テスラがアメリカ市場向けに主力モデルの廉価版となる「モデルYスタンダード」、また「モデル3スタンダード」を発表しました。従来の最廉価モデルだった「RWD」に比べ、モデルYが5,000ドル、モデル3で5,500ドル安い設定です。はたして、税優遇廃止の逆風を押し返すことができるのか。モデル3オーナーのコンサルタント、前田謙一郎氏による速報です。
※この記事はAIによるポッドキャストでもお楽しみいただけます!
噂されていたモデルYに加えてモデル3にも廉価版を設定
Meet Model Y Standard & Model 3 Standard – our most affordable vehicles
Ultra-low cost of ownership, engineered for safety & comes with the best Tesla features you love
– 321 mi of range
– Extreme efficiency that takes you farther + saves you $$
– Minimal maintenance
– Can… pic.twitter.com/2cMQ5NW6Yf— Tesla (@Tesla) October 7, 2025
以前から発売が期待されていたテスラの「手頃な価格のモデル」、モデルYスタンダードとモデル3スタンダードという2つの新モデルが日本時間10月8日の早朝(現地時間10月7日)に発表となった。
すでにアメリカのサイトではコンフィギュレーターからモデルを選択、購入することができる。従来モデルからいくつかの装備を内外装から排除・変更し、簡素化しながらもFSDやGrokなど自動運転やソフトウェアの拡張性はそのままにした戦略的なモデルだ。速報でスタンダードモデルの概要と投入のポイントについてお伝えしたい。
Model Y Standard & Model 3 Standard are here pic.twitter.com/e2kXwAaQ0O
— Tesla (@Tesla) October 7, 2025
新しいトリム「スタンダード」の価格と仕様
モデルYスタンダードとモデル3スタンダードの価格と主な仕様・装備については以下の通り。
モデル3スタンダード 価格:36,990ドル(約555万円)納車12月以降
※日本円価格は150円/ドルで換算。
モデルYスタンダード 価格:39,990ドル(約600万円)納車12月以降
主な装備と変更点
●空力改善のための新しくチューニングされたエクステリア(モデルYのみ、ヘッドライト、フロントバンパー、リアライトが変更となっている)
●外装色は3色展開:ステルスグレー(無料)、ホワイト(+1,000ドル)、ダイヤモンドブラック(+1,500ドル)
●新しい19インチアパーチャーホイール
●69 kWhバッテリー、航続距離321マイル(約516km)
●0-60 mph加速:モデルYスタンダード6.8秒、モデル3スタンダード 5.8秒
●フロントバンパーカメラ
●前席に15.4インチのタッチスクリーン(従来のトリムと同じ)
●リアのインフォテインメントスクリーン非搭載
●テキスタイルとビーガンレザーのインテリア(ブラックのみ)
●カバーされたガラスルーフ(内側にファブリックが貼られている)
●音響ラミネートされていないウィンドーガラス
●マニュアルミラーとシート(シート調整はUIからの操作)
●小さくなったフロントトランク(モデルY)
●7スピーカーステレオ(プレミアムモデルは15スピーカー)
●ベーシックオートパイロット非搭載(FSDは8,000ドルで購入可能)
モデルラインナップ一覧
モデル3
Model 3 Standard RWD | Model 3 Premium RWD | Model 3 Premium AWD | Model 3 Performance (AWD) | |
---|---|---|---|---|
価格 | $36,990 | $42,490 | $47,490 | $54,990 |
航続距離 | 321 マイル | 363 マイル | 346 マイル | 309 マイル |
0-60 mph 加速 | 5.8 秒 | 4.9 秒 | 4.2 秒 | 2.9 秒 |
最高速 | 125 mph | 125 mph | 125 mph | 163 mph |
ドライブトレイン | Rear-Wheel Drive | Rear-Wheel Drive | All-Wheel Drive | All-Wheel Drive |
モデルY
Model Y Standard RWD | Model Y Premium RWD | Model Y Premium AWD | Model Y Performance AWD | |
---|---|---|---|---|
価格 | $39,990 | $44,990 | $48,990 | $57,490 |
航続距離 | 321 マイル | 357 マイル | 327 マイル | 306 マイル |
0-60 mph 加速 | 6.8 秒 | 5.4 秒 | 4.6 秒 | 3.3 秒 |
最高速 | 125 mph | 125 mph | 125 mph | 155 mph |
ドライブトレイン | Rear-Wheel Drive | Rear-Wheel Drive | All-Wheel Drive | All-Wheel Drive |
スタンダードモデル投入の意味
今回、テスラは従来の安全性や走行性能を維持しつつ、装備を変更することで手頃な価格を実現した。筆者自身、これまで自動車メーカーで商品企画に携わってきたが、今回のように装備を簡素化してエントリーモデルを作成する手法は、プロダクトマネジメントにおいて、これまでリーチできていなかった顧客層にアピールする有効な戦略の一つだ。
テスラの場合、このスタンダードモデルは売れる商品として作られており、決して受注生産モデルや単に低価格を狙っただけのものではない。アメリカでは、バイデン政権時代から続いてきた7,500ドルの税額控除が9月末に廃止されたが、今回のスタンダードモデル投入により、この影響を緩和できるかもしれない。
また、今回の仕様から読み取れる重要なポイントは、テスラの戦略が販売台数だけでなく、FSDの普及にも注力していることだ。従来モデルで標準装備されていたベーシックオートパイロットは、スタンダードモデルには搭載されない。ユーザーはベーシックオートパイロットではなく、必要に応じて8,000ドルの一括購入、または月額99ドルのFSDサブスクリプションを選択する。
このように、テスラはベーシックモデルの投入を進めつつ、FSDなどの高付加価値オプションの販売で利益を確保するビジネスモデルへの転換を図っていることが読み取れる。
オートパイロットとスタンダードモデルの世界展開について
スタンダードモデルにオートパイロットが搭載されていない部分について補足しておきたい。スタンダードモデルには従来モデルに標準装備であったオートパイロットが排除され、アダプティブクルーズコントロールのみが装備されている。オートパイロットに含まれていたオートステアがなくなったことで、運転支援オプションを追加する場合はFSDのフルパッケージを8,000ドルもしくは月額のサブスクで購入することになる(アメリカでは2024年からエンハンスト・オートパイロットのオプションは廃止されFSDに統合されている)。
今週からはFSDの最新バージョン14も配信が開始されている。8,000ドルの一括購入はハードルが高いが、月額99ドルのサブスクは気軽に体験をすることができるはずだ。もちろんコンフィギュレーターに記載がある通り、従来通りのアクティブセーフティ(自動緊急ブレーキ、レーンアシスト、前方およびブラインドスポット衝突警告)などは搭載されている。
現在、このスタンダードモデルは北米だけの展開だが、Xではギガ・ベルリン工場で同じようにモデルYスタンダードの生産が間近との予想や噂がある。上海工場でのスタンダードモデル生産の噂は見つからなかったが、中国市場での熾烈な価格競争を考えると生産されても不思議ではない。そして、上海で生産されれば日本向けの可能性も出てくる。
日本における直近のモデル3後輪駆動モデルの価格は531万円、モデルYは558万円だ。勝手な単純計算でアメリカモデルの価格差異5,000〜5,500ドル分(約75万から82万程度)が下がると考えるとモデル3は449万前後、モデルYは483万前後、CEV補助金を考えるととても魅力的な価格になりそうだ。
今後のスタンダードモデルの評価や売れ行きに注目したい。
Major improvement to FSD! https://t.co/btdQulxyx9
— Elon Musk (@elonmusk) October 7, 2025
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