著者
充電スポット検索
カテゴリー

テスラ「モデルY」と「モデル3」に手頃な価格の新モデルが登場/販売台数拡大と自動運転実現への進展に貢献するか?

テスラ「モデルY」と「モデル3」に手頃な価格の新モデルが登場/販売台数拡大と自動運転実現への進展に貢献するか?

テスラがアメリカ市場向けに主力モデルの廉価版となる「モデルYスタンダード」、また「モデル3スタンダード」を発表しました。従来の最廉価モデルだった「RWD」に比べ、モデルYが5,000ドル、モデル3で5,500ドル安い設定です。はたして、税優遇廃止の逆風を押し返すことができるのか。モデル3オーナーのコンサルタント、前田謙一郎氏による速報です。

目次

噂されていたモデルYに加えてモデル3にも廉価版を設定

以前から発売が期待されていたテスラの「手頃な価格のモデル」、モデルYスタンダードとモデル3スタンダードという2つの新モデルが日本時間10月8日の早朝(現地時間10月7日)に発表となった。

すでにアメリカのサイトではコンフィギュレーターからモデルを選択、購入することができる。従来モデルからいくつかの装備を内外装から排除・変更し、簡素化しながらもFSDやGrokなど自動運転やソフトウェアの拡張性はそのままにした戦略的なモデルだ。速報でスタンダードモデルの概要と投入のポイントについてお伝えしたい。

新しいトリム「スタンダード」の価格と仕様

モデルYスタンダードとモデル3スタンダードの価格と主な仕様・装備については以下の通り。

モデル3スタンダード 価格:36,990ドル(約555万円)納車12月以降
※日本円価格は150円/ドルで換算。

モデルYスタンダード 価格:39,990ドル(約600万円)納車12月以降

主な装備と変更点

●空力改善のための新しくチューニングされたエクステリア(モデルYのみ、ヘッドライト、フロントバンパー、リアライトが変更となっている)
●外装色は3色展開:ステルスグレー(無料)、ホワイト(+1,000ドル)、ダイヤモンドブラック(+1,500ドル)
●新しい19インチアパーチャーホイール
●69 kWhバッテリー、航続距離321マイル(約516km)
●0-60 mph加速:モデルYスタンダード6.8秒、モデル3スタンダード 5.8秒
●フロントバンパーカメラ

●前席に15.4インチのタッチスクリーン(従来のトリムと同じ)
●リアのインフォテインメントスクリーン非搭載
●テキスタイルとビーガンレザーのインテリア(ブラックのみ)
●カバーされたガラスルーフ(内側にファブリックが貼られている)
●音響ラミネートされていないウィンドーガラス
●マニュアルミラーとシート(シート調整はUIからの操作)
●小さくなったフロントトランク(モデルY)
●7スピーカーステレオ(プレミアムモデルは15スピーカー)
●ベーシックオートパイロット非搭載(FSDは8,000ドルで購入可能)

モデルラインナップ一覧

モデル3

Model 3 Standard RWDModel 3 Premium RWDModel 3 Premium AWDModel 3 Performance (AWD)
価格$36,990$42,490$47,490$54,990
航続距離321 マイル363 マイル346 マイル309 マイル
0-60 mph 加速5.8 秒4.9 秒4.2 秒2.9 秒
最高速125 mph125 mph125 mph163 mph
ドライブトレインRear-Wheel DriveRear-Wheel DriveAll-Wheel DriveAll-Wheel Drive

モデルY

Model Y Standard RWDModel Y Premium RWDModel Y Premium AWDModel Y Performance AWD
価格$39,990$44,990$48,990$57,490
航続距離321 マイル357 マイル327 マイル306 マイル
0-60 mph 加速6.8 秒5.4 秒4.6 秒3.3 秒
最高速125 mph125 mph125 mph155 mph
ドライブトレインRear-Wheel DriveRear-Wheel DriveAll-Wheel DriveAll-Wheel Drive

スタンダードモデル投入の意味

今回、テスラは従来の安全性や走行性能を維持しつつ、装備を変更することで手頃な価格を実現した。筆者自身、これまで自動車メーカーで商品企画に携わってきたが、今回のように装備を簡素化してエントリーモデルを作成する手法は、プロダクトマネジメントにおいて、これまでリーチできていなかった顧客層にアピールする有効な戦略の一つだ。

テスラの場合、このスタンダードモデルは売れる商品として作られており、決して受注生産モデルや単に低価格を狙っただけのものではない。アメリカでは、バイデン政権時代から続いてきた7,500ドルの税額控除が9月末に廃止されたが、今回のスタンダードモデル投入により、この影響を緩和できるかもしれない。

また、今回の仕様から読み取れる重要なポイントは、テスラの戦略が販売台数だけでなく、FSDの普及にも注力していることだ。従来モデルで標準装備されていたベーシックオートパイロットは、スタンダードモデルには搭載されない。ユーザーはベーシックオートパイロットではなく、必要に応じて8,000ドルの一括購入、または月額99ドルのFSDサブスクリプションを選択する。

このように、テスラはベーシックモデルの投入を進めつつ、FSDなどの高付加価値オプションの販売で利益を確保するビジネスモデルへの転換を図っていることが読み取れる。

オートパイロットとスタンダードモデルの世界展開について

スタンダードモデルにオートパイロットが搭載されていない部分について補足しておきたい。スタンダードモデルには従来モデルに標準装備であったオートパイロットが排除され、アダプティブクルーズコントロールのみが装備されている。オートパイロットに含まれていたオートステアがなくなったことで、運転支援オプションを追加する場合はFSDのフルパッケージを8,000ドルもしくは月額のサブスクで購入することになる(アメリカでは2024年からエンハンスト・オートパイロットのオプションは廃止されFSDに統合されている)。

今週からはFSDの最新バージョン14も配信が開始されている。8,000ドルの一括購入はハードルが高いが、月額99ドルのサブスクは気軽に体験をすることができるはずだ。もちろんコンフィギュレーターに記載がある通り、従来通りのアクティブセーフティ(自動緊急ブレーキ、レーンアシスト、前方およびブラインドスポット衝突警告)などは搭載されている。

現在、このスタンダードモデルは北米だけの展開だが、Xではギガ・ベルリン工場で同じようにモデルYスタンダードの生産が間近との予想や噂がある。上海工場でのスタンダードモデル生産の噂は見つからなかったが、中国市場での熾烈な価格競争を考えると生産されても不思議ではない。そして、上海で生産されれば日本向けの可能性も出てくる。

日本における直近のモデル3後輪駆動モデルの価格は531万円、モデルYは558万円だ。勝手な単純計算でアメリカモデルの価格差異5,000〜5,500ドル分(約75万から82万程度)が下がると考えるとモデル3は449万前後、モデルYは483万前後、CEV補助金を考えるととても魅力的な価格になりそうだ。

今後のスタンダードモデルの評価や売れ行きに注目したい。

文/前田 謙一郎Youtube /x.com
※記事中写真提供:Tesla, Inc.

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

テスラ、ポルシェなど外資系自動車メーカーで執行役員などを経験後、2023年Undertones Consulting株式会社を設立。自動車会社を中心に電動化やブランディングのコンサルティングを行いながら、世界の自動車業界動向、EVやAI、マーケティング等に関してメディア登壇や講演、執筆を行う。上智大学経済学部を卒業、オランダの現地企業でインターン、ベルギーで富士通とトヨタの合弁会社である富士通テンに入社。2008年に帰国後、複数の自動車会社に勤務。2016年からテスラでシニア・マーケティングマネージャー、2020年よりポルシェ・ジャパン マーケティング&CRM部 執行役員。テスラではModel 3の国内立ち上げ、ポルシェではEVタイカンの日本導入やMLB大谷翔平選手とのアンバサダー契約を結ぶなど、日本の自動車業界において電動化やマーケティングで実績を残す。

コメント

コメントする

目次