目指すは自動車界のBTS〜ヒョンデ『NEXO』に2時間の試乗でわかったこと【吉田由美】

日本再進出で話題のヒョンデ。電気自動車アイオニック5とともに日本導入されるFCEVの『NEXO(ネッソ)』を、カーライフエッセイストの吉田由美さんが体感。およそ2時間の試乗で感じたことをレポートします。

目指すは自動車界のBTS〜ヒョンデ『NEXO』に2時間の試乗でわかったこと【吉田由美】

韓流は人気でもクルマはなぜか大苦戦?

韓国料理、韓国コスメ、韓流ドラマ、韓流スター…。日本で韓国関連のものは何でも人気が高いのに、なぜか車だけが苦戦。

現代自動車(ヒョンデ/Hyundai)は2001年に日本に進出したものの、販売不振のため2009年に撤退。その間には日韓共催のワールドカップのオフィシャルスポンサーを務めていて、当時ワールドカップ事務局が入っていた東京・恵比寿のホテルの地下駐車場では、日本中のHyundai車がここにあるのでは? と思うぐらい多くのヒョンデ車を目撃したこともありました。

その後も海外のモーターショーなどでは目にしていたヒョンデですが、デザインがカッコイイ! しかし日本ではメディアで取り上げても反応が少ないせいか、ほとんど紹介されることもなく。実は自動車のデザイナーに韓国人は多く、しかもセンスが良いそう。以前、某有名デザイナーも、「どうしたらあのセンスが育つのか不思議だ」と話していました。

さらに海外ではアフターサービスでもヒョンデは評価が高く、一時は日本が得意とする「おもてなし」ともいえるお客様満足度調査でもヒョンデにその座を奪われる危機が紹介されたことがありました。日本メーカーもうかうかしていられない! と思ったのですが、そういえばこの手の話、最近は聞かなくなりました。現在はどうなのでしょう??

さて、ヒョンデの今回の日本での乗用車の導入は13年ぶり。大きく変わったのは名称「Hyundai」で、英語表記はそのまま、漢字表記も「現代自動車」ですが、日本表記は「ヒョンデ」。とはいえ、英語表記をそのまま読むと「ヒュンダイ」と呼びたくなってしまうので、慣れるまで少し時間がかかりそう。

また今後、日本には環境対応車が導入されますが、まず導入されたのはEVである「IONIQ5(アイオニック5)」と、水素燃料電池車の「NEXO(ネッソ)」です。そして今回は「ネッソ」の話。

公式サイトより引用。

初対面はラスベガス

この車のデビューは2018年1月のアメリカ・ラスベガスで開催されたCES(コンシューマーエレクトロニクス・ショー)にて世界初公開。実は私も現地に行っていて、たまたま生で実車を見ました!

韓国での発売は2018年3月とのことですが、韓国の友人からの情報によると、韓国国内には現在90カ所ぐらいの水素ステーションがあるそう。しかし韓国でもまだ水素の燃料電池車は「ネッソ」だけで、むしろEVのほうに力を入れているようです。

まずは「ネッソ」の外観から。自然が作り出した造形物を意識したというデザインは、流麗でスタイリッシュ。フロントグリルのまわりをクロームで囲わないのは最近のトレンドなのかも。シャープなライトもスタイリッシュに見える効果があると思います。ちなみにこの日、試乗したボディカラーの「カッパーメタリック」もイマドキなトレンドカラーです。また、リアの「NEXO」のロゴのまわりがブルーになっていたり「BLUE DRIVE」のバッジが装備されています。

目につくのは格納式のドアハンドル。キーの解除をするとスッと手を差し込めるようにエスコートしてくれます。

大型の液晶モニターや運転席周りにも高級感を感じます。インテリアも内装の品質は高く、しかも環境負荷の少ない素材を使用。たとえばインテリアはレザーフリー、バイオプラスティックなど採用しています。モニター内は液晶のタッチパネル。しかし今の時代、1年前の車でも古さを感じることがありますが、「ネッソ」も2018年前に登場したモデルのせいか、センタコンソールにはスイッチがいっぱい。同社の最新EV「アイオニック5」に比べると、このスイッチ類の多さは最先端というより、少し前のトレンドというイメージ。

ボディサイズは全長4670㎜×全幅1860㎜×全高1640㎜。

FF(前輪駆動&前ドライブ)で1回の充填での航続可能距離は日本のWTLCで約820㎞!
(※編集部注/欧州WLTPでは413マイル=約665km。実用に近いEPA値ではおよそ593km程度と推定)

ラゲッジルームや後席の下に3つのタンクが搭載され、そこに貯蔵される水素と大気中の酸素を化学反応させるFCシステムによって電気を発電(タンクの容量は52.2リッター×3本で合計156リッター)。その電気はバッテリー容量1.56kWhのリチウムバッテリーに充電され、最高出力163馬力、最大トルク395Nmの駆動用モーターで走行します。

センターのディスプレイは12.3インチ。ラゲッジルームは461リッターの荷室容量を確保。

目を惹くのはウィンカーを動かすと左右のメーターパネル内にウインカーを出した側の外部が映し出されること。これは死角をサポートするためのものですが、残念ながら少し映される場所が下すぎて、目新しさはあるものの実際には使いにくく、あまり活用はできないかなと思います。

走りのパフォーマンスはイメージ通り

運転してみた印象は、アクセルを軽く踏み込むとモーター駆動らしく「なめらかなのにぐいぐい」進みます。しかもどんな速度域でもイメージ通りのパフォーマンスを提供してくれます。この車、1870㎏というまあまあの重量級なのですが(笑)。

そして重要な乗り心地。タイヤサイズは245/45R19インチを装着。

運転している限りでは快適です。路面の凹凸も体に大きなショックを感じることなく、全体的に柔らかな印象。

今回の試乗コースは小田原~御殿場まで。パドルシフトで回生量を調整しながら箱根の山越えを堪能しました。その後は高速道路走行での先進安全運転支援(ADAS)「ヒョンデ・スマートセンス」をチェック。単眼カメラとミリ波レーダーによるもので、特段特別なものではありませんが、使い勝手的には特に意識せずに使えます。

水素の充填も試してみました

充填もしてみました!

わずか2分強で充填完了。水素の充填量は1.38㎏。ちなみに走行距離は62㎞。水素の価格は1㎏1100円。カタログによると、ほぼ空の状態からでも約5分で満タンにできます。

そしてこの車、走行時は蒸気と水しか出ませんが、ステアリング横の「H2O OUT」のスイッチを押すと車外に水を排出できます。が、押さなくても自然に外に排出されているようです。そのため、私が「H2O OUT」スイッチを押した時は思っていたより排水量が少なかったです。

このネッソ、アイオニック5と同様に、「DeNa SOMPO Mobiliti」が運営するAnyca(エニカ)でのシェアリングサービスで体感できるそうです。それと期間限定で東京・原宿で開催されているポップアップストア「Hyundai House Harajyuku」でも試乗可能だとか。

というのが「ネッソ」2時間試乗でわかったこと、でした。

(取材・文/吉田 由美)

この記事のコメント(新着順)4件

    1. ヒコヒコ様、コメントありがとうございます。韓国に限らず、ノルウェーや米国でも水素ステーションでは爆発事故が発生しています。日本でも
      https://www.khk.or.jp/hydrogen/accident_information.html
      かなり昔ですが、水素関連施設で爆発が1回、火災は輸送中と施設でそれぞれ1回ずつ発生しています。もちろんガソリンスタンドでも、少ない数ですが爆発や、火災は多数発生しています。
      https://www.sankei.com/article/20200612-2XGU4RP4XFJ2TAPHSXVTXWRAJE/

      現状のガソリン車や水素燃料電池車は、ガソリンや水素が漏れてもセンサーはなく、警告するシステムは存在しませんが、非常に安全な設計となっており、トンネル内走行や自宅での保管には全く問題ないと考えてよいと思います。

  1. 今、水素自動車を社会へ広めてマトモに売る気があるなら、社会に不可欠な商用車か流行りのSUVになる筈。それを完全にオワコンの大型セダンなんてカタチで出して第2世代でもそれを継続。折角このジャンルで世界トップを獲れる技術を持っている筈なのにそれを戦略ミスで活かせないトヨタに、寂しさと不安と怒りを感じます。もっとも、水素自動車より遥かに手掛け易い筈のストロングハイブリッド&PHVすら活かせていないですからねぇ・・・。

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					吉田 由美

吉田 由美

短大時代からモデルをはじめ、国産自動車メーカーのセーフティドライビングインストラクターを経て、「カーライフ・エッセイスト」に転身。クルマまわりのエトセトラについて独自の目線で、自動車雑誌を中心にテレビ、ラジオ、web、女性誌や一般誌まで幅広く活動中。

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