東京都江東区で開催されたバスの最新技術が集結する体験型イベント「バステク in 首都圏」。EVエンジニアの福田雅敏氏が、EVバスに注目してレポートします。出展車両21台中、EVバスは9台でした。
年2回開催。試乗もできる「バス・テクニカルショー」
2025年10月31日(金)、東京都江東区の海の森水上競技場で、第11回「バステク in 首都圏」が、バス専門誌「バスラマ」(株式会社ぽると出版)の主催により開催された。

「バステク」は「バス・テクニカルショー」の略で、車両展示に加えて試乗、後付け追突防止装置の体験(かつては公道での試乗も実施)など、機器・用品・システム・サービスまで含む総合展示会である。基本はBtoBのイベントながら入場無料のため、バスファンの来場も多い。筆者もこれまで10回以上参加している。
開催は毎年、春(5月頃)と秋(10月頃)の年2回。関西は万博の影響で会場が変わりやすく、首都圏もオリンピック等の影響で固定化しづらかったが、今年は昨年と同じ会場となった。広い展示スペースに加えて試乗が可能な場所の確保が必要なため、主催者の苦労がうかがえる。
今年5月の「バステク in 関西」は神戸で開催。出展バス20台のうちEVと自動運転対応EVを含む13台が並び、過去最大規模のEVバス展示となった。一方、今回は「ジャパンモビリティショー」と会期が重なったこと、これまで展示車・試乗車でイベントを牽引してきたEVモーターズ・ジャパンの不参加もあり、春と比べるとやや小ぶりな印象は否めなかった。

ただしアクセス面の弱点を補うべく、無料シャトルとしてトヨタの燃料電池バスSORAが2台投入され、乗り切れないほどの盛況に。来場者の体感としては決して寂しいイベントではなかっただろう。
出展車両21台中9台がEVバス
今回の出展は、出展社数33社、出展車両21台(うちEVバス9台)。試乗車はEVだけで3台が用意された。来場者数は全国からバス事業者はじめバスファン、関係者を含め総勢1,050人が来場。バス特化イベントとしては相当数の参加だったと思う。
運転体験試乗は公道で実施され、事前申込枠は早々に満席。客席試乗は予約不要で自由乗車が可能で、3台とも多くの来場者が体験していた。筆者も初めてヒョンデ(Hyundai)のElec City Townに試乗。これまでは左ハンドルの参考出展や右ハンドルの展示だったが、今回は実際に試乗車として用意されていた。

ヒョンデはElec City TownのEVバスを2台出展。1台は試乗車、もう1台は大阪・関西万博で韓国パビリオン横の休憩所として使われていた車両を展示した。筆者も万博に足を運んだが、猛暑の中、排気ガスを出さずエアコンを使えるEVの車内で休む人の姿が目立った。これはEVの大きなメリットといえる。
国産EVバスの不在が気がかり
展示車両は合計17台、うち6台がEVバス。運転体験試乗・客席試乗が可能な4台で、3台がEVだった。展示の内訳(EVバス抜粋)は以下の通り。

アルファバスのEV路線バス。
●ヒョンデ(韓国):9m路線バス(試乗車として初出展)
●アルファバス(中国):9m/10.5m路線バス(いずれも首都圏は初出展)
●カルサン(トルコ):6m EVバス
●オノエンスター(中国):7m(貸切仕様は初出展)/9m路線バス
なお、国産車の展示はなかった。
試乗車はすべてEVで、ラインアップは以下の3台だった。
●ヒョンデ(韓国):Elec City 9m路線バス

●オノエンジニアリング/アジアスター(中国):7m路線バス

●アルテック:カルサン(トルコ)6m小型バス

海外製が中心で、日本車の不在は気掛かりである。先述の通り、大型二種免許保持者は事前登録のうえ運転体験試乗が可能。公道走行は3回行われ、毎回予約満席の人気企画だった。
ニチコンが充電器を初出展
バス用機器の出展は合計31社。そのうちEV関連は2社だった。

1社は今回初出展のニチコンで、商用EVを効率的に充電するサイクリック・マルチ充電器を披露。1台の急速充電器で最大6台に対応し、1口最大90kW。並列の同時充電ではなく、15分ずつ順番に充電する方式により電源のピークカットが可能で、待機中はバッテリーへの熱影響も抑えられるメリットがある。ニチコンといえばV2Hだが、Power Move Lightも展示していた。

もう1社は、BYDのEVバスに標準搭載されているモービルアイの後付け追突警報システム。ジャパン・トゥエンティワン(J21)が中日臨海バスの教習訓練車に装着した実機を展示し、停止状態で3回のデモを実施していた。担当者によれば、後付けながらスバルのアイサイト(EyeSight)に匹敵する性能だという。モービルアイは純正ADASや自動運転向けシステムの開発実績があるだけに、説得力がある。
そのほか、出展社によるプレゼンツアーが午前・午後各1回、計2回行われ、各社が数分ずつ自社や出展物のアピールを実施した。
例年は、バス事業者や行政などの講演、急速充電器やパンタグラフ式急速充電、EVバスの運行管理システムなどの出展も多いが、今回は「ジャパンモビリティショー」と会期が重なった影響で講演はなく、機器展示もやや少なめとなった。偶然にも、ジャパンモビリティショーと無料シャトルバスの発着場(臨海線国際展示場)が同一だったため、ショーで他のバスを見学した来場者もいたのではないだろうか。
来年の春には関西地区でバステクニカルフォーラム in 関西が開催予定。万博で活躍したEVバス、自動運転バス、走行中充電バスや関連機器のさらなる出展増に期待したい。
取材・文/福田 雅敏






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