N-VAN e: ベースの新型軽キャンパーがデビュー
2025年1月31~2月3日、幕張メッセで開催された「ジャパンキャンピングカーショー2025」は過去最大6ホールを使用し、総来場者数4万7,180人という盛況ぶりでした。
この会場で、キャンピングカービルダーの株式会社岡モータース(本社:香川県高松市)は、ホンダ『N-VAN e:』がベースの新型軽キャンパー「ミニチュアシマウザー CP」をお披露目しました。同社は、ミニチュアシマウザーCPが軽キャンパーではEVを初採用したことを大きく打ち出した展示を行い、多くの人の注目を集めていました。
オートサロンなどで三菱ミニキャブMiEVベースのキャンパーが出展されていたことはありますが、実際に商品として発売されるのは初、ということだと思います。
ポタ電+走行用バッテリーで最大37.6kWhの容量に
ミニチュアシマウザーCPの外観は、N-VAN e: そのままで、ひと目でキャンピングカーとはわからない「ステルス キャンピングカー」でした。
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しかし、ドアないしリアゲートを開けると、N-VAN e:のセールスポイントであるフラットな低床を活かした2段ベッドが目を引きます。ベッドは2段式で上部ベッドは3段階で高さ調整ができるようになっています。また、左右独立しており、例えば左側を上段、右側を下段とすると1人用ベッドとして使えるようになります。これなら筆者のようなオジサンが、友だちのオジサンと2人で車中泊しても、身体が触れあうことなく快適に眠ることができそうです。
収納はベッド下を活用し、自由度が高く使い勝手のよさそうな作りになっていました。下段ベッドの下には、マルチアンダーボックスを2個標準装備、そこにはポータブル電源や電子レンジが収納できるようになっています。なお、オプションで2個追加して、最大4台のポータブル電源を収納可能(ただし電子レンジが置けない)としています。
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ポータブル電源は「EcoFlow(エコフロー)」の「DELTA 3(容量1024Wh)」ないしは「DELTA 2 Max(2048Wh)」が採用されています。エクストラバッテリーは、それぞれ最大3台まで追加可能です(ポータブル電源本体1台と合わせて計4台まで)。「DELTA 3」のエクストラバッテリーは1台あたり1024Wh、「DELTA 2 Max」のエクストラバッテリーは1台あたり2048Whです。ポータブル電源本体1台にエクストラバッテリーを最大3台接続可能で、「DELTA 3」の最大構成では合計で約8000Wh(8kWh)となります。
これにより、「N-VAN e:」の走行用バッテリー(26.9kWh)とポータブル電源(最大8kWh)を組み合わせると、合計で最大34.9kWhの電力を確保できます。
また、ミニチュアシマウザーCPは、電気製品への電源供給は、ポータブル電源と走行用バッテリーの両方から可能(アプリ操作で切替)となっており、走行用バッテリーからポータブル電源へ充電と、ポータブル電源から走行用バッテリーへの充電の両方向可能としているところが特徴です。
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ポータブル電源から走行用バッテリーへの充電は、車体後部に備えた外部電源コンセントから、フロントグリルの充電口へオプションの100V充電アダプターを介して行います。このため、走行中の充電はできず、駐車中のみ充電が可能です。
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効率がいい12Vエアコンを採用
後付けのエアコンは「12Vエアコン」が採用されています。12Vエアコンを真夏の昼間にMAXで使用するときの消費電力は900W台ですので、ポータブル電源+エクストラバッテリーを最大構成にすると、ポータブル電源の電気だけでも8~9時間全開で使用できる計算になります。加えて、走行用バッテリーの電気も12Vエアコンに使うことができるため、1泊2日のキャンプや車中泊なら余裕でしょう(軽キャンパーは室内空間が狭いので、エアコンの効きもいい)。なお、電気を使い過ぎて帰れなくならないよう、アプリで走行用バッテリー容量をユーザーが任意に定めた分以上、電気製品へ電源供給しないようにすることができます。
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中・大型キャンピングカーでは、家庭用100Vエアコンを搭載することが多いですが、軽キャンピングカーやハイエースなどがベースのキャンピングカー「バンコン」などでは、スペースの問題から12Vエアコンがよく採用されているとのこと。
家庭用エアコンの内部には、コンセントから入力された交流電流を直流に変換するインバーターを内部に備えています。キャンピングカーで使用する場合、走行充電システムに組み込まれたインバーターのコンセントから電気を取ります。バッテリーから取り出せる電気は直流のため、走行充電システムには直流12Vから交流100Vに変換・昇圧するインバーターが組み込まれます。キャンピングカーで家庭用エアコンをはじめとする交流電気製品を使うと、2つのインバーターを介して交流→直流→交流と複数回変換されて電力ロスが多くなるデメリットがあります。
この点、12Vエアコンは、クルマのバッテリーやポータブル電源の直流をインバーターを介さずそのまま使うので、効率がよくバッテリーの持ちも良くなります。ただ、電圧が低いため空間が広い中・大型キャンピングカーを十分冷やすまでの能力がないのがデメリットです。
最近のキャンピングカーの多くには、走行中にサブバッテリー(クルマのバッテリーとは別に電気製品を使うためのバッテリー)を充電するシステムが標準装備されています。今やキャンピングカーに走行充電システムの装備を求めるユーザーがほとんどです。でも、ミニチュアシマウザーCPに走行充電システムはありません。
走行充電システムは、バッテリーないしはオルターネーター(発電機)に直接接続することが基本で、コントローラーがオルターネーターの発電量とバッテリーの電圧を常時モニターし、サブバッテリーへの充電電圧を適切に調整しながら充電する仕組みになっています。この仕組みのため、走行充電システム用コントローラーは、BEVには対応していません。したがって筆者は、軽EVキャンパーはそもそも走行充電システムが不要なパッケージングではないかと考えています。
仕事が休みの週末だけキャンプする「週末キャンパー」なら、走行充電システムがなくても十分な容量のポータブル電源があれば事足ります。クルマの走行バッテリーへの充電と同時に、ポータブル電源に充電することもできます。容量2048WhのEcoFlow「DELTA 2 Max」は、充電1500W入力に対応しているため、ミニチュアシマウザーCPの最大容量8192Whポータブル電源+エクストラバッテリーの組み合わせでも、満充電にかかる時間は、クルマへの普通充電時間とそう違わないでしょう。
「週末キャンプ」に最適な軽EVキャンパー
ミニチュアシマウザーCPは、水回りが省略されていて、シンクはオプションでも設定されていません。たっぷりの電気と多彩なアレンジができるベッドを軸とした、必要にして十分でシンプルな装備は、週末キャンパーにぴったりではないでしょうか。装備がシンプルな分、価格も抑えられます。
N-VAN e:「FUN」をベースにしたミニチュアシマウザー CPの車両本体価格は、401万9400円(ポータブル電源、電子レンジはオプション設定)。ベース車両の価格は、291万9,400円ですから約100万円の差で、キャンピングカーにしては安い部類です。
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ミニチュアシマウザーCPに太陽光発電で充電できる環境があれば、「完全オール電化」で「カーボンニュートラル」な「週末キャンプ」を楽しむことができるという新たな提案でした。
ちなみに薪を使う焚き火、実はカーボンニュートラルだということご存じでしたか? 薪の燃焼で排出されるCO2量は、木の成長過程で吸収したCO2と同量です。また、多くの場所で、森林管理の一環で伐採された木を薪として販売しており、それを使用すれば資源の有効活用と地域経済への貢献ができます。
環境負荷が少なく、自然環境にも優しいBEVキャンピングカーが今後続々と登場してくることでしょう。期待が高まる「ジャパンキャンピングカーショー2025」でした。
【動画】担当者がミニチュアシマウザーCPの装備を詳しく解説
※ミニチュアシマウザーCPは、N-VANのガソリン車もラインナップしていますが、本記事では便宜上BEVモデルのみを「ミニチュアシマウザーCP」と表記しています。
取材・文/宇野 智