レクサスがEV専用モデル『RZ450e』発売〜トヨタの本気は900万円の価値がある?

桜満開の3月30日、レクサスがバッテリーEV専用モデル『RZ450e』の発売と、バッテリーEVオーナー専用サービス「LEXUS Electrified Program」の開始を発表しました。RZ450eの価格は500台限定の「First Edition」が940万円〜。その真価が気になります。

レクサスがバッテリーEV専用モデル新型『RZ450e』発売〜トヨタの本気は900万円の価値がある?

前社長と新社長が「わぉ〜!」と絶賛したBEV

レクサスで初となるBEV専用プラットフォームを採用して開発された新型電気自動車『RZ450e』の発売が発表されました。「RZ」といえば、2021年12月に、今は無きお台場のメガウェブで開催された「バッテリーEV戦略に関する説明会」のプレゼンテーションでも紹介された、4月1日にトヨタの新社長に就任した、当時レクサスのチーフ・ブランディング・オフィサーだった佐藤恒治と、代表取締役会長に就任した豊田章男氏が同乗し、ハンドルを握る章男氏がアクセルを踏み込んで「わぉ〜!」と叫んでいた、あのクルマです。

レクサスではエンジン車ベースのBEVである『UX300e』をすでに発売していますが、『RZ450e』はEV専用プラットフォームである「e-TNGA」を採用した、レクサスで初めてのEV専用モデルとなります。e-TNGAについては、ガソリン車と同じ工場のラインで生産できるように設計していたのがむしろ不効率であるとして全面的な見直しを検討していることが報じられていたところではありますが、現時点でトヨタ(レクサスブランドとして)が繰り出す最高峰のEVであることは間違いないでしょう。

気になる価格は、最初に発売される500台が発売を記念した特別仕様車「First Edition」で940万円〜。その後デリバリーされるであろう「Version L」が880万円〜となります。

e-TNGAをベースとした基本的なパワートレインなどは、すでにトヨタが発売している『bZ4X』と共通しています。基本的なスペックを、bZ4Xと並べて紹介しておきます。

RZ450e version LbZ4X 4WD
全長×全幅×全高(mm)4805×1895×16354690×1860×1650
ホイールベース(mm)28502850
最高出力前:150kW
後:80kW
前:80kW
後:80kW
最大トルク前:266Nm
後:169Nm
前:169Nm
後:169Nm
車両重量2100kg2010kg
バッテリー容量71.4kWh71.4kWh
一充電航続距離(WLTC)494km540km
車両価格880万円〜サブスクのみ

bZ4Xのフロントモーターが最高出力80kWであるのに対して、RZではbz4X FWDモデルの150kWのモーターを搭載しているあたりがプレミアムなポイントでしょう。

価格については、bZ4Xがサブスクのみなので単純に比較できないのですが……。KINTOでのbZ4X(FWD)のサブスク価格は以下のようになっています。

KINTO 公式サイトから引用。

最初の4年間で512万1600円と申込金で550万6600円。5年目以降は以下のようになります。

5年目:74,690円/月=年間896,280+5,506,600=6,402,880円
6年目:69,410円/月=年間832,920円+6,402,880=7,235,800円
7年目:64,020円/月=年間768,240円+7,235,800=8,004,040円
8年目:58,740円/月=年間704,880円+8,004,040=8,708,920円
9年目:53,350円/月=年間640,200円+8,708,920=9,349,120円
10年目:48,070円/月=年間576,840円+9,349,120=9,925,960円

話がRZ450eから少し脱線しましたが、bZ4Xも10年乗れば1000万円! の立派な高級車であることがわかります。国のCEV補助金額はbZ4Xが最高額の85万円で、最初の4年間の月額費用が軽減されます。

RZ450eへのCEV補助金は「Version L」が85万円。税抜車両価格が約855万円となる「First Edition」は、今年度から新設された「車両価格が税別840万円以上の高級車の補助額を減額」というルールに基づいて68万円となります。いずれにしても、レクサスRZ450eのライバルは、欧米メーカーの高級電気SUVということになります。おもな車種との比較も表にしておきます。

RZ450e
Version L
RZ450e
First Edition
TESLA
ModelY
パフォーマンス
メルセデス・ベンツ
EQB
350 4MATIC
BMW
iX
xDrive40
Audi
Q4 e-tron
車両価格(税込)880万円〜940万円〜約755万円〜906万円〜1075万円〜638万円〜
CEV補助金85万円68万円65万円65万円52万円65万円
バッテリー容量71.4kWh71.4kWh75kWh(推定)66.5kWh76.6kWh82kWh
駆動方式AWDAWDAWDAWDAWDRWD

ちなみに、AWDで揃えるためにEQBは350 4MATICをピックアップしましたが、FWDの250であれば822万円〜(補助金額65万円)となります。リストアップした中でバッテリー容量が最大のアウディ Q4 e-tronのお買い得感が際立っていますが、今のところAWD設定はなく、上級グレードの「Advance」は701万円〜となります。ともあれ、RZ450eは、ベンツやBMWのBEVと真っ向勝負の価格帯。テスラモデルYよりも100万円高い価値を、どのように日本の高級車ユーザーにアピールできるかが、国内での成否を分けるポイントになりそうです。

気になるポイントを質問してみました

ドライバーの意図に忠実な走りを支える新四輪駆動力システム「DIRECT4」、とか、LEXUS BEVの独自性を強調するプロポーションと新表現「スピンドルボディ」! といったアピールポイントはすでにローンチしている公式のカタログサイトをチェックしていただくとして。EVsmartブログでは、3月30日の発表内容から、EVユーザー目線でちょっと気になった点をレクサス(トヨタ)の広報ご担当部署に質問してみました。以下、質問と回答をご紹介します。

Q●急速充電は最大150kW対応、ですか?

はい、bZ4Xと同等の最大150kW対応です。

Q●バッテリー残量表示、急速充電性能などは、どのように改善(bZ4Xと比べて)されていますか?

1日あたりの10%→80%までの急速充電回数については、2回程度から約2倍程度の充電回数が可能な状態に改善し、ご提供してまいります。その他改善策(SOC表示含む)については、準備が整い次第速やかに、順次ソフトウェアアップデートにて改善を施してまいります。

<編集部補足>
RZのデリバリー開始には、ソフトウェアアップデートが間に合わなかったようです。少し、残念。

Q●「電池昇温システム」は自動制御でしょうか? ドライバーが手動で起動することもできますか?

自動制御です。

Q●どのような使用シーンを想定した機能ですか? ナビで急速充電器を目的地設定した際などに、プレヒーティングはしてくれますか?

走行中・充電中も含めて、外部環境に合わせ、適切に温度を管理します。充電中はプリヒーティング対応しています。

<編集部補足>
発表のリリースに「電池昇温システムの搭載」とあるのが気になりました。もちろん、冷却機能はbZ4Xと同様に搭載されているとのこと。テスラ車のように、急速充電前に自動的にプレコンディショニングしてくれるのかどうかは、よくわからないので、実車での試乗を楽しみにしています。

Q●アクセサリーACコンセント装備(素晴らしい!)とのこと。プリウスPHEVなどに用意されているヴィークルパワーコネクターは標準装備されますか?

ヴィークルパワーコネクターにつきましては非対応となりますが、給電アタッチメントを標準装備し、車外への電力供給時の使い勝手を向上させております。

<編集部補足>
「トヨタの給電」解説ページ(給電アタッチメントの説明を含む)にテキストリンク貼っておきます。ヴィークルパワーコネクターを含め、電動車からの便利な給電機能にしっかり取り組んでいるのは、トヨタの優れたアクションだと感じます。

EVオーナー専用サービス「LEXUS Electrified Program」を開始

3月30日には、RZ450eの発売とともに、レクサスによるバッテリーEVオーナー専用サービス「LEXUS Electrified Program」を開始することも発表されました。

●レクサス充電ステーションの開設

商業施設などに150kw以上の急速充電器を備えたレクサス充電ステーションを設置。LEXUS Electrified Program(LEP)対象者のみ、専用アプリを通じ、充電ステーションの事前予約、充電状況の把握、そして支払い等がシームレスに可能。(今夏より順次サービス拠点拡大予定)

●販売店急速充電

全国183店舖のレクサス販売店に50kW以上の急速充電器を設置。(2023年3月30日時点で充電器を利用できない店舗もあり)

●普通充電器設置支援

レクサスオリジナル普通充電器本体+設置工事(基本工事部分)を無償で提供。

●ルート検索(カーナビアプリmoviLink利用)

レクサス充電ステーションをはじめ、目的地までの移動ルートと予測充電残量を加味し、充電スポットをご案内するルート検索を提供。

●BEVコンシェルジュ

購入検討から利用中まで、BEVに関する知識のみならず、各地域の充電環境などにも精通したBEVコンシェルジュや、24時間365日対応可能なレクサスオーナーズデスクがお客様の困りごとに寄り添いながらBEVとともに過ごす日々をサポート。

総じて、レクサスらしい、トヨタならではの、EVユーザーにとってありがたいサービスだと感じます。こちらの内容についてもいくつか質問しました。

Q●LEXUS充電ステーションの利用料金などはどのように想定していますか?

3年目までは基本利用料が無償となり、4年目以降は1000円/月を頂戴する計画ですが、インフレ等の経済状況やその他環境の変化によって、金額については見直す可能性もあります。詳細はLexus.jpのページもご参照ください。

<編集部補足>
ブランド独自で高出力急速充電ステーションを整備していく計画は、フォルクスワーゲングループのPremium Charging Alliance(プレミアムチャージングアライアンス=PCA)にも似ています。PCAとLEPの料金についても、簡単な表にしておきましょう。ともにeMP連携の充電カードとは別途登録する必要があります。

レクサス充電ステーションPCA
月額会員プラン
PCA
都度会員プラン
基本料金1000円1800円無料
従量料金80円/分75円/分(150kW)
45円/分(90kW)
200円/分(150kW)
120円/分(90kW)

Q●LEXUS充電ステーションは、トヨタ車オーナーは利用不可?

LEPメンバーの方がご利用・予約されている時は利用できませんが、予約が空いている時間枠には、トヨタ車オーナー様も含めたBEVオーナー様へご利用いただける運用を検討しております。

<編集部補足>
ということは、現在の料金表には月額料金制だけしかありませんが、今後、都度課金プランができるのかも知れません。

Q●eMPとは非提携ということでいいですよね?

レクサス充電ステーションについては非提携となりますが、販売店急速充電につきましては、販売店毎にeMP連携している店舗もございます。

以上、重箱の隅をつつくような質問に回答をいただき、ありがとうございました。

ともあれ、レクサスブランド初となる専用開発のBEV誕生で、レクサス、そしてトヨタのEVへの取り組みがまた一歩前進した印象です。

次はぜひ、「僕にも買える!」と膝を打つトヨタ(レクサス)のEVが登場してくれることを祈っています。

取材・文/寄本 好則

この記事のコメント(新着順)4件

  1. 1,000万円クラスの高級車を(サブスクではなく)所有しようという方々は、基本的に細かいことを気にして選ぶ訳ではないと思います。
    その意味においてこの記事はマニア向けで、同時にマニアの方々にしてみれば不十分な内容だった、という感じがします。

  2. 小生はRXに8年乗り、買い替えでRZに期待していましたが、RZはIONIQ5にも敵わないほどソフト面でもハード面でも(価格面でも)3~4年は遅れています。レクサスが超一流といわれるよう、充電回数制限の撤廃や航続距離の有利性、充電時間の短さ、装備内容、新型ハンドル等も間に合わず、Iモード走行もできず、回生ブレーキでの電気回収%も35%に達せず、まずは仕様を充実させることが優先かと存じます。また、記事を書く上では、EVについてもっと情報収集や試乗体験を豊富にされますようお願い致します。明らかに非所有の立場での記事かは、所有者であればすぐ理解できます。電気自動車は、排気ガスを出さないのが最大の長所で将来性は大いに期待できますが、高価なRZの評価で電気自動車なんてこんな程度の物なのか?と多方面で誤解されることが心配です。RZは残念ながら現時点では世界水準には程遠い仕様かと存じます。

  3. UX300eとRZ450eのウェブサイトを見ていて駆動用電池ヒーターの記述があることに気付き、それぞれの取扱説明書を見てみましたが、外気温が低く充電ケーブルが接続されているときにのみ機能するとなっていました。

    「プリヒーティング」とは、充電する予定があるときに、残っている電力を利用してあらかじめ電池を加熱して充電に適した温度にしておく機能のはずですが、上記の取説の内容からすれば、プリヒーティング(あらかじめ加熱)は不可能ということになります。

    トヨタからの回答は「充電中はプリヒーティング対応しています」とのことで、「プリヒーティング=電池加熱機能」と勘違いされているようです。

    急速充電回数も(bZ4Xから倍増するとはいえ)制限が存在するということは、制限がない他銘に比べて温度管理機能の容量が十分ではない可能性があります。

    SoC表示はソフト更新で対応予定とのことで、それも含めてBEVについての認識を改めつつあることが伺えますが、やはり出遅れ感は否めません。

    トヨタが競争力のある性能・機能・価格でBEVをできるだけ早く開発・発売してくれることを願ってやみません。また、新経営陣のお披露目会見で佐藤新社長が「BEVについては4月にコミュニケーションの場を」といっていたので、それにも期待します。

  4. 車両価格が880万円(Version L)からというのはライバル車種に比べると少し割高に感じますが、同じレクサスでも1000万円以上するLC、LS、LXに比べると安く、RXの上位グレードと同等の価格なので妥当な価格設定だと思います。(私にはとても手が出ない価格ではありますが。)
    RZは価格が高いので売れないというコメントをよく見かけますが、1000万円以上するLSを街中でよく見かけることを考えると、現時点において価格だけでRZが売れないと断言することは難しいと思います(EV性能などは別として)。
    また、今回のRZ発売に伴うBEV専用サービスは、BEVに興味がある人向けというよりは、既存のレクサスオーナーが他社BEVへ乗り換えすることを阻止する為の戦略と考えれば納得のいく内容だと感じました。
    何はともあれ、レクサス初のBEV専用モデルなのでそれなりに売れて欲しいと思います。
    また、今後もレクサスのEV戦略には注目していきたいと思います。

    長文失礼しました。

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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