時点での航続可能距離表示は222kmでした。私は何度もこのルートを走ったことがあり「感覚的には航続可能距離表示の倍はいけるだろう」と思うのと同時に、旧安曇村のワインディングが終わって新島々駅あたりからは平坦な道が結構続くと認識していたので「途中の道の駅で数分だけ注ぎ足し充電必要かもね」と話していたのですが……。

この区間の運転を担当した諸星さんが回生ブレーキを駆使しながら省電費&電池残量回復運転を敢行。奈川戸ダムまで16km走って航続可能距離表示は6kmしか減らなかったので「これは行ける。いや、行こう!」と、急速充電器がある道の駅風穴の里をパスして走りきることができたのでした。

回生強度のパドルスイッチがあるのはソルテラだけ。

諸星さんは「コースティングモードが欲しい」と感想を綴っていましたが、ソルテラには回生ブレーキの強さをパドルスイッチで調整できる機能があった(bZ4Xにはありません)ことも、ミッションクリアと、スムーズな下りワインディング走行に役立ったと思われます。

金沢を出発時の充電量は「80%くらいかな」という感じで、航続可能距離は361kmと表示されていました。平湯到着時は119km。松本で乗り換えたので断言することはできないですが、「184+130=314km」の全行程、金沢を満充電でスタートすれば、なんとか充電なしで走破できたかも、という感じです。

なにはともあれ、航続可能距離に余裕をもって走ること

軽井沢のゴールに無事到着。

ずっと、SoC表示があるのは当たり前のEVに乗っていて、私自身は、表示されている航続可能距離はあまり考慮しないようになっています。たとえば、パッテリー容量が30kWhでSoCが50%と表示されていたとして、走行できるのは15kWh分です。そのEVの電費性能にもよりますが、平坦な市街地であれば「7km/kWh」として、走れる距離は「7km×15kWh」で「105km」。上り勾配傾向の高速道路であれば「4km/kWh」と考えて「4km×15kWh=60km」程度しか走れない計算になります。

私の、マイカーである30kWhリーフは容量が減って11セグになっているので、50%=12kWhくらいで考えますが、細かいことを説明し始めるとややこしくなるのでそれはさておき。

SoCは、絶対的なバッテリー残量をドライバーに教えてくれる大切な情報です。今回の平湯〜松本のように長い下り坂を走る際には、1%ずつバッテリー残量が「増えていく!」喜びを実感することもできます。

さらに、メーターに表示される「航続可能距離」は、多くの車種で直前の運転状況が反映されます。上り坂を走った直後は短めになるし、下り坂を走れば伸びていく、イメージですね。

ソルテラの走行データをもう一度確認してみましょう。東部湯の丸SAで急速充電する前の航続可能距離表示は「138km」だったのに、4分間、2.3kWh充電して再出発時の表示は「124km」になっています。なぜ充電したのに14kmも減ったのか。その理由や原因は、わかりません。体験的な感覚として、航続可能距離表示というのは「このようにアテにできない数値」としか言えないのです。

東部湯の丸で充電前後のメーター表示。エアコンや走行モードも操作していないので、航続距離が減っている理由は、謎です。

ちなみに、東部湯の丸SA到着時の表示は「138km」で、軽井沢のゴールまでの距離は約50kmでしたから、「138-50=88km」であり「軽井沢には50km残して到着」というミッションは十分に達成できる計算になります。でも、東部湯の丸SAあたりから軽井沢駅周辺までは結構な上りが続きます。SoCがわからないので、これはもうEV経験で培ったカンとしか言えないですが「ちょっとヤバイ」と感じた私は、トイレ休憩ついでのちょい足し充電を選択。ゴール時の航続可能距離表示はミッション達成ギリギリの「51km」という結果になったのでした。

EVで「あとどのくらい走れるか」という判断を誤ることは、電欠の危機に直結します。SoC表示のないbZ4Xとソルテラを購入する方は、今回の事例を参考にしながら「EVで走るためのカン」を磨いてください、というのは強引だし、無理でしょうから。とくに高速道路のロングドライブ時など、「航続可能距離表示を信じてギリギリまで充電を我慢して走る」のは絶対禁物。目安として「100km」くらいは残しながら充電を繋いでいくのが賢明であることをお伝えしておきたいと思います。

なにはともあれ、EV選択肢のバリエーションが増えたことは大歓迎。日本でも、ますますEVへの理解とニーズが広がっていくことを願っています。

(取材・文/寄本 好則)

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この記事のコメント(新着順)4件

  1.  7年前、日産ディーラーでLEAFの試乗をする際に、担当者から表示される走行可能距離よりバッテリーのパーセント表示を意識しろと念を押され、購入以降実際にそうしています。
     EV初心者が距離を信じて走り続ける方が、よほど電欠の危険性が高くなります。
     このニュースを読んでん、つくづくトヨタ-スバルはEVに乗ったことのない開発者が、自分達の妄想で作ってしまったのではないかと思えてしまいます。トヨタ系メーカー社員の知人は、プライベートでも他社系自動車を所有することなどもってのほか、と真顔で言っていました。これじゃ、妄想開発になっちゃうはずです。敵を知ることは己を知る、先ずは乗り倒さないと。

  2. 大容量バッテリー(71.4kWh)を積んだEVを市場に出すのなら、90kWクラスの急速充電器も準備していただかないと、実用的なクルマにならないです。何でこんな初歩的なことがメーカーの方が分かっていないのか甚だ疑問です。現在の日本で普及している急速(=中速)充電器(〜30kW程度)では、10〜20kWh程度のバッテリーを積んだEVへの充電がやっとです。現実問題として、EV充電時間としては15分程度で切り上げる必要があります。特に次の方が待っている場合、15分以上待たせるのは大変失礼です。米国では今後150kWクラスの急速充電器を国が整備していく計画で、日本でも欧米に負けない急速充電網を構築してもらいたいと思います。

  3. 残量表示がないEVなんて全く何を考えてクルマを作っているのでしょうね
    私も主に山歩きの足として長距離を利用しています。
    残量が分かるからこそ標高差など考慮してドライブできるのに、上り下りでころころ変わる航続距離なんて見てないですね
    残連ながらこの2台は次の選択肢からは外れます。

  4. >SoCは、絶対的なバッテリー残量をドライバーに教えてくれる大切な情報
    SoCはバッテリーの最大容量に対する割合(相対値)であり、最大容量は経年で低下しますし車両が異なれば違ってきます。
    ですから「絶対的な」という表記は適切ではないと感じました。
    絶対値というならば残存エネルギー量(kWh)になりますが、私はLeafSpyでこの数値を参考にしております。標高差1mあたり何Wh必要かをあらかじめ知っておけば、目標地点(峠の最高地点とか)との標高差で最高地点通過時の残存エネルギー量が推定できます。
    この計算を使って7seg.LEAFで長野側から渋峠を超えました。

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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