全区画に充電器を設置した「ブランズ上目黒諏訪山」
東急不動産が2023年に引渡しを予定している「ブランズ上目黒諏訪山」は、総戸数19戸の分譲マンションです。このマンションは、総戸数分にあたる19区画の自走式平置き駐車場を用意しているのが特徴。また、自走式平置き駐車場の全区画に、EVの充電器が設置されています。
全戸分・全区画に充電器を設置した新築分譲マンションは、1都3県(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)初の事例とのこと。東急不動産は、駐車場の全区画に充電器を設置することで、電気自動車の購入や利用をしやすくし、EVの普及を設備面から後押しするとしています。
ブランズ上目黒諏訪山の所在地は、東京都目黒区上目黒3丁目。東京メトロ日比谷線・東急電鉄東横線「中目黒」駅西口より徒歩6分の場所に位置しています。建物竣工は2022年11月上旬を予定しており、引渡しは2023年1月下旬からの予定です。総戸数は19戸で、第1期の販売(10戸)はすでに終了し、2022年1月28日から第2期の販売(5戸)を予定しています。
全区画にEVの充電器が設置される駐車場の月額使用料は40,000円(以下、価格は税込金額)で、EV充電器の月額使用料は一律で5,000円です。
ブランズ上目黒諏訪山には、その他にも、スライドラック式の自転車置場が40台(月額使用料500円)、ミニバイク置場が5台(月額使用料2,000円)と自動車以外の車両を置くスペースも充実しています。
電気自動車の充電器を全区画に設置した経緯
マンションやアパートなど集合住宅が多い都心部でEVを所有するときの課題である充電設備。駐車場の全区画に充電器を設置した経緯について、東急不動産広報担当者に問い合わせたところ、次のような回答を得られました。
「世界全体で積極的に取り組んでいるSDGsの一環として、各国・各自動車メーカーがEVに力を入れているものの、日本国内のマンションにおけるEV充電器設置率は低く、充電器付き区画を希望しても叶わないがために、EVの購入が難しいという状況が見られました。本物件(ブランズ上目黒諏訪山)では、駐車場の全区画にEV充電器を設置することで、注目度も高まり、環境先進企業を目指す東急不動産のマンションとして、EV推進の一助になると考えています」
担当者の話からも東急不動産が設備面から積極的にEV普及や環境問題に取り組んでいることがわかります。
また、東急不動産は2021年12月30日に分譲マンション「ブランズ」で環境重視の取り組みを積極的にしていくことを発表しました。東急不動産「ブランズ」は、”環境先進マンション”として、2030年度までに全ての新築分譲マンションで、年間の一次消費エネルギー量の収支をゼロにすることを目指すZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)を標準仕様にするとしています。
この環境への取り組みを具現化したマンションのひとつが、駐車場の全区画に充電器を設置した「ブランズ上目黒諏訪山」なのです。
設置される充電器や利用料金
ブランズ上目黒諏訪山の駐車場に設置される充電器は、日東工業株式会社の普通充電器「Pit-2G」。この充電器は、通信機能を持つことが特徴で、3.2kW・4.8kW・6.0kWと3種類の出力の充電器をラインナップしています。どの出力の充電器が設置されるかについては聞くことができなかったものの、2021年5月に販売を開始した最新の普通充電器が取り付けられることはわかりました。
普通充電器の「Pit-2G」は、コネクターを差し込むだけで充電がスタートし、満充電になると充電を自動で停止する機能を備えています。
充電器の月額使用料は5,000円となっています。この金額の中には、使用する電気代が含まれています。つまり、電気をどれだけ使用しても定額であるため、充電するたびに課金されることはありません。そもそも、1戸約3億円以上の超高級マンションなので、5000円が高いか安いかということは論じてもあまり意味がない気もしますが……。客観的に、電気代が25円/kWh、電費6kmのEVで月間1000km走行分(約167kWh)を充電するとして、電気代は約4200円なので、自分で充電器を設置すると仮定したコストなどを勘案すると、すこぶる合理的な料金設定と思われます。
契約者や来場者の中にEV所有者は多いのか?
東急不動産の広報担当者にブランズ上目黒諏訪山の問い合わせ状況や契約者・来場者にEV所有者がいるか聞いたところ、次のような回答でした。
「2021年12月23日時点での問い合わせ件数は、資料請求数がおよそ100組、来場数がおよそ80組となっています。現時点では、契約者と来場者の中にEVを所有している方はほとんどいません。しかし、将来を見据えている方やSDGsへの関心が高い方が多く、当物件や当社の姿勢が評価されています」
現時点でEVオーナーが少ないのは、EVオーナーになりたくてもインフラの問題から購入を躊躇している方がいるからだともいえるでしょう。実は筆者も集合住宅に住んでいることから、EVの所有を諦めているひとりです。駐車場に充電器が標準で設置されていればEVオーナーになりたいと思っています。今後、ブランズ上目黒諏訪山のように、集合住宅の駐車場全区画に充電器が設置されていることが当たり前になることを切に願っています。
EV充電器を設置した”環境先進マンション”を増やしていく
東急不動産は、2021年12月30日にZEHを標準仕様にした分譲マンションを展開することを発表しました。「ブランズ」では、持続可能な心地よい暮らしと環境への貢献を実現する新たな発想や仕組みを積極的に取り入れた”環境先進マンション”を提供していくとしています。
この環境先進マンションとは、立地や建物条件など個別の物件にあわせた環境対応策を検討し、積極的に環境に配慮したマンションを提供することを意味していると東急不動産広報担当者は話します。また、EVの充電器を設置したさらなる新築マンションも計画中とのことです。
EV普及の課題でもある集合住宅のインフラ問題解決に積極的に取り組む東急不動産のマンションは、これからも設備面でEV普及を後押ししてくれるでしょう。筆者のように、EVに乗り換えたいものの充電設備がないために乗り換えられないというオーナーの課題を解決してくれる東急不動産の取り組みは今後も注目です。
(取材・文/齋藤 優太)
ZEHマンション増えてきた印象がある。
みんな環境問題に対しての活動に非常に前向きなんだな。。
住んでるマンションにEVスタンドが無ければ電気自動車の給電が可能な月極駐車場を自らマンション外で探すしかなくなる(https://www.park-direct.jp/)から今後普及するのはほぼ間違いないので、早めに給電スタンドの環境を整えてほしい。
気になるのは普通充電器の月額使用料ですね。
日産のzesp3なら3年契約、月額4950円で急速充電が毎月200分まで無料、普通充電は使い放題、日産オーナー以外でも加入できます。
お金持ちは価格に厳しい人も多いですから(厳しくないとお金持ちになれない?)、「出かけた時にzesp でこまめに充電すればいいや」となってしまうのでは?
企画担当者のEV経験が少ないのではないかと想像しますが、今後はみんなが加入したくなるようなアップデートを期待します。
hatusetudennさんの言うとおり、この物件はコスパ(コストパフォーマンス)重視の人間には厳しいものがありますが、文面を読む限り今後売るときの資産価値も考えて先行投資する方が多いと感じます。実際都会の高層マンションへ電気設備点検で伺ったとき住民の身なりはそれなりに裕福に見えましたし。
おそらく企画側はEV/PHVの実態を十分には知らないと思います。ただ名古屋を走る電気自動車にテスラ車が増えてきたあたり、3kWでも寝ている間に充電できる利便性を買う人が増えると思いますよ!?
19時帰宅翌朝7時出発としても12時間で36kWh。実際それだけ充電できるとは限りませんが、ホンダe/リーフ40kWhなどは実用上問題なく、スマートフォン・タブレットなどに同じく毎日充電を心がければリーフe+(62kWh)でも週末ドライブには十分使えるかと。
全戸分の充電器設置という点は評価しますが、なぜ太陽光パネルを設置しなかったのでしょう。化石燃料への依存が高い日本では、EVに乗り換えたからといってそのままCO2削減につながるわけではありません。それなら各戸に対応した太陽光発電を設置したほうが、SDGsに貢献するのではないでしょうか。充電料金も一律5000円にするのではなく、V2Hを導入して各戸で支払ったほうが環境への意識は高まると思います。「環境先進マンション」と言っていますが、必ずしもそうは言えないと思います。
電気技術者です。おそらくソーラーパネルの出力が10kW以上で全量買取になると判断されてのことでしょう。別に余剰買取を選べなくもないですが今度は設置後10年で固定買取が終わり設置費を償却しきれない問題も出てきますよ。要するにコストの絡み。
いちばん手っ取り早いのは蓄電池やV2Hの設置ですが、一戸建てならまだしも賃貸でV2Hともなると利用者が十分に理解できず「充電どころか放電になった」などの揉め事に発展しかねませんよ!?借り手の理解力が必ず高いとは限りませんから。
僕が物件のオーナーだったら真っ先にIQテストを実施しますよ…IQ130以上のMENSAレベルに限定するとか(当然それではやっていけないからあくまで冗談です)
ヒラタツさん
「ブランズ」は賃貸ではなく分譲マンションですよ。分譲マンションでも、新築なら世帯単位で売電は可能です。
seijimaさんへ:分譲条件忘れてました(^^;;;
しかし按分配置になるといっても仮に屋根全体で20kWとすると19件だと1世帯あたり1kW、効率いいとはいえませんね。当然パワーコンディショナーの稼働も非効率で設置費も高止まりです。結局屋根全体で発電し蓄電池を設けて取引メーターで使用量を測るしかないですね。
その取引メーターも5~7年ごとに検定奈必要という面倒があり、蓄電池も消防法の規定で18kWh(4800Ah/3.75Vの場合)未満に制約されますよ。
電気関連法令のみならず計量法や消防法も考える「電気界の司法書士」状態で考えると「法体系が追いついてない」が答えになりますがな。