航続距離2割3割減はあたりまえ!?
この1月、高校の同窓会に参加するため、福島県の郡山市に行きました。新幹線を使えば都内の自宅から郡山駅までドアトゥドアで2時間ちょっと。日帰りもできる距離でしたが、ふだんから北は宮城の「スポーツランドSUGO」から南(西)は三重の「鈴鹿サーキット」くらいまではクルマで移動している私にとって、郡山はクルマで行くのがあたりまえの位置ですから、迷わず愛車のID.4で向かうことにしました。
自宅から目的地までの走行距離はおよそ260kmで、この程度なら運転するのは苦になりませんが、別な意味で少し不安が。ID.4は寒い冬があまり得意ではないのです。愛車の『ID.4プロ・ローンチエディション』が納車されたのは2022年11月末のことで、その後すぐに寒い冬に突入し、ID.4の弱点をいろいろ経験してきたので、「また苦手な冬が来てしまった……」という想いにかられているというわけです。
一番の悩みは、他の季節に比べて電費が悪化すること。ID.4の場合、エアコンがヒートポンプ式ではないので、寒い日に暖房を使うと目に見えて電費が落ちます。他の季節なら5km/kWhを下回ることはないのに、とくに室内が冷えている状態で走り出すと2〜3km/kWh台なんていう数字も! 車内が暖まってからでも5km/kWhに辿り着かないことがよくあります。そのうえ、スタッドレスタイヤを装着していますので、いつもに比べて航続距離は2〜3割短くなります。
実際、郡山への往路での電費は、常磐道の三郷料金所から同中郷サービスエリアが5.7km/kWh(気温9℃)、そこから磐越道の阿武隈高原サービスエリアが4.8km/kWh(気温6℃)でした(いずれも制限速度または100km/hの低いほうを上限に走行)。他のシーズンなら6.5km/kWhくらいで走れることを考えると2〜3割の低下は覚悟しておいたほうがいいという数値でした。
「プレコンディショニング」機能がほしい
幸い、ID.4プロは77kWhとバッテリー容量に余裕があるため、いまのところ「エアコンを切って走らなければマズい」という状況に陥ったことはありません。ただ、大容量バッテリーゆえの悩みもあります。気温が低く、バッテリー温度が低いときは、急速充電のパワーが低く抑えられ、思うようにバッテリー残量(SOC)が増えないのです。
ID.4はCHAdeMO方式では最大出力94kWの急速充電に対応しています。SOCやバッテリー温度にもよりますが、条件が整えば、150kW器で94kW、90kW器で74kWという充電出力が確認できています。冬以外の季節、通常は90kW器、150kW器ともに60kW前後というところです。
ところが気温が10℃を下まわる時期になると、こうした高出力機でも50kWに届かないことが多く、50kW器で充電するのとあまり変わらない状況です。たとえば、今回の郡山遠征では、7℃で90kW器を使ったときが最大50kW、一方、9℃で50kW器では45kWでした。別にロングドライブ時、マイナス3℃の中50kW器で最大27kWということもありました。
そうなると、当然30分で充電できる電力は少なくなり、思うようにSOCは増えません。充電機が空いていれば「おかわり」できますが、いつもより時間がかかるので、他の季節よりも時間に余裕を持って移動する必要があります。
ID.4プロには、充電に備えてバッテリーを適温まで上げる「プレコンディショニング」機能がありません。もしこれが備わっていれば、冬場の急速充電事情はかなり改善するはずです。それはメーカー側も理解しているようで、2024年モデル(日本導入は2024年末以降でしょうか?)にはプレコンディショニング機能が搭載されるとのことで、「だったら最初からつけておいてよ〜」というのが2022年モデルオーナーの心の叫びです。
ところで、郡山からの帰りは、急ぐ旅でもなかったので、東北道を西那須野塩原インターチェンジで降り、そこから一般道で東京に向かいました。比較的道路が空いていたこともあり、そのときの電費は7.6km/kWhをマーク。ID.4プロの場合、エアコンの負担が少ない季節なら一般道の電費が8km/kWhを超えることもあり、速度を控えることが電費向上に直結するのがわかります。そんなこともあって、ID.4に乗るようになってからは、時間に余裕があるときには好んで一般道を選ぶようになりました。
私のID.4(2024/2/6現在)
総走行距離 2万5271km
平均電費 5.8km/kWh
取材・文/生方 聡